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【書籍化】円満な婚約破棄と一流タンクを目指す伯爵令嬢の物語  作者: 時岡継美
本編

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21/81

タンクとは2

 戦闘の部隊編成で俗に「盾役(タンク)」と呼ばれているのは、部隊の最前線で大きな盾を持ち、敵の攻撃を一身に受けてひきつけながら戦線を押し上げたり、罠や攻撃役(アタッカー)が攻撃しやすい位置に敵を誘導する役割だ。

 タンクの立ち回りが下手だと、それだけで部隊がガタガタに崩れてしまうこともあるため、タンクは高い防御力と体力、気力、そして冷静な判断力を持ち合わせていなければならない。

 

「でもさ、ステーシアの身体能力が高いのは知ってるけど、タンク向きではないよなあ?」

 スタンが首をかしげる。 


 確かにそうだ。

 タンクは通常、大きな盾を持ち分厚い鎧兜の重装備を身につけるため、身軽であることよりも屈強であることが求められる。だから、体の大きな、いかにも「打たれ強い」人がその役割を担うわけで、女性には不向きだ。


「いや、タンクには『回避系』っていう、敵の攻撃を回避しまくるタンクが存在するんだ。いまの騎士団には回避系タンクはひとりもいないけどな」


 回避系タンク!

 なんか、かっこいいんですけどっ!


「でも…」

 少し言いにくそうにレオンが続けた。


「一対一だとかなり有利ではあるが、大規模な対人戦だと活躍できる場面は少ないと思う。なぜだかわかるか?」


 一対一の勝負だと、こちらはひたすら回避しまくれば相手の攻撃が当たることはない。

 ゆえに、ダメージを食らわない。

 最小限の動きで避け続けるには集中力は必要だが、攻撃が当たらないことにカッとなって武器を振り回し続ける相手の方が体力の消耗が激しいはずだ。

 相手の動きが鈍ってきたところで、隙をついて急所にナイフを突き立てれば終了だ。


 それに対して、人数の多い部隊での戦闘になると、盾役であるはずのわたしが最前線で飛んで来た弓矢や魔法を避けたらどうなる?


「後ろの人に当たってしまうわ」


「その通り」

 レオンが人差し指を立ててニッと笑った。


「おまけに敏捷性を活かすために軽装備だから、油断したり咄嗟の判断ミスでうっかり一発当たるだけで即死する危険もある。通常、タンクには必ず回復役(ヒーラー)がついて、常に回復魔法と防御魔法をかけつづけてサポートするんだが、回避系は動き回るから魔法を断続的にかけ続けるのは難しいんだよな」


「回復魔法に頼れないなら純度の高い回復薬(ポーション)を携帯しておいて、ガブ飲みしながら回避を続ける感じかしら?」


「なんか、回避系タンクってコスパが悪そうだな」

 スタンが呆れている。


「コスパが悪いだけじゃない、仲間からもあまり感謝されない」


 なんですって!?


「通常のタンクだと、敵の攻撃を食らいながら耐えている姿がかっこいいと言われるし感謝もされるんだが、回避系はふざけた挑発行為を繰り返しながらヒラヒラ跳ね回るわけだから、かっこいいというよりは『ヘンな動き』と笑われるし、命の危険は回避系のほうが高いにもかかわらず動きの軽さのせいで性格まで軽いと思われがちで周りから感謝もされないってわけだ」


 なによそれ!


 でも納得だわ。

 普通のタンクのイメージは歯を食いしばって耐え忍ぶ寡黙な男、かたや回避系タンクのイメージは生意気な笑顔で奇妙なステップを踏む遊び人って感じかしら。


 じゃあ星3の回避系タンクなんて、このご時世では究極の役立たずじゃないのっ!


「ねえ、回避系ではなくて、通常のタンクにわたしがなれる可能性はあるかしら?」


 兄二人は顔を見合わせた後、同時に言った。

「「ないな」」


 いやあぁぁぁぁっ!




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