表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】円満な婚約破棄と一流タンクを目指す伯爵令嬢の物語  作者: 時岡継美
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/81

学年末パーティー1

 レイナード様に嫌われる悪役令嬢になりきれているのかわからないまま、もうすぐ学院での1年が終わろうとしている。


 結局あのあとも勉強会には積極的に参加した。

 貞淑な婚約者でいた頃には、足並みをそろえるように気を遣いながら進めていた演習課題も、もうそんな気遣いなんてしてやらないわ!と、自分のペースでガシガシ解いてみせた。

 そして「あら、みなさんこんな問題に手こずってらっしゃるの?」という態度をとったのに、ナディアからもレイナード様からも「すごい」と褒められてしまった。


 勉強会のあとのお茶の時間に、お菓子を行儀悪く食べてやろうとマカロンを一口で全部頬張ってみせると、レイナード様は「リスみたいだね」と笑うし、カインとナディアは、そんなに腹ペコならどうぞと自分の分をわたしに分けてくれた。


 なんか違う……。

 なんか違うんですけどっ!?



 進級テストも終わり、あとは週末の学年末パーティーが終われば2か月の長期休暇に入ることになっている。

 この日は、最後の勉強会だった。


 いつもの教室へ行くと、レイナード様とカインが言い争っているような声が聞こえて、わたしはまたドアに手を掛けたまま動きを止めた。


「はあっ?シアに好きだと言え!?何言ってるんだ、そんなこと言えるわけないだろう!」

 レイナード様の声は随分と気色ばんでいる。


 きっとカインに言われたのね。

 婚約破棄だなんて馬鹿なこと言わないでステーシアとの婚約を継続しろ。嘘でいいから好きだと言っておけば、喜んですがってくるだろう。

 そんなところかしら?


 そんなのまっぴらごめんだわ。


 勢いよくドアを開けると、驚くレイナード様と、気まずそうにするカインとナディアの顔が見えた。


「結構よ。レイナード様に今更そんな告白されても、こちらも迷惑なだけですもの。週末のパーティーのエスコートも不要ですわ。もうすでに、ほかの方に頼んでいますので。今日はそれだけ言いに来ましたの。では、ごきげんよう」

 にっこり笑って、今度は勢いよくドアを閉めた。


「シア!」

 すぐにレイナード様が飛び出してきたようだけれど、わたしの姿は見つけられないはずだ。

 なんせ、2階の廊下の窓から飛び降りたんですもの。 


 来週からの騎士団の訓練に向けて、自主的に筋トレしておいて助かったわ。

 華麗に着地すると、その場から軽やかに走り出した。

 振り返っている暇などわたしにはないのだ。


 

 さっき勢いで「ほかの方にエスコートを頼んでいる」と言ってしまったけど、どうしようかしら。

 学院の敷地を掛けぬける途中にふとそのことが頭に浮かんだ。

 それは嘘だった。

 本当はそんなあては全くない。


 学院内の催しだから、お兄様たちにも頼めないし…。


 考え込みながら走っているうちに、曲がり角で誰かとぶつかりそうになった。

「うわあっ」

 相手がひっくり返って、尻もちをつきながらずれたメガネを元の位置に戻している。

 ボサボサの黒髪で小柄な、ひ弱そうな男子生徒だった。


「あら、ごめんなさい。ところであなた、パーティーのパートナーはもう決まっていて?」


「ええっと…まだです…が?」


 相手が戸惑っているうちに勢いで攻めまくるわ!

「じゃあ、わたしのパートナーになってちょうだい。エスコートお願いねっ!」


「……え?」

「『え』じゃなくて『はい』でしょ!」

「は、はい…?」

「やった!よろしくね。ところであなた、お名前は?」


 その日、わたしはルシード・グリマンという、魔導具師を目指す気弱な男子生徒と無理矢理パートナーになったのだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] シアが本気出して走ったらついていけないのては…?? 令嬢が全力疾走すること自体もなさそうですし、目撃した人はびっくりしただろうなぁ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ