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3


最初の宣言通り授業開始まで拘束され、腹の虫をなだめつつ午前の授業をやり過ごし、やっと昼休み。


私はある計画のために三年の教室に向かい、実行した。


結論から言おう。


作戦は成功である。


繰り返す、作戦は成功である。


直ちに現場から撤収せよ! である。


例えて言うなら可燃物付近に火のついた松明を設置、周辺に燃焼を確認、大爆発をおこす前に退避! 退避……


「少し聞きたいことが有るんだが?」


出来ませんでした。


ぽんと肩を叩かれ、ぐぎぎぎと首を曲げると、爆風の中からこんにちは、本日二度目の比較的青い方の殿下である。


「イヤデース」


ダッシュで逃げようとするが、きゅっと肩に乗せられた手に力が入った。


「口答えは会議室で聞こう」


そのままぐいぐいと肩を押されて会議室の方へ歩かされる。


いかん! 何とか回避しなければ! このままではお昼まで食いっぱぐれる!!


「元気に答えるのは私のお腹の虫位だと思いますよ」

「カトレッド嬢には羞恥心はないのか?」

「現在は持ち合わせがございません。と言うか恥を忍んで腹を満たします。空腹は生命に関わりますし」


とか何とか言っているうちに今朝と同じ会議室に連れてこられた。うん朝と同じパターンだね、サヨナラ私のランチ(予定)溢れる卵とはみ出るハムのスペシャル盛りDXサンド(一斤)。


「人間一食位抜いても生きて行けるから大丈夫だ」


真面目な顔してとんでもない事をぬかしゃがった殿下に軽く殺意を覚えた。こちら最後の晩餐がリンゴ一個だけですけども?そろそろ生命に関わって来るんですけど!?


「クッ、すまない」


顔面に感情を乗せてにらみつけていたら隠せてない笑いと声を出してふいっと目を逸らされた。


「そう思うならさっさとお話とやらをどうぞー、今朝も昼も殿下に構ってる暇は無いので」

「今朝は私じゃないが」

「? ……あ、殿下は青いリボンですもんね」


ぽんと手をたたいて納得する。リボンで名前だけでなく設定も変わるんだ、とやっと理解した。ややこしい奴らめ。


視線を上げると何故か考え込んでいる殿下が目に入った。


ど、どうしたんですか、殿下。私何かヤバいこと言いました?うん、今朝から結構アレなこと言っている気がする。


「……私がどっちかわかるか?」


何かを見極めようと探るような目で問いかけて来た。多少、居心地の悪さを覚えるが聞かれたことに素直に答える。


「今は青いリボンなのでサフィア殿下ですよね?」

「今は、ね」


私はゆっくりと唇の端が持ち上がるのを眺めていた。殿下は今まで見たことの無い顔で笑っている。


いや、楽しそうではあるけれど、獲物を見つけた肉食獣のような目と言うか、楽しくて笑っているだけではない雰囲気を醸し出している。


すらりとした指が私の頬に伸ばされやぼったい丸眼鏡(伊達)に触れ――


「嬉しい誤算だね。カトレッド嬢、君は――」


きゅーくるくる


食いぎみに腹の虫が返事をした。もちろん私の飼ってる虫である。


空気を読まずに必死に空腹を訴えているのだ。元気そうで何よりだがご飯の時間は取れそうにない。


「……確かに元気に返事をするね?」


殿下は伸ばした手を、自身の口元に引き寄せて口を覆う。


隠してはいるが、笑いをこらえて声が震えているので意味はほぼナイ。笑ってんのバレてるからな! このや……殿下め!


さすがの私も居たたまれなくなってお腹を押さえる、すでに鳴いた分は戻ってこないのだが。


「だから言ったじゃないですか」


羞恥で顔に火が着きそうなくらい熱くなる。


原因の殿下を罵ってやろうと視線を上げると、鳩が豆鉄砲食らったような顔をしていた。


「なんですか? 私にだって流石に人前でお腹を鳴らせば恥ずかしい位の羞恥心は持ち合わせておりますよ」


半ばやけくそでそう言えば殿下はもはや隠すことなくクスクスと笑い始めた。


「ごめん、あまりにも堂々とあんなこと言っていたから、そんな顔すると思わなかった」


私がかなりヒドイ顔をしているらしく、殿下は私の顔を見て楽しそうに笑いながら、ぷにぷにと私の頬をつついた。何故だ? 解せぬ。


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