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三姉妹の真ん中はモブで居たい  作者: 青黄赤
ss

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25/26

弱点

書籍化記念ss

作中パーティ前のミスティーナの話です。


弱点、それは人の持つ弱みであり、敵のそれなら攻めるべき点である。


つまり人間弱点が少なければ少ないほど生きやすいのではないか? という哲学的な何かに目覚めた私は、本日料理にチャレンジしてみることにした。


私にとって料理は弱点なだけであって、出来ないというわけではない。ただ今まで向き合ってこなかっただけである。


そう、きっとやればできる。今まで避けてきただけだから! 私はやればできる子だし!!


というわけでその弱点を克服する第一歩を歩むべく行動しているのだ。


「ふふふ。計画は完璧、向かう所敵無し!」


万が一に備え、王都の外にある冒険者たちがよく野営に使う簡易砦(砦といっても四方だけがレンガで囲まれている程度の場所)でもろもろの用意をしている。


いやだってほら屋内で火を使うとか、火事怖いじゃん? 料理は火加減とか聞くし、火力はあればあるだけ良いはずだ。


でもその過程でその辺に燃え移りでもしたら大変だし。


で、目をつけたのがここというわけだ。


簡易砦なら下は地面、上は青空。四方はレンガの壁だから何かに燃え移る心配は無い!!


「よぉし、いざ尋常に勝負!」


収納魔法から鉄製の脚のついた網を取り出し、その下に薪を置き点火する、準備は万端だ。


「……いや、でもこれだと火加減弱くない?」


よく行く冒険者向けの食堂では、調理時に具材へ火がついていたのを見た事がある。つまりチョロチョロと網を炙っている今の火力では弱いのではなかろうか?


「……薪を足そう」


そして薪を増やして(私の)理想的になったところで、収納魔法から塊肉を取り出し、鉄製の串に刺す。


刺すのは得意なんで。ここで失敗はしない。


収納魔法は便利だが、素材や食材なら収納出来るのに、料理は収納出来ないのがネックである。


だから冒険者的には自分である程度の料理は出来たほうが野営とかを考えた時に効率がいいのだ。


そしてこの塊肉は、食堂のおっちゃんに頼んで作ってもらった、焼くだけで美味しく食べられる『食材』のお肉だ。


すでに下処理と味付けはされているので後は前述の通りほどよい火加減で火を通して食べるだけのものである。


「これでいい……ハズ」


燃え盛る炎の中にある網へ鉄製の串に肉の塊を刺した物を乗せる。


「……熱い、ものすごく熱い」


ジュワっと音を立てた肉にホッと安心しながらも、勢いの強い炎に一抹の不安がよぎる。


顔や皮膚までジリジリと焼けるような熱さに、これ自分も炙られてないか? と疑問を持ちつつ肉の様子を見る。


「……黒いけど?」


そう、肉の表面が黒いのだ。 


これ食べられるのか? 少なくとも食堂で出てくるおいしいお肉の色ではない。


「……いや、もっと焼けばあの色になるのかも?」


そうだ。きっとそうに違いない。なにせ相手は肉だ。素人調理の生焼けは怖いしもっとしっかり焼こう。


そうしてランチに間に合わせようと思って始めた肉の調理は日が傾きかけるまで続けることになった。


「……おかしい。完璧な作戦のはずだったのに、料理ってこんなに時間がかかるんだ」


塊肉は一回り、いや三回りくらい小さくなったが、まだ黒いままだし、焚き火はもう消えかけである。


流石におかしいと思い鉄の串を手に持って持ち上げてみた。


「エッ」


持ち上げた瞬間にホロホロいや、ボロボロと崩れ落ちる肉だった黒いもの。


「……」


これはどう見ても肉ではない。炭、いや燃えカスに近い。


私でも流石にこれは失敗だとわかる。


「……美味しく食べてあげられなくて、ゴメンお肉」


何が悪かったんだろうか? とりあえず焼きすぎだということはわかる。


でもそうすると最適な焼き加減ってどれほど?


とか考えながら、心の中でおいしくなるはずだった肉にほろりと哀悼の涙を流し、今日の料理は諦めて片付けを始めた。


◇◆◇◆◇◆


「肉は難易度が高かったに違いない」


失敗要因を考えに考えた結果、後日導き出した答えがそれだった。


そう、肉は料理初心者が手を出すには早すぎる代物だったに違いない。


考えてみれば肉はメインディッシュ、コースで食べる料理として見れば一番の花形食材なのだ。


メインディッシュは見習い料理人には任せられないくらいの高難易度なのだから、私ごときが調理出来るなんて思い上がりもはなはだしい。


「と、言うわけでお菓子を作ろう」


そう思いついて本日は学生寮のキッチンを借りている。


ご令嬢から(ちまた)の女子まで、初めて作ってみたんだけど、どう? とか言いながら人に渡す物の代名詞、それがお菓子。


それをもらった人は美味しいよと笑顔で食べるのがセオリーなのだ。だから初めて作っても美味しく出来るお菓子ならばきっと私でも作れる! はずだ。およそ、きっと、たぶん。


「レシピは王妃さまのコネで、元王宮務めの菓子職人さんから作ってもらった完全心者向け、コレなら私にも作れる!!」


しかもレシピには上手に出来るコツまでついている安心仕様である。


これでは間違いようがないではないか。


ふふふ、これならやれるやれるぞ! 私にも料理が作れる!!


昂ぶる気持ちを抑え、レシピに向き合う。


きっちり材料を計って、手順通りに作れば誰でも美味しい焼菓子が作れるのだそうだ。


「計量は出来た、次は混ぜる作業」


さっくり混ぜる、と注意書きがあるけど……?


さっくり混ぜるって何? しっかりの間違いなのでは?


きっと誤字に違いないと、力いっぱいそして時間いっぱい生地をこねる。


力と時間がかかっていたほうが、なんだかちゃんと混ざりそうなので。


それから生地をなんとかレシピ通りの厚さに伸ばし、型を抜いて……


「前回私は焼きすぎて失敗したから……」


低音でゆっくり、焦げないようにクッキーを見ていれば成功するはず。


そしてその思いのままに焼き上げる。


「おお、見た目はちゃんとクッキー! 流石私」


ほどなくして焼き上がったモノに感動しつつ、自分を褒めた。


鼻をくすぐるいい香りに、整然と並ぶ型抜きされたほどよい焼き色のクッキー。


ほらやっぱり私はやればできる子じゃないか。


綺麗な焼き上がりに感動しつつ、さっそく出来上がったクッキーを口に含む。


かひゃい(硬い)


そう硬いのだ。口に含んだ物はおよそクッキーとは思えない強靭な硬度を誇っている。


それでもなんとか噛み砕こうとして歯をたてるが。


「ゴリッ」


と嫌な音がした。


ひゃが(歯が)!?」


私の歯より、クッキーの方が硬かった。


慌てて回復魔法を使い口の中を癒す。


「レシピ通りに作ったのになぜ……?」


いや、待て。何かの間違いで、今口に含んだ物だけが硬かったのかもしれない。


希望にすがるようにもう一枚を手に取り、両手で割ってみようとする。


「……硬い」


手で割れないほどでは決してない。ないのだがしかし。


「コイツを咀嚼するのは至難の業かもしれない」


ミルクとかに浸して食べるなら、なんとか噛めるかもしれない。味はまあ普通なので。しかし、それでは私が求めていたクッキーとは違うものである。


クッキーは口に入れた瞬間にサクッとしていてホロホロと口の中で崩れるのが理想形だ。


人生で初めて食べたクッキーがそんな感じだった。だからクッキーはサクホロでないと、クッキーとは言えないと思い続けている。


今回のレシピもその理想系に近いものが作れるレシピをもらったのに!!


サクホロというよりはガリゴリの物体が出来上がった。


「……つまり、また、失敗?」


ガクリと膝をついて敗北を噛み締める。


どうやら私は料理に関しては、やってもできない子らしい。


三度目の正直とか言うし、次頑張ればいい? いや、私は二度あることは三度ある、を信じている。何より犠牲になる食材に申し訳ない。


「……別に料理できなくても死なないし」


つまり私は、この弱点を克服することを諦めたのだ。この件以降、料理をする可能性を考えた時に、ある言葉が頭をよぎる。


「プロの作る料理って美味しいよね」


私の弱点を補うには、その道のプロに任せておけばいい。つまり私は一つ弱点を克服した? のだ。

書籍化します!

それもこれも読んで下さった皆様のおかげです!

誠にありがとうございます!!

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