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「次は妹の方、っと言っても妹じゃ無かったんだよ」

「はい?」

「イモットゥーリ・カトレッド嬢と呼ばれていた女は、母親共々カトレッド公爵を騙していた事が判明した」

「……はい?」


 予想外の事実に頬が引きつった。なんなのあいつら、居候の癖にあんなでかい顔していたの?


「カトレッド公爵の後妻にはね、結婚前から続いている愛人が居たんだよ。髪と目の色が公爵と同じ色の、公爵の血縁一般人がね」

「うわぁ」


 そう言えば勘当された私の叔父に当たる人が居るらしいのは聞いていた。相当素行が悪かった、と言う話も聞いている。


 義母は男爵の庶子でほぼ平民として暮らしていたらしいので、接触が有ったとしてもおかしくはない。しかし義母の素行なんてあの狸が調べて無い訳が無いのだが……


「公爵……宰相が言っていたのは、使えないと分かった以上、他所の種から育った雑草を育てる趣味は無い、だそうだよ」


 まあ、身に覚えが有ったから、そこに付け込まれた形になったのだろうが、出所は知って居たと言う事だ。大方王子と年齢が近いため使えると判断して手元に置いていただけに過ぎなかったと言った所か。


「イモットゥーリと後妻には、詐欺、窃盗、宰相殺害未遂と罪状が出ているね。全部受理される予定だよ」


 アネットーカと比べればショボいが、中々アレな事をしていたご様子。


「イモットゥーリも自身が公爵の娘でないことを理解した上で、公爵令嬢として振る舞って周囲を騙していた罪と、それを利用して宝飾品を公爵家から盗んでいた罪と言う認識でよろしいですか?」

「ああ、母親の方は姦通罪もだな」

「それと殺害未遂ですか」

「親子代わる代わる毎日のように宰相に差し入れを持って行っていたらしいし、証拠は充分すぎるほど集まったと言っていた」

「盛りに行ったの間違いでは?」

「間違いではないかな、あの親子は有るべき所に収まる様に命令する予定だ」


 つまりは義母は狸公爵の勘当した弟の妻に、妹はその娘として生きていく事となるのだろう。


「まあ国の宰相に毒を盛ったにしては大分温情が有りますね?」

「先の話とパターンは同じだよ」


 先の話、つまり姉とパターンが同じと言う事は、後々えげつない罰金刑と言うことであろう。

 こちらにしても情は持ち合わせていないので思う存分罪を償わせて下さい、である。


「つまりはカトレッド公爵令嬢では無くなってから、罪を問うんですよね? その……まあ私の血縁上の叔父に当たる人物も何かの犯罪を……?」

「違法薬物売買と人身売買、危険魔獣無許可捕獲と飼育、こっちは実行犯だね」


 どっかで聞いたオンパレードに頭を抱えたくなった。あの二人仲が悪いかと思いきや仲が良かったのか?


「……そんな所で繋がってましたか」

「大口顧客がラミーネト伯爵で、他にもあの親子と仲良しの貴族が何人か……って所だね」

「そうやってお仲間を増やしてましたか……」

「うん。あの親子は、愛人の大口依頼主がラミーネト伯爵家だとは知らなかったみたいだけどね。伯の方は愛人が元カトレッド公爵家の人間だとは知っていたみたいだけど、母子と関係があったのは知らなかったみたい」

「いや、どっちかが調べろよ案件ですけどね?」


 やベー事してるのに警戒心がザル過ぎる。知りもしない相手と違法なことをしてるのに、よく信用していたなと逆に感心する。


「更に違法薬物はラミーネト伯爵家の領地でしか取れない物を流していて、それを拝借して宰相に盛って亡き者にしようとしていた。便宜上、ミティの叔父と言わせて貰うが」


 サフィ様がこちらを見て良いか?と問い掛けているので軽くうなずいて肯定する。しかしアホか、アホなのか?私の叔父。伯爵家もアレだが、私を含めて血縁にまともな人間が居ない事に愕然とした。


「その叔父は宰相が亡き者になれば公爵家を乗っ取れると踏んでいたらしい」

「公爵が亡くなったとしても、世間的に正統な継承者は姉、ダメでも私が残って居ますが?」


 うちの国では女性が爵位を持つことは許されないが、継承は前任者の直系の子孫が優先される。つまり狸……カトレッド公爵には娘しか居ないが、私達の誰かのお婿さんが次の公爵継承権第一となる。


「その場合姉はさっさと伯爵家が養子にしていただろうね。さて、残されたミティはあの宰相が居ない公爵家を何とか出来た?」

「無理です!」


 これは力一杯言わせて貰う。なんせ私はあの家のヒエラルキー最下位である。継承問題でも目立ったら最後、何とかする前に何とかされていただろう。


「そうだろうと思ったけど、ずいぶん力一杯言うね」


 苦笑しながら殿下は私の頭を撫でる。中々に心地良いがセットが乱れるのでほどほどにしてほしい。


「まあそんな企みも有ったから公爵は排除の方向で動いていたんだろうね。二月(ふたつき)ほど前に二人を適当な理由で婚約者から外してくれと頼まれた」

「それであのどっちの王子でショーみたいな茶番を……?」

「いや、元々予定していたんだよ、お断りの材料にするためにね。ルビスも好みが面倒だから乗り気だったし。宰相は話が固まっていると思い込んでたみたいだけどね」

「実際婚約者は内定していたんですか?」

「公爵はそう思っていたみたい。そう勘違いさせる意図もあったけどね。僕は最初会った時から」


 コツンとおでこを合わせ視線を合わせる。それだけの事なのに心臓は早鐘を打つ。


「ミティと決めていたけどね?」


 私だって、初めて会った時に綺麗な天使のような顔に惹かれた。その後も婚約者候補として名を連ねた私達姉妹を、平等に扱ってくれて嬉しかったし。


 だって初めてだったんだもん。姉と妹と、同等に平等に扱ってくれる人は。この人は特別だと心の片隅では思っていたのに。


「……でも青いリボンの殿下はアネットーカといっぱい話してました」


 学園に入学後、姉を優先するサフィ様を見て、芽生えかけていた気持ちを私は知らない間に摘んでいた。

 育ててもきっと、惨めで寂しい思いをする、そう思って育てる事を止めてしまったんだと思う。


「ごめん、欺くためとは言え誠実じゃない態度だったと思うよ。ミティに横柄な態度を取って居た事も」


 ルビス殿下に理由を聞いていたため項垂れる姿に私は簡単に絆される。ふん、己の顔のよさと思いの重さに感謝するがよい。


「でも私が危ないからそうしてくれていたんですよね? だから」


 言い終わる前に今度は私からサフィ様の頬に唇を付けた。軽く触れる程度だったが、私にはこれでいっぱいいっぱいである。


「ありがとうございます」


 真っ赤になってお礼を言った。

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