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 再び妹が口を開いた。しかし妹よ、若干堂々巡りである。


「そうか、例えばどこがミスティーナ嬢より優れている?」


 隣で冷ややかな声を出さないで下さいサフィア殿下、さっきと違う意味で腰が抜けそうです。


「成績や、立ち振る舞い、身なり等ですわ」

「社交もです。ミスティーナは全く貴族の交流をしておりません!」


 妹、姉と続けて言う。おおう殿下方に負けない連携プレー! 普段仲が悪いのに、私をけなすためなら息ピッタリになるのがすごく笑える。笑えるが、隣からものすごい冷気が……温度差すごい。


「そうか、まず成績だが、廊下に張り出されるテスト結果での判断で間違いないか?」


 ルビス殿下が妹にそう、聞いて、妹は首を縦に振って肯定した。……何か嫌な流れになってきた。


「成績上位者は廊下に名前が張り出されるが、希望者は張り出しを拒否出来るのを知っているか?」


 冷めたままの声色でサフィア殿下が話す。自分の有能さをひけらかすのが是みたいなこの学園で、その制度を知っている人間は少ない。


 実際は低い身分の者が、身分は高いが頭が悪い、みたいなのに目をつけられたりとか因縁つけられたりするのを防ぐ制度だ。ルビス殿下が軽く説明していた。


 うん知ってる。


「ミスティーナ嬢は常に学年一位だった。名前の張り出しは無かったがな。貴女達は上位止まりだったか?」


 私、活用してましたし。


 講堂内にどよめきが走る。いやいやいや、真面目に授業受けてただけだから、孤高の存在過ぎて真面目に授業受ける時間があっただけだから。


 婚約者候補レースから外れ、姉と妹に障害物として認知されないための苦肉の策である。テストで手を抜けば良かった? いや、やるからには全力よ? 隠すのも全力だけど。


「信じられません、何故隠す必要が有るのですか」

「信じるも信じないも勝手だが、後で先生方に確認すればいいだけの、ただの事実だ」


 姉の発言に淡々とサフィア殿下が告げる。


「どうやらミスティーナ嬢は姉妹で争うことをしたくなかったみたいだからな」


 うん間違いではない、でも誤解を与えるような言い回しは止めてくれサフィア殿下! 案の定争いが嫌いな心優しいお方だ! とか、上と下の争いは醜かったもんなーとか私を持ち上げる感じの誤解が広がっている。


 違う違う、保身のためだから! いいように解釈しないで!!


「次、立ち振る舞いだが、本日ミスティーナ嬢は、可憐で優雅にドレスを着こなし、所作も同様だったと私には見えた。貴女達に勝るとも劣らないと思うが、しかし他の者の目には違って見えたかもしれない。本日ミスティーナ嬢が劣っていると思った者は挙手を」


 そんな前置きされて手を挙げるやつなんざいない。勝るとも劣らない、なんて逃げ道まで作りやがって。そしてここで手を挙げようものなら空気の読めないやつすぎて、海千山千の貴族社会で生きていけるとは思えない。


 長いものには巻かれた方がいいのである。多分講堂の中でもその意見が主流だろう、誰一人として挙手しなかった。


「いないようだな、次は身なりか?」


 サファイア殿下は言うなり、私の腰の拘束を解き、殿下と向かい合う形で肩に両手を置かれた。


「輝くような銀髪に宝石のような紫の瞳、賛辞は尽きないが……恥ずかしがり屋のミスティーナ嬢のために控えておこう」


 殿下が言いながらスルリと頭を撫でた。演技力凄いな、殿下から出た甘い空気を吸っている気がする。

 しかし演技だと分かっているけど、こういうの、止めてほしい。こういうの慣れてない、そして多分一生慣れない。


 赤くなっているであろう顔を隠すために俯いてから、失敗した事を悟った。これじゃあ恥ずかしがり屋を肯定してるみたいじゃないか!?


「容姿の良し悪しは人の好みによっても違うだろうが、私はミスティーナ嬢の事を好ましく思っている」


 他人事だったら、他人事だったのなら!! 脳内でヒューヒュー言いながら、ミスティーナ嬢の容姿、じゃなくてミスティーナ嬢の事を好ましいって言ってるワー、とか言ってる皆様に紛れるのに! むしろ私は本来そっちの住人である!


「おい、その辺にしておけ」


 呆れた顔でルビス殿下が止めに入るまであまーい雰囲気を出していた。これ演技だから、と思いながら、赤くなった頬を何とかすべく、表情筋に力を入れた。効果は有るかどうか知らないが。


「で、最後、社交だったか?」

「そ、そうですわ!ゆくゆく王妃になるのなら社交は必須です」

「陰ながら夫である殿下をお支えするために、妻となる者に取って大事な事です!」


 ソウダヨネー私孤高の存在だから社交とか苦手ヨーふむ、ここで私が肯定すれば事態はひっくり返るのではないだろうか?そう言えば私ハイヨロコンデ以降何も言っていない。


 声が通るように息を思いっきり吸い込もうとしたら、サフィア殿下が腰に回した手に力を入れた。


「社交ね、それこそ些末事だな?」


 私が気を取られている隙に、殿下はふんと鼻で笑って尊大そうに言い放つ。いや、社交大事、結構な大事!円滑な人間関係築くには社交結構大事!!!


 ざわざわと講堂内が騒がしくなる。そうだろう社交が些末事と言われたら自分達ですら些末なものとして扱われていると感じるからだ。


 いや、どーすんのこの空気、ちょっと殿下ぁぁぁぁ!?




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