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Lost Re;collection  作者: 大根沢庵
Chapter3 遥かなる予兆
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085  『捻れを解く機会』

「……ユウさん、どうしたんでしょうか」


「さぁ。キザな台詞を言ったはいい物の振り返って恥ずかしくなっちゃったんじゃないの?」


 数時間後。

 言葉通りの現象が起きてロビーの端っこにある机で沈んでいる中、本調子に戻ったアリサからそう言われて言葉の刃物が思いっきり突き刺さる。

 結構勢いよく言って恥ずかしくないと思ったのだけど、まさか振り返ってみるとここまでキザな台詞が恥ずかしくなる物とは……。


 そんな風に羞恥心を噛みしめている最中でもみんなの事は考えていた。

 みんなを助けると言ってしまった以上、もう目を逸らす事は許されないだろう。そしてサボる事も。と言ってもサボる気は元からないが。


 ――アリサが孤独から救われてる事は確かだ。って事は残るはネシアとの絡みだけ……。


 互いに互いを心配しているからこそ絡み捻れあってしまったのだろう。そのまま誰も関わろうとはしなかったからこうして現状まで進展してしまった。ならその絡みを直すのは誰になるのかって話になるけど――――。

 一にも二にもまずはネシアにコンタクトを取らなければいけない。明日は特に予定もないはずだし、上手い事復旧作業から抜け出して彼女の住むマンションまで行かなくては。


 ――試してみるしかないか……。と言っても、救う人自体は俺じゃないだろうけどなぁ……。


 そう思いながらも背もたれに寄りかかり天井を見た。ユウが直接割り込む事で解決できる程度の絡みならとっくのとうに他の誰かが解決してくれてるだろう。つまりアリサを救うのはネシアで、ネシアを救うのはアリサだ。

 ユウはその仲介役に徹するだけ。今のユウに出来る事なんてそれくらいだろう。


 何はともあれやるだけやるしか道はない。そう思い至って立ち上がった。関わると宣言してしまった以上逃れらてないし、見捨てられない。

 だからある程度のプランを決めて行動しようと考え始めた。

 例え上手く行かないとしても、絶対にどうにかしてあげたいから。



 ――――――――――



「えっと、確かこっちだっけ……」


 翌日。早朝から別の所で手伝って来ると言って作業を抜け出し、ユウは駆け足でネシアの住むマンションへと向かっていた。と言っても道順をほとんど覚えてないから感で進んでいるのだけど。

 見た事あるの繰り返しを続けながらもうろ覚えの道を進んで行った。

 ユウがつまづいた石階段を越え、印象的だった銅像が建てられた公園を越え、アリサがスパーキングしたケーキ屋を越え、そしてようやくマンションに辿り着く。


 出発してからここまでで大体五十分といった所だろうか。前回は三十分で着いたものの、まぁ、道中迷ってたりしたので当然の時間だ。

 長い迷子の末に辿り着いたマンションへ早速駆けつけるのだけど、そこで一番重大な事に気づいて立ち止まる。


 ――しまった。部屋の番号を見ておくの忘れてた!


 こうしてまた来るとは思っていなかったから何号室の部屋か戸惑い果てる。いや、正確には何階かは覚えているのだけど、何号室かを思い出せていない。

 だから三階のフロアで右へ左へと行き来しているとスマホに謎の着信が来る。何だろうと思って開いてみると、そこには短く番号だけが書かれていて。


「【五百五】って、これ……」


 その意味深な内容から誰がどんな目的で送ったのかを理解する。仮に十七小隊のみんなだとしても《A.F.F》で連絡してくるはずだし、それ以外で連絡先を交換しているのはクロストルとバーのマスターだけ。つまりこれを送ってくれた人と言うのは一人しかいない訳で。

 ユウは隠れやすい所を見つめるけど、どうせ見える所にはいないと諦めて呟いた。


「ありがと、ラディ」


 そう言って五百五号室まで移動し、インターホンを押した。っていうか文字さえ慣れてれば名前で判断できる訳だし普通にスマホで調べれば良かった気がする。

 とまぁ、そんな過ぎた事を考えているとネシアが私服で飛び出して来て。


「はいはーい。って、君は……」


「うぃっす」


 狙い通りネシアはユウを見た瞬間に驚いては玄関で立ち尽くした。そりゃ、前の別れ方とか諸々あってとても再会しそうな雰囲気じゃなかったし、そんな反応になっても仕方ないだろう。

 でもユウは気軽に挨拶をすると彼女もすぐに対応して表情を入れ替えた。


「いいよ。上がって」


「お邪魔しまーす」


 そうしてネシアは家に上げてくれると颯爽とお茶を出してくれる。次に互いに向き合って座ると彼女の方から話だし、既に要件の見え透いている事を質問される。だから素直に答える訳だけど、ネシアはその答えに少しばかり驚愕して。


「で、一人でここに来たって事はアリサの事でしょ?  何か、あったの?」


「何かあったって言うよりかは既に起こってたって言った方がいいかな。……ネシアはあの時に助けてあげてって言った。でも、実際にアリサは既に孤独からは救われてたんだよ」


「え?」


「うちの隊長であるリコリスが既に手を差し伸べてくれてた。そのおかげで仲間に囲まれて、もう孤独はないらしい」


 心配そうな表情はすぐに驚愕へ変わり、そして次第と普通の表情へ戻って行く。あれだけ心配してたアリサが既に救われてると聞いたら驚くだろうし、何より安心するだろう。だからネシアは安どのため息をついた。

 が、ユウはそれを報告する為に来たんじゃない。


「でも問題が一つだけある」


「それって?」


「……二人の間にある、感情のもつれだ」


「――――」


 すると今度は面を食らった様な表情を浮かべる。やっぱりアリサがああなってしまった事や自分が大怪我をしてしまった事を悔やんでいるのだろう。奥歯を噛みしめている。

 やがてネシアは問いかけた。


「どういう、事?」


「アリサはずっと自分のせいでネシアがこうなったって悔やんでるみたいなんだ。そしてネシアは戦えない事が辛いと思い込んでる」


「……!!」


「だから俺に出来る事は二人を引き合わせる。それしか出来ない」


 最初こそは自分で何とかしようと思っていた。でも違うんだ。この問題は二人で解決するからこそ意味がある。というより、それじゃなければ意味がない。

 あの時みんなも赤の他人も助けると言った。その中には当然ネシアも混ざっている訳で、もしアリサのいう事が正しいのならネシアの事も助けてやりたい。それがユウの抱いた思いだ。だから謝らなくちゃいけなかった。


「結果的に、助けてほしいってネシアの想いには答えられない。でも、本当にアリサを助けたいのなら、会って話してやってくれないか。そして、アリサの本音を引きずり出して欲しい」


「無理だよ。アリサは私の事を嫌ってる。会ったってどうせ、またケーキを顔面にスパーキングされて終わるだけだし……」


「誰よりもアリサの事を知ってるネシアにしか出来ない事なんだ! そして俺はアリサの事も、みんなの事も、ネシアの事もまだ何も知らない。だから、こうして介入する事しか出来ない」


「…………」


 孤独から救うと言う点でならユウでも救う事が出来ただろう。でも、それは既にリコリスが終わらせている。ならユウに出来る事なんてもうこれくらいしかない。

 しかし偏に知らないと言っても何もかもを理解してない訳じゃない。互いをどう思ってるかなんて、よく分かってる。


「それに、嫌ってるって事はないんじゃないか」


「どういう事?」


「俺はアリサの強がりだって見る。ネシアに会うと嫌な思いをするんじゃないかって思ってるんじゃないかなだからあんなツンツンした態度をするんだと思う」


 前に言われた通りアリサは強がるところがある。そんなの、大丈夫だって言われながらあんな暗い表情をされれば一発で分かる事だ。

 どうにかしたいって、もっと思ってしまう。

 ユウは身を乗り出すと押し気でネシアに訴える。


「ネシアにしか解決できない事なんだ! 誰よりもアリサの事を知ってる、ネシアしか!」


「私にしか、出来ない事……」


「そう」


 もし他の人がレジスタンス時代のアリサを知っていたなら話は変わっただろう。でも話を聞いた感じじゃそんな人はいなさそうだし、六年も戦闘を経験して一番長く寄り添ったのはネシアだけだ。

 これでどっちを選ぶかによって結末は大きく変わるだろう。停滞か、進展か。


「アリサに会って思ってる事、全部ぶちまけてやってくれないか。向こうももうそのつもりで覚悟は固めてる」


「えっ。今、覚悟は固めてるって!?」


「俺は二人を引き合わせる為に。――アリサもネシアも真の意味で救う為にここにいる。だから、その為の布石は既に打ってある」


「……強欲だね」


「そうかな?」


 みんなの過去を聞いて決意出来たんだ。例え自分の手で解決できない物だとしても、最初は互いに否定していたのだとしても、それでも救える手段があるのならそれを使いたい。その為には努力を惜しんじゃいけない。

 と言っても、後は彼女がどう選択するかだけだが。……そんな心配はいらなかった様子。


「……ここまでされてその思いを踏みにじるのは、私の性には合わないかな」


「って事は会ってくれるのか?」


「こんなに頑張ってくれてちゃね。救われなきゃ君が報われないって物だよ」


「……!」


 そう言われた瞬間から全力でガッツポーズを決める。その動作を見てネシアは少しだけ苦笑いを浮かべる。

 今までずっとどうするべきかと考えて来たけど、上手く行って本当に良かった。これで後は二人を指定した場所で会わせて話し合いをさせるだけ。それでどんな結果が生まれるのかは更に分岐していく訳だけど、それでも悪い結果にはならないだろう。


 これで残るはみんなの事だろうか。みんなも救うと言ってしまった以上、諦める訳にはいかない。リコリスはみんなの希望みたいな存在になれているのだ。なら、ユウだって少しくらいそれを目指したって罰は当たらないだろう。

 そう考えているとネシアは軽く頭を下げる。


「ありがとう。たった三日だけど、かなり苦労したでしょ」


「まぁね。最初は疑問から始まり、追求して追求して、確信に迫って、覚悟して、こうして来てる訳だから。でも、救われるのならそれで俺も救われるよ」


 最近ずっと力を入れていたせいか気を抜いた瞬間にうなだれる。まぁ、力を入れると言っても物理的にではないのだけど。

 やがてネシアも調子が戻ったようで、くすっと笑うと言った。


「じゃあ、アリサと会えるのはどれくらいになるのかな?」


「こっちにも色々予定があるからなぁ。最低でも二日だと思う」


「OK。それまでの間には覚悟しとくよ」


 そう言うとネシアは楽しそうな表情を浮かべてグッドサインをした。

 やっぱり嬉しいんだ。アリサに会える事が。そりゃ、ずっと捻れた関係だったのを直すいい機会なのだ。この機を逃せる訳がないだろう。


 でも、ユウはまだ知らなかった。まだまだ問題が山積みなんだっていう現実を。

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