表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Lost Re;collection  作者: 大根沢庵
Chapter2 始まりの刻限
73/445

072  『作戦終了』

 リコリスが神速の蹴りを繰り出したのに対し、魔術師の彼女はバリアを何重にも出してリコリスの蹴りを防いでみせた。……いや、違う。あれは何十や場合によっては何百にも重ねた空気の膜か。それは連鎖して反発してはバネの様な役割を果たし、リコリスが突っ込んで来た時と同じ速度で跳ね返した。

 それによって途轍もない速度でビルの一角へ激突した。


「ッ!?」


「リコリス!!」


 コンクリートの壁を突き破っては煙を出現させ、内部の様子が見えなくなってしまう。だからより一層氷を引き剥しつつもいち早く彼女の気を引くようにと抗い始める。

 けれど建物の向かい側から次々とリベレーターが出現しては攻撃し始め、銃を基本に遠距離の武装を持っている人はそれぞれで攻撃した。それらを全て同じ空気の膜で受け止めては跳ね返す。


 それで何人かがやられてもまた次の人が出て来て攻撃を続ける。そんな風にして彼女はともかく火災旋風へ向かっていく正規軍を倒し、何とか防衛する事には成功した。

 だからこそ優しい彼女は激怒する。


「お前、よくも……!!」


 右手を地面に触れさせると土を操っては巨大な鎌を作り攻撃する。しかしリベレーター側は防御担当の人も沢山いる訳で、その人達が前に出ると一斉に武装を展開して鎌を防いだ。

 瞬間、リコリスから無線が入って言う通りにする。


『――ユウ、右手を上げて!』


「ッ!!」


 精一杯の力を込めて右腕の所だけ氷を打ち砕いた。そのせいで相応の皮膚が剥されて激痛が走るけど、ここまで来たらもう関係ない。やれるだけやる。それだけが今ここで生き残れる唯一の手段なのだから。

 すると煙の中からある物が投げられ、見えていないはずなのにリコリスはユウへある物を渡した。そして右手に銀色の筒を掴むと何を狙っているのかを理解する。


 これはリコリスの持っていた光線剣だ。並大抵の物ならなんだって断ち切れるビームサーベル――――。理解した瞬間からちゃんとした持ち手に変えてスイッチをONにし、出現した光線を彼女の脳天目掛けて全力で振り下ろした。


「なにっ!?」


 しかしブォン、という微かな音に気付いた彼女は間一髪で回避して飛び下がった。その隙を突いてリコリスが接近しては氷を粉々に砕いてユウを解放する。

 だから力なく前に倒れると抱いて支えてくれた。


「リコリスっ……!」


「よしよし、よく頑張ったね! 後は私達に任せんしゃい!」


 そう言うとユウを立たせて頭を撫でた。それから光線剣を渡すと早速通常出力で光線を出しながらも彼女の方へと歩み寄った。けれど彼女は魔術師。恐らく全ての属性を使える魔術師相手にリコリスはどう戦う気なのだろう。

 と考えていたのだけど、彼女はリコリスを視界に入れる直前に突っ込んで来た戦車から飛び退いた。その他にも離れた所から複数台の戦車が登場する。


「なっ、戦車!?」


「そりゃ戦車の一台や二台はああるよ」


「じゃあなんで……」


『忙しかったからな!』


 すると今度は別の方向から普通とは言えない戦車が突っ込んできて、それと同時にガリラッタが通信越しでそう言った。だからまさかと思って振り向くのだけど、まぁ、そのまさかが的中してしまって。

 戦車の入り口から顔を出すとガリラッタは軽く手を振った。


「なに、あれ?」


「アレはガリラッタの特殊武装で、名前は搭乗式機動戦車ユニット:ネオ・タイタン。複数のパーツを組み合わせて三か月夜通しで作ったのよ」


「特殊武装!?」


 まさかガリラッタの場合は戦車が特殊武装とでもいうのか。普通なら人が持てる重機とかを特殊武装と呼ぶけど、彼の場合は何というか、えらく型破りだと言うか……。

 そこは色んな人がいると決めつけて戦車が来た事である作戦を思いつく。のだけど、それはアリサによって先に提案された。


『ねぇ、戦車が来たのならあいつをどうにか出来ない?』


『状況は把握してる。元々そのつもりで来たんだ。全員、離れてくれ!』


 するとリベレーターが離れた瞬間から戦車の集中砲火が始まり、胴体ではなく盛り上がった地面を狙ってコンクリートを砕き始めた。それだけじゃなく、爆発物なら片っ端から投げつけて地面を割らせようとする。


 咄嗟に火災旋風の方へ振り向くけど、かなりキツイみたいだった。さっきよりも炎の旋風が不安定になり大きく揺れ始めている。せめて制御できなくなる前までには倒れてくれればいいのだけど、あとどれくらいの火力を集めればいいかも分からない状況だ。いつ倒せるかなんて到底予測できない。

 だから少しでも倒す時間を稼ぐ為にリコリスと一緒に魔術師の彼女へ向き直った。


「ヘリが来れば何とかなると思うから、それまで向こうで踏ん張るよ」


「ヘリ?」


「今、ふんだんに爆発物を積んだ攻撃ヘリがこっちに向かってる。それさえ来れば何とかなるはず」


「なるほど」


 しかし全員で戦っても勝てる相手ではない。それこそ今火災旋風の制御に手間取っている魔術師全員を集めて戦わない限り。そこまでしてようやく勝機の蜃気楼が薄っすらと見える範囲だ。

 でも超大型を早く片付ける事が出来ればそれもクリアされる。正規軍にとって超大型は切り札にも近い存在のはず。それが崩れたのなら奴らに待っているのは掃討だけだ。彼女もリベレーターの全勢力を一度に相手は出来まい。


 ユウはリコリスの指示通りアリサ達と合流しようと足を動かした。けれどその瞬間に背後から氷の轟音が聞こえ、振り返ると超巨大な氷が生成されていて、最早氷河とも呼べるソレは彼女の強さを表していた。

 あれを一瞬にして生成する程の実力を持つ魔術師。そりゃ、確かに機械生命体の装甲すらも撃ち抜く訳だ。


「リコリス!」


「大丈夫! 大丈夫だから走って!!」


 不安になって名前を叫ぶのだけど、リコリスはそう言って突撃してしまう。直後に大爆発が起きては激しい風が全身を叩きつけた。大丈夫ならいいが、彼女の実力を知っているからこそ不安になってしまう。何よりも不可解な謎が彼女に残されていたから。

 そうしていると地面は今にも崩れそうなくらいボロボロになっていて、さっきよりも地面がせりあがっていた。もうすぐ超大型が倒れるという兆しだろうか。


 でもそれだけじゃ足りない。粉々になった破片が弾の軌道を少しでも逸らして爆破の威力を弱めている様だった。爆破だけじゃなく外側からどうにかして粉々になったアスファルトを取り除かなきゃいけない。しかしそれをやっている時間は――――。

 瞬間、ガリラッタから通信が入る。


『ユウ、お前の使う電撃でどうにか出来ないか?』


「どうにかしろと申されても……! まぁやるだけやるけどさっ!!」


 魔術師なら電気を使い磁力で様々な物を持ちあげられるだろう。鉄のパーツを初めとしてアスファルトも持ち上げられるはず。

 けれどユウの場合は電撃を放つだけだ。そこに磁力は存在するだろうけど持ち上げて移動させられる程の操作能力はない。とはいっても結局やらなきゃ何も分からない訳で。


『ちょっとでも持ち上げてくれればそれで構わない! 後はこっちに任せろ!』


「ったく、酷い賭けだ!!」


 そう言いながらも剣を抜いてゴルフスイングの様に振り上げ、激しい電撃を纏わせてはやや斜め上に斬撃を放った。すると電撃は宙を駆け抜けて少しの磁力だけでもアスファルトを持ち上げる。その瞬間を逃さなかったガリラッタ達は一点に狙いを定めた集中砲火を行って隙間に弾を撃ちこんだ。

 直後に途轍もない爆風と轟音がユウを叩いて思いっきり吹き飛ぶ。


「へぶっ!?」


 すると爆破地点を初めに亀裂が走っていき、鉄とアスファルトが擦れる耳障りな音を轟かせながらも地面が次第と盛り上がって行く。それに比例して超大型の胴体も傾いて行った。

 いける。そう思った。もう少しで火災旋風に触れそうだったからこそ、残り少しでも傾いてくれれば、残りは上半身の重力と風に引っ張られて自動で巻き込まれるはず。そんな憶測は完璧で超大型は火災旋風に触れては巻き込まれていった。


 すると旋風の形が大きく歪に変わり、超大型の先端を呑み込んでは何十万トンもあるかも分からない巨体を少しずつ呑み込んで行った。その度に先端部分からパーツが焼け落ちては離れ、旋風に呑まれて上空から吐き出される。

 呑まれるのは半径百メートル越えの火災旋風なのだ。超大型は為す術もなく破壊されていく。

 イシェスタの予測は全て完璧だったと言う訳だ。


「よっし! そのまま飲まれちまえ!」


「行け~っ!!」


 周囲に隠れていたリベレーターは顔を出して粉々になって行く超大型を見る。あれだけ硬かった超大型が為す術もなく粉々にされていくのだ。相手をしていた人達から見たらこれ程なまでに嬉しい事はないだろう。

 超大型が壊れていく様を全てのリベレーターが喜んでいた。通信の向こう側でも歓喜する声が届いて来る。


 機械生命体が壊れたと判断する要素はたった一つ。ソナーに反応が出るかどうかだ。奴らは電力で動いているのだから、ショートしたり電力が切断されれば自動的に信号も機能しなくなる。ネットワークを切断されれば話は少しだけ変わって来るだろうけど、信号に関しては電力がある限りずっと発信し続けるはず。プレミアもそうであった訳だし。

 つまり超大型の反応が無くなればこっちの勝利という訳だ。


「行け……!」


 ユウもそう呟いていち早く超大型の反応がなくなる事を願った。あまり長引かせるとイシェスタ達の体力が持たないだろうし、火災旋風を消滅させる前に力尽きては暴走してこの街を破壊しかねない。まぁ、周囲の酸素がなくなって行けば小さくなると思うし、大丈夫だとは思いたいけど。

 やがて内部から巨大なモノが抜かれると完全に超大型の信号が途絶えた。だからその瞬間にアリサが鋭く叫ぶ。


『――止めて!』


『はいっ!!』


 すると通信越しからイシェスタ達の咆哮が聞こえ、巨大な火災旋風は大きく形が揺らいでは所々で途切れて消滅しそうになっていた。

 まだ詳しくは分からないけど、火災旋風というのは個々の炎が空気中の酸素を消費し、周囲から空気を取り込む事で局地的な上昇気流が発生して、そこから空気が上層へ吐き出される事で炎を伴う旋風となる。つまりその根源、空気の流れを完全に遮断してしまえば――――。


 瞬間、火災旋風は突如消滅し、灰色の空に大量の火の粉が舞い上がった。その光景は実に幻想的ではあったものの、不純物が混じっていたせいで考え方が変わっていく。

 火災旋風は超大型の部品を呑み込んでいたのだ。つまりそれが無くなったという事は、空中に取り残されたパーツが落下してくるという事になる。


 だからこそ、空に放たれた大量のパーツはユウ達に向かって大量に降り注いだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ