068 『救出活動』
「そう言えば武装って二つありませんでした?」
「色々あって片方だけになった。理由は聞かないでくれると助かる!」
二人で武装に乗りながらも超大型の所まで移動する。
バッテリーを確認してなかったからもうすぐ切れるんじゃないかと思ってたけど、あそこまで酷使しても全然余裕なのだから驚愕だ。流石超大容量バッテリーといった所だろうか。
ユウが前に座り、後ろからイシェスタが抱き着く形で空を飛び続ける。
にしてもボロボロになった直後だと言うのにまた戦線へ赴くだなんて、自分で言うのもなんだけど十分くるってるだろう。と言っても既にリコリスから似たような事は言われてるけど。
地上から狙われない様に上空へ上がると超大型の様子を見た。
最初に見た時と比べればかなりボロボロになっていたけど、何かしらの力で周囲の物を取り込んだ姿は既に原型を失くしていた。瓦礫を掻き集めては密着させて装甲を分厚くし、同時にその装甲を使った攻撃でリベレーターを蹴散らしている様子。
だからその様子を見てユウは圧巻の声を上げる。
「すっご、ここまで衝撃波が来るのか……」
「流石にここまで来るとは思いませんでしたね」
イシェスタもその威力に驚きを隠しきれない様子。まぁ、今の超大型の姿は機械生命体というよりかは怪物だし、そんな反応になっても当然な気もするけど。
しかしその中にアリサ達を見付けた瞬間から二人の態度は変わる事となる。
「――ユウさん、あれ!」
そうして指を差すからその先を辿った。するととある高台にガリラッタが寝そべっているのが見えて、狙撃銃を構えて隙を伺っている様だった。だからユウは予定を変更して彼に近づくと即座にユウ達に気づいてくれる。
でも、ユウがいる事に驚愕する事はなくて。
「イシェスタ! ってか二人ともけがの具合は大丈夫なのか!?」
「問題ない。傷はあらかた塞がった。――状況は?」
本当なら他にも聞きたい事が山ほどあったはずだ。だってユウがここにいるのは明らかにイレギュラーな事だし、あれだけアリサに釘を刺されたのだ。戦場に来るはずがないと思われても仕方がない。……それなのに彼は分かっていたかのようにユウを見ても驚かなかった。
やがて問いかけるとすぐに状況を教えてくれる。
「下の状況が安定したから超大型に集中してるって感じだ。でも見た通り攻撃は通らないし威力は倍になって返って来る。要するに苦戦してるって感じだ。で、一番気になるリコリスの事だけど――――」
「その様子じゃ見つかってないみたいですね……」
「ああ。周囲にはいない。となると可能性があるのはあいつの内部だ」
「内部って、アレ入れんの……?」
そう言われて超大型を見た。最初に見た時の姿なら入れそうな気もしたけど、瓦礫で化け物を模った今じゃ不可能に思える。だって隙間はある物のその先に内部へと繋がる通路があるとは思えないし、本音を言うのなら近寄りたくもない。
せめて装甲を剥せればいいのだけど……そこから先はループの繰り返しだ。
ユウ達が付けている《A.F.F》には熱源探知がある。生きている限り低体温症だったとしても発見は出来るはずだ。つまりそれでも発見できないという事は可能性は二つ。
死んで体が冷たくなったから反応されなかったか、本当に内部にいるのか。出来れば後者を信じたい所だけどあの中がどうなっているのかなんて分からない。もしかしたら普通の建物みたいになってるのかもしれないし、内部にも機械生命体がいるかも知れない。
そうなれば一切補給できない状況で囲まれる事となる。いくらリコリスと言えどそこまでされると無事でいられるかどうか。
「あ、テスさん……」
イシェスタがそう呟くから超大型の下を見ると、テスが武装を上手く利用して壁を走り攻撃しているのが見えた。そして大きく飛び上がると武装の形を鞭から弓に変え、蒼色の矢を放って大爆発を引き起こさせる。
その他にも何人ものリベレーターが交戦していた。空を飛んでる人が誰も居ないという事は、ほとんどの人がやられたかバッテリー切れなのだろう。
となればこの中で空を飛べるのはユウのみ。もし可能性があるのなら――――。そう考えるのは当然な訳で、ガリラッタはすぐに指示を出した。
ユウも嫌だったけど渋々受け入れる。
「ユウ。上から見て来てくれないか」
「これでも病み上がりなんですケド……。まぁ、りょーかい」
一応イシェスタを下してから通信を開いて飛び上がった。するとガリラッタは即座にみんなへ通信を入れてはユウとイシェスタが来た事を伝える。最初はアリサ辺りから厳しい事を言われるのかと思ったけど、意外とみんな驚かずに威勢よく返事してくれる。
でも、怒られはしないもののアリサから問いかけられて。
『ユウ。ここに来たからには覚悟は決まってるんでしょうね?』
「……ああ。既に覚悟は決まってる。元より覚悟出来なきゃ来ないって!」
そう言って思いっきり浮かび上がった。
気絶する前までのユウならまだ仮初の覚悟だったから動機には不十分だっただろう。でも、今だけは違う。みんなと一緒にいたいから、そのための覚悟なら抱いているから、だからこそここに来れる。
地上でテス達が注意をひきつける中、ユウは空高くまで飛び上がって超大型を見下ろした。
そして、見る。
「――――!!」
下から見た時は完全にゴジラとかそこら辺の化け物だったけど、頭頂部は意外とそのまま当時のまま建物の屋上っぽいまま残っていた。まぁ、瓦礫を寄せ集めて外見だけそうしてるのだから当たり前な気もするけど。
しかしその屋上に人影が倒れているのを見てユウは咄嗟に降下した。
『どうだ。何か見えるか?』
「人が倒れてる! あれは……リコリス!?」
長い銀髪に黒のパーカー。そして重そうな重機。それだけでもリコリスだと判断するのは容易だった。だからこそユウは即座に降りて彼女を救出しようと近寄った。みんなもユウの言葉を聞いて化け物の体を登ろうとしているみたいで、テスは武装を上手く利用して上り始めているみたいだった。
やがて滑り込むとリコリスの体を持ちあげる。
「リコリス! 大丈夫か、リコリス!!」
額からの出血が酷い。それだけじゃなく体中に打撲の跡があるし、左腕の骨も折れているみたいだった。ユウ程ではないとはいえ致命傷である事には変わりない。だからお姫様抱っこをするとこの場から離れようと走り出す。
けれどリコリスが餌なのは既に分かってる。だから当然逃走を図るユウの前に大型の機械生命体が立ち塞がった。
「ったく、こんな時に……!」
息はある物のかなり薄い。意識も朦朧としているみたいだし、あまり長引かせると最悪な結果を迎えるかも知れない。だったらいっその事投げ飛ばしてイシェスタ達に拾ってもらうくらいしか……。
そう思っているとリコリスは薄く目を開けてユウを見る。
「ゆう……?」
「目覚めたか。起きてもらった所悪いけど、ちょっと取り込んでてさ。掴まれる様なら掴っててくれないか」
すると彼女は顔を動かして立ちはだかる大型を見た。
せめて片腕だけでも使えたならよかったけど、リコリスの容体的にも片腕で支えるのはあまりよくない。だから両腕で抱えながらもどうするか迷っていると声をかけられて。
「駄目……」
「え?」
「戦っちゃ、ダメ……!」
と言われても戦わなきゃ勝てない訳で、そう簡単に逃してくれるとも思えない。武装があれば比較的簡単んに逃れられるとは思うが確実に遠距離攻撃を持っているはず。そんな中で飛ぼう物なら撃ち落とされるのが末路。
となれば残った方法は――――、
「リコリス。悪いけどよく掴ってて」
そう言うとリコリスは言う通りに肩へ手を回してしがみ付いてくれる。戦うのが駄目なら逃げの一手しかない。となればその手法は必然的に偏る訳で。
ユウは屈むと全力で前へと走り出した。そしてリコリスは目を瞑って更にユウへとしがみ付く。
「――ッ!!」
やがて大型が攻撃できる間合いの直前まで接近すると大きく振りかぶったのを見て足元に滑り込み、武装で腕を押さえつつも股の下をくぐった。二体目が振り向きざまに攻撃するのにも武装で対応して外に身を投げ出そうとする。
すると大型は手に持った武器を投げつけて逃げようとするユウの背中を切り裂いた。だから足がもつれるけど、せめてリコリスだけはと踏ん張る。
「ユウ!」
「大丈夫。大丈夫だ……ッ!」
背中から血を流しつつもそう答える。武装の手摺を掴んで移動し始めるともう一体も同じ様に武器を振りかざし、照準を絞って思いっきり投げつけた。だから激しい衝撃に手摺から手を離してしまい装甲の側面へと弾き落とされる。
――クソッ!
脳裏でそう叫びながらも瓦礫でデコボコした装甲にぶつかり、最低限の動きでダメージを逃せるように体を動かした。
側面が平らだったら滑る事も可能だったのだけど、瓦礫を使っているからデコボコしている上にたまに鉄筋が露出している。重力に従って落下する中で足を付けるだなんて自殺行為だ。
でもこれでにげられるのなら。そう考える。
しかし敵側がそんな事を許してくれる訳もなく、せっかく餌で釣れたのだから当然逃げる事なんて出来ない。小さなパーツで継ぎ接いで作られた腕が伸びて来てはユウの足を掴んで思いっきり振り上げる。
「な、うおっ!?」
されるがまま振り回されるからリコリスだけでも助けようかと思い、手を離してイシェスタに託そうとする。けれどその瞬間に這い上がって来たテスの武装によって腕は断ち切られ、ユウはもう一度空に投げ出された。
だから武装を呼び寄せて手摺を掴む。
するとテスは鞭のようにしなる武装で追撃の腕を次々と切り裂き、二人が逃げる時間を稼いでくれる。ガリラッタも遠くから狙撃で援護し、駆けつけたアリサとイシェスタも同じく銃で腕を撃ち落としてくれる。だから全力出力で逃げるのだけど、最後の一撃と言わんばかりのビームを受けてしまって。
「しまっ――――」
ビームはエンジンを噴き出す所に直撃したようで、咄嗟にガードしたユウの武装は半分が粉々に破壊される。
そのせいで出力は大幅ダウン。反動で吹き飛ばされたユウは黒煙を上げながらも落下する武装にしがみ付いて難を逃れようとした。
やがて、ビームのもう一撃がユウの左腕を狙って――――。




