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Lost Re;collection  作者: 大根沢庵
Chapter2 始まりの刻限
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055  『敵の策略』

「らあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」


 そんな叫び声と共に光線剣を握り締め、超大型の胴体を少しでも切り裂こうとする。でも今回に限って装甲が通常とは違う作りで製造しているらしく、大体の物なら切断できる光線剣でも完全に断ち切る事は出来なかった。

 だから振り抜いてもそこまで大きな切断面を見せてはくれない。


 ――アークでも斬れない!?


 発射される幾つものパーツを切断しながらも空を飛びまわった。離れれば巨大な腕で攻撃されるし、近づけば様々な部品やパーツを弾幕代わりに発射してくる。正直言ってかなり面倒くさい部類の機械生命体だ。

 他の隊長も何とかして攻撃するけど、歯が立たない事に舌打ちを漏らしていた。


「ったく、何で今回に限ってこんなに硬いんだ!!」


「仕方ないでしょ。今回ばかりは特別版なんだから!」


 そう返しつつも隙を見て攻撃する。銃弾が効かないからこそこうして近接で攻撃している訳なのだけど、それでも期待している様な効果は望めない。

 奴を倒すのならこの街を半壊させる様な火力を一点に集中させなければ不可能だろう。


 すると背後から光の一閃が駆け抜け、着弾地点から大爆発を引き起こしては超大型の体を揺さぶる程の衝撃波を生んだ。だからそんな攻撃が放たれるだなんて思いもしなくて振り返る。


「なっ、何!?」


 そうして振り返った先には一人の男がいて、その人は特殊な形をした銃を“担いでいた”。それも普通ならかなりの重量がありそうな物を。

 気を取られて見ていると無意識に言葉が零れ、その質問に対して他の隊長が答えてくれた。


「あの人って、確か……」


「第一大隊の隊長だよ。名前は、サーク。武器は超電磁砲だったはずだ」


「超電磁砲って、レールガンの事だよね?」


「ああ。試作か製品だかは知らないけどな」


 噂にしか聞かなかったけど、まさかこんなところでお目に掛かれるだなんて。いやまぁ隊長である以上ここにいた方が当たり前みたいな感じなのだけど。

 にしてもレールガンをぶっ放す隊長とは何と大雑把な事か。それをさせる程の技術も大したものだ。……戦闘中に呆然としていれば攻撃されるのは当然で、微かな風圧を感じ取ってリコリスは即座に振り下ろされた拳を回避した。


「っと、危ない。集中しなきゃ」


「第一大隊の隊長も揃ったしな! おし、行くぞ!」


 他の隊長がそう言うと一気に周囲の士気も上がって一斉に咆哮した。リコリスも声を上げると光線の出力を上げて伸びて来る腕を斬り刻んだ。さっきまでは斬れなかった装甲だけど、出力を上げた事によって溶かしては様々な部品を空中にバラ巻いていく。

 地上にいた隊長達もやる気が出た様で、自分達の届く範囲で攻撃を続けた。それも直立型だから木こりの様に同じところだけを攻撃していく。


 いくら高威力のレールガンとは言えチャージする時間も掛かるだろうし、連発は出来ないだろう。だからリコリス達でどうにか時間を稼がないと――――。

 そう思っていると脇の下を光の光線が駆け抜けて驚愕した。


「このまま何とか――――うおぉッ!?」


「れ、連発出来るんだな……」


 高威力だから連発出来ないと思っていたけどそうじゃないらしい。よく見るとなんかバッテリーみたいなのに接続しているし、電力さえあれば素早く撃てるという事なのだろう。少しだけ希望を見付けた気がして己を鼓舞した。


 ――行ける。まだ確信はないけど、行ける……!


 武装の出力を上げると更に速度を出して空を飛び始めた。同時にもっと活躍出来る様に攻撃をし続ける。

 どこまで行けるかは分からないけど、それでも。

 だからずっと戦った。きっと早く倒せるかも知れないから――――。



 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



「ッおらあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 ユウの振り下ろした刃が機械生命体の脳天を割り、内部の配線を断ち切った。それによって残りは四体となり、ユウは放電すると体を捻って飛ぶ電撃を放つ。直後に他の四体を内側からショートさせて身動きをさせなくさせた。

 それである程度は重くなった体を引きずって周囲を確認し、一先ず安全を確保した瞬間から剣を杖に寄りかかった。


「と、とりあえず周囲はこれで全員か……?」


 《A.F.F》の熱源探知にも反応はない。これで配置付近の上位のレジスタンスは小隊側と合流した人以外は移動させられただろうか。ここ以外にも複数の小隊がいると言うし、そこでの救出活動もあらかた終わったはず。

 だから続けて機械生命体用のソナーを起動するのだけど、まぁ、結果は予想通りな訳で。


 眼に見えないだけで周囲に囲まれている。それも総数は十四といった所。普通なら為す術もなく絶望する所だけど、ユウは武装を真横に移動させると手摺を掴んで浮上させた。

 その瞬間からM4A1を真下に向けて乱射し、集まって来る機械生命体達を撃ち尽くす。


「逃したのは本部の警備兵とレジスタンスが倒してくれるとして、問題はあいつか……」


 安全な上空に移動してから前を見た。超大型機械生命体と戦うリコリス達を。

 小隊側に流れ込んだ小型もみんなが対処してくれてるはず。これで取り逃しがない限りようやく超大型に集中できるという訳だ。

 ……カミサマが微笑んでくれるなら、だけど。


「まぁ、そう簡単には行かないよな」


 進行時間的にもまだ軍隊が辿り着けるはずがない。だからこそ飛行できるタイプの機械生命体が先行して突撃してくる。みんなも既に気づいている様で、空を見上げてはこっちに近づいて来る小型達を見つめていた。

 ユウは移動するとテスの隣で着地した。


「一応聞くけど、状況は?」


「ユウ、戻ったか。……見ての通りだ。飛行できるタイプが先に近づき攻撃。時間を稼いでいる間に進軍してる本隊が追い詰めるってパターンだろうよ」


「あれを撃ち落とす事は出来ないのか?」


「スナイパーライフルを持った連中が既にやってる」


 そう問いかけるとテスは人差し指をある方向に向け、ユウはその先を辿って誰がいるかを見た。するとその先には斜めの所に寝転がっているガリラッタがいて、重そうな狙撃銃を広げながらも飛行タイプの機械生命体を撃ち落としていた。それもかなりのペースでかなりの数を。


「え、ガリラッタって狙撃銃使えるの?」


「そりゃあいつはこの隊随一の狙撃者だからな」


「えっ!?」


「持ってる武器はWA2000。狙いは必中、相手は絶命。そこそこの腕を持ってる。……といっても、その腕前もリベレーターの狙撃者の中じゃ当然だけどな」


「はぇ~……」


 意外と凄い人物だった事に驚愕する。だって日頃のテンションとかから機関銃をぶっ放してる様な印象だし、とてもじゃないけど狙撃銃を扱えるような体には見えないから。

 筋肉モリモリだからもっと重いのを持ってるものだと思ってた。

 テスはそんな考えを見抜いて軽く笑って見せる。


「あんなガタイして狙撃何て出来ないって思うよな」


「うん。思う」


「聞こえてるっつーの!」


 すると小耳にはさんでいたガリラッタはそう言うと引き金を引いて空挺部隊の一体を撃ち落とす。ここから集団までかなりの距離があるのに一撃で当てるだなんて、かなりの腕だ。

 ユウ達の銃じゃ射程距離に届くまでかなりの時間が要するし、それまでにどれだけの数が減らせるかで勝敗の分かれ目が決まるだろう。といっても、ガリラッタ以外にも様々な狙撃者が攻撃してくれてるおかげで殲滅できそうなのだけど。


「リコリス達、大丈夫かな……」


 そう呟きつつも超大型に手間取っている隊長達を見た。今は二割を破壊出来たって感じだけど、それでも超大型はまだ余裕そうだ。果たして増援が到着するまでに倒せるかどうか。

 そんな事を考えているとテスが肩を叩いて言う。


「大丈夫だ。あれでも俺達のリーダーなんだぞ。俺達が信頼しなくてどうする」


「分かってる。ただ、そう簡単に行ってくれるのかなって、思っちゃうんだ」


 この世界を見下ろしているカミサマがどんな未来を選ぶかなんて分からない。破滅の未来か、幸せな未来か。どっちにせよあのカミサマの事なんだからロクな事にはならないだろう。だからこそリコリス達が不安だった。

 ……だからだろうか。ガリラッタが少しだけ動揺するとユウに伝える。


「なぁ、ユウ。ちょっと浮かび上がって敵を見てくれないか」


「え? いいけど……」


 ガリラッタの指示通りに武装へ乗ると浮上し、何とか機械生命体たちと同じ高度まで達する。のだけど、双眼鏡を使わなくたって見えたソレにユウも動揺してその場で黄昏た。

 やがて通信を通して何を見たのかと問いかけるからありのままを答える。


『なに、何を見たの?』


「……大型輸送機だ。それも、軍用の。三機」


『はぁ!?』


 すると地上の方でアリサの声が聞こえて来る。そりゃ、飛行できるのに大型軍用輸送機なんて登場したらそんな反応にもなるだろう。だって機械生命体が操縦してるって訳だし。

 直後にテスは無線機を使って本部の方で指示を仰いだ。ユウもここじゃあ出来る事が何もないので仕方なく地上に降りる。


「で、アレどうする?」


「……地対空ミサイルを使うって。ついでに俺達は空だけじゃなく地上にも集中して欲しいそうだ」


「地上、ねぇ」


 そうして地上を見下ろすと幾つもの機械生命体の残骸を見た。みんなで協力し倒した、小型や中型の残骸を。

 指示は恐らくベルファークが出しているはず。オフの時は柔らかく大人しめな雰囲気を見せる彼だけど、きっとこういう時に限って感がよかったりするのだろう。みんなは絶大な信頼を寄せている様でその指示にすかさず従った。


 確かに機械生命体がこれ以上出現しないなんて事はないだろう。本部の方に流れてもある程度は平気だけど、それでも取り逃しがないようにとユウも警戒し始めた。

 ……だからこそ気づけなかったのだろう。機械生命体に気を取られていたからこそ、もっと大きく、もっと身近にいた脅威に。

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