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Lost Re;collection  作者: 大根沢庵
Chapter2 始まりの刻限
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033  『新しい武器』

「今回は入院しないんですね」


「治癒だけ施されて帰って来た。これで表側は平気だけど、内側はボロボロだから無理するなって」


「どうしたらこんな短期間でここまでの大怪我をするのか知りたいってドクターに屁理屈言われてたよ」


「そりゃこれだけ大怪我し続ければ当然ですよ……」


 十七小隊で唯一の衛生兵らしいイシェスタに包帯を巻かれつつもそう答える。と言っても、その間ユウは気絶していたから後から聞いた話でしかないのだけど。

 ドクターからによると今回は表面上だけ治癒したらしく、内側にはまだダメージとか疲労が滅茶苦茶溜まってるからこれ以上の戦闘は許さないって言われた。自身でも怪我はないのに凄い気怠いから不思議な感覚を得る。


 これで大怪我したのは三回目だろうか。一回目は体の至る所を銃弾で撃たれ、腕を骨折し、火傷を負った。二回目は右腕を斬られ、胴体を裂かれ、左目がはみ出た。そして今回で火傷と骨折。

 自分で言うのもなんだけど余程の恐れ知らずだ。まぁ、全て死ぬのが怖くなくて仲間を死なせたくないからこそ負った怪我なのだけど。


 ちなみに先の戦闘は通常なら人を殺したとの事で始末書を書かなきゃいけないのだけど、正規軍の介入があったせい……いや、おかげで何とか始末書は免れた。が、アルテを逮捕したものの行き過ぎた暴走行為によって功績は免除される結果となった。


「ユウさんも毎回大怪我するのによくピンピンしてますね。普通の人ならトラウマ物ですよ?」


「ああ、まぁ、慣れてるって言うか……」


「これ慣れていいんですか」


 そう答えるとイシェスタから疑惑の眼差しを向けられる。まぁ当然と言えば当然の反応だ。しかし、いくら守る為と言ってもあまり大怪我を続けるのもよくない。いや、接敵する度に相手が悪いだけかも知れないけど、それでも少しは気を付けなきゃ。頭にそう刻みつつも彼女の言葉を聞き続ける。


「ユウさんも人間なんです。あまり大怪我し過ぎると死んじゃうんですよ。私達、心配してるんですから」


「分かってるよ。……分かってる」


「…………」


 少しだけ空いた間にイシェスタは眉をひそめる。それにリコリスも反応した。

 分かっている。傷つくとみんなが心配するって。だから怪我をする訳にはいかないし、死ぬわけにもいかない。でも今抱ける死ねない理由がそれしか見つからないのだ。それ以外に何も見つからないのだ。だからこそ、最終的にこうして大怪我をしてしまう。

 やがてイシェスタは耳を垂れさせながらも呟いた。


「死なないでくださいね。ユウさんはもう、私達の仲間なんですから」


「ああ」


 そう言って片腕の包帯を巻ききる。それも耳の垂れ具合で感情を表しながら。だからその反応が気になってじ~っと耳を見つめ続けた。

 すると狐耳はぐ~んと垂れてはピクッと直立する。その反応を見つめているとイシェスタが呟く。


「……耳、見てて面白いんですか?」


「俺の世界にはこんな耳を持った人はいなかったから、何と言うか、狐耳って新鮮でさ」


「そうなんですか」


 手で耳を触ろうとするもいきなり触るのはよくないと思って葛藤し始める。だってこういうのは耳がデリケートな場合であるのが殆どだし、いくら気になると言っても女の子のデリケートゾーンを触るのは人として良くないだろう。

 だから最終的に拳を強く握ってその葛藤も握り潰す。


「何葛藤してるんですか……」


「いや、柔らかそうだなと」


「触らせませんからね」


「分かってる……!」


 少しだけ残念がりながらも怪我の事について考え始めた。別の言い方をするなら自分自身の気を逸らす。そうやって考えこもうとしていたのだけど、コンコンとノックされてはリコリスが答えると息切れたテスが入って来た、三人はその様子に顔をしかめた。

 そして顔を上げると興味津々の瞳をして言う。


「テス、どうしたの。そんなに慌てて?」


「つ……」


「つ?」


「ついさっきガリラッタが作ってたユウの特殊武装が完成したって! いこーぜ!!」


「おおおお!」


 するとそれに反応してユウは勝手に立ち上がった。その途端に特殊装備の事を知らなかったイシェスタとリコリスはびっくりする。

 やがてリコリスは当然の反応をしながら問いかけて。


「ゆ、ユウ、いつの間に特殊武装作ってもらってたの!?」


「この前ガリラッタに「作ってやるよ」って言われてさ。それで形状とか色々要望を出して作ってもらってたんだ! こんなに早く完成するなんて……!」


 そうしてテスと一緒に工房へ走ろうとするのだけど、その時にイシェスタから包帯が放たれては体が縛られ身動きが出来なくなる。

 次に振り向くとイシェスタは睨みながらもこういった。


「包帯が巻き終わってからです」


「ハイ……」



 ――――――――――



「おんまた~!」


「おぉユウ!」


 さり気なく初めて工房に入りながらもガリラッタに手を振る。すると何か重そうな物をいじっていたガリラッタは汗を拭いながらもユウを見て喜んだ。のだけど、全身に巻かれた包帯を見てギョッとした表情を浮かべる。

 しかし背後からイシェスタとリコリスが顔を出した事で状況を把握した。ちなみにそこからひょろっとアリサも顔を出す。

 やがていじっていた物を見せるとその姿を露わにする。


「俺の特殊武装出来たってホント!?」


「ああ、バッチリな。結構特殊な構造で難しい所もあったが、中々いい仕上がりになったぜ! それがこれだ!」


 するとガリラッタはついにその姿を見せてくれる。

 一見するとただの縦長い大型の機械にしか見えないけど、そこには配管が見えていたり、バイクのマフラーみたいな物や手摺までつけられていた。だから使用用途が分からない三人は頭の上にはてなマークを浮かべる。


「どうだ? バッチリか?」


「バッチリバッチリ! オールオッケー!」


 両手でグッドサインを返すとガリラッタは照れくさそうに頭を掻いた。これがまさしくユウの求めていた特殊武装。新しい武器だ。

 次にガリラッタは机の上に置いてあったパソコンに繋がれた耳に装着するタイプの《A.F.F》を手に取るとユウに渡して説明する。


「お次にコレだ。こいつとソレは無線で繋がってるから、三百m以内であればどこでも動かせるぞ」


「え、三百mもあるの!?」


「ただし、そこから先は全く機能する事はないから注意する様にな」


 そう言われながらも装着する。《A.F.F》その物の仕様は全然変わっていない物の、右下に小さくアイコンが追加されていた。そこにはロケットみたいなマークが描かれオレンジに染まっている。これが範囲内にあるって合図なのだろうか。

 すると新しい仕様も説明してくれる。


「仕様その物は今までつけてたのと変わらない。ただ右下のアイコンが光ってればこいつが範囲内にあるって事で、外に出ると消える親切設計だ」


「おお」


「更に無線での接続だが、こいつはお前さんの脳から出る信号をうなじでキャッチし、電気信号に変えて無線で飛ばしてる。だから自分の意志で簡単に飛ばせるぞ。ちなみに、誤作動が怖い時は切断できる超親切設計だ」


「おおおおおおお!!」


 その説明に目を輝かせながらもAR上でウィンドウを開いて設定を確認してみる。どやら接続状態の他にも状態以上等の検知も設定してあるみたいで、多くの項目に緑色が灯っていた。オールグリーンって奴だろう。

 そんな風にして確認しているとついに背後から問いかけられる。


「でもソレどうやって使うの? 腕にでも装着する気?」


「そんな生半可な物じゃないぜ。正直言うと、何でユウがこんな発想できるのかってくらいの代物だ」


「へぇ~。楽しみ」


「少し移動した所に大きな壁がある。そこで試してみるといいさ」


 アリサがそう問いかけるとガリラッタは言い返しつつ親指をガレージの所に向ける。だからユウの特殊武装を持ちながら移動すると専用の大きな通路を経由し、道中で色んな装飾物とか小動物を見かけながらもその場所へ辿り着いた。

 すると目の前に広がったのは推薦試験の時みたいな近未来の廃都市ではなく、荒野でもなく、少し暗い砂岩地帯だった。移動範囲から見て十七小隊の管轄区域は端っこの方にあると思い込んでたけど、まさか本当に端っこの方だったとは。ガリラッタは腕を組むと呟いた。


「普段はここから出発するんだが、今回はここで試してくれ」


「分かった」


 そう言うと特殊武装を優しく地面に置き、ユウはウィンドウで接続をONにする事で赤いライトが付く。自分の意志で簡単に飛ばせるって事は、コレが飛ぶ想像をすれば想像通りの軌道と速度で飛んでくれるって事なのだろうか。

 イメージしやすいように右手を伸ばすと様々な機械音が響いてはジェットエンジンめいた音が放たれる。それからしばらくするとゆっくり宙に浮き始めた。


「あ、コレ宙に浮くタイプだったんだ。てっきり腕に付けて大砲みたいな攻撃を繰り出すのかと……」


「俺にそんな筋力なんてないよ。それっ」


 右腕を振り上げて上空に飛ばすとソレは空高く飛び上がり、物凄い速度で空を駆け抜けた。三百mより外へ出ないように操作するとクルクルって回転しては様々な方向へ動き、ユウの想像通りに動いてくれる。


「動作はどうだ?」


「いい感じ。特に違和感もないし、オールオッケーだよ」


 すると急降下させてユウの目の前に制止させる。その光景を見てみんなは拍手してくれた。でも、きっと誰よりも驚いているのが使用しているユウ自身だ。

 これで大体の使用用途を理解したリコリスは考察するのだけど、まぁ、その考察とは少しかけ離れた所にユウの理想があって。


「凄いじゃん。これなら意識外からの攻撃にも対応できるし、離れられてもすぐに牽制出来るし、それに全力でぶつければ壁も破壊出来るかもしれない。ホントによくこんなの考え――――」


「えっ?」


 けれどユウがまたがった事によって全員の時間が停止する。

 少しの間だけフリーズするとリコリスが真っ先に立ち直り、またがって特殊武装に乗っていたユウに問いかけた。


「あれ、乗るの? え? それ、近接戦闘用に頼んだんじゃ?」


「これがあると移動が楽に思っただけで、その他は特に何も……」


「「――――」」


 するともう一度全員の時間が停止し、何が言いたかったのかを察する。要するにみんなはコレが戦闘での補佐に使うつもりだと思ってたんだ。確かにリコリスの言った通り可能だとはおもうけど、当の本人からしてみればそんな考えは欠片も無い訳で、その可能性がある事に気づいては自身でも硬直した。

 突如にガリラッタが反応して言う。


「え、って事はソレ元々は移動用にって考えてたのか!?」


「あ~、まぁ、そうです……。リコリスみたいに高速移動出来たら便利だな~って思って。最初はジェットパックみたいな感じにしようと思ったんだよ? でも考えたらこのフォルムの方が扱いやすいかなって思って、それで手摺とか、色々……」


 完全に製作者と依頼者で完全なる食い違いを起こしていた事に互いで驚愕する。ユウは移動用としてこの特殊武装を頼んだつもりだったけど、まさかガリラッタは攻撃用として作っていたなんて。道理で先端が鈍器みたいになっている訳だ。

 するとユウは手を合わせて軌道修正を図ろうとした。


「ま、まぁ最終的に移動と攻撃を両立した武器が誕生したって事で! これが俺の――――」


「ソレもう一個作ってあるんだけど」


「えっ」


 予想外の言葉を聞いて今度はこっちが硬直する。

 頭から尻まで食い違っていた武器製作の依頼は、奇跡的な形で上手くまとまったのであった。

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