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Lost Re;collection  作者: 大根沢庵
Chapter2 始まりの刻限
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027  『入隊条件』

今回は諸事情あり少し少なめです。ごめんね。

「えっと、何と言うか、その~……。迷惑かけてすいませんでした!」


 推薦試験が終わってから二週間。ユウが復活を果たすのにはそれくらいの時間を要した。そして今日が退院の日。だからこそユウはみんなの前に立った直後からそう言って頭を下げる。今まで沢山迷惑をかけただろうし、何よりリコリスには助けられた。それで謝らずにはいられない。

 なのにみんなは驚き顔で固まっていて。


「え、なに。何でみんな硬直してんの」


「いや、だってユウがすいませんとか言うから……」


「あれ、謝るのって何かおかしなことだったっけ!?」


 まさかまだ意識や記憶が治ってないのか、なんて思い始めてしまう。けれどその心配はいらないらしくリコリスは前に出ると優しい瞳で言ってくれる。


「ううん。おかしな事じゃない。ただ私達の中じゃこれが当たり前だったから少しだけ驚いちゃって」


「あ、当たり前……?」


「そうそう。リコリスは何か困ってる人がいると必ず助けようとするからさ。で、その人達って大抵礼しか言わないから」


「そう言う事なのね」


 要するにリコリスは今まで謝罪をさせないくらいまで多くの人を救って来たって事なのだろうか。謝罪をさせないって言うのはその言葉はいらないっていう意味だろう。つまり、今まで救われた人は心の底から救われたという事になって――――。


「……謝罪はいらない、か」


「そう言う事。これは私がやった事なんだから、当人は百の謝罪よりも一の感謝の方が嬉しいのです」


 言い方は悪いけど、あまりにも押し付けがましい善意にユウは無意識に笑みをこぼした。決して謝罪させる事を許さない、凄く明るい笑顔。それを見てユウは言葉を変えて喋り出した。

 本当ならもっと謝罪したくてたまらない。ユウは彼女達に迷惑をかけ、沢山の時間を割かせたのだから。でも、その果てにある言葉に感謝を望むのなら、救われた者としてソレに応えるのが筋ってものなんじゃないだろうか。


「……ありがとう。俺を、助けてくれて」


「分かればいいんだよ」


 するとリコリスは笑顔でユウの肩をポンポンと叩いた。

 これが彼女の欲しい物なら喜んでそれを与える。それこそが今のユウが出来る恩返しだ。立ち止まってしまった分はこれから埋めていけばいい。本気でそう思える。

 だからこそ次にリコリスの言った言葉に驚き、続けて意気揚々と返した。


「謝罪はいらない。だから単刀直入に言う。――ユウは推薦試験に失格した。リベレーターに入る事は許されない」


「…………」


「でも救済措置がない訳じゃない。元々いい人材を見極めるのが推薦試験だもの。ユウが入隊するにはいくつかの条件が出された」


「え!?」


 推薦試験に失格すればリベレーターには絶対に入れない。そう思っていたからこそ一筋の光明が見えてユウは顔を上げた。となればどんな条件であろうとやるしかない。そんな意気込みでリコリスの言葉に応じた。


「リベレーターに入る条件は三つ。二日に一度出される課題に回答して正解する事。合同訓練に参加する事。そして、街を守る事。その三つだって」


「り、了解。やって見せる!」


 一つ目は要するに執筆試験みたいな物だろう。知識と勉学で応えろって意味のはず。二つ目は協調性を確かめる為だろう。そして三つ目はユウ個人の実力を把握する為。

 いずれも言うのは簡単でもやるのは難しい事だ。知識面じゃほぼ無知と言ってもいいくらいだし、体力面はまだ心もとない。長所があるといえば技術面だけだろうか。


「執筆課題は私達が手伝う。もちろん合同訓練もね」


「いいのか?」


「もちろん。元々十七小隊は五人しかいないから隊員は常時募集中なの。大体みんな中隊とか大隊の方に吸れちゃうし」


「な、なるほど……」


 ユウも知らない所に行くよりかは知ってる人達が集まる場所の方がいい。だからこそ絶対にクリアしなきゃと意気込んだ。

 やる事は多い。ここから真の踏ん張りどころだ。


「それじゃあ、帰ったら早速課題から始めるよ」


「押忍!」


 そうして、また新たに地獄の生活習慣が幕を開けた。



 ――――――――――



 今回は前みたいに期限がないからこそ心の余裕を保ったまま挑む事が出来る。と言っても、今はユウの精神状態が気になると言ってあまり根を詰めさせてはもらえないのだけど。自分で言うのもなんだけど一か月も失神状態になってれば当然の判断だ。

 文学と体力。まるで学生みたいな毎日を送りつつもユウは練習に励んでいた。


 リベレーターの本部も――――最高責任者のベルファークもユウの事情を知っているからか、執筆課題の殆どがこの世界の歴史についての問題だった。ユウにとってもついでにこの世界の歴史を知れるいい機会だし、リコリスやガリラッタから授業を受ける形で様々な知識を身に着けた。

 そのおかげで表面上でしか理解していなかったこの世界の事をもっと理解する事が出来て、同時にこの世界がどれだけの絶望に満たされているのかを実感する。


 街の外には機械生命体とゾンビが蔓延っているだけじゃなく、時々接敵する謎の存在と正規軍にも注意しなければいけないのだから。

 それに魔法の事も少しばかり教えて貰った。まぁユウが使える訳ではないのだけど。


 その他にもリベレーターにとって当然の知識もこの身に叩き込んだし、建物の制圧時に必要なコールや動作も訓練を兼ねて覚えた。ただその他にも当然受験みたいに数学の問題が出て来るから、それの公式などを理解するのにはかなりの努力を要した。ここまで来ると受験生である。

 推薦試験に受かるだけでこれらを全てクリアできるのだから推薦試験と言うのは恐ろしい。


 ちなみに条件と言うのは段階的に踏むらしく、執筆課題をクリアしたら合同訓練を。合同訓練をクリアしたら実力で示すと言う様な段階になっているらしい。

 最終段階はいわゆる実際に任務を受けて解決するのだけど、それは戦闘任務が受け渡されるらしい。逆に言えば受け渡されない程平和なら受かる事は出来ないけど。


 そして猛勉強を始めてから二週間だ。何とかギリギリのラインで執筆課題をクリアしたのは。何かそれっぽい合格通知で来たので「ああ、受験に受かった時ってこんな感じなんだろうなぁ」という感想を抱きながらも飛び跳ねて喜ぶ。


 しかし今度は肉体面での地獄だ。頭を使う作業が終われば今度は同時に体を使うのだから大変さは執筆の比じゃない。

 戦闘中にも次はどこから射線を通して来るのかとか、こう撃つ事で敵はどう動くのかとか、考えなきゃいけない事は盛りだくさん。正直止めたくなる。


 更に技術面の上達も磨きをかけ、銃撃はそこそこな為近接戦闘に焦点を合わせての訓練が再開された。相手はイシェスタなのだけど、これが強いのなんの。こっちが武器アリで挑んでも必ず素手で反撃を食らう。

 だからこそ色んな戦闘技術を学び、体術の他にも剣術や棒術、槍術、柔術も初級から中級の全てを習う。


 そこで分かったのがユウには反射速度と状況判断が得意なだけと言う事。イシェスタやテスからは普通に体が動かせる程度で実力は下の中と言われた。

 合同訓練自体はいつでも開催されているらしく、集団での銃撃戦をあらゆるシチュエーション、装備、人数で演習する。いわゆるサバゲーってヤツだ。使う弾も実弾ではなく演習弾なる物らしいし、認識だけならサバゲーで何ら問題はない。


 しかし異世界のサバゲーは一味どころか十味くらい変わって来る。

 装備は銃とグレネードだけになる物の、ヒットコール制ではなくHP制だし、ステージは破壊しない限り乗り越えや飛び降りを基本に移動できるのなら何でも使っていい仕様だ。更に近接武器も使えて、中には近接戦で決着が付く場合もある。当然拳での殴り合いもOK。

 という、サバゲーとは似ても似つかない無茶苦茶なルールとなっていた。


 そこではリベレーターだけじゃなく訓練兵が大半を占め、普通のサバゲー感覚で開かれているのだそう。合同訓練と言うのは推薦試験に落ちたり、その他の条件付き入隊の見習い兵が訓練兵と交じり参加するイベントの事だ。

 見習い兵は訓練兵の見本となり、見物となる。その代わり訓練兵は動作を学べるという訳だ。訓練兵にとっては一石二鳥である。


 そしてユウはその合同訓練を何とか突破し、これに関しては比較的余裕なラインでクリアする事が出来た。渡された資料では射撃能力と反射神経が高かったとの事。やっぱりか。

 これによってユウは何とか二つの条件をクリア出来たって訳だ。

 最後に残った条件はたった一つ。実戦で任務を完遂する事のみとなる。


 どこで何が起こるのかは誰にも分からない。だからこそ文字通り気合いを入れて柔らかく対応していかなきゃいけないのだ。咄嗟の出来事にも対応できるかどうかも十分ラインの一つと言えるだろう。

 故にユウはその初任務を待つ為に日課であるトレーニングを行いながらもパトロールをするという新しい習慣を手に入れる。正直かなりもどかしいけど、それもそれで平和だって事なのだから仕方ないだろう。


 でも、その時は唐突にやって来る。

 ある意味ユウ自身の試練とも成り得る、その時は。

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