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Lost Re;collection  作者: 大根沢庵
Chapter1 灰と硝煙の世界
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020  『試験開始』

 半月後。

 きっとみんな心配なのだろう。この半月の間ずっと落ち着かないみたいだった。そりゃ不完全な状態で推薦試験に挑むのだから当たり前な気もするけど。

 だからこそみんなで見送った時には不安の色がみんなから滲み出ていた。


「本当に大丈夫ですかね、ユウさん」


「大丈夫だろ。この半月間リハビリも含めてずっとVRで射撃訓練してたんだ。技術だけならアリサにも劣らないはずだ」


「え、私?」


 イシェスタの呟きにガリラッタが反応し、アリサは少しだけ困惑する。

 あれからリコリスが打った手と言うのがVRでの物理演算を利用した射撃訓練だ。ユウの身体機能に関する様々な情報を取り出してはプログラムに設定し、現実と何ら変わらない身長・体重・感覚で練習させた。それも物理演算も兼ねてるから本当の射撃訓練の様に。


 何故か異様な命中率を誇るM4A1を基板に様々な銃で練習させた。それも得意銃となったM4A1ならアリサにも劣らない程の腕になるまで。

 これで予想外の事がなければ通常の機械生命体は全滅できるはずだ。


「ユウなら大丈夫だよイシェスタ。だって約束したんだから」


「妙にフラグ臭いな……」


 テスにそんな事を言われつつもユウの向かったリベレーター本部を見る。推薦試験はあそこからヘリで出発し始まるはずだ。

 やれる事をやりきったリコリス達には祈る事しか出来ない。だからこそ祈り続けた。せめて、無事で帰って来ますようにって。



 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



「よく集まってくれた。これより君達は規定に則り推薦試験に挑む事になる」


「「はいっ!!」」


 思えばこういうのは初めてだなぁ、と呑気な事を考えつつも元気よく返事をする。

 推薦試験に参加したのはユウを含めて五人。男子四人に女子一人だ。みんなユウと違って如何にも強そうな肉体をしているし、何よりも放っているオーラが違う。

 一か月しかトレーニングしてないユウとはえらい違いだ。


「では、これより“作戦内容”を説明する。君達はこれから東に七キロ進んだ所までヘリで輸送され、この地点に降ろされる。それからこの機密情報が入ったこのカードを守りつつ三つの補給地点を巡り目的地まで到達。それが作戦内容だ」


 ――試験内容とは言わないんだ。


 まぁ、そこら辺は本物の作戦に見立てているのだろう。この難関をクリアするだけで正式にリベレーターへ入れるのだから、途轍もない重圧を与えるのは理解出来るし。

 やがて教官の人は鋭い眼光を浴びせると言った。


「当然、道中では機械生命体に遭遇する事がある。戦うも逃げるも君達の好きにしてくれて構わない。ただ油断してると痛い目を見るからな」


「「はい!!」」


「残りの詳細は各々で渡される資料で確認してくれ。では準備開始!!」



 ――――――――――



 と言った感じで推薦試験に挑む事になる。現在は輸送ヘリで降下地点まで運ばれている最中で、ユウは荒廃した都市の跡を上空から見つめていた。まさに戦争後の廃都市って所だろうか。様々な所で爆破跡が残っては大量に亀裂が走り苔が生えていた。

 そんな事をしているとちょんちょんと肩を突かれて振り返った。


「なぁなぁ。お前ってどこの隊から推薦されたんだ?」


「え? えっと、俺は第十七小隊から」


「十七って一番新しい隊じゃん! いいなぁ。俺は第六小隊から推薦された。ヘリアンだ、よろしくな」


「ああ、俺はユウ。よろしく」


 すると話しかけて来た蒼髪の少年――――ヘリアンは笑顔でユウの手を握ってくれる。何だか活発なイメージの少年だ。

 それに続くとみんな各々で自己紹介を始めた。

 左から順に茶髪の少年、垂れた灰髪の少年、ツーサイドアップの亜麻髪の少女だ。ちなみにみんな支給品であるライトブラウンの服を着ているから服装は同じである。


「グレアだ、よろしくな。俺の場合は推薦元は第二中隊だ」


「僕の名前はファニル。推薦元は第五中隊だよ」


「わ、私はシノリ。推薦元は第十六小隊、です」


 みんなそれぞれの名前を名乗りつつも今から互いに親睦を深めようと話し合う。この作戦にはチームワークと協調性が大事だし、話し合っておいて損はないだろう。だからこそユウも輪の中に入ってみんなの事を少しでも理解しようとした。

 得意な銃から戦術まで様々な話題が飛び出る中、必要最低限の情報が揃うとリーダーシップのありそうなヘリアンが配役を決めた。


「そんじゃあ基本陣形として俺とグレアとユウが前衛で、ファニルとシノリが後方支援って形でいいか。索敵はグレアが担当で、危険感知はユウが担当。指揮は俺が取るよ」


「ありがとう、助かる!」


「良いって事さ」


 そんな風にしてヘリアンがこの小隊のリーダーになり早速纏まりが成って来る。アリサから「運が悪いと銃が偏ってまともに陣形すらも組めない」と聞いたけど、その心配はなさそうだ。

 みんなも上手く纏めてくれるヘリアンに信頼を寄せ始めているみたいだった。


 しかしワイワイしてられる時間もこれで終わり。目的地が見えて来るとヘリは降下を行い、出発地点までユウ達を輸送した。

 全員が装備を持ってヘリから降りると教官は敬礼をして何も言わずにヘリを飛ばしてしまう。言うまでもないって事なのだろう。


 やがて少し開けた空き地に五人で佇むと顔を合わせては一斉に頷いた。さっきの配役通りにグレアは索敵しユウは周囲に危険な何かはないかを確認し、ヘリアンはファニルとシノリと一緒に地図の確認を行っていた。


「どう動くつもりだ?」


「大通りは無理だな。機械生命体用のソナーも渡されてないし、索敵と移動の繰り返しを基板にしよう。それに一日で戻る事は不可能だから野宿出来る場所も探さないと……。一先ず一つ目の補給地点を目指そう」


「食料にも限りがあるからね。あまり流暢にはしてられないよ」


「全く、本当に追い詰められてるみたいだな」


 実際に作戦中にこんな状況に陥ったらきっと軽く絶望するだろう。これは試験だという建前があるからこそ今は心が保てているけど、後々思い詰める表情に変わるはずだ。なんとかその前に終われればいいのだけど……。

 ヘリアンは地図をしまうと早速動き出した。


「時間が惜しい。今は先に進もう」


「分かった」


 ここはもう戦場。だからこそ各々の得意武器を手に握ると走り始めた。なるべく建物の陰に潜んではハンドサインで合図を出し、ゆっくりとだけど確実に進み続ける。

 今はまだ野生の鹿とか固有の生物しか見れないけど、必ず機械生命体と出くわすだろう。


 移動する際に見る灰色の街並みはこの世界の残酷さを物語っていて、見ているだけでも寂しさが伝わって来る。崩れたビルも、苔が生えた瓦礫も、そこに家族で暮らす野生動物も、全てがどれだけ絶望的な世界なのかを体現していた。

 いつか平和になる時が来るのなら。そう考えてしまう。


 トレーニングとかで忙しかったからまだ詳しい歴史は分かってないけど、大体が機械生命体との抗争でこうなったと聞いている。って事は、機械生命体や感染者さえいなくなればこの世界は平和になるのだろうか。無数に蔓延り何体いるのかも分からない存在がなくなれば。

 この世界を構成する大半の概念は絶望だ。例え空が青く快晴だったとしても、絶望に覆い尽くされてる事だけは絶対に変わらない。みんなはその中で必死に前へ進もうとしてる。


 それなのにユウは何かに縋らなきゃ一緒に前へ進む事が出来ないなんて、考えれば考える程自分が嫌いになって来る。だって理由がなければ生きる事さえままならないんだから。

 ――違う。そうじゃない。

 リコリスが言ってくれたじゃないか。誰かを守る事が出来るって。そう思ってくれてるのなら、それに応えるのが筋って物なんじゃないのか。


 と思い直している時だった。ヘリアンが建物の陰で立ち止まってハンドサインを出したのは。だから何があったのかと顔を覗き込むと前の通路に機械生命体がいて。

 フォルム的には転生直後にユウを殺そうとしたタイプと同じだろうか。


「あれが機械生命体……。資料とかでしか見た事ないけど、意外と弱そうだな」


「油断するなって言われたろ」


 そう呟くヘリアンの後頭部を軽く叩きつつも地図を思い出す。戦うのも逃げるのも自由って言われたからには逃げる事を優先した方がいいだろう。となれば路地裏を通って行くのが最善だろうか。

 ファニルはすぐに問いかけた。


「どうするの?」


「弾の消費はなるべく避けたい。路地裏を通ろう」


 すると彼の指示通りに全員は路地裏に隠れて通る方向で動き出す。小石を投げて相手を誘導すると、その隙に足音を殺しつつも走り抜けては路地裏に入り込む。

 ゲームみたいにどこでも弾が補充出来ればいいのだけど、残念ながらこの世界の弾は有限、あまり使い過ぎると弾切れで一気に追いつめられる結果となる。せめて補給地点に到達するまでには何とかしておきたい所だ。

 まぁ、ユウは機械生命体用の近距離武器を持ってるから何とかなりそうだけど。


 一人で戦うのならその武器で暴れられるだろう。でも集団で戦うのなら銃撃戦の方が遥かに有効。流石にフレンドリーファイアだけは御免だ。

 慎重にも慎重に進んで行くと一行は初の大通りに到着し、さっきと同じ様に建物の陰に隠れては偵察を行った。


「ストップ。……グレア、どうだ?」


「小型が十体に中型が三体。いずれも進行方向を塞いでる感じで佇んでるね」


「塞ぐ、か」


 大通りなのだから機械生命体はいるだろうと予測していたけど、まさか本当に出て来るとは。群れを成しているって事は集団意識があるはずだし、きっと統率も取れているはず。それらを差し引いても実戦は初めてであるユウ以外のみんなは一気に表情を強張らせた。

 やがてシノリが問いかける。


「た、戦う? 逃げる?」


「……戦おう。今の目的は一つ目の補給地点に到達する事だ。遠回りすればもっと急がなきゃいけない」


「OK。戦うんだな」


 するとユウは意気揚々とM4A1を構えて臨戦態勢に入る。それを見たみんなも仕方なしに銃を構えた。ヘリアンとグレアとユウはアサルトライフルで、ファニルはサブマシンガン、シノリはスナイパーライフル。互いに援護すれば一瞬で片付くはずだ。


「撃ち方用意」


 掛け声でそれぞれが同時に照準を定める。

 引き金を引くのはこれで二回目だろうか。普通ならもっと重い物が伸し掛かるのだろうけど、何も感じなかったからこそ指示があった瞬間、真っ先に引き金を引いた。


「――撃て!」


 次の瞬間、廃都市に銃声が鳴り響いた。

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