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Lost Re;collection  作者: 大根沢庵
Chapter4 選択と代償
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181  『初戦闘』

 周囲の建物がたった一撃で吹き飛んだ直後、ユウとエトリアとラディは《BIS》なる物があると思われる方角へ全力疾走を開始していた。場所はラディが覚えているから彼女の指示に従って走るだけ。それだけなら何も苦労はないのだけど、重大なのはマフィアの連中が邪魔をしてくる事だ。

 だから身を隠せそうな路地裏を突っ走りながらも目的地まで進行する。


「でも、本当に道順は大丈夫なんですか?」


「安心してエトリア。ラディはああ見えて空間把握能力とか記憶能力は十七小隊随一だから。なんたってスマホがなくたって今まで手に入れた情報全部を覚えてるんだぞ?」


「えっ!?」


 そんな事を話しながらも追って来るマフィアの連中を軽い銃撃で足止めする。こういうのは双鶴に乗って移動すればいいのだけど、建物の感覚が狭いから事故を起こすかもしれないし、空に行ったら行ったで撃ち落とされてしまいそうだ。ここが双鶴の悩みどころである。


 とにかく今は《BIS》の破壊だけを考えておけばいいはず。壊してからの退路はそれから考えても十分間に合うだろう。そんな他力本願みたいな考えで走り続けた。

 しかし次の角を曲がった所でマフィアが出待ちをしていて、全員が刃物を持ってこっちに走って来ていた。だから拳銃で制圧しようとするもエトリアは前に出ると拳を握り締めて立ち向かっていく。


「この……! って、エトリア!?」


「任せて下さい!」


 すると振り下ろされる直前に加速して相手の懐に潜り込み、手首を抑えると軽く捻って武器を落とさせ肘で頬を殴る。次に回し蹴りを食らわせたと思えば拳で顔面を殴り、壁を蹴って攻撃を回避するとそのまま脚で攻撃し、最後は前転で踵落としを脳天に食らわせる事で複数人を鎮圧させた。

 思いのほか強かった事に驚愕しているとラディが呟く。


「初戦闘でこれか……。リトル・ルーキーって呼ばれる訳だな」


「射撃能力はもっと凄いぞ。俺以上に」


「うへぇ~」


 その後も見える敵は全て自分で倒してしまう。それも銃は一切使わず素手のみで。エトリアの動きは一切無駄がない上に相手の急所を的確に捉えていて、相手の凶器にも怯まず突っ込んでは予想もしえない動きで敵を殲滅していく。多分、体が柔らかいからこそ相手が予想しえない動きを取る事が出来るのだろう。今はそれが羨ましい。

 そうしているとある所に辿り着き、三人はひときわ大きい建物を見てあそこにあるんだと理解する。


「あそこ?」


「そう。あそこにあるぞ」


「どうやって攻略したもんか……」


「そういう問題ですか!?」


 するとラディはミーティングの為に一時的な避難をハンドサインで送り、指先で屋根を差したからエトリアを連れて双鶴に乗る。そうして三人で屋根の上まで辿り着くと今一度建物とその周囲にいるマフィアの数を見て低くうなった。敵陣ど真ん中だからそれなりの数はいると思ったけど、まさかここまでとは。まぁ警戒するのは無理もないが。

 ユウはラディの方を向くとすぐに指示を仰いだ。


「何か手は?」


「一応ある事にはあるぞ。ただそれなりの賭けになるし、戦闘になるけど、平気?」


「もう少しすればレジスタンスも駆けつける。それに最近は過激派とか色んな事に忙しいから、ここで奴らを叩けるのなら叩いておきたい。……ま、既に叩いてる人もいるみたいだけど」


 恐らく真意の反動で心配されているのだろう。控えめに問いかけられたからそう返すものの、既に目的の半分は達成されそうになっている。その証として後方では誰かが大暴れしている証である爆破が起きているし。あの暴れようからしてアルスクかリコリス当たりだろうか。

 しかしここにいるマフィアの数は計り知れない。ユウでも倒せるかどうか。

 それでもやらなきゃ後々後悔する事になるかもしれない。その可能性があるのなら、先に潰しておいた方が助かるはず。


「暴れる事はいつもの事」


「……そうだな。それじゃあ作戦を伝える。ちなみに、君も参加する?」


「もちろんです! 私にできる事なら!」


 するとエトリアも意気揚々と作戦に参加する気概を見せた。だからラディは人差し指を顎に当てると作戦を考え、不敵な笑みを見せるとその内容を伝えた。とはいってもマフィアに囲まれた状況でするにはあまりにも過激な物だったのだけど。



 ――――――――――



 作戦はこうだ。まず一番最初にユウとエトリアが敵の本拠地に突っ込んで奇襲を仕掛け、なるべく多くの時間を稼ぐ。その間にラディは裏に回り込んで敵の将を打ち取る。これだけ見たら普通の囮作戦なのだけど、過激なのはその方法だ。だって時間の稼ぎ方が建物を破壊するという物なのだから。とは言っても崩れない程度にではあるが。

 けれどラディはその事に何かを確信しているらしく、ユウとエトリアはその指示に従う為に真正面から突っ込んだ。


「なっ、何だ!?」


「敵襲ー! 全員構えろ!」


 閉じていたシャッターを吹き飛ばした瞬間から全員が反応して武器を構える。けれど熱源探知で敵の位置を即座に捕捉したユウの双鶴が一手速く、離れている所にいる敵から順に足場を崩して動乱を巻き起こす。直後に拳銃と剣を手に持ったユウは走り出して一番近い敵に向かって攻撃を仕掛ける。

 エトリアは持ち前の精密射撃で遠くからユウを狙う奴を狙撃し、一秒でも多く時間稼ぎをしてくれる。ちなみに使用しているのはゴム弾。


 斬撃をくらわす訳には行かないから電撃で敵を殲滅する中、四方八方から撃ち出される攻撃を感覚だけで回避しては拳銃で反撃を加えていく。

 でも流石に二対大勢じゃ差があり過ぎて、素早く動いても当然銃弾は肉に穴をあける。


「ぐっ! 予想はしてたけど、やっぱりこうなるか……!」


 双鶴を引き寄せては足場にして縦横無尽に動き回る。

 やっぱり敵陣ど真ん中だからか数がとんでもない。倒しても倒しても増えていくし、傷が浅ければ立ち上がって来るから厄介な物だ。刃を通してやりたいけどそれじゃあ確実に殺してしまう。相手が殺そうとして来るのにこっちは殺せないなんて、リベレーターの立ち場の嫌な所だ。


「ラディ、まだ!?」


『もーちょい! もーちょいだけ耐えて!』


「ったく、時間稼ぎだって楽じゃないんだから!!」


 余裕はあるも厳しくなり始めた所でラディに問いかける。けれど返ってきた答えは予想通りの者であって、ユウは剣に軽く真意を乗せると全力で振り払っては前方の敵を一蹴する。建物を破壊するとは言ってもタイミングと言う物がある。ユウは双鶴があるから何とかなるかも知れないけどエトリアは武装も何もないし、瓦礫を持ち上げられる馬鹿力がある訳でもない。

 どっちみにタイミングを掴まなければいけないはずだ。


 その時だ。リーダー格みたいな男が逃げようとしていたのは。だからユウは拳銃で狙いを定めると軽い真意を乗せて放ち、小さいビームを放出すると退路を崩して逃げ場をなくしていく。


「――そこかッ!!」


「何だこの攻撃!?」


 壁の素材がボロボロなレンガだからか、軽い真意だけでも壁はかなりの勢いで壊れていく。故に退路を失くした奴は戸惑ってこっちを見た。しかしこっちは止まる訳にはいかなくて、ユウは双鶴を飛ばすとを崩して身動きを取れなくさせる。


「クソッ! 化け物共が……!」


「俺を化け物って呼べるのならお前はまだ幸せ者だよ」


 化け物と呼ばれたから反射的にそう返す。裏を返せば一般人から見てもユウは化け物になると言う事なのだけど、この世界にはユウ以上の化け物がごまんといる。それこそ数えると嫌になるくらいの数が。個人的には絶対に敵に回したくない所だ。

 やや無茶苦茶な戦い方をしているのも束の間。しばらくたった後にようやくラディからの指示がやって来て、ユウは即座に真意を発生させると弾丸を発射させる。


「だが俺達にはまだアレが残って……!」


『建物の奥に例のブツがある! それごと撃ち抜いちゃえ!』


「了解。――アレって、ソレの事か?」


 そう言って真意の弾丸を発射すると純白のビームが刹那を駆け抜け、それと同時に凄まじい衝撃波が周囲を駆け抜けながらも建物の奥にある例の《BIS》と壁を撃ち抜く。どうやら燃料でも積んでいる系の物だったのか奥で爆発しては炎がこっちへ迫って来ていた。

 普通なら気づけるはずのない位置にある兵器。それに気づいている事に全員が驚愕していた。まぁ、当然と言えば当然の反応だろうか。


 その光景にエトリアすらも驚愕する中でユウは天井に向けてもう一発を放つ。すると天井が抜けては太陽の光が差し込んで来るから周囲が良く見える様になる。親玉各が驚愕の顔で腰を抜かしている姿も。

 立ち上がっては威嚇をしようとするのだけど、その時には既にラディが背後に回り込んでいて。


「は、はっ! たかが一個壊されたくらいでなんだ! 俺達にはまだ――――むぐっ!?」


「――後の話は施設でちゃ~んと聞かせてもらうから今はいいぞ」


 左手で奴の口元を抑えては右手に握ったナイフを喉元に当てる。分かっていたならいいけど、音もなく背後に現れてそうされるのだからやられる側はたまった物じゃないだろう。その証として目は剥き出しになって恐怖の色を浮かべている。

 将を取られれば負けるのは必然的。だから全員は大人しく武器を落とした。


 その他にも外にいる奴らも状況を察したようで、遠くからも金属を落とすような音が耳に届く。やっぱり包囲されていたのは変らなかったのだろう。何というか、大分無茶をしてしまったと言うか。そうしているとジェットエンジンめいた音が聞こえて来るからもう一つ悟る。


「あ、来た」


「来たって、誰が――――ひゃっ!?」


 すると屋上が一気に崩れては空から何かが落下して来る。空から現れたのは案の定のリコリスで、彼女はヒーロー着地をしながらも現場に駆けつけるとリベレーターの腕章を見せつけながらも高らかに宣言する。が、既に収拾はついてる訳で。


「情報は聞いた。おいたはそこまでだよ。この私が来たからには……って、あれ」


「あ、リコリス」


 リコリスがかっこよく駆けつけたタイミングは、少しばかり遅い結果となった。

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