117 『My only hope』
今回は盛り上がりポイントだからいつもより少し長めだよ! ついでに言うとこれからの作中じゃこれ以上の希望を書く気はないよ!! フェードアウトしてく中でちょいちょい希望は描くけどね!!!(ダメ押し)
「はっはっは……。まさかここまでコケにされるとはね。もういいよ、貴様ら全員、この場で直々にぶち殺す!!」
パワードスーツに乗って登場した彼はそう言うと、手に持っていた重そうな重機を振り上げて肩に担いだ。見ただけでも分かる。赤黒の機体以上に強いんだと。
だからみんなは先手必勝と言わんばかりに動き始めた。と言っても、その時には既にリコリスは彼の背後を取って首に光線剣を振りかざしていて。
「――――ッ!?」
でも、次の瞬間に光線剣は音と激しい火花を立てて防がれる。超大型機械生命体の装甲すらも切り裂く事が出来る光線剣が。リコリス自身もそんな事になるだなんて思ってもみなかったのだろう。振りかざした状態で制止していた。
直後にエルピスが大剣を振りかざすけど、あろう事か巨大な重機を片手で振り回すと完全に弾き飛ばした。
「なっ、弾かれ!?」
「俺に任せろ! ――ドラアアアアァァァァァァァァァッ!!!!」
だからアルスクが自慢の拳で全力を解き放った。いくらリコリスやエルピスの攻撃に耐えるとは言え、流石にアルスクの攻撃になら傷くらいはつくはず――――。でも、直後に炎が収束されたビームは霧の様に掻き消されて消えていく。
「は――――?」
「ッ!!」
そして驚愕している隙があるのならもちろん攻撃する訳で、彼は床を抉る程の力で急接近すると重機を思いっきり振り上げた。人間が食らえば一撃でぺしゃんこになる重機を。そんな事させたくないからこそ、ユウは間一髪で助けに入り死を避けさせた。
驚愕するのは当然だ。だって自慢の一撃が何のデメリットもなく掻き消されたのだから。それ故にそここそが問題となる。
「アルスクの炎が掻き消された!?」
「氷じゃない。あのマナの散り方を見るに、恐らく……。いや、でもそんなはずが――――」
「その通りだとも」
ボルトロスがミニガンで攻撃する中、エルピスとリコリスが必死に考え、その通りだと勝ち目が薄いからその予想を頭から外した。けれど彼は自慢げにそう言うと大の字に両手を広げる。
「今ので分かっただろう。このパワードスーツは、超圧縮合金の他にも、機械生命体の装甲が使われているんだって事くらい!」
「――――っ!?」
機械生命体の装甲だけならどれだけよかっただろう。それなら対処法だっていくらでもあった。でも、超圧縮合金も一緒にされると話しは変わって来る。それも根っこから跳ね返されるくらいに。
みんなが普通じゃ勝てないと理解するなり彼はユウに襲いかかり、隊長達は全員でユウを庇った。
「――危ない!」
「ぐっ!?」
リコリスが咄嗟にユウへ突っ込み高速で振り下ろされた重機から救ってくれる。同時にエルピスが背後を取って大剣を振りおろし、懐に潜り込んだアルスクがもう一度アッパーの動作で拳を振り上げた。普通なら真っ二つにされて当然の状況だけど、彼はあろう事かどっちの攻撃も防いで更に吹き飛ばす。
だからその隙をボルトロスのミニガンが埋めるも差して効果はなく。
「ミニガンが効いてねぇ!?」
「程よい振動で中々気持ちいぞ。さっさと死ね!」
重機をゴルフスイングの様に扱うと地面が裂けながらも空気の刃がボルトロスの方角に向かっていく。それをミニガンで防ぐも完全には防御できず、反動だけでも大きく仰け反っては大きな隙を作り、彼はボルソトロスの方角に向いて屈み始める。
故に双鶴を飛ばすとある程度の妨害は成功し、手こずっている間に三人で奇襲を仕掛けた。
ユウは腕が焼ける程の電撃を放ち、リコリスは光線剣の出力を最大にし、エルピスはもう一度紺色のオーラを纏わせて突っ込んだ。それらを同時に叩き込んでも彼は微動だにせず微かな衝撃だけ残して動き続ける。
「っ! 貴様ら……!!」
「らあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!」
直後にエルピスが二刀流に切り替えると別々で黒と蒼のオーラを放出させ、それは無数の光となって尾を引き彼の身体に叩き込まれる。それからは神速の剣戟が繰り出されて黒と蒼の光は周囲にまき散らされた。いくら硬い装甲を持つ彼でさえも体が仰け反ってしまうくらいの威力で。
即座にリコリスが背後を取ると力を溜める隙があるからか、少しだけ間を開けて全身全霊で振り下ろした。その衝撃だけでもその場に軽いクレーターを作る。
でもそれだけじゃ終わらない。今度はずっと力を溜めこんでいたアルスクが動き、地面に拳を叩き込むと炎は地面を伝って彼の下へ向かって行った。やがて真下まで行くと巨大な爆発が引き起こされて大きく体が浮かび上がる。
機械生命体の装甲は触れたマナだけを散らせる効果があるから、マナによって引き起こされた爆発の衝撃波なら普通に食らうと言う事なのだろう。
それに合わせてボルトロスがミニガンのリミッターを外し、刹那の間に数十発もの弾丸を叩き込んで大ダメージを与えた。
最後にユウは構えていた双鶴を発射させると貫きはしなかったものの、彼を壁まで吹き飛ばして抉り込ませた。それも装甲に微かな亀裂が入る程の威力で。
ようやくここまで追い詰めたのだから後は倒すだけ。みんなそんな思念を以ってして突撃し始める。
「ユウ、ナイスだよ!!」
「後は任せろ!!」
すると一斉攻撃で畳み掛ける。だから直後に大爆発が引き起こっては周囲のロボットが全て吹き飛んだ。そしてユウ達には残っていたロボットが来るわけで、ユノスカーレットを抱えながら移動し始めた。と言うよりも戦わなきゃいけいのだから左腕だけでお姫様抱っこをすると戦闘態勢を整えた。
「ユノスカーレット。悪いけど、少し掴ってて。少なくともみんながあいつを倒すまで」
「う、うん。でも少し恥ずかし――――」
「行くぞ!!」
「えっ、えっ!?」
その言葉を合図に走り始めると双鶴も起動させてロボットに向かって行った。手順その物は何も変わらない。ユノスカーレットを守りながら戦い続けるだけ。それだけはユウの得意分野だ。
あまりにも激しい動作をする物だから彼女は必死にしがみつき吹き飛ばされない様にする。こっちもうっかり手を離してしまった、なんて事がないように気張って叩い続ける。
この戦い自体にはユノスカーレットを守るって意味があるけど、同時にみんなへ奴らを近づけないという意味もある。流石に邪魔をされちゃ彼には勝てないだろうから。……それならどれだけよかっただろう。
彼女を抱いて戦闘する分どうしても隙とか動作が大振りになってしまうけど、それを双鶴の速度と小回りでカバーして戦う。そうしているとユノスカーレットは治癒魔法で傷を癒してくれて、戦いながら回復する、というゲームならチートじみた状態になっていく。だから喋る隙もない代わりに頷く事で礼を言うと彼女も頷いて返してくれる。
が、調子がいいのはここまでだ。
「さて、次はどの――――っ!?」
何かが急接近してくる音に気づいて咄嗟に振り向く。するとエルピスが物凄い速度で吹き飛ばされてきて、ユウは咄嗟に剣を手放して右手で受け止めた。それも反動で嫌でも後ずさりしてしまう程の速度で突っ込んで来る彼女を。
だからどうしたのかと前を向くと驚愕す光景が映し出されて。
「エルピス、どうし――――」
「ちょっと相手が悪いみたいでさ。あいつ、化け物って呼んでもいいかな……」
一斉攻撃を食らっていたはずだ。それなのに彼のパワードスーツは未だに動き続け、傷はあるものの完全には破壊されていなかった。更にリコリス達はいずれも重傷を負っていて。
「え? だって、リコリス達が、いて……。えっ?」
「全く手こずらせてくれる。なるべくコレは使いたくなかったのだがね」
「っ!?」
すると彼は持っていた重機を起動させてレールガンと光線剣がセットになったような訳分からん武器を出して来る。だからそのぶっ壊れ性能過ぎる武器を見て驚愕した。そりゃそんな武器があればいくら何でも倒される訳だ。
ユウはエルピスの体を強く掴むと奥歯を噛みしめる。分かりやすい思考は読まれる訳で、エルピスはしがみ付くと言った。
「戦うなんて考えちゃダメだよ。私達でも手こずるのに、君が行ったら……」
「知ってる。でも、ここまで仲間がやられて、俺に期待してくれてる人達が傷つけられて、みんなが背中を押してくれてるのにさ、ここで下がるってのは違うんじゃないか」
みんなユウに希望を賭けて募ってくれた。そしてその人達が今傷つけられ、ユウはほぼ無傷でやり過ごしている。だったらこんなところで引き下がる訳にはいかない。……引き下がれる訳がない。
ミーシャも仲間も赤の他人も、全ての人を助けるんだと誓った。なら絶対的に勝機の無い相手へ挑むには十分じゃないだろうか。
「ユウ君!」
「無駄だよエルピス。ユウは、そんな程度じゃ止まりはしないから」
ユノスカーレットを離してゆっくりとした歩みで彼に近づく。それに対して彼はユウを殺せる事がそんなに嬉しいのか、口元を釣り上げては見るに堪えない喜びの表情を浮かべた。
みんなが止めろって視線を向けて来るけど、それでも進み続ける。
「それに俺一人でもみんなが起き上がって一斉攻撃を叩き込むくらいの時間は稼げると思うし。――何より、こいつを許せない」
すると彼は巨大な光線剣を振りかざして脳天に狙いを定めた。これで少しでも回避するのが遅れたらかっこいい事だけ言ってあっさり死ぬという笑えない状況が作り出されるだろう。それをさせない為にもユウはある言葉を機に前へ走り始めた。
「俺はみんなを救う。そしてみんなの希望になるんだ。それが、俺がここにいる理由だから!!」
「はッ!!!」
直後に彼はユウの覚悟を鼻で笑いながらも光線剣を振り下ろした。けれどユウの方が刹那よりも早く潜り込んでいて、股下を潜っては起き上がった瞬間に切り上げる。と言ってもあまりの硬さにこっちがダメージを食らうのだけど。
「希望? 何を馬鹿な事を言っている。どこまで醜態を晒せば気が済むのかな」
「醜態だろうがなんだろうが関係ない! 俺は、俺の守りたい人達を守るだけだ!!」
振るった電撃も弾かれて双鶴も受け流される。残った斬撃すらも弾かれては反撃を食らい、掠っただけでも死を思わせる拳を間近に戦い続けた。みんなが完全に起き上がって一斉攻撃の準備を追えるその時まで。
でも彼の言う事だって正しい。希望なんてどこにもないこの世界で希望を抱く事は一番のタブーでもある。それをみんなの前で掲げると言う事は、すなわち醜態を晒すと言う意味その物。今のユウはこの世界で誰よりも醜態を晒し、タブーを重ね、そして期待されている存在にもなる。
やがて彼は舌打ちをしてユウを双鶴ごと蹴り飛ばす。
「手ェ、焼かせるなよ」
「がッ!?」
そうして遠くまで飛ばされるとレールガンを構えて存在その物を消し炭にしようとする。だからその場に残っていた双鶴で軌道を逸らし、腕が微かに焼ける程の距離で回避してもう一度動き始める。まだ足りない。彼に勝つためには、きっと何もかもを捨てないと――――。
直後にユウは腰からある物を取り出して口に食わえる。
「何度やったって無駄だ。お前如きが僕を倒せる訳……が!?」
近接戦で意識を逸らした隙にグレネードを腕の装甲の間に詰め込む。それも口にはピンを噛んだままの状態で。
すると爆発が起こっては部品がある程度でも吹き飛び、ようやくまともにダメージを与える事に成功する。と言ってもリコリス達はこういうのを当たり前の様にやっていた訳だが。
「倒せる訳が何だっけ? 言っとくけど、こっちは自傷なんて関係――――」
「――もういい」
瞬間、意識が擦れる。微かな振動と共に魂が吹き飛ばされる感覚を得て視界が歪んで行った。何をされたのだろう。近づかれてなんていないのに突然意識が掠れるだなんて。疲労と言う訳でもない。となれば残る可能性としては彼が遠隔操作の武器を使っていたかだろうか。
……違う。殴られているんだ。一瞬にして、刹那にして、距離を詰められては腹を殴られている。それも背骨から嫌な音が聞こえて来るくらいの威力で。
でも、どうして。
それらを認識した時には既に壁に叩きつけられているみたいだった。あまりの速さに脳がその事象を認識していないのか、痛みを感じないどころか何が起きているかすらも理解出来ない。霞む意識の中で考えるにはあまりにも困難な事であったから。激痛が襲って来た頃にはリコリス達が動き始めていて、一斉攻撃を始めていた。
「――こんのッ!!!!」
「テメェよくも!!!」
「絶対に許さない!!!!」
「黙れ」
でも、彼が大きく足を踏み込むと周囲に大量の電気が流される。それに当てられて全員が体を硬直させ、振り回された光線剣に巻き込まれて多くの血を流す。だからみんなを簡単に一蹴できてしまう彼の実力……いや、正確に言うのならパワードスーツの性能に驚愕する。
もうどうなってもいいのだろう。彼は真っ先にリコリスへ刃を向けると振り上げた。
「まずはお前からだ」
「っ……!」
畳み掛けるかのように駆け寄るロボットは残ったみんなに刃物を振り上げる。だから必死に抵抗しているせいで助けに入る余裕なんてなく、アルスクが防御を犠牲に助けに入っても蹴り飛ばされてしまう。みんなもソレを見て一斉に防御を捨て攻撃を仕掛ける。けど背後から放たれたレーザーに体を撃ち抜かれて。
形勢逆転、とはまさにこの事だろう。
「まさか、一斉攻撃をたった一撃で崩すとはね……」
「このパワードスーツは正規軍が作った物だ。ここよりも技術が上なのは流石としか言いようがあるまい」
「まって。今、正規軍って!?」
「ああ。――正規軍のスパイは僕だ」
「っ!?」
街中に潜んでる連中だけじゃなかったのか。心の底から驚愕するけどそんな暇なんてない。だって彼は振り上げた光線剣をリコリスの脳天に叩き込もうとしたのだから。それも冥土の土産話も含めて。
――だからこそ動けた。
「先の戦いも含めて僕が情報を提供していた。情報屋が例のマスクを持っていた点も、それなら合点がいくだろう? それじゃあ、死んでくれ!!!」
「ッ!!!」
きっと奥の手でもあったのだろう。リコリスは既に光線剣を握られてはいなかった右手を振りかざした。本来ならきっとそれで防げたはず。
でも、そこにユウが割り込んで巨大な一撃を受け止めた。
左手には光線剣。右手には電撃を放出し続ける剣を握りしめて。
「なっ、ユウ!?」
「お前……。いいぞ、最高だ!!!」
すると彼は更に力を入れてユウもろともリコリスを殺そうとする。だから全身全霊で力を入れるけど、既に体は悲鳴を上げて崩れていく。今まで十分に筋肉を鍛え上げて来たつもりだったけど全然足りないらしい。
やがてユウは膝を突いて圧力に潰されそうになる。
全身が燃え盛る様に熱い。どうやら全身を駆け巡る痛みを熱と錯覚している様だ。それだけが唯一の救いと言った所だろうか。と言ってもその救いですらも苦痛である事には変わらないのだが。
そろそろ限界を迎える。……いや、限界はとうに超えているからそろそろ死ぬの方が正しい。そう思ってしまう程奴の一撃は重たかった。
――ここで死ぬな。死んだら、みんなが絶望する。リコリスも、みんなも、赤の他人も救えなくなる。そんな事させてたまるか!!
みんなが助けてくれるまではどうしようもないだろう。手も足も出ない中で反撃するなんてもってのほか。それどころか耐え続ける事すらも難しくて――――。
瞬間、ミーシャの声が響いた。
『――止めて!!』
「っ……!?」
突如響いたミーシャの声。それに全員が反応した。
すると激しい物音がした後にミーシャの声がもう一度響き、この戦いをやめさせるように訴えかけた。それも背後からは押さえつけられる様な音が響きながら。
『おい、コラ!!』
『お願い止めて、もうみんなで戦わないで! 誰も傷つかないで!』
「ミーシャ……」
抗っているんだ。助けられるだけなのが嫌だからこそ、自分も何か役に立ちたいと、そう思って必死に抗っている。音からして体を色んな所に打ち付けて痛いはずなのに、それでも。
彼女がそこまでして抗っているのにどうして力のあるユウがこんなところで立ち止まってられるのだろうか。
『私はもう、誰にも傷ついてほしくなんてない! みんな、みんな……私にとって、大切な人達なの!!』
「――――!」
腕に更なる力が入る。そんな力、もうどこにもないはずなのに。次第と起き上がるユウに彼も驚愕したらしく、眼を皿にして光線剣を持ち上げるユウを見た。口元に微笑みを浮かべながらも起き上がるユウを。
やがて完全に彼の光線剣を弾く。
「……忘れてた。俺はただ守りたいだけじゃない。みんなと、俺にとっての大切な人達と、一緒にいたいだけなんだって」
「お前、力が!?」
「みんなと一緒にいたいから。この世界で生きて行きたいから。だから護り通す! みんなと生きる未来の為に! ――俺は、その為だけにここにいるんだから!!!」
音を立てて弾くと彼は驚愕しながらも後ずさりをする。
そうだ。やりたい事なんて何も変わらない。みんなと一緒に生きたいだけだ。駆け抜ける今も、絶対に譲れない未来にも。その為にも、ここで死ぬわけにはいかない。
「未来……? はっ。たかが一人で何が出来る。お前一人が叫んだ所で何も変わりはしない」
「……そうだな。“独り”なら何も出来なかったと思う。昔みたいに勝手に独りだって決めつけて、誰の手も借りないで、全部独りで抱え込んで」
覚悟が研ぎ澄まされる。極限を越えた究極まで。前の自分なら今もずっと絶望して独りで抱え込み壊れる事を選択していただろう。それが自分に相応しい最期だって。元々死んでこの世界に来ているのだから命なんてないも同然。そう考えていたはず。
「でも、今は違う」
その時、瞳は白く光り一輪の花弁が舞い上がる。
「今はもう独りなんかじゃない。沢山の人に囲まれて、沢山の人が信じてくれてる。俺がみんなの希望である事を、求めてくれてる人がいるんだ」
右手に握りしめた剣を構える。剣先を奴に向けては限界まで引き絞り、例え脆い一撃であっても全身全霊の一撃を放とうとする。
だから彼はレールガンを捨ててパワードスーツの全エネルギーを集中させると光線剣に接続して攻撃しようとする。同時に他のロボットからもエネルギーを集めながら。
「それだけで俺は前を向ける。それだけで、俺はこの先を生きていける。戦う理由も、立ち上がる意志も、生きる意味も、十分なんだ。だから、それこそが――――」
みんなの希望になりたい。リコリスの様に、誰も彼もを救えるような、そんな人間になりたい。それがタブーだからこそ成し遂げた時、どれだけの人が救われるだろうか。……でも、それだけじゃこの希望は止まらない。
ユウが希望を抱けるのはみんながいてくれて、信じてくれてるから。でも、何よりも、希望であるユウを求めてくれてる人がいる。それが、
「――俺だけの、希望だから!!!!!!!」
瞬間、ステラの花弁が大量に舞い散る。純白の瞳は真っ直ぐに彼を捉え、剣からステラの花弁が舞い散る中で突き出すと、刀身が伸びて一直線に彼の元へ向かっていく。だから彼も光線剣で対応するも威力はまさかの互角で。
どうしてステラの花弁が剣から舞い上がるかなんてわかりっこない。でも、この花弁がユウの覚悟を示してるんだって事だけは理解出来た。
ユウの剣と光線剣が激突すると激しい衝撃波が周囲に放たれ、ロボットどころかみんなも吹き飛ばす威力で互いに激突していた。
でも、まだ足りない。ユウの希望だけじゃ到底彼には届かない。
だからこそ、みんなの希望なら届くはずだ。
「――――――ッ!!!」
声なき咆哮を放つ。いや、この場合は声が掻き消されてるって言った方がいいかもしれない。
彼も苦しそうな表情で耐え続ける。けれどステラの花弁が舞う度に威力は増して行き、やがて、ユウの一撃は彼の全てを打ち砕く程の威力を発揮して――――。
その時、この世界で初めて誰かの希望が絶望を塗り潰した。