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Lost Re;collection  作者: 大根沢庵
Chapter3 遥かなる予兆
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116  『揃う役者』

「――――ッ!?」


 奥の方で狙撃しようとしているロボットを見付けて驚愕する。だってそのロボットが狙っていたのが奥にいたユノスカーレットだったのだから。故にユウは姿勢を低くすると即行で守りに入って腕を伸ばし、銃弾は左の二の腕に直撃して大量に血を流した。

 直後に激痛が全身を迸り、ユウは態勢を崩して迫って来るロボットを見た。


「ぐっ……!」


「ユウ!?」


 普通ならこのまま真っ二つにされて死ぬ所だろう。でも足を踏ん張って剣を引き絞るとロボットに叩き込んで雷を流し込んだ。

 その後にも大量に迫りくるロボットは手におえない数で、激痛も手伝いユウが追い込まれるのにそう時間は掛からなかった。それこそ武装を使ってもどうにかなるかどうかの境目辺りで。


「ユウ、大丈夫!?」


「大丈夫だ! こんくらい、前の傷と比べたら何てことないし!!」


 たかが狙撃銃で撃たれた程度の傷だ。そんなの今までの戦闘と比べれば何とでもなる痛みである。だって今までなら骨折とか火傷とか捻挫とか、そんな大怪我をずっとし続けていたのだから。何より、ミーシャの抱いている恐怖に比べればどうと言う事はない。

 でも、重大なのは次の攻撃からであって。


 ――は?


 みんなが吹き飛ばすロボットの隙間から見えた、複数のロボットが構えるレーザー銃。それはユウに狙いを定めると一斉に光を放ってレーザーを発射する。だから双鶴で咄嗟にガードするも微かな隙間から漏れる訳で、大きく弾かれてはユノスカーレットの元まで吹き飛んだ。


「ユウ君!」


「んなっ!?」


 弾かれた音で気づいたのか、隊長達が一斉にこっちを見た。でも既に第二射は放出されている訳で、刹那の時を得てユウの目と先まで接近していた。一応剣を前に翳して防ごうとするけど防げる訳がなく――――。

 直後、その刹那を埋めて入って来たリコリスが光線剣でレーザーを真正面から弾く。


「ぐっ! らああああああぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!」


 そんな咆哮をして放射線状に弾くと、次々と放たれるレーザーを柔軟な動きで全て弾き落とした。一撃でも触れたら即死を思わせるレーザーに対して絶対に引け目を取らない。全てを明確に捉えては光線剣のド真ん中に当てて二人を死守した。

 やがて第一波が終了した直後に叫ぶ。


「ユウ、今!」


「――――っ!!!」


 双鶴を第二武装に変形させながらもロボット達に飛ばす。すると大爆発が起きてはロボットを木っ端みじんに破壊し、その爆炎の中から双鶴が顔を出して戻って来る。そのまま周囲のロボットを破壊しながらも身の回りまで戻させるとユノスカーレットを抱えて移動し始めた。


「サンキュー、リコリス!」


「これくらいどうって事ないよ!」


 そう言いながらも走る向きを変えると彼女がグッドラックのサインを翳してウィンクをした。ユノスカーレットを抱えたユウは側面から攻めて来るロボットに対応し、第二武装の双鶴で一蹴する。

 そんな戦いを繰り広げていると彼らの声が聞こえて来る。


『クソッ、何だよそのデタラメな力は……! ならいい。アレを出せば……!』


「アレ?」


 その言葉に全員が疑問に思っただろう。一体何を出す気なのだろうと。でも、そんな疑問はあまり長く続かなかった。だって次の瞬間にはある所の扉が開いて黒ではなく赤黒いのが登場するのだから。それも今までのフォルムとは違いやや大きくなり、明らかに人が乗っていそうな形の。

 けれどタイミング的にこれが本命じゃないと言う事はみんな理解出来た。


「おい、何かでっけぇのが出て来たぞ。何だありゃ」


「少なくとも時間稼ぎだろうな。よくもまぁあんなのを作れるモンだ」


「って事は速くあいつを倒す。それでOK?」


「「OK!!!」」


 アルスクとボルトロスの呟きにエルピスが思考を纏めると全員で頷いた。けれど通常のロボットを混ぜての戦闘にもなる。そう簡単に倒せる訳が……。まぁ、そこら辺は流石隊長達としか言いようがない程の強さで、一瞬にして通常のロボットを蹴散らすとそれぞれで本気を出して戦闘準備を整える。

 だからユウもユノスカーレットを下して戦闘態勢を取る。


「ユウ、怪我は……」


「ごめん。今はそうしてる余裕はないかな。先にあいつを倒さないと!」


 そう言って突っ込むとさっきと同じ様に少し離れて後を突いてきてくれる。別に表だって戦わなくとも隊長達が何とかしてくれるはずだし、ユウはユノスカーレットを守るだけでもいいだろう。実際にそうした方がユノスカーレットの安全性はぐっと高まる。

 でも、そうしたくても出来なかった。これはユウの覚悟と行動が重なり、それにみんなが共感してくれたからこそ生まれた一種の反乱。その指揮者がこんなところで戦いを見守っているだなんてユウには出来ない。


 きっとベルファークもこんな感覚だったんだろうなぁ。そんな感覚を抱きながらもみんなの元に駆け寄る。

 今一度彼の気持ちが理解出来る気がする。彼の思考は微塵も読めないが。


「――――らぁッ!!」


 刹那の気合いを入れて電撃の刃を振ると赤黒のロボットから放たれるレーザーの軌道を逸らし、ボルトロスに反撃の隙を与えた。だから彼はその隙を突いて銃弾の雨を大量に浴びせる。でもやはり普通の装甲じゃない様で、銃弾は効きはするものの大した効果は期待できない様子。


「結構硬いのか……!」


「なら俺に任せとけ!!」


 するとアルスクは足元を爆破させた衝撃で飛び上がり、そのまま撃ち出されるレーザーを体を捻って回避すると零距離まで接近して握りしめた拳を思いっきり叩きつけた。直後に大爆発が起きてロボットの残骸が吹き飛ぶほどの風圧が生まれるけど、それでも大打撃を与えるには至らなかった。

 だから彼は驚愕して目の前で放たれそうになったレーザーの光を見る。


「なっ!?」


「――危ない!」


 それをリコリスが助けた直後にエルピスが飛び上がり、両手に握った剣を一つの大剣に変形させつつも振り下ろした。それはレーザーの射出部分に叩き込まれて爆発を引き起こした。そこから斬撃なら効くのだと理解してようやく弱点を見付ける。


「斬撃! 斬撃なら一点集中でこじ開けられるかも!」


「斬撃ね。なら……ユウ、お願いできる?」


「OK!」


 普通なら隊長達と肩を並べて戦うなんて異例中の異例だろう。だってユウよりも遥かに強い訳だし、逆立ちしたって到底届くはずのない人達だ。そんな人達と戦えばこっちが足手まといになるのは確定的。

 ――だからこそ、諦める訳にはいかないんだ。


 ユウは姿勢を低くして走り出すと斬撃手段を持たないボルトロスに接近し、彼の力を借りて攻撃手段を整えた。と言っても彼が攻撃している内に側面から接近して攻撃する、という如何にも簡単すぎる戦法なのだけど。

 でもリコリスとエルピスの剣はかなり特殊な物だ。リコリスはアークで刃の部分を形成してるから威力が凄まじいし、エルピスは剣に何かしらの細工をしてあるようだ。それに合体して大剣になる訳だし。果たしてユウの攻撃が通じるかどうか。


「いい? 三・二・一で行くよ!」


「了解!」


「安心しろ。俺が援護してやる」


 するとアルスクが滑り込みながらも横に並んで援護を開始してくれる。だから足並みを揃えて走り出すと一発目のレーザーを回避し、懐に付いていたミニガンはアルスクが炎で弾丸を溶かしてくれる。だから二人で二方向に別れると振り下ろされた腕を経由して駆けあがり、飛び上がっては剣を逆手に持ち微かな隙間に思いっきり突き刺した。

 そして放電させるとある程度の機能が停止され――――。

 瞬間、幾重にも回転して二人を振り落とす。


「なっ、電撃が効かない!?」


「それどころか電撃対策もしてるみたいだね」


 さり気なく受け止めてくれたリコリスにお姫様抱っこをされながらもそう喋る。自然な流れでお姫様抱っこをされているのはさて置き、電撃が効かないのなら色々と状況も変わって来る。だって技で通じない以上力技でしか通じないはずだ。鋭く一点を突く力技。それが出来るのはエルピスとリコリスだけだろう。

 アルスクは全体を通しても重攻撃を得意としているけど、剣の様に一点を突くと言う点に関しては劣ってしまうはず。


『はっはっは! どうだい、僕達が作った最高傑作は! 手も足も出ずに蹂躙されるが――――』


「さっきからうるさい!」


 自慢げに話し始める彼の声がそんなにうっとおしかったのか、エルピスは火球を飛ばしてスピーカーを破壊させた。っていうかエルピスって魔法使えたのか……。

 そうしているとみんなは物凄い連携でロボットを包囲しては一斉攻撃を始める。もちろんユウもその中に加わって攻撃した。何をする気かは分からないけど、これ以上に凄いのが出て来たなら流石に同時に相手は出来ないはず。


 だからこそ先手必勝で動き続けた。ユウは双鶴を足場にして不規則な動きで注意を引き、時にはみんなが空中に投げ飛ばされた時の足場に使い、時には真正面から攻撃して態勢を崩させる。

 そのおかげかかなり攻撃が通りやすくなった様で、全員の動きに少し変化が見え始める。


「エルピス、俺があいつを止めてみせっから、その隙にデケェの叩き込め! リコリスとボルトロスは左右を頼む! ユウは注意を!」


「「了解!」」


 みんながアルスクの指示通りに動きだし、ユウは変わらずレーザーが飛び交う中で注意を引き続けた。するとリコリスとボルトロスが左右から攻撃を叩き込んで足元のバランスを崩しアルスクが攻撃を仕掛ける。極限まで集中力を高めては腕に力を入れ、一歩を踏み出してはアッパーをするかのような動作で拳を振り上げて――――。

 直後に赤黒の機体は大きく仰け反っては巨大な隙を見せる。だからこそエルピスは大剣のリミッターを外して紺色のオーラを纏わせては叩き込んだ。


「らああああぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!」


 龍をも思わせるオーラと共に全力で振り下ろすと真っ二つに叩き切り、普通なら絶対に斬れそうにない装甲を完全に切り裂いた。故に巨大な爆発が引き起こって大きく吹き飛ばされる。それを間一髪で双鶴に乗ったユウが助けつつも様子を見た。

 炎上してから動かない。と言う事は倒したと見てもいいのだろうか。


「何とか倒せたみたいね……。じゃ、次はアレかな」


「アレ?」


 ふと上を見上げるから釣られて筒抜けになっている空を見上げた。すると何かが落下して来ていて、ユウは咄嗟に距離を離してソレを回避した。直後に高速で落下して来たそれは床に無数の亀裂を走らせる威力で着地し、それなのに余裕そうな動作で動き始めた。

 ……例の男が乗っている、青色のパワードスーツが。

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