梶原奈義の不合理な選択
臨界突破者、奈義は――世界最強の、さらにその先、人類未到達の扉を開けた。
人型戦闘機と人。人体模倣による操縦技術の限界を、梶原奈義は突破した。
それは人の真似をする機械という枠組み自体を壊すことによってなされた。すなわち、梶原奈義こそが人型戦闘機の一部であると考えること。機械が人を真似し、人が機械を真似することで、機械でも人でも届くことのない――超臨界に至った。
人類最強の戦士のさらなる成長。
今日、この瞬間――自分の力を正しく理解した奈義による、真の全力が披露された。
「はあ……はあ……」
飛行ユニットからすでに噴射はない。奈義の機体もハービィもすでにカラフルな地上に立っていた。ここに演習の勝敗は決していた。
ハービィは地に膝をつき、うなだれていた。奈義も脱力し、戦闘機を操作する気力がわいてこない。
立ったまま、撤収班にすべてを任せてしまおうか。そんなことを考えているとグーとお腹が鳴った。
「終わった……」未だ消えぬ高揚感が、余韻として残っている。
奈義はハービィへ振り向かずに、感謝を告げたかった。これからも自分に勝とうとする学でいてほしいと、願って。
「学くん、今日はありがと――」
感謝を遮るようにそれは響いた。
『梶原奈義を倒したい』
そこで予想外の事態が起きた。
奈義の機体に衝撃が走る。視界に警告のメッセージが複数表示された。
〈左翼、飛行ユニット損傷自己復旧不能。戦闘続行不可。帰投してください〉
「――え?」
理解が追いつかなかった。演習は終わったはずだった。
振り向くと、ハービィが煙立つ銃口を向け、奈義を狙っていた。そもそも発砲されて機体が損傷を受ける理由がわからない。それではまるで実弾ではないか。
奈義は考えるより早くその場から立ち去った。飛行ユニットの片方が使えないため、走行による移動となる。飛行できない戦闘機はただの高価な棺桶に成り下がる。アクロバットのみで、ハービィが放つ続く弾丸を避けきった。ブロックを盾にし、ハービィから逃げる。
機体のバランスが悪い。人体模倣の絶技はその「形」に依存する。機体の形が変われば、パイロットはそれに対応しなければならない。
額には汗が吹き出していた。
「どうして? どうして撃ってくるの? 六分儀くん」
もう演習ではない。これは戦闘だ。
奈義はペイント弾すらない一二ミリ突撃砲、超々合金ナイフ、爆雷を模した閃光弾のみ。相対する敵機はナイフ、閃光弾に加え、無防備なら戦闘機なら二十秒ほどの連射で解体できる突撃砲。
装備による戦力差が歴然としている以上、狩りに近かった。彼女は、思いつくままに逃亡した。両の足でしか移動できない。その振動は焦りに変わる。
「博士! 聞こえているんでしょう! 戦いを終わらせてください!」
通信エラーが表示される。奈義はわけもわからず、今まで庭のように慣れた場所で、孤立していた。どうしてこんな事態になっているか、理解できない。
『梶原奈義を倒したい』
その『声』が聞こえるたびに、彼女は逃げる。発砲音が背後に鳴る。二本の足で走る。
それを飛行ユニットで上空から追いかけるハービィ。彼女は死の危険に、立ち向かう気力をそがれていた。誰かに助けを求めたくて、涙がでる。
「もうやめてよ……」
ブロック隠れながらも背後には破壊の轟音が響き、粉塵をまき散らせる。緊急事態に慌てる以外にできることがない。恐怖と焦りは彼女から勇気と思考を奪い取る。
そこで、涙舞う操縦席に機械音が鳴った。
〈演習項目が更新されました。勝利条件:なし 敗北条件:六分儀学に対して敗北を認めること
なお、あなたには攻撃権がありません。敵機を攻撃し、破損させた場合、罰則が科せられます〉
淡白な文章に気が狂いそうだった。戦うことすら許されぬ戦場で、勝利さえ定まらない。約束された敗北。
明らかな不平等。仕組まれた戦いに浮かぶ顔はひとつ。
――オルガ・ブラウン……!
怒りが湧いた。けれどそれだけだった。その憤りが自らを奮い立たせることはない。
背後から突然、炸裂した熱量が彼女を襲った。爆風は足元から彼女の機体を揺さぶった。吹き飛ばされ先にはさらに弾幕が待ち受けていた。一挙一動が命がけの選択を強いられる。
――向こうは爆雷すら本物なのね……。
諦めに意志の力が奪われる。目を閉じてしまいたかった。息を止めてしまいたかった。
しかし、こちらの事情などに容赦はなく、響き渡る情熱。
『梶原奈義を倒したい』
――そうか、こんな不平等な戦い、学くんがするはずない。操られているから……だから、明確な意思が伝わってこないんだわ。
それは事実であったが、気づいたところで現状を打開する術はない。奈義も学も被害者と言えるが――それを助けるヒーローもいなければ、泣き寝入りを憂う復讐者もいない。
この場には、彼女と彼しかいない。
奈義は逃げようにも飛行ユニットの破損で、大きく距離を離せない。『声』も聞こえない以上、勘に近い予測と器械運動のみで凌いでいた。
――どうすれば、終わるのよ……。
その問いに思い当たる敗北条件の一文。六分儀学に対して敗北を認めること。
――それでこの悪夢は終わるのね。
敗北を認めるだけでいい。それでこの地獄から抜け出せる。火炎と弾丸。圧倒的な不利を覆せないなら、負けてしまえばいいのだ。そもそもこのような不正まみれの演習に勝ちも負けもない。自衛のために、負けてしまえばいい。
それはとてもいいアイディアに思えてきた。
しかし、考え事など許されない。攻撃の手が緩むことない。
逃げ惑う奈義に、より強い思念が届いた。
『倒したい。勝ちたい。認められたい』
彼の情念が、奈義の頭に流れ込んでくる。
――認められたい? どうして私なんかに……。私より強くなることがどうしてそんなに重要なの?
彼の強烈なモチベーションはハービィに伝達される。今の彼はひどく原始的だ。願いを叶えるためにその引き金を引く。
六分儀学は、梶原奈義から、強者と認められたい。その願いを叶えてやれるのは、奈義しかいない。そして、それは奈義の願望に直結する。
「私は……君から愛されたいよ」
奈義は、六分儀学が好きだった。ずっとずっと好きだった。この交わらない平行線を終わらせる瞬間は、今だと思った。
逃げ惑う彼女の前に爆雷が落とされた。火炎を撒き散らし、風圧で彼女の機体を吹き飛ばした。機体は前のめりに倒れた。すぐに立ち上がる。
止まれば打たれる。彼女は絶えず、動き続ける。狙われた背中に追いつかせない。
『梶原奈義に勝ちたい』
奈義はどの選択肢が最善か、答えを出そうとした。
思い出されるのは、彼との記憶だ。始めて見たとき、否、心の『声』 を聞いた時、なんて偽りのない人なんだろうと、驚いた。すぐに、「自分はきっとこの人を好きになる」と直感した。彼女の勘はよく当たる。そこからは、ただ抗いがたい引力があっただけだ。
彼と歩む未来はきっと素敵。考えるだけで、頬が緩んでしまうくらい、素敵。
なら、この場でどうするのか。
『梶原奈義を倒す』
それでもガンガンと鳴り止まない、彼の悲鳴のような情熱。
彼の敵意。
彼女の好意。
その二つがごちゃごちゃに混ざりあって、めまいの中で、彼女の頭に浮かんだのは、あの言葉だった。
「一度でいい。六分儀学と戦い、わざと負けてあげなさい。そうすれば、彼は君を見てくれるはずだ」
――あ。
それは駄目だ。
――そんなことをしたら、嘘をつくことになっちゃう……。
なによりそれを嫌ったのが梶原奈義ではなかったか。
――私は……
『梶原奈義を』
――六分儀学を
『倒したい』
愛してる。
奈義は嘘をなにより嫌った。だから学を好きになった。
ここで自分の実力も発揮せずに恐怖に駆られて負けを認めることは、彼女の実力に嘘をつくことになる。
そう思ったから。
奈義は前を向いた。
「戦わないと……!!」
ここで簡単に負けを認めてしまえば、今までの彼女の苦悩は、彼の努力は、これまでの関係は全てなかったことになってしまう。
嘘になってしまう。
それができないから、彼らは苦しんでいたのだ。それができなかったから、こうして彼らは今まで二人で過ごしてきたのだ。
何気ない昼食の会話も。
帰り道での冗談も。
施設内にいる大勢の人の中から、彼の横顔だけを盗み見た瞬間も。
すべて、嘘だったのだろうか。
「そんなわけないじゃない!」
そういう奈義の頬には、先ほど流した失意の涙と異なる、熱い液体が流れていた。炎上したブロックを睨みつける。心は折れない。彼も、彼女も。
そうして、彼女は降伏する選択肢につばを吐いた。
炎の中で、奈義の機体は立ち上がる。灼熱の風景に、悠然と佇む巨人のシルエット。
敗北を認める以外に、現状を打開するための選択肢はもう一つあった。
それは奈義自身でハービィを無力化することだ。
しかし、装備だけを見ると戦力差は歴然だ。ハービィの動きは、六分儀学のポテンシャルを最高潮に高めていた。この機体ならば、六分儀学は接近戦においても、演習時の奈義と同等といえるほどだ。それでも、彼女は残ったこの選択肢が最も、現実的だと断ずる。
加えて、奈義に攻撃は禁止されている。
試しにナイフを手に取ろうとするとディスプレイにエラーが表示された。
〈攻撃を行うことはできません。武器を捨ててください。警告を無視すれば、三十秒後に操縦権がはく奪されます〉
鳴り響く警告音に、奈義はある人を思い出した。
「ルイス博士……」
――ありがとう。きっとこうなることを予想していたのかな。
〈カウントダウンはじめ、30……〉
前日、奈義はルイス博士を訪ねた。その際にルイスは奈義にメモを記した紙きれを渡していた。その内容は――。
「エラー解除! 解除コードは〈greenflash〉 私は戦います!」
これで、奈義は機体の全権を委任された。これより演習内容に縛られない一つの暴力として振る舞うことができる。
〈コード承認〉
絶体絶命の逆境において――人類未到達の戦士、「臨界突破者」梶原奈義が再起した。
◆
ハービィに乗る彼の意識は、白昼夢のように朧気な輪郭のまま、焦りに駆られていた。打ち放つ弾丸がインクをまき散らさなくても、投げた閃光弾から炎が出ようとも、そういうものとして受け入れられた。ただ、目の前の目標を超える。その情熱だけが、彼を動かしていた。
ハービィは搭乗者の動きを先読みし、実行に移す機能を持つ。それにより、パイロットは脳の信号をコンマの遅れもなく機体に伝えることができる。搭乗者は機体がそのまま肉体になったかのような、境界線の崩壊を感じることとなる。
しかし、開発段階から、その同調率が高すぎる場合、脳に障害を来す危険性があるのではと、ヒューマテクニカ社の中でも指摘されていた。
当然オルガも承知していた。
しかし、彼にとってはそれこそが狙いだった。
オルガの当初の狙いは一つ。梶原奈義の恋を成就させること。そしてその後の彼女を管理下に置くこと。
だから計画の第一段階は、今、梶原奈義と六分儀学を戦わせ。ひとまず梶原奈義を負かすこと。
それにより学と奈義は対等となり、奈義の恋慕が伝われば、学も奈義を女として見るだろう。
そして、奈義は愛を知り、戦士として完成する。
ここまではオルガ・ブラウンがルイス・キャルヴィンに話しておいた計画の全容である。
けれどオルガの狙いには続きがあった。
ハービィに乗せた学は、同調率のオーバーフローにより、脳に後遺症を残す。オルガはこれまでの研究でどの脳領域に障害が残るか把握している。
そこで、学はヒューマテクニカ社の治療を受けざるを得ない。
オルガは学を人質にとり、その恋人である奈義をコントロールするつもりでいた。
これが、オルガ・ブラウンが計画した事件の真実である。
すなわち、ハービィとの同調で学の人生は終わろうとしていた。
同調率は99.9パーセント。
六分儀学は今や肉体の楔から放たれ、真に自由になっていた。
ハービィは彼に夢を見せる。
意識を希薄にして、搭乗者本人の願望を強く浮き彫りにする。
「梶原に勝ちたい」
六分儀学の感情は、その一点に集約された。ハービィは願望を単純化し、明確な手段を提案する。彼の平坦な心象にはどんな言葉も届かない。
すでに彼はハービィという戦闘機のパーツの一つとなっていた。推進力という袋小路に学はいた。
今の彼を止められるのは、圧倒的な暴力で彼の内側に飛び込み、頬を叩いてやれる人間だけだ。
そんな人間はこの世界にはいない。
超能力のように、遠くから言葉もなく彼の気持ちを分かってやれて、それでいて彼以上に強いパイロットなど、都合よくこの場にいるはずは――。
◆
奈義の不利は変わらない。敵の装備は実弾の入った十二ミリ突撃砲、戦術爆雷、格闘用超々合金ナイフ。対する奈義の装備は、ナイフ二本のみ。加えて飛行ユニットの破損が致命的だ。通信はなぜか使えない。
しかし、孤立無縁の戦場で、彼女は確かに顔を上げた。
「いくよ、六分儀くん」
高低差を活かしハービィはブロックの上にいる。奈義は敵の視界に入らないよう、ブロックの陰に隠れていた。
攻撃に出ようとするならば、ハービィを引きずり落とすか、ブロックを上らなくてはならない。飛行ユニットの損傷を考えると、後者は選べない。飛べない戦闘機に地の利はない。
しかし、それは彼女が負ける理由にはならない。
奈義は走り出す。ブロックの陰を抜け出し、実弾によって抉られた地面を駆けた。彼女の機体は振動と共に最速力でハービィの視界に姿を見せた。
ハービィは直感の奴隷だ。直ぐに奈義へ銃口を向け、発砲した。容赦のない劣化ウランの雨に、奈義はただ疾走で応じる。
巨大構造物の多い地形だ。彼女はハービィのいるブロックから離れ、弾に当たることなく、別のブロックの陰に飛び込んだ。
奈義の機体のスライディングに煙が立つ。モニターから、彼女とハービィの距離は百メートル程度とわかる。
息を整えて、もう一度駆け出した。ブロックの陰から陰へ、ハービィの視線を横断する。彼女には狙いがあった。
地の利。
武器の差。
今は効果のない読心能力。
あと、彼女に残されているものはなにか。決まっていた。彼女こそ、肉体を置き去りにする超越者、臨界突破者。ならば、操縦技術そのものが彼女に残された最後の切り札になる。
彼女は読心能力を持つため、対人戦に負けはない。しかし、無人機を圧倒するには、読心術は必要ない。
彼女の羽化は既に始まっていた。
ハービィは、ちょろちょろ動き回る奈義にしびれを切らし、ブロックからブロックへ移動しようとした。飛行ユニットを吹かして、あくまで空中移動をするが。
「ここ!」
奈義は空中に飛び立ったハービィを見逃さなかった。時が止まったような空間のなかで、彼女の機体はしなりをあげて、軋みを恐れず、低い姿勢をとる。そのまま、腕を横なぎにするように、超々合金ナイフを投げた。瞬きせずとも、軌道を見逃す一線。彼女はそれを投擲した。
その一刹那後。
ナイフはハービィの飛行ユニットに火花をあげて、命中していた。命中したという結果のみを切り取られたような、絶対的な一撃だ。
梶原奈義はただ強い。
対価もなく、そう定義されたように強い。彼女の心は弱者のそれだが、戦闘機を担うその肉体は、技能は、鋼鉄の巨人にトレースされる。
人体模倣。
奈義が人型戦闘機の模倣しているのか。人型戦闘機が奈義の模倣をしているのか。
どちらでもない。
奈義も戦闘機も、一体となり、戦場に君臨する。
梶原奈義は、ヒューマンミメティクスの臨界をすでに超えていた。同調率は優に110パーセントに到達しなおも増加し続ける。
空中でバランスを失ったハービィは、その超直感で、即座に飛行ユニットを外すことを選択した。落下する向きを調整し、脚から着地できるよう重心を移動した。
着地に備えるハービィ。
しかし、その時、ハービィの頭部に二本目のナイフが突き刺さった。頭を仰け反らせたままで姿勢制御を損ない背中から落下した。パイロットには負担だ。
ただ、奈義はそれも良しとした。
「痛いよね。私も痛いよ」
お互いがお互いを思い、相手を思い通りにしたいという欲求と、離れがたい引力でつなぎ止められた二人。その青春は痛くて、痛くて、痛かった。
奈義の目には、彼と出会ってから始まった日々の重さの分だけ、涙が蓄えてあった。
それでも。
終わらせるなら今日だと、彼女は確信していた。
地に転がるハービィはもう、立ち上がることはできない。
「道具を殺すには、道具が果たすべき目的を果たせなくすればいいって、博士言ってたわ」
ハービィが戦闘機で、戦いがその目的ならば、戦えなくなったハービィは、死んだのである。
奈義の機体はゆっくりと近づき、その化け物の骸に対峙した。
しゃがみ、頭部に突き刺さったナイフを抜いた。
もはや彼女に、この鎧から伝える言葉はない。顔を見て、話さなくてはならないと思った。
奈義は手に取ったナイフで、ハービィの胸部を慎重にえぐり取った。溶接部やコード類が千切れる。鈍い音。力任せにその棺を解体する。
四層ほど隔壁を切り破ると、コックピットに充填された樹脂が見えた。奈義はナイフを置き、両の手で、そこをこじ開けた。
金属がへしゃげる音は不快で高い。
痛みに喘ぐハービィを彼女は黙らせようと、その最後の一層を剥がした。
そこには、彼女の知っている彼がいた。
目に隈を作り疲弊した顔の彼がいた。
奈義もコックピットを開く。
気密が破られた音がした。外の光はまぶしい。
奈義は這い出るように、外に出た。
機体の胸部から顔を出す彼女は、学を見下ろす形になる。
目があった。
あるのは風の音。
鳥の声。
乾燥した大気。
この世界に。
二人だけになったような。
感じがした。
「六分儀くん、好きです」
沈黙したまま学は、驚きを見せ、嬉しさと恥ずかしさが零れ、そして目を閉じ、悔しさが現れ、息を吐いた。
奈義と学は言葉の限界を超えた、痛みを共有していた。奈義は彼の答えを知っている。
彼は口を開いた。
「梶原……。ごめん。また……挑んでもいいかな……」
奈義は笑った。それが返答のつもりだった。行われた問答は、会話として噛み合っていなかった。
その齟齬は、彼らの関係そのものを表しているようだった。
こうして、梶原奈義の初恋は、完璧に、完全に、完膚なきまでに、粉々に砕け散ったのだった。
その日、ルイス・キャルヴィン博士に全権を委任されたオルガ・ブラウンの命により、梶原奈義はエラー解除に伴う設備破壊、命令違反の罪で、独房に入れられた。




