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こちら、聲質研究部?  作者: 緋和皐月
第1章
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寿命縮めず歩こう少年?

 放課後。

 教室内の女子たちが、廊下を見て急に色めき立ちました。

 はっはーん、僕でもこれは読めましたよ。さては彼の人ですね、あのお方がいらっしゃったのですね、ええ、わかってますとも。

 ……僕のくせにふざけました。ごめんなさい。


「おーい、柳くん」


 とあるお茶のCMを思い出すような感じで、僕の名前が呼ばれました。

 ……分かりました、明日からどうにかして、お茶同様、煎じられてこようと思います。


「なので、そのイケメンオーラを振りまきながら爽やかに笑うのはやめてください、有徳さん」

「うん? 何が『なので』なのかはよく分からないが、分かったよ。笑うなってことだろ」

「いいえ、爽やかに笑わず普通に笑ってください」

「……なんだか難しいこと言うな、君は?」


 なんだか難しい……ああ、小賢しいと思われましたか、そうですか。


「ごめんなさい、死んできます」

「待て待て待て、何がどうなって、そうなったんだ、柳くん?!」


 ……ああ、こんな僕の命を惜しんでくれると言うのでしょうか。さすがイケメン、性格までカッコイイです。

 もう一生お伴します、なんならパシリでもなんでもします。


「不束者ですが、宜しくお願いします」

「いろいろ語弊が生まれることを分かって言ってるかい、柳くんよ?!」


 ごへい、ですか?


「……へい、おまち?」

「……君は天然なのかな?」

「……ああ、僕は魚だったんですね……」

「天然は天然でも、そっちじゃ無いよ?!」


 はぁ、と有徳さんは、額に手を当てて、溜息つきました。


「……まぁ、いいか。部活案内するよ。だから……おいで?」


 きゃぁぁ、と後ろで上がる黄色い悲鳴。

 なぜ今そこで、小声にしてタメたのか、お尋ねしてもいいでしょうか。


「……なるたけ、早くお願いできるかい?」


 どうやら彼も、自分のイケメンオーラに気づいているようです。

 さてはあれですか? モテ過ぎて困っちゃうな、ですか?

 僕の中のイケメン像ってそんな感じなんですけど、有徳さんもそうなんですか?


 ……ということは口に出さず、僕は素早く荷物を纏め、教室を出ました。

 ……皆さんの視線が、僕に集まりました。

 えーと……こういう時は、何か言わなければいけないんですよね、何か。


 さようなら。


「もう学校に来たく無いなと思います」

「急に何を言い出すのかな君は?! いじめられでもしたのかい?」


 ……あ、心の声と実際の声が、逆になりました。


「……じゃ無いです。さようなら」


 こうして僕は、有徳さんに先導されながら、部室へと向かったのでした。




「ここが部室だよ。……柳くん、聲質研究部に、ようこそ」


 爽やかに有徳さんが笑って、部室のドアを開けてくれました。

 そこに、僕を出迎えるように佇んでいたのは、2人の男子生徒で──


「ねぇねぇ鷹野〜、見学の人来る前に、ちょっとだけ、ちょっとだけで良いからさ!」

「嫌ですよ。どうせ貴方、あれ挿れるでしょう」

「いーじゃん! あんあん言えば!」


 ……ぱたん。

 静かに扉が、締められました。


「……あの、有徳さん、今のは」

「気にしないでくれ」

「いや、でも」

「気にしないでくれ」


 有徳さんの表情は、笑みを浮かべたまま、変わりません。


「大丈夫、何も無かったから」

「でもなんか、挿れるとか」

「何も無かったから」

「でも」

「何も無かったから」

「……」


 触れてはいけない事柄なのでしょうか。


「でも、健全な部活だから、安心してくれ」


 ……本当ですかね?


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