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こちら、聲質研究部?  作者: 緋和皐月
第1章
6/45

寿命縮めて歩くな少年?

 昼休憩。

 家から持って来た弁当をのそのそ食べ、図書室は何処にあるだろうか、と校舎の構築に、僕が思いを馳せていますと。


「やぁ柳くん。初めての教室はどうだったかな?」


 出ましたね、イケメン有徳さん。

 実を言いますと、初めての教室、という訳では無いのですが、まぁ引きこもりでしたし、初めて授業を受けましたよ。

 そうですね、やはり僕は学校生活というものが向いていないようです。

 中卒で我慢しておけば、今頃こんなことにはならなかったでしょうに。なぜ僕は、高校の入試を受けてしまったのでしょう。

 思えばあれは、数ヶ月前……


「柳くん? 大丈夫かい?」


 ……はっ、社会のカースト最底辺である僕のくせに、話しかけてくれた有徳さんをスルーして、回想に入ろうとしていました。

 なんて失礼な奴でしょう。有徳さん、いいえ、イケメン有徳武将様、今すぐ僕の首をはねてくださっても構いませぬ。


「……おーい、大丈夫かーい、柳くーん?」


 ……2度もスルーとか……これは、僕のくせに良い度胸してやがると、有徳さんに胸倉を掴まれて、この2階の窓から放り投げられるパターンですかね。


「……しかしながら有徳さん、僕は高所恐怖症なので、できれば地面に足をつかせた状態で、お願いできませんでしょうか」

「うん、まず、その話の展開は何処から来たのか、ご教授願えるかな?」


 あれ、どうやら違ったようです。


「ところで、何のお話でしょう」

「部活見学の話をしようと思ってたんだけども、君、放課後空いてるかい?」


 成る程。これはまさか、仲良しグループという、汗と涙と友情で出来上がっている運動部に誘われるパターンでしょうか。


「僕は運動出来ませんよ」

「その急な話の展開は、正直言って嫌いじゃ無いよ」


 有徳さんの、その綺麗な顔に、苦笑が浮かびました。

 ……嗚呼、そんな綺麗なイケメンの顔を、爪で引っ掻いてしまった僕は、天罰が下りますね。

 神様、全ては僕が悪いのです。


「私が言っているのは、文化部のことだ」

「文化部……ですか」


 学校生活に華やかさを加えようと奮闘する、あの美しいとしか言い様が無い、あの文化部のことでしょうか。


「僕は華やかさにも疎い下民です、ごめんなさい」

「……柳くん、さっきから思ったのだけども、君、なんだか謙遜が過ぎないかい?」


 いいえ全く、謙遜なんてものではありません。寧ろ僕なんかには勿体無い言葉ばかりです、もう色々ごめんなさい。


「まぁ良いか。それも個性だしね」


 ……個性……ああ確かに、社会カースト最底辺というのも個性ですね。


「私が紹介するのは、私が所属している聲質研究部だ」


 ……こえしつ、けんきゅうぶ?

 声の質を、研究する部、でしょうか?


「聲は声で超えていけ──。これが、我が聲質研究部の座右の銘だよ」


 ……意味がちっとも分からないのですが、僕はどうすれば良いのでしょうか。


「詳しい話は兎に角だね、放課後、空いてるかい?」


 何を仰るのでしょう、有徳さんは。

 僕は、引きこもりイコールぼっち、ですよ。放課後、遊びに誘ってくれるような友人も居ませんし、塾や習い事など高度なものなどには行けません。

 ですが、ちょうど今日から僕がハマっているゲームのイベントが開催されるので、暇といえば暇ですが、忙しいと言えば忙しいです。


「それでも、部活動見学くらいの時間は空いているのでした」

「うん、君のその、急に語り出すやつは、もうそういう性質だと思って受け入れるよ」


 有徳さんは、肩を竦めて爽やかに笑いました。

 さすがイケメン、ただ笑うだけで、周りの女子たちから黄色い悲鳴が上がるのですね。これがいわゆる、モテ男の特権ですか、そうですか。


「まぁ兎に角、そんなこんなで、放課後は空けておいて欲しいんだ。宜しく頼むよ」


 ウインクを1つして、有徳さんは去って行きました。

 ……不思議なことに、そのウインクからは、キザっぽさが一切感じられなく、寧ろ涼やかだと感じるほどでした。

 イケメンは、ウインク1つでも、格が違う……いいえ、世界が違うようです。


 なんて自分は、ちっぽけな存在なのだろう。

 そんなことを思っているうちに、昼休憩の終わりを告げる鐘が、高らかに響き始めたのでした。

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