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こちら、聲質研究部?  作者: 緋和皐月
第1章
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寿命縮めず 歩ける少年?

 有徳さんとミミィさんに案内されたのは、クーラーがガンガンと掛けられ、扇風機はゴウゴウと回されている室内。

 梅雨入りまじかだというのに、この寒さは異常なのではと思わせるような教室です。

 近くにあった温度計は、20度を遥かに下回っていますが、何故か周りの方々は平然としていらっしゃいます。

 ……僕の感じ方がおかしいのでしょうか。


 ちなみに、有徳さんとミミィさんは、


「ここが2年3組。私たちは隣のクラスだから、困った時は何時でも頼ってくれ」

「そぉそぉ〜、アリノリ様なら、なぁんでも出来ちゃうから、心配しなくていいよぉ」


 そう言って、この教室から去って行きました。


 ……ポツン、と残された僕は、自分の名前が書いてある、端っこの席に座りました。

 完全にぼっちですね。当然でしょうが。


 俯いて、自分の膝に視線を落としたまま固まっていると、予鈴が鳴り、担任教諭が教室に入って来ました。


「……雨野っっ!?」


 ……突然名前を呼ばれました。

 なんでしょう、怒られるのでしょうか。引きこもりのくせに学校来るなよ、ということでしょうか……。


「き、来たのか……」


 やっぱり来てはいけなかったのでしょうか。

 先生ごめんなさい。ご気分を害されたとおっしゃるのなら、速攻帰るので許してください。

 クラスメートの皆さんの目線が突き刺さってます。

 ああ、僕が居るのが目障りですか。もう来ないので、どうか、そんなに見ないでください。


「雨野……先生は、信じてたぞ」


 何を信じてたんでしょう。ああ、僕が3年間ずっと引きこもりを拗らせることを信じてらっしゃったのでしょうか。

 学校に来てごめんなさい。


「いつか必ず、雨野が先生の授業を受けに来るって、信じてたよ……もう、先生感動したよ!」


 先生は、はらはらと流れる涙を、首に掛けていた手拭いで拭き、きっと顔を上げました。


「もうこれは、『雨野が学校に来たぞ祭り』を開かねばいけない、先生は、そう思うぞ! どうだ、皆!」


 先生は、そんなに僕に登校して欲しく無かったのですね。分かりました、僕はもう進級なんて諦めます。


「松尾先生。雨野様が困ってらっしゃるから、やめてくださる? 見苦しいですし」


 縦巻きロールのツインテールを、ふわんと揺らして、女子生徒さんが先生の暴走を止めてくださいました。

 ……リアルで『〜くださる』なんて使う人、初めて見ました。成る程、縦巻きロールは当たり前、リアルでも通用する常識なのですね。

 僕の数少ない二次元の知識も、少しは役に立ちそうな気がして来ました。

 ……でも、やっぱり、上手くやっていける気はしません。

 今すぐ家に帰って、引きこもりたいです。

 ですが、そんな度胸や勇気が無い僕は、俯くしかありません。


「分かりましたら、さっさと朝礼を始めてくださる?」


 縦巻きロールの女子生徒さんが、冷やかな目線を先生に向けました。

 ……この位置だと、なんだか僕も一緒に怒られているみたいです。

 ……なんか、ごめんなさい。


「も〜、間宮は相変わらず、手厳しいなぁ。そんなんだから、彼氏居ない歴イコール年齢、になるんだぞ?」

「あら、松尾先生。このクラスの学級委員長である間宮桃李の前で、それ以上醜く騒ぐおつもりなら、消えてくださる?」


 ……怖いです、この女子生徒さん。

 あ、このクラスの女王様的存在なのでしょうか?

 だから、縦巻きロールですか……納得です。


「さぁ〜て! 朝礼を、はっじめーるぞぉぉ! 皆、きりーつ!」


 だんだんと、室内温度が上がってきていることに気づきました。

 エアコンが負けそうです。やはり、先生という方々は、エアコンの冷涼風にも負けないようですね……お見事です。


「雨野様、松尾先生が特殊なだけですので、勘違いなされないでくださるかしら?」


 ……縦巻きロールの学級委員長さんは、どうやら人の心が読めるようでした。


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