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こちら、聲質研究部?  作者: 緋和皐月
第4章
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練習するのはあと1日

「しっかし、時間が余るってなぁ、致命的だしなぁ〜。よっしゃアマノン、句点の後の間を、しっかり空けるんだ!」


 きりり、と小日向先輩が叫びます。


「……しかし小日向先輩。あまり空けすぎると、変な感じになると思うんです」


 ふむぅ、と小日向先輩が唸ります。


「そしたらぁ、句点のところでぇ1回、口閉じたら良いんじゃなぁい?」


 ミミィさんは、にっこり微笑みます。

 句点のところで1回、口を閉じるのですか……。


「そうだね。あとはもう少し、ゆったり読んでも良いと思うよ」


 有徳さんも、ふっ、と笑みます。

 相変わらず、イケメンな笑顔です。たぶん、これを女性陣が見たら黄色い悲鳴をあげて倒れてしまうと思います。

 ところでイケメンの笑顔は、有料なのでしょうか? それともプライスレスなのでしょうか。


「有徳さんの笑顔は、おいくらですか?」

「うん? 私の笑顔はプライスレスさ」


 きらん、とウインクが飛びます。

 珍しく有徳さんが巫山戯ました……!


「いや、ウクルンって意外とボケとツッコミ、両方得意だからね?」


 小日向先輩は冷静です。

 ……というか有徳さんって、ボケもツッコミもお上手なんですか。やはり敵いませんね。


「そぉれぇよぉりぃ、柳きゅんは、もう少し練習しよぉ〜よぉ。このままじゃ、即落ちだよぉ?」


 窓辺から入ってきた風に吹かれる、ミミィさんの大きなリボンは、まるで首を傾けるかのように、ゆらりと揺れました。


「なんだかんだ言って皆さん、明日が本番ですからねぇ? わかってますよねぇ? 特にリツくん」

「なんで俺?! いや、確かに前日に、こうやってア○パンマンマーチ歌おうとしてるけどさ!」


 いつの間にか小日向先輩が、『お家で歌える♪ カラオケセット』という箱を抱えていました。

 ……それ、どこから出てきたんですか?

 そして吊り上がるのは、鷹野先輩の柳眉です。


「喘ぐアニソンなんて、歌っちゃいけませんっ!」

「うわーんっ、鷹野ママが厳しいよう! 栗兎、泣いちゃう! シクシクシク」

「真顔で泣き真似するのやめてくださいリツくん。気持ちが悪い」

「酷いっ!」

「気持ちが悪い」

「こいつ2回も言いやがった!」


 ……あれ、明日は本番なのに、この調子で大丈夫でしょうか。


「え? 大丈夫かなぁみたいな顔してるけど、ぜんっっぜん大丈夫じゃ無いよ、アマノン」


 え、僕、そんな顔してましたか?!


「してたしてた」


 ……小日向先輩、心の声読んでますよね?


「ま、アマノン。明日は9時半から始まるから、9時に、渡した手紙に書いてある通りの住所に来てね」

「あ、はい」


 Lコンは、まずは各地の『都道府県』で行われます。

 そして僕も参加させて頂くことになった、Lコンの会場は、明日の地域の近くの公民館。

 学校じゃ、無いのです。


「あと、8時までには起きておいて、発声練習の滑舌練習と一緒に、昨日と今日注意した点に気をつけて何回か読んでから、来るんだよ?」


 小日向先輩は心配性なのでしょうか。


「はい、大丈夫です」

「迷子になっちゃダメだよ? 怪我せずに、泣かずに来れる? アマノン大丈夫? ……なんなら俺、迎えに行こうか?!」

「大丈夫ですよ?!」


 えっ逆に、なんで僕はそんなに心配されているんでしょうか?!

 と、鷹野先輩が笑顔で、小日向先輩の首を右腕で締めます。


「気にしないでくださいね、雨野さん。リツくんは緊張するといつも、他人の心配ばかりする傍迷惑野郎なのですよ」

「ギブギブギブ! ちょっ息できなっ」

「あ、はい分かりました、気にしません」

「待って待ってアマノン、せめて今は気にして、鷹野それ以上力入れたら俺死ぬて、ギブギブギブギブ!」


 本番まで。あと、1日。

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