練習するのはあと2日
「有徳さん、お風呂で練習、すごく良かったです」
「だろ? あれは、私の恩師からも、お墨付きを頂いてるんだよ」
有徳さんに早速、昨日、風呂で練習してみたことを伝えました。
「それじゃあ柳くん。リハーサルと行こうか」
あれ? もうリハーサル、ですか?
「リハーサルのリハーサルだよ」
少し可笑しそうに、有徳さんが含み笑いをされました。
……リハーサルの、リハーサル?
「本番リハのリハ、セットオーケーだよぉ♡」
「マイクの調子も最高なので、いつからでも始めることができます」
「うん、ストップウォッチも準備完了。壊れてないかテスト済みだお」
……ん? ストップウォッチ? 何に使うんでしょうか。
「アマノン、ステージ立って!」
小日向先輩に背中を押され、どこから持ってきたのか分からない、教卓の前に立たされました。
皆さんが、僕を見つめてきます……もしやこれは、
「……新手の、いじめ……ですか」
「違うよアマノン?! 本番リハのリハだよ!」
つまり小日向先輩が説明してくださった内容をまとめると、本番に味わうプレッシャーに打ち勝つために、聲質研究部ではリハーサルのまえに、もうひとつリハーサルも重ねるそうです。
「こーゆーのの1番の対処法は、慣れだと思うんだ〜、俺はね」
聲研現部長、小日向先輩は笑います。
「俺、アマノンと同じ1年生ん頃、超がつくほどのアガリ症でさぁ。もー、1年生んとき行ったLコンで、アガっちゃってアガっちゃって。まともに話せなかったわけ」
同じような失敗を後輩にさせたくないのさ前歯キッラーン! と小日向先輩がふざけます。
……きっと、照れ隠しです。
「というわけで、アマノンちょっと1回読んでみようか」
「あ、はい!」
僕は、すぅっ、と息を吸い、読み始めます……。
──数分後。
「柳くん、もう少し声量上げようか」
「句点の後の間を、もう少し開けましょう」
「マイクにはぁ、もう3センチは近づいてねぇ?」
え……お、怒られました……?
そして更に、小日向先輩が追い討ちをかけます。
「アマノン、30秒も余ってると落第だよ」
た、たった30秒で、落第ですか?!
県大会まで、今日を含めて、あと2日。




