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こちら、聲質研究部?  作者: 緋和皐月
第4章
34/45

練習するのは今日からですよ

 ずびずびと鼻を鳴らしながら、僕は家で原稿用紙に文字を写し、母さんに印鑑を押してもらいました。……この小説、何度読んでも泣けます、本当……ううう。


「きゃ〜大会にでるの? 頑張ってねっ」

「……ティッシュ、ある、かな?」

「うんうんあるわよっ、はい♡」


 母さんって、結構テンション高いんだな、ということに最近やっと気づいた僕です。

 そして翌日の放課後、きちんと印鑑を押してもらった書類を持って、部活に行きました。


「うん、書類に印鑑を押して名前書いてもらってるね。原稿もOKだよ」


 有徳さんに書類と原稿を渡した後、いつもの滑舌練習をこなします。

 それも終わりまして……


「……僕は何をすれば良いでしょうか」

「ん? 滑舌練習はしただろう? 今度は原稿読み練習だよ。……そうだな、取り敢えず、少し原稿を読んでみてくれるかい?」


 有徳さんの笑顔は、いついかなるときも爽やかで優しいです。


「ぁ、青い空をおぉぅ、大きな雲……天気予報では、1日中快晴になる、って言って居たけれど……あと少し時計、の長針が回れば、あっ、と言う間に、土砂降りの大雨になるだろ……まだ、少しも、雨は降って……ないのに、そんなことを思ってしまうのは、なぜだろぅ……」

「分かった、そこまでで良いよ」


 ふんわりと、有徳さんがこれまた素敵な笑みを浮かべてくれました。

 なんだか、自分でも上手く読めた気がしました。

 ……もしかしたら、褒められたり、するのでしょうか。


「ど、どうですか」

「うーん、そうだねぇ……ハッキリ言って、このままでは予選即落ちかな」

「……えっ」


 そ、そこまで、悪かったのでしょうか。


「ごめんなさい……」

「いやいや、そんな落ち込まなくて良いんだよ。プロに習ってるなら兎も角、普通は大体落ちるからさ」


 あ、つまり、普通以下だった、ということでしょうか。

 僕は、自身の頭を思わず壁にぶつけてしまいたくなる衝動に耐えながら、有徳さんに恐る恐る聞きます。


「……ちなみに、どこらへんがダメでしたか?」

「……辛辣になるかもしれないから、覚悟してくれるかい?」


 し、辛辣……? あ、あり、有徳さんが?

 まぁでも僕は社会最底辺元引きこもり野郎ですし、貶されたって大丈夫なのです。

 と思いながら頷くと、有徳さんは優しいお顔を厳しくして、再び口を開きました。


「まず1つ。句読点がハッキリしてない。句点が来るはずのところは、最後の言葉がきちんと切られていないから繋がっているように聞こえるし、読点と思われる間の沈黙が長すぎる」


 グッサァ、と僕の心に、有徳さんの言葉の矢が突き刺さります。


「2つ目。文末の言葉を読むとき、言葉がしぼむように消えている。これじゃあ、読み手は聞き取りづらい」


 グサグサッ。


「3つ目。読み方が、お店の館内放送みたいになってる。迷子のお知らせじゃ無くて、これは朗読だから、気をつけよう」


 グサグサ、グッサァ!

 ああ、ああ、心の傷から血が噴き出して止まりません……。


「と、今のところ特に(・・)気になるのはそのくらいかな……って、急に蹲って、どうしたんだい柳くん?!」


 特に、ってことは、本当は、まだあるんでしょうか。

 もう良いんです、もう良いんですよ、だって僕は、どうせ、どうせ……。


 僕の心は、ポッキリ折れかけました。



生きろ、雨野柳ィィ〜!

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