練習するのは明日からですか
「……具体的には、何をするんですか?」
ショックから少し立ち直れた僕は小日向先輩に尋ねました。
「ん? 練習」
……え、だから何のですか」?
「まずは規定の中から、読むものを選ぼうか、柳くん」
「こ、この中でですか?」
有徳さんが渡してくれた紙に書いてある作品名は、たった5つしかありません。
ですが、その5つとも、僕が読んだこともないタイトルなのです。
「読書不足でごめんなさい……」
「大丈夫、気を落とさなくていいさ。柳くん、この中の作者さんの他の作品とか、読んだことあるかい?」
「えーと……」
相川奏多。柿崎律子。小日向充。和田野々花。沢崎此味。
「……小日向充さんの『大和撫子 雨物語』は、読んだことあります」
「それ、柳くん的には、どうだった? 面白かったかい?」
「は、はい、なんだかワクワクして、ひやひやして、ドキドキでした!」
「……リツくん、叔父さんの作品、ああ言われてますよ」
「うん、アマノンにはもうチョイ頑張って欲しかったけど、聲質研究部は文学部じゃ無いから良いよ、別に」
有徳さんは、うーん、と唸りました。
「要するに、つまらなくなかったんだね?」
「はい、面白かったです」
「それじゃあ、同じ著者の『心体アーポシディ』も読んでみようか」
ちょうど小日向部長が持ってるからさ、と有徳さんが笑みを浮かべます。
「リツリツ〜、重度の叔父コンが役に立つ時が来たよぉ」
「叔父コン言うなっ!」
「だってぇ、そうでしょお?」
「うるさいミミィ! で、アマノン、充兄さんの作品のなにを読むって?」
あれ、なんか小日向先輩の目が怖いですね……。
「『心体アーポシディ』、です」
「ああ、充兄さんの大ヒット作だね! 今あるよ、今から読もう、俺も充兄さんの作品読む!」
「やめなさい叔父コン野郎」
「違うってば、鷹野!」
え、あるんですか?
と小日向先輩がカバンの中から、ハードカバーの本を取り出しました。
「あ、リツくん、僕『大和撫子 雨物語』読みます」
「じゃあミミィもぉ」
次々と小日向先輩のカバンの中から出てくるのは『小日向充』の著書ばかり。
「……小日向先輩って……」
「シスコンブラコンならぬ、叔父コンだよぉ」
なんという新事実でしょうか……。
なんだか複雑な、それ以上聞いてはいけないような、なにかを感じ取った僕は、静かに、お借りした本の表紙をめくりました。
作者『小日向先輩は、叔父である小日向充のどこが好きなんですか?』
小日向「え? えーと……顔?」
作者『……小日向充、イケメン違うよ……?』
小日向「あの、ヘラヘラして面白い顔が好きなんだよ! 作者もそうだろ?」
作者『…………おお私の神よ』
小日向「えオーマイゴットを今なぜ日本語訳したの?! てかなんでオーマイゴットなの?!」




