練習するのはいつになるのか
「ぜ、全国って、どういうことですか?」
「Lコンだよ」
……えるこん?
えるえるえる、こんこんこん……こんこん、というからには狐でしょうか。
える、……Lサイズの、狐?
「Lサイズの狐じゃ無いよ、柳くん」
「ななな、なんで分かったんですか、有徳さんんっ」
「んー……なんとなく、かな?」
きらん、と白い歯が夕暮れの光を跳ね返します。
い……イケメンです!
「地球は有徳さんがいるから、回っているのかもしれません」
「残念、柳くん。地球が回っているのは、自転のおかげだよ」
それからね、と有徳さんが微笑みます。
「LコンはLHK放送杯コンテストの略で、中高生が参加する、放送関係のコンテストのことだよ」
「放送コンテスト、ですか?」
「そう。通称Lコン。朗読とか、アナウンス、まぁいろいろあるんだよ。その中でも朗読は、少しレベルが高くてね」
世の中には、そんなコンテストまであるんですか……。
「本当のアナウンサーが聞いて、点をつけたりコメントしたり、本格的なんだよ」
「それと、全国狙うって、どういう関係があるんですか?」
「んー……」
有徳さんは困ったように、ちらりと小日向先輩を見ました。
「うぉっほん、アマノン」
「はい、なんでしょう」
「アマノンね、声良いんだ」
「え? ……あ」
正式に入部する時の、佐野姉妹の検査のことでしょうか。
……あれはつまり、僕は、声だけの人間という……
「声だけの存在でごめんなさ」
「ストォォップ!」
「わふっ! あっありがとうございます小日向先輩、また頭を負傷してご迷惑おかけするところでしたっ!」
「迷惑は別に気にしないけど、それよりもアマノンの頭の傷が心配だよ!?」
全く全くアマノンは、と小日向先輩が溜息ついて、ぴらっとチラシを僕の目の前まで持ち上げます。
「Lコンには、朗読部門ってのがある。それは朗読するコンテストで、少しレベルが高め。アマノンはこれに参加すること。これは絶対命令、つまり部長命令です」
この規定の中から朗読するやつ選んでちょ、と小日向先輩が紙を机の上に置きました。
……え今、小日向先輩、なんと仰りました?
「アマノン、Lコン朗読部門出場決定。本番の日は、予定空けといてね。まだあと1ヶ月もあるけど」
な、なんだか。
僕は、大変なことに巻き込まれてます?
「いや、巻き込まれてるんじゃなくて、仕組まれたんだよ」
こそっ、と囁く有徳さんのイケメンボイスは、残念ながら、軽いショックを受けている僕の耳には届きませんでした。




