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こちら、聲質研究部?  作者: 緋和皐月
第3章
25/45

味方は身内でそこにいる

 放課後。

 ミキさんの、滑舌練習講座が始まります!


「えーと。じゃあ、まずは〜……そうだな、一般的なこれが良いかな? さぁさぁ皆さん、お耳を拝借〜、ちゃんと聞いててねー?」


 ふっ、とミキさんが空気を吸い……


「あえいうえおあお、いおうえおあいあ、うあえおあいうい、えいおあいうえう、おうあいうえおえ!」


 ……たったひと息で、何なのかよく分からない言葉の羅列を発声しました。

 よく分からない言葉の羅列だったのに、はっきりと聞こえたのは何故でしょう。


「……まさか、僕の聴力が格段にレベルアップしたのでしょうか……?」

「いやー、さすが声優。声が聞き取りやすいねぇ」


 小日向先輩の叔父さんがほのぼのと言いました。

 ああ、そうか……僕の耳が良くなったんじゃ無かったのか……。


「はいはい、そんなこと良いから、早く練習してみてー?」


 えーと……あえいうえおあお、いおうえおあいあ、うあえおあいうい、えいおあいうえう、おうあいうえおえ……ですよね。


「あえいうえおあお、いおうえおぁ……い、あ?」


 だんだん、自分でも声が小さくなっていっているのが分かりました。

 ……うう。口が回らないです。


「あえいうえおあお、いおうえあわあ……わ?」


 あれ、声が小さくならないようにしようとしたら、言葉の末尾が変わってしまいました。

 そんな僕の隣の有徳さんと、その隣の小日向先輩は、


「「あえいうえおあお、いおうえおあいあ、うあえおあいうい、えいおあいうえう、おうあいうえおえ」」


 ……普通に言えてました。

 えっ、言えてないのは僕だけなのでしょうか?!


「あえいうえおあぉ、いおうえおあああぁぅ! もー! ミミィ、滑舌練習キラーイッ!」


 ああ、ミミィさんも同じでした。

 なんだか、同じ失敗をしている人を見ると、ほっと安心しますね……はっ?!

 この前まで、社会カースト最底辺を浮遊して居た僕のくせに、同じ失敗をされてる方を見て安心するなど、無礼千万! 失礼にもほどがあります、同じ失敗とはいえ、ミミィさんと僕では月とスッポン、いいえ、スッポンのように僕は美味しく食べられることができません、満月と小石です!


「身の程知らずで、ごめんなさいっ」

「何があったんだい、柳くん?!」

「え、えっ、急に、どうしたのぉっ?」

「言えないからって、そんなに落ち込まなくても良いんですよ。いや、やっぱり、もっと悲しんでください」

「鷹野は少し黙ろうか!?」


 色々、騒がしくミキさんの講習は終わりました。



「それでは最後に〜、今日ミキさんが教えた滑舌練習法を、まとめますー!」


 ミキさんが、キュッキュッ、とホワイトボードに文字を書き込みます。


「1。あえいうえおあお、いおうえおあいあ、うあえおあいうい、えいおあいうえう、おうあいうえおえ!」


 ……結局、最後まで僕は言えませんでした。


「2。あさいしうすえせおそ、かさきしくすけせこそ……!」


 これは、五十音の間、間に、『さしすせそ』や、『たちつてと』など、自分が言いにくいと思う列の言葉を入れる方法です。


「3。ジャズシャンソン歌手の新春シャンソンショー。隣の客はよく柿食う客だ、客が柿食や飛脚が柿食う!」


 早口言葉も、やはり滑舌練習法には最適の模様です。

 声優やアナウンサーがすることで有名な『外郎売』も、長い長い早口言葉なのだとか。


「はい、ポイントは、これだけー! 毎日、どれか1つを10回くらい繰り返すだけで、滑舌が良くなるよー!」


 自分の声を録音して、滑舌チェックするのもオススメだよー、とミキさんはウインクしました。


 今日の講習は終了。

 ……今度、有徳さんに、腹式呼吸のやり方を習おう、と決心する僕でした。


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