腹を探って部活をしよう
翌日。
聲質研究部入門テスト……入門? 入部じゃないんでしょうか。
なにをするんでしょう。というか、それに落ちたらどうなるんでしょう、退部ですか、まだ仮入部なのに? ま、まさか、聲研の皆さんと一生話すことができなくなるとか……。
「……ぴぇぇぇんっ」
「どうしたアマノン?! あテスト? テスト怖くないからね、チョー安全だしマジですぐ済むから、心配しなくて良いのよ! お母さんは貴方の味方よっ」
「お前はもう黙りやがれ、リツくん」
「さらっとディスんのやめてくんないかなぁ鷹野!?」
「もぉ、夫婦漫才しなくて良いよぉ、リツリツにリョンリョン」
うふふん、とミミィさんが笑いました。
「それじゃ〜あ、早速始めるよぉ♪」
「あっちょ待っ、俺まだ外に出てなっ」
きゅぱっ、と妙な音を立てて、鷹野先輩が愛李さんからアイマスクを取り上げました。
ふわり、とその長い睫毛が何度か伏せられた後、綺麗な黒水晶のような瞳が輝きました。
……よくよく見ると、美人さんです。
「やぁぁぁなぎくぅぅぅんの、声質ぅぅぅ? 検査するぅぅの? なんでなんでなんでなんでぇぇぇぇ? 栗兎くぅぅん!」
「ギャーッ、お前は大人しく妹から伝言聞いとけよ! じゃないとまた目隠ししてお前封印すんぞ!」
「めりぃぃからは聞いたぁぁぁよぉぉぉ! やなやなやなぎくぅぅん、麻里ちゃんに声聞かせてぇぇぇぇぇぇ!」
……え、えと?
これはいわゆるカオスというものでしょうか。
「あの……麻里先輩、で良いんですよね?」
きらり、と麻里先輩の瞳が、また輝きました。
「滑舌2、なめらかさ3、声質4、アルトに限りなく近いテノール、聞き取りやすさ2、もう少し声を張ると声質が向上する可能性大」
……は?
「終わりぃぃぃぃぃ! ねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇやなぎくん良い声だよぉぉぉぉぉ!」
「分かった! 分かったから! もう黙れお前っ!」
「嫌ァァァァだよぉぉぉぉ!」
スチャッッ!
鷹野先輩が、またもや素早くアイマスクを麻里先輩に付けました。
……えーと……麻里先輩がアイマスクを付けると、愛李先輩でしたっけ。
「わぁなの、凄いなの。柳さまは、磨くと良くなる可能性が高い、素晴らしい逸材なの」
ぱちぱち、と愛李先輩は手を叩きました。
「これは、聲質研究部に無くてはならない存在……つまり、柳さまは正式に部員決定なの」
おめでとーっなの、と愛李先輩は微笑みました。
……え、どういう……?
思わず有徳さんの方を振り返ります。
「麻里さんはね、聞いた人の声を分析できるんだ」
なんですか、その超技みたいなのは。
ひょっとして佐野姉妹って超人なんでしょうか? そもそも双子……というか、2人で1人というのも普通では無いですけど、更に凄いレベルに達している凄すぎ姉妹さんなんでしょうか。
……ま、まさか宇宙人だとか……って、こんなこと考えたら失礼ですよね。
「地球人のゴミみたいな僕にそんなこと考えられたら烈火の如く怒られても仕方がありませんごめんなさい」
「うん、もうどっからツッコめば良いか分からないから、取り敢えず放っとくよ?!」
放っとくと言いつつ律儀にツッコんでくれる小日向先輩は神様です。
「そんな神様にツッコんで頂くなんて、バチが当たります」
「どっとはりゃ?! そんな勢い良くお辞儀したら、また怪我するよ、アマノン?!」
小日向先輩の言葉に、有徳さんが少し首を傾げました。
「それじゃあ、今度柳くんが怪我する前に、私が止めてあげよう」
「わぁお! ウクルンがイケメンすぎてカックィー! 惚れるわぁ(笑)」
「お黙りください小日向先輩」
「俺にだけ冷たいのなんでかなぁ!?」




