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こちら、聲質研究部?  作者: 緋和皐月
第2章
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腹に入れずに部活はできる?

 ドガズゴッ!


 ……なんだか、派手に何かが壊れたような音がしました。


「やぁやぁやぁやぁやぁ! 元気ィィィィィだった?! ねぇねぇねぇぇぇぇ栗兎くぅぅぅぅん!」


 ドドガッ。


「ギャーッ、来るな来るなっ、俺に近づくなバケモノ!」


 ヌチャクチャッ。


「もぅぅぅぅ! そんなバカモノみたいに言わなくても良ぃぃぃぃぃぃじゃん!」

「やめてっ俺の愛しのミミ子ちゃんを、もうブラックアウトして記憶喪失させないでっ、あともうちょいでアイドルになるんだからっ」

「またスマホのアイドル育成ゲームゥゥゥゥ?! ミミ子ちゃんより麻里ちゃんのほが可愛ぃぃぃぃぃでしょ! 付き合ってよぉぉぉぉ!」


 ……話についていけません。


「あぁぁぁぁれ? きみきみきみきみ、新人くん?」


 あ、話の矛先が僕になったようです。


「……は、初めまして。雨野柳です」

「可愛いぃぃぃ好きぃ! キスしてい? い? 良ぃぃぃぃぃ?!」

「ダメだよ、佐野先輩。柳くんが困ってるだろう?」

「嫌ぁ嫌ぁぁ! 好き! 好き好き好き好き、愛してる、困るダメェェェェ!」


 ……こ、これはまさか、情緒不安定っていうやつでしょうか。

 情緒不安定って、僕みたいな社会最底辺にしか使わないのかと思ってました……いえ、もしかすると、本当は社会最底辺の僕になんて勿体無すぎる言葉なのでしょうか。


「あうううう、自己紹介する忘れてたぁぁぁぁ! さののののまりだよよろしくぅぅぅぅぅ!」


 なんだか恐い人で……いえ、そんなことは言ってはいけませんよね。

 有徳さんが『先輩』と呼ぶからには、僕にとっても先輩に違いありません。

 先輩に対して恐い人だなんて、絶対に言ってはならない、思ってもいけないことです。

 他ならぬ、僕なんかが……


「おーい、柳くん?」

「やなやなやなやなぎくぅぅぅん、っていうののの? やなぎくぅん好きぃぃ! 付きあってぇぇぇぇ!」

 

 ……きょ、強烈な印象を持つ先輩ですね。


「やなやなやなやなぎくぅ」


 スチャッッ!


 鷹野先輩が、その先輩の背後に回り、素早くアイマスクをかけました。

 すると、途端に先輩が静かになりました。


「……えと、麻里姉さまが、ごめんなさいの。わたしは、佐野(さの)愛李(めり)であるの」


 ……麻里姉さま?


「柳さま、ごめんなさいの。びっくりしてるの、なんだか可愛いのけど。えとえと、二重人格て、分かるなの?」

「……二重、人格?」


 なんだか、聞いたことはあるような気がしますが。


「わたしと、麻里姉さまは、俗に言う、それなの。1つの体に、2つの人格があるなの。わたしたちは、ほんとはどっちも生まれるはずだったのけど、どっちか死んじゃって、こうなったの」


 実質、2人なの、と、愛李さんは言いました。


「まぁそれは良いなの。これから、恐怖の絶食タイムを始めるなの。ただし水分補給は大事なのから、お茶とか持って来たなの?」

「愛李さん、それは大丈夫だよ」


 有徳さんが、ヒョイと、床に置いてあった段ボール箱を掲げました。


「水やらお茶やら、10リットルくらいはあると思うからさ」


 よ、用意周到です。さすがイケメンです……。


「それでわ、始めるなの……あう、麻里姉さまも参加したいって言ってるなの」

「それだけはマジでやめてぇぇぇぇ?!」

「……冗談なの」


 そか、良かったぁぁ、と小日向先輩が崩れ落ちるようにしゃがみこみました。


 そして瞬時に立ち上がった小日向先輩は、キリリとその表情を引き締めました。


「さて。んじゃ、始めよっか」

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