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VOCAL1 真刈駿弥

 内気気味で虚弱体質の少年。真刈駿弥まかりしゅんやは、中学2年生だが、声変わりなんて未だにないままの甲高い声の持主であった。

 他生徒とは余り交流出来るタイプではない。

 

 ある日のこと。

 商店街の某商店主人が駿弥とは面識があり、同級生の父兄でもあるのか、通学路を通りかかる時に忘れ物送り届けるように頼まれたのだ。

 松村まつむら菜那ななの忘れ物を本人に手渡しすると、彼女は気味悪がる素振りで駿弥から離れた。

 その日の放課後。


「真刈、休憩時間の態度、悪かったな。あの時は友人いたからついあんな行動取って……」


 菜那が学校から離れた角の裏側にある人気ない寂しい場所へと駿弥を誘い出した。


「商店街のおじさんによく話しかけられるから、つい断れなくて、それで」


「よく耳すまして聞くと、良い声だな、真刈ってさ。あたしがよく知ってるコンテストステージであんたのようなの探してるとこあるんだけど、寄るだけ寄ってみたら良いんじゃない?」


 無理に押し込まれては駿弥は怯えながらも学校帰りの道を直帰していった。


 それから更に数日後。

 菜那が半強制的に推してきた紹介先のコンテストステージまで足を運ばせた駿弥。


「この時間帯には人が来るらしいとか教えてもらったから大丈夫かと……」


 独り言が趣味の駿弥の悪い癖である。


「ごめんください」


 この一声に惹かれてか美声センサーの聴覚が利く古川ふるかわアイリが反応しだした。


「男装女子、発見‼」


 見た目が女子らしいことで「男の」と勘違いされてしまうという。


「どれどれ‼ おおっ‼ もしかして松村菜那の人騙す時の勧誘に引っ掛かったカモじゃない?」


 どうやら菜那の知人がそのステージ裏に立っていたのだが、『カレ』の美声に釣られたキャストたちが押し寄せるわ、楽屋まで連行された。


「菜那が新星キャストを呼び込む話……本当にデマ伝説を覆すとは……いや、引っ掛かった『コノ』も『コノ娘』よ。騙されてるとも知らないで」


 次から次へとレギュラーキャスト陣が騒ぎ出す。


「僕、寄ってみただけなんで……なんか場違いみたいなので、失礼します」


「その美声こえ可愛いじゃない? ボクっ娘キャラあたしは好きよ」


「天然男装趣味っぽいけど……ボーイッシュで尚且つ今年のトレンドになりそうよ」


「ワー‼ ワー‼ ワー‼」


 楽屋じゅう、そんなこんなで騒動が収まることがなかったという。


 そんな流れの勢いか、リアル着せかえタイムが始まり、『ある事』に行き詰まった。

 股間をすり抜けるような着替えに達した時に女子たちの手が擦ったのか、『アルモノ』の感触が伝わった。

 ボクっ娘キャラが実は異性だと判れば、敬遠されてもおかしくはなかった。


「不潔‼ 汚ならしいわ。手を洗わなくっちゃ」


「あたしも、あたしも~」


「え~‼ マジで~‼ 超スケベじゃん‼」


 幻滅し、感覚的にステージ会場の移籍希望を次から次へと手続きしたレギュラーキャスト陣。

 彼女らはテストキャストの集団だ。契約書に目を通しただけのコンテストスターである。正規キャストじゃないので、移籍を希望していくのであった。


 駿弥が新星の正規手続きも済んでないのに、異性の肉体に触れただけの女子のみ、4名が会場を去っていった。

 アーティスト衣装に女装したカレが楽屋の中で浮いては、佇んでいた。


「皆さんいるかい? 入るよ~。 ん? 新星が入ってきたのかい? 差し入れだよ。バナナ好きだろう? さあ、召し上がってくれ」


 会場のオーナーの神林かんばやしが差し入れ用の果物籠をそばにある小さい棚上に置いた。オーナーは険悪な空気と分かると、さっさと出ていった。


 ミサキが一言つぶやいた。


「バナナ…………なんか、最悪な……」


「その事はもう忘れましょうよ」


 フォローするクミ。


「わたしは……あっちの方のバナナ……良いと思う」


 意味深な一言を飛ばす、天然気味のカヤ。

 こんな感じの3人だけがコンテストスターのメンバーに残ったという。

 そして、駿弥が加われば、コンテストスターのオーディションが受けられる。オーディションは一組4名以上の編成で出場権利がもらえるのだ。

 しかし、事態は最悪だ。駿弥が異性と判れば、解散しかない。


「僕……事情は良く判らないけど……男の僕にでも役に立てれば、何とかするよ」


「はぁ? 男がオーディション受けられないわよ‼ ばかも休み休みよ。ふざけないで‼」


「じゃ、僕今ここで歌うから、聴いてよ‼」


 険悪な空気の楽屋部屋で、駿弥は『エバーエアプレーン』という英語歌詞楽曲をカラオケ気分で披露した。

 女性アーティストのグレージアン・レーソンの名曲で知らない者はほぼいないほどの名曲だ。エバーエアプレーンのメロディーが会場のロビー近くまでに響き渡った。

 まるで歌手本人が歌っているかのような美歌唱。歌声にうっとりした者を天国へと誘う魔法なのか……。

 再度オーナーが入室してきた。


「もしや、その新星の娘の歌声うたかい? 聞き惚れたぞ‼」


「うそ‼ 男の娘が出せる美声こえとは思えないわ」


 クミが絶句した。

 その一言でオーナーが疑問に感じた。


「男? まさかだろ?」


 駿弥がオーナーに正直に全部打ち明けた。


「はぁ? うん、うん……よし、事情は分かった。駿弥クン、君は女装アーティスト……リードボーカリストになってオーディションを受けなさい。全権はオレが持とう。良いよね?」


「そんな……僕、男ですって」


「このままでは解散ね。しょうがないわ。ここで逃げても何もならない。オーナーの言う通りに、女装して私達と歌いましょう‼」


 リーダー格のミサキが中心になってオーディション大会出場に意気ごみかかった。

 そんなこんなで、新星オーディション組が一歩踏み込んだのであった。



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