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63話 プリンセスパニック



 とりあえず人目に付かない場所……という事で、いつものごとく城を囲っている城壁の上へとシャルロット姫を連れていく。

 抱えるといっても、仮にもお姫様。セルア達を運んだ時のように、腰を掴んで強引に……という訳にもいかん。よって、お姫様なだけに、お姫様だっこでもって強制移動しました。失礼かなとか思っていたけども、当のお姫様はキャッキャッと楽しんでいた。……いいのか。


「うわー。高いのですね。街が一望できます」


 城壁の上から、眼下に広がる街並みを見てシャルロット姫はそんな言葉を漏らした。

 街なんて見慣れているじゃんと思ったが、あの城の位置からすると、城壁が邪魔になって良く見えないか。


「それで、改めて話を聞きたいんだが」

「はいはい! なんでございましょうか!」


 わくわくした表情でこちらを見返してきた。

 デジャブか? なんか最近このタイプの女の子と一緒に行動していた気がするんだが……。

 まぁあっちが普通の中型犬だとしたら、こっちはチワワとかの小型犬だけどな。


「君は、この国の王女様で間違いないよな」

「はい! エメルディア王国第一王女シャルロット・ミラ・エメルディア、14歳です! よろしくお願いします!」


 なんだそのハキハキした自己紹介。合コンか!?

 ……いや、行った事無いけども。しかし、14歳か。同じ歳ぐらいと考えると、ミナカ村のリファリナを思い出すが、あれよりも顔は幼く見えるな。ただ、胸部の方は本当に中学生かよ……と思う程には発達しております。

 ……いやいや。何をアホな事考えているんじゃ。とりあえず話を戻そう。


「まず、なんで連れて逃げてくれとアホ……じゃなかった変な事を言い出したのか理由を教えてくれないか」


 思わずいつもと同じように喋りそうになったが、一応相手はお姫様だ。言葉は選んでおこう。

 が、そのお姫様は何故か頬を赤く染めて、


「そんなもの、レイジ様とゆっくりお話がしたかったらに決まっていますわ!」


 と、言い出した。


 決まっているんすか。

 なんかげんなりしてしまった。


「ええと、俺の事知っているんだよね」

「はい! 若くしてGランクハンターからCランクハンターに昇格し、様々な魔道具を駆使して数多くの魔獣を撃破! 更には、上級魔獣であるカオスドラゴンとも渡り合った凄腕のハンター! ずっと、会えるのを心待ちにしていました!!」


 事実だけど!

 確かに事実ではあるけども!

 こうやってキラキラした瞳で言われると、ものすっごく気恥ずかしい! 止めてくれ!! 居たたまれない!


「なんか、まるで会える事が分かっていたみたいな口ぶりだね」

「はい! 父上が、エメルディアにやって来たドラゴンを退治する為に、カオスドラゴンと渡り合ったレイジ様を召喚せよと、命令を出していましたから!」


 あぁ、なるほど。

 俺が呼ばれた理由はよーく分かった。で、俺の居所が不明だから、無理やり理由をつけて連れてこようとしたって訳ね。


『ドラゴン退治ですか……。理由はこれで分かりましたね』

「だな。そんなしょうもない理由でもなかったが、後はギルドに任せるか」


 一応、それなりの理由はあったわけだから、ぶん殴る程でもないかな。なんとなく、この子との出会いが衝撃的だったせいか、溜まっていた怒りも霧散した。


「んじゃ理由も分かったから、俺は帰るとするよ。王様には悪いけど、俺は戦う気は無いとだけ言っておいてもらえるかな?」


 仮にも王族なんだから伝言くらい頼めるでしょ。と思って言ってみたのだが、何故だかシャルロット姫は興奮した様子でグッと両腕を握りしめる。


「分かりました! 王族の命令なんてくそくらえ! 俺は誰にも従わないぜ! ……ってやつですね!」


 ……曲解された。


「いやいやいやいや。そこまで言ってないし。いわれの無い罪を被せられてまで、戦う義理は無いという奴だ。それに、別にドラゴンなんかと戦いたくは無いし」

「えー? 戦わないんですか? ドラゴンですよ!?」

「そりゃ、興味はあるけど、別に俺は戦う事が三度の飯より好きなわけでもないし」

「なるほど。命を懸ける程の報酬が無いと戦う気すら起きないと言う事ですね」

「一文字たりとも言ってねぇよ! 何を曲解しとるんじゃアンタ!!」


 あ、遂にツッコミをいれてしまった。だが、当の本人は特に気にした様子も無く言葉を続ける。


「わかりました。そんなレイジ様に素晴らしい報酬を差し上げます!」

「いや、いらねぇんだけど」

「なんと、私をレイジさんのチームに入れる事が出来るという権利を与えます! キャッ!!」

『『「……………」』』


 俺とアルカとルーク……三人揃って絶句した。

 ………今、なんつったこの子。


『ケイ、私にはシャルロット殿下の言葉の意味が理解できないのですが』

(安心しろ。俺も理解出来ん)

『なんか、仲間に入ってあげるとか言わなかった? ……ぼくいらない』

『魔眼は確かに素晴らしい力だと思いますが、戦力として彼女が欲しいかと問われると……はっきり言ってマイナスですね』

(安心しろ。俺もいらん)


 お姫様がパーティーインとか、ゲームじゃねぇんだよ。

 いや、ゲームっぽい世界だけども。RPGにお姫様が仲間になる事はよくあるケースだけども。

 でも、そのよくあるケースで言うと、

 国が滅亡の危機に瀕している……別にそんな事は無い。いたって平和である。

 別に王位継承権が低くて寂しい思いをしている……第一王女なんだから、そんな事は無いだろう。

 特別な力を持っていて、それを狙われている……魔眼は確かに特異な力だけど、そんなに困っているように見えない。


 シャルロット姫はと言えば、でっぱった胸を張り、期待した顔でこちらを見上げている。


「期待している所悪いけど、いらない」

「!!!?」


 ズガガーンと雷が落ちたようにシャルロット姫は衝撃を受けたようだ。

 いや、本気でオッケーすると思ってたんかい。


「な、なんでですか!? 私、役に立ちますって」

「いや、そういう問題じゃなくてさ。君、一応王女じゃんよ。それがハンターのチームの一員って、おかしいとか思わないの?」

「王女だってハンターになれます!」

「……そうなの?」

『い、一応……王族はハンターの資格が取れないと言う規定はありませんけど……』


 だからってなる奴も居ないだろう。


「戦いの経験とかは?」

「ありません!」


 即答だ。

 なんでこんなので役に立つとか言っているんだこの子。


「なんでハンターになりたいの?」

「ハンターと言うか、レイジ様の仲間になりたいのです!」

「……なんで俺の仲間になりたいの?」

「レイジ様の噂を聞いて、ずっと憧れていたんです! いつか……いつかきっとレイジ様と一緒に冒険をするんだって!!」

「いや、俺なんか憧れても仕方ないんだけど。ほら、今だったら帝国の聖騎士が城に来ているんでしょ。そっちに憧れた方がいいよ」

「趣味じゃありません!!」


 これまた即答かよ。

 しかし、お姫様ってこんなのなのか? なんか、普通だったらイケメンの騎士に憧れるとか、そういうんじゃねぇの? いや、普通がよく分かんないんだけどさ。

 それともあれなのか……。いわゆるいいとこのお嬢様が不良漫画とかを読んで、アウトローに憧れを抱く……みたいな感じなのか?


『ケイ、これは無視して逃げた方が良いのでは?』

「だな。俺も悪い夢でも見たと思って無視する事にした」


 とりあえず、まだキャーキャー言っているお姫様を城に戻して、後はギルドに向かえばいいか……と思っていたら、


「あ! レイジ様、このままだと危険です」


 シャルロット姫が、急に表情を真顔に戻す。

 俺と言えば、急な変化に対応できず面食らってしまったぞ。


「な……何?」

「さっきも話題に出ていた聖騎士様ですが……」

「ああ」

「もうすぐこの場に現れます」

「は?」

『ケイ! 敵性反応あり!! 速いです!!』


 俺はすぐにアルカの指し示す方向へと視線を動かした。

 そこには、宙を飛びながら、こちらに向かって剣を振り下ろそうとしている金髪碧眼の青年の姿があった。


「シールド!!」


 咄嗟に左腕のバリアガントレットを発動し、その一撃を防ぐ。

 青年は、バリアを断ち切れないと判断すると、すぐに俺から距離を取った。

 そして、こちらを見つめてニヤリと笑う。


「初めまして……だな。俺の名前はルクス・アルデバート。神聖ゴルディクス帝国の聖騎士の称号を持つ男だ」


 噂に聞いていた、聖騎士の登場である。




 ちなみに、シャルロット姫の魔眼の能力は、未来視。少し先の未来をチラっと見る事が出来ます。ただ、それほど力が強い訳でも無く、本人も全く使いこなせてはいないので、本当にたまに見える時があるというだけ。

 特に強力な力でもないので、王家でも重要視されていません。

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