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49話 指揮官レイジ



 自慢じゃないが、俺はシュミレーションゲームは苦手である。

 やった事はあるが、俺のプレイ方針というのはとにかく強いキャラを作り上げて、それによってゴリ押しするというもの。時間さえあるなら、特にレベル上げとか苦にならないタイプなんす。

 そんな俺なので、戦術とか戦略とかを求められると困ります。


 だというのに、俺に指揮官をやれというのかこのオヤジ。

 それに、俺はこの場に居るチームリーダーの中で一番若いぞ。そんな俺がやろうものなら、当然反発が―――


「おいおいふざけんなよブローガさんよ。普通、キャリアから言って俺がやるのが筋ってもんだろ」


 と、ヒャッハーAがわめいた。

 まぁ、当然の流れか。


「アホか。キャリアだけでランクが上がるなら、お前等なんぞとっくにAランクだろうが。この場合は、キャリアよりも実績だ」


 至極真っ当な事を言うのだが、俺の場合は実績って言っても、力でゴリ押しなんだぞ。

 向いてないと思うんですが。


「僕等は構わないよ。最近有名になっている、アルドラゴのリーダーのお手並みとやらを拝見したい」


 と、炎獣のセージからはそんな言葉が。うむ、と頷くドルグさん。ミカ嬢は特に興味ない様子ですね。

 いやいや、期待しないでくれよ。元々、リーダーとかの器じゃねぇんだから。小学校の時に図書委員会の委員長やったぐらいだぜ。

 ヒャッハーチームも、反対意見が自分達だけなので「ぐぅぅ」と呻いて口を閉じた。

 俺としては、もっと反論してほしかった。


「まぁいいじゃねぇか。もしコアまで辿り着けなかったら、それはリーダーの責任になるんだからよ」


 ブローガさんの言葉に、ヒャッハーチームの顔色も明るくなる。

 今のは、励ます意味じゃなくて、こっちにプレッシャーを与えているな。要は、そんぐらいお前ならできんだろって事か。

 あぁ、はいはい。分かりましたよ。やりゃあいいんだろ、やりゃあ。


「……分かったよ。とりあえず、目標はそのコアの破壊って事でいいんだな」

「ああ、その通りだ。やり方はお前に任せよう」


 全くもう!

 まあ、最悪ゴリ押しでなんとかしよう。

 俺としてはBランクに別になれなくても問題は無いからな。まぁ、なんとかなるだろう。

 俺はふかーく溜息を吐いた後、一同の前へ出て振り返り、改めてこの場に集まった面子を見渡した。


「まず、これからダンジョンへと入る訳だけど、ダンジョンに入った経験のある奴は……って居ないよな」


 ちょっと待ってみたが、誰も手も声も上げない。

 まぁ、国内のダンジョンはここだけだし、他国で活動するにはBランクに上がる必要があるからな。ここで居ないのは当たり前と言える。


「正直、俺もダンジョンついてよく知らないから、迷惑かけるかもしれないけど、万が一の場合は臨機応変に対応してくれ。

 んじゃ、まずは……うちのチームが先頭で、その次が炎獣、ヒャ……じゃなかったバサラはしんがりで頼む。

 いきなり連携も何も出来ないだろうから、まずはチームごとに先頭を交代していこう。一巡したら、各チームの戦い方を見てそれ以降の進み方を決める。

 異論は?」


 まぁ俺が仕切る事への不満を持つ者は居るようだが、特に反対意見は出なかった。

 むしろ、だからこそうちのチームを最初に持ってきたのだ。俺たちの戦い方を見せてやれば、実力不足の馬鹿共の口数は減るだろうよ。


「それじゃ、出発するとしよう。……っと、皆準備の方は問題ないか?」


 俺が言うと、ヒャッハーチームが慌てて何かごそごそと武器を取り出したり、必要不必要なものほまとめたりしている。炎獣の方はさすがだな。もう準備オッケーみたいだ。

 俺たちも、必要な物はアイテムボックスの中にあるから、その辺を気にした事は無かった。


 全員荷物も武器も備え終わり、いよいよ出発となった。

 さぁて、これから異世界初のダンジョンか。ドキドキよりもワクワクが勝っている感じで楽しみだな。




◆◆◆




 ダンジョン内部。

 俺としては、イメージ的にどこぞの洞窟探検のようなもんだと思っていたが、予想以上に整備されている。

 さすがにコンクリートでもって整備はされてないが、ちょっと古めのトンネルという感じだ。

 大人が10人は並んで歩けるぐらいの幅があり、天井や通路には、魔石を利用して作られた魔力灯まりょくとうが一定間隔で取り付けられている。これによって、暗い事は暗いが、先が全く見えないわけでは無い。

 この魔力灯とは、王都の街灯やなんかに取り付けられている物であり、魔力さえ尽きなければずっと光を灯し続けられるという魔道具の一種なのだ。

 魔力を補充できなければ明かりは消えてしまうので、元々の値段が高いうえに、その補充にもお金がかかる。王都においても一定の上流階級しか持っていない代物だ。

 このダンジョンに設置されている物は、かなり簡易的なものであるが、魔力が充満しているダンジョンにおいては、補充の心配が無いのだろう。年に3回も訪れる場所なのだから、整備費の方も惜しまないという事か。下手に蔑ろに出来る場所でもないしな。一応、隣国との境界線なんだし。


「アルカ、反応は?」

『約500メートル先に、敵性反応が10。ただ、道がかなりぐねっていますので、正確な距離はもうちょっとありますよ』

「そんじゃ、前みたいにレーダーで表示お願い」

『はい、分かりました』


 バイザー裏のディスプレイに、ポンポンポンと敵の位置が表示される。

 う~ん、こういうの久しぶり。最近は余裕が出て来たせいか、目視で確認して戦っていたもんなぁ。初心に帰る意味でもいいかも。

 こんな感じで反応のある場所まで、ずんずんと歩いていたのだが、ふと後ろから声がかかった。


「ちょっと待てリーダーさんよ」


 ヒャッハーチームの誰かだな。

 俺は何かいちゃもんか……とげんなりしながら振り返る。


「随分と堂々と歩いているが、ここは魔獣の巣窟なんだぜ。もうちょっと警戒した方がいいんじゃないのかい?」


 ふむ。思っていたよりもちゃんとした理由だった。

 確かに、説明不足だったかも。


「ああ、悪かったな。俺の頭にあるコイツで、大体の敵の位置は分かるんだ。だから、反応が近くなってきたらちゃんと報告するよ」

「なっ!?」


 後ろがざわざわとしている。

 まぁ、この世界基準で考えると、随分と卑怯なアイテムだからなぁ。


「おいおい、何処で手に入れたってんだ。そんな魔道具」

「秘密」


 悪いけど、異世界から来たとかそういった事をべらべらと喋るつもりは無いぞ。

 よって、何処を探そうが俺と同じアイテムは手に入らん。

 最も、今後俺自身を狙う輩は多くなりそうだが、プライベートは完全に姿を隠しているし、こういった場所で襲い掛かってくるようなら徹底的に痛めつけるまでだ。

 まぁ、さすがに今はブローガさんの目もある訳だし、そうそう馬鹿な真似はすまい。


 しばらく歩いて……


「もう少ししたら敵と遭遇する。種類はさすがに分からんが、大体10程度だ。まずは俺たちのチームで戦うから、少し離れた位置で待機していてほしい」


 望遠画像にて敵の姿を確認。

 ……うげ。


 魔獣の正体は……“アラクネ”

 はっきり言ってしまえば、大体2メートルぐらいの蜘蛛の化け物である。


 俺が、この世界で会った初めての虫系の魔獣である。

 ぞわぞわと身体に鳥肌が立つのが分かるぞ。


 やだよー。

 虫嫌いだよー。


『私達でやりましょうか?』


 俺達だけのチームだったら、是非ともお願いしたい所だっただろう。

 でも、背後には他のチームの目もあるしな。俺だけ何もしなかったら、何言われるか分からん。これでも、一応プライドってもんがあるんすよ。


「いいよ。蜘蛛ならまだマシだ」


 ゲジゲジや毛虫タイプだったら、苦汁をのんでお願いしていたかも。まぁ、蜘蛛ならゲームとかでもよく見るタイプだし、なんとか我慢できるっすよ。

 俺はバイザーを下し、フェイスガードを展開する。

 久しぶりの完全戦闘モード。


「さぁて、ゲームスタートだ」


 その言葉をきっかけに、俺達は飛び出した。


 アラクネは、伝説では女性の上半身を持つ蜘蛛だが、この世界のアラクネは人型っぽい上半身があるだけで、あまり女性と言う感じは無い。

 それに、8本ある足は何処となく甲殻類のようで、外見上はリアルな蜘蛛とはちょっと違って虫虫していないから非常に助かる。


「俺は手前の4体。アルカは残りの後ろのヤツ。ルゥは敵を逃がさないように頼む」

『『了解』』


 俺は、天井にへばりついている2体に向け、ハンドバレットを放つ。

 天上より落とされた2体のアラクネは、キシャキシャ……と威嚇の声を上げてこちらへ迫ってきた。地球だったら恐ろしい事この上ない光景だな。

 俺は、飛びかかってきたアラクネ目がけて、ヒートブレードを一閃。続いてもう一体目がけて二閃。切り払った部位が赤熱化し、二体のアラクネは俺の背後で二つに分かれた。


 バッと刀を振り払って残心を決める俺目がけて、もう2体のアラクネが糸を吐き出した。

 おおっ! さすが蜘蛛だ。やっぱりこういう攻撃もするのね。

 糸は、俺の左腕に巻き付き、強引に俺を引っ張ろうとする。

 舐めんなよ。こちとら、その為のアーマードスーツだっての。スーツの出力を上げ、アラクネのパワーに対抗する。


「おらぁっ!!」


 そのまま逆にアラクネの身体を引っ張って、地面へと激突させる。

 地面に倒れたアラクネへ追撃を掛けようとしたが、その前に別のアラクネがヒートブレードの刀身に糸を巻きつけた。

 馬鹿が。よりによってヒートブレードに巻き付けるとは。

 トリガーを引いて刀身を赤熱化させる。当然糸は焼き切れ、俺の身体は自由を取り戻す。俺は、その壁に張り付いたままのアラクネ目がけて、ヒートブレードを投げつけてやった。

 一直線に投擲されたヒートブレードは、アラクネの身体を易々と貫き、そのまま絶命させる。


 そして、未だ地面に倒れたままのアラクネへ向かって駆けると、右の掌にハンドバレットのエネルギーを溜める。


「バーンフィンガー!!」


 掌がアラクネの身体に当たる直前にエネルギーを爆発させ、その身体を粉々に吹き飛ばす。

 うむ。これなら後味も悪くない!! そして、決まると実に気持ちいい!!


 よし、これで俺のノルマは終了。

 アルカ達の方は……


ズガガガガガガ


 アルカの持つガトリングガン……いや、ガトリングレインだったか。

 それによって、残らず粉砕されていた。


 逃げようとしたアラクネも、ルゥの使うトゲトゲ土魔法によって串刺しにされたようだ。


 うし、終わり。

 さぁどうだ! と、後ろを振り返ってみると、ブローガさん以外の全員が唖然としていたな。


 ふふんどうだ。

 俺達を舐めちゃいかんぜ。




 次話、今回のパートのゲストキャラであるチーム・炎獣にスポットが当たります。

 ミカ嬢も今回のゲストヒロインなんだから、もっと活躍させたい。

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