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42話 「ルーク」

 カオスドラゴン撃破より3日後……。

 俺は、ハンターランクの選定の為、ハンターギルドを訪れていた。


「君のハンターランクはCじゃな」


 ギルドマスターの部屋へと通された俺は、そのギルドマスターより直々にハンターランクを通達される。

 そして、いきなり言い渡された言葉に、ポカンとしてしまった。


「は? ……Dじゃなくて、C……ですか?」

「ふむ。まぁ、そう思うのも当然じゃな。ここにある資料を読む限りじゃと、君のランクはギリギリDと言った所なんじゃが……」

「ええ、俺としては別にDランクで一向に構わないのですが」

「そうも言っておられん。単独でカオスドラゴンを撃破する程の男を、Dランクのままにしておく訳にもいかん」

「いやいや、別に俺一人で倒したわけじゃ―――」

『『あ』』


 ―――は? 

 思わず普通に返しそうになったけど、今なんつった? この爺さん。


『……何故か知らないけど、バレているみたいですね』


 なんか、冷や汗みたいなもんが額から流れてくる。

 いやいやいや。街の中でもギルドでも、カオスドラゴンを倒したのは、謎の赤いドラゴンさんって事で広まっているでしょ。

 なんで? なんでこの爺さん知っている訳?

 チラッと頭によぎるのは、ガハガハと笑うとあるBランクハンターのおっさんの顔。


「言っておくが、ブローガの奴は何も喋っておらんぞ」


 あ、釘さされた。……じゃあ、原因何?

 他に知っているのは、ラザムにファティマさん。だけど、あの二人がらしたりするか?

 それとも、誰かに見られていたとか……。

 そうやって考えていると、ギルドマスターが「ほっほっほっ」と笑いながら種明かしをする。


「そりゃあ、君から感じる精霊に近いエネルギーが倍になっていたら、あの戦いで何かがあった事ぐらい察せられるわい」


 精霊に近いエネルギー……。そういや、ブローガさんとの模擬戦でも、この人にはアルカの存在に気付いている事を匂わせていたな。

 それで、今回の倍って事は……。


『ぼくの事なのかな?』


 なんだろうな。

 俺は、左腕のバリアガントレットに付属する形で取り付けている魔晶ましょう……それから聞こえる声に心の中で返事をする。


『ケイ。ここはいっそ、事情を話して理解者を得るべきかもしれませんね』


 と、アルカから提案。


「でも、ブローガさんと違って、この爺さんの事よく知らないしな」

『う~ん。大丈夫じゃないかな。この爺ちゃんからは、悪い波長は感じないよ』

「……ま、お前らが言うんならいいか」


 ちょっとだけ悩んだが、了承した。

 二人とも、俺よりはずっと頭がいいしな。下手な俺の判断よりは信用が出来る。


『『変身』』


 俺の身体より魔晶が外れ、ピカッと光ったと思ったら瞬時に二人の肉体が生成された。

 ちなみに実体化したばかりの時は二人とも、素っ裸に近い姿で、俺も二人が練習している時に目撃したんだが非常にビビった。だから、ピカッと光った瞬間にアイテムボックスより服一式が飛び出して、瞬時に着込むという形をとっている。


 ギルドマスターは、突然現れた二人の人間の姿をした存在に対して、少し目を見開いたのみだった。

 思っていた以上に肝が据わっているなぁ。


「ほう。人間の肉体を持っているとは……やはり、精霊とは違うようじゃの」


『そうですね。私たちは、この世界とは違う世界からの来訪者です』


 そう切り出して、アルカはギルドマスター相手にある程度の事情を説明したのだった。

 最初はどうかと思ったが、考えてみればある程度の権力を持つ人が味方に居れば都合が良い事は確かだな。


「なるほどのぉ。これで色々な謎が解けたか」


 うんうんと頷き、ギルドマスターは目を閉じた。

 聞いた事を、頭の中で整理しているのだろう。


『ところで疑問なのですが、どうして私たちの存在に気づいたのですか?』


 それもそうだ。確かファティマさんの話では、人族は精霊に嫌われているとかで、その存在を感知出来ないんじゃなかったか。


「ほっほっほ。儂は完全には人族では無いのじゃ。君たちは、樹族じゅぞくに会った事はあるかね?」


 首を振る。

 樹族……そう言えば、具体的にどういう種族か聞いてなかったな。樹の種族って事は木の人間って事だから、喋る木……みたいなもんか? それとも身体に根っこが生えていたりとかするのかね。


「儂は、樹族と人族のクォーターじゃよ。4分の1程、樹族の血が流れておる」


 そう言って、ギルドマスターは頭に被っていた帽子を脱ぐ。

 なるほど……生えている髪の毛が、まるで草のようだ。おでこあたりには、根のようなものが浮き出てみえる。それに、よくみれば露出している肌も、人の肌とは少し違うな。まるで、樹木のようにゴツゴツとしている。

 なるほど、これが樹族なのか。


「ほっほっほ。これを見て気味悪がらんというだけで、君を信用するに値するの」

「え? そういうもんなの?」


 別に気持ち悪いもんではないかな。さんざん魔獣とかにも見てきているし。ただもし、昆虫人間とかそういうのに会った場合は、幼い頃のトラウマ発動して気絶するかもわからんけども。ムカデ人間とか御免こうむるぞ!! 居るかどうかわからんが。


「根深い問題じゃよ。このエヴォレリアにとってはな。だから、いまだに種族に分かれて国家というものが存在しているのじゃ」


 あぁ、めんどくさいよね。うちの世界にもあるよ、そういうの。

 でも、俺は種族問題を解決しにこの世界に来たわけじゃないからな。それは、この世界の偉い人達が解決してくれ。


『樹族の血があるから、魔力も強大であり、精霊の存在も感じ取れるという訳ですね』

「うむ。その通りじゃ。それにしても、異世界の疑似精霊とはのぅ、世界は広いもんじゃ」


 疑似精霊。アルカは、自分たちの事をそのように紹介した。人工知能だの説明した所で理解は難しいだろうからな。

 ギルマスは世界は広いというが、この場合は宇宙は広いだな。俺の世界にだって、こんなに人間味溢れる人工知能はまだ完成してないだろう。……俺の知る限りでは。


「して、君たちはこの世界で何をするつもりかね?」


 おっと、やっとこさ本題に入ったな。

 ギルマスは目をキランと光らせてこちらを見据えているが、こっちは別に大層な事考えて無いぞ。


「何をするも何も、この世界に来た事自体が俺たちにとっては不本意なんですよ。だから、帰れる方法があるなら帰る。今の所、樹の国に行けば空間転移魔法ってのが伝わっているらしいから、とりあえずそこへ行くのが目的ですかね。その為に、今は船の動力の代わりになる魔石を集めている最中」

「なるほどのぉ。空間魔法については、儂も聞いた事がある。残念ながら見た事はないがの」

「でしょうね。それと、最初はある程度加減してハンター業をやろうと思っていたんですが、こないだカオスドラゴンと戦って、考えを改めたんです。ああいうのが居るって分かったから、これからは舐めたプレイは止めるつもりです」

「まぁ、カオスドラゴンなんぞ、そうそう出るものでもないがの」

「それでも、あの戦いで死にかけたのは事実です。ですから、ハンターとしても本格的に力を付けようと思いまして」

「ふぅむ……。その際のデメリットは理解しておるのかの」

「まぁ、一応は」


 名を上げれば、王族、貴族、他国……色んな奴らから目を付けられる事になる。そして、利用されるんだ。下手すりゃ戦争とかに巻き込まれるかもな。


「聞いておきますけど、もし城とか貴族のお屋敷とかに招集命令とかがあった場合、無視したらどうなるので?」

「相手がどこまで本気かにもよるが、大抵は向こうも興味本位であろう。本気の場合は、適当な罪とかをでっちあげて、無理やり連行かのう」


 ……うん。大体想像通りか。

 まぁ強行に及んできた場合も、大体はアイテムの力を使えばなんとかなるか。いよいよになったら国外脱出という手もあるわけだし。

 問題は、からめ手で来た場合か。今はそこまで親しい間柄の人間は居ないが、今後はレイジとしての恰好で外を出歩かないようにしないとな。

 あれだ。地球のヒーロー方式で、外を出歩く時は本名を使って、スーツは基本脱ぐようにしよう。あぁ、普段着買わないといかんか。


「とりあえず、話は理解した。もし、王族や貴族から興味本位の招集があった場合は、なるべく儂の方で対処しておこう」

「おお、ありがとうございます!」

「最も、儂は立場上ギルドの存続を一番に考えねばならんからの。万が一の場合は、切り捨てる事になると思うぞ。その場合、事情を知らせるべく努力はするが」

「ええ、分かってますよ」


 企業……いや、この場合は一支店のトップか。その立場なら、仕方ないよな。


「それでは、受付に行ってカードの更新をしてもらいなさい。君は今日から、Cランクハンターだ」

「はい! ……あ、それと、この二人もハンターの登録をしようと思っているんですが、構わないでしょうか?」


 俺は、両隣に立ったままの人工知能組二人を指して言った。


「ふむぅ。まさか、精霊……いや疑似精霊がハンターになるとはの。まぁ、人間の姿になれるのならば、問題はあるまい」

「ありがとうございました!」


 ギルドマスターからの了承は得た!

 俺たちは、意気揚々とギルマスの部屋を出たのだった。


『ほ、本当に私達もハンターになるのですね』

『ド、ドキドキするね』

「おお、お前らもそういう感情があるのか」

『それはもう、人間の生活を体験する事すら、私達にとっては初めてです』

「なるほど……」


 その点で言うと、俺は初めてこいつらに優越感を持てるな。

 こちとら、人間生活で言えば17年も先輩だ。


 そんな事を話しながら廊下を進み、ハンターギルドの受付へと戻ってきた。

 すると―――


「レイジくーん!!」


 ハッ! 危機察知作動!!

 俺は前も見ずにさっと身体を逸らし、勢いよく飛び込んできた人物を躱す。


「ぐへっ!」


 その人物は、俺の背後を歩いていたアルカの胸へと顔をうずめる結果となる。

 それって、ハーレムものの主人公がよくやるラッキースケベだよな。まあ、飛び込んできたのは、知り合いの受付嬢であるモニカさんで、アルカも別に気にしてないみたいだけど。


「レイジ君なんで避けるのよ! って言うか、この人誰……うわ、すごい綺麗な人!?」

『ど、どうも……』


 綺麗な人と言われ、アルカもおずおずと頭を下げる。


「とにかく! レイジ君……ほ、本当にCランクになったのね!!」

「……あまりでかい声で言わないでください。……ってもう無理か」


 騒ぎを聞きつけて、他の職員や暇なハンター達がぞろぞろと集まってきている。

 あぁ……こらあかんわ。


「Cランク? あの子供が!?」

「全然強そうに見えないけどな」

「っていうか、あの後ろの女……すげぇ美人じゃないか!!」

「おお、すげぇ! あれって職員か!?」


 みたいな声が飛び交っている。


『あ、あの……ケイ…じゃなかったレイ、今日は止めときませんか』


 自分が話題になるというのが、どうも落ち着かないのだろう。分かる。分かるぞ、アルカの気持ち。


「諦めろ。どうせ、ハンターになるって決めた時点で目立つ事は避けられないんだ」

『はぅぅ……』


 アルカは恥ずかしそうに顔を伏せた。

 う~ん。新鮮だなぁ。ふふん、なんかいつもからかわれている分、もうちょっと苛めたくなってくるぞ。……俺ってSだったか?


「あぁ、モニカさん。ついでだから、頼みたい事があるんですけど」

「え、なぁに? レイジ君には相当稼がせてもらったから、いくらでもサービスしちゃうわよ!」


 稼ぐって……俺がハンターで何ランクになるかって奴か。この人はマジで俺がCランクになるって賭けた訳ね。下手したら、ほぼ一人勝ちかよ。


「この二人、俺の知り合いなんだけど、ハンターの登録をお願いしたいんだ」

『ど、どうも……よろしくお願いします』

「ええ!? この美人さんってレイジ君の知り合いなの!? どんな関係!? まさか、恋人!?」


 ええい予想通りの質問だな。

 アルカの容姿は超美人だし、そういう週刊誌的な質問は絶対あると思ったぞ。


『恋人ではありません。むしろ、私はレイの所有ぶ―――』


 つ……と言おうとしたところを、俺はスパーンと頭をはたいて止める。


『いったぁー。なにすんですかぁ!』


 頭を押さえて涙目で訴えてきた。


「何するじゃねぇ! いきなり何言ってんだてめぇ!」

「え? まさか、レイジ君……この子って……」


 あ。モニカさんが引いてる! 違うよ! 別にダァトとかそういうんじゃないからね!!


「違います違います! 絶対に今モニカさんが思っている関係じゃないですから!!」


 えー? と疑いの目で見てやがる。ああくそ、絶対に変な噂流れるなこれ。


「まぁいいんだけど……。ところで、二人って言ってたけど、もう一人ってどこ?」

「?? あれ、アイツ何処行った?」

『レイの足元にしがみついてます』


 その言葉に、この場に居た全員の視線が、俺の足元に集まる。


 くりくりした金髪の美少年が、涙目になって俺の右足にしがみついていた。


 こいつの名前は“ルーク”

 一応、この話の冒頭部分からずっと登場はしていた。

 カオスドラゴン戦より俺の戦力として活躍している、アルドラゴに搭載されている人工知能の一つ。アルカの弟。それが、人間に実体化した姿がこれだ。

 ルークってのは、俺が名づけた。

 ちなみに、今のオドオド状態のコイツの事は“ルゥ”と呼んでいる。

 なんでルークとは別に呼んでいるかと言う事は、また別の機会に説明するとしよう。




 ギルマスとの会話が予想以上に長くなって、ルークの紹介が全部終わらなかった。……タイトルなのに。

 え? なんかキャラ違わない? というのは、次話でちゃんと説明します。

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