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27話 Zウォー

 今回、戦う相手が相手ですので、ちょっとしたグロ描写があるかもです。

 そこまでリアルに描写していませんが、苦手な方はご注意ください。



 ふははは……。

 薬草薬草薬草!!

 この辺りの薬草は全て俺の物だ!



 ……という感じにサクサク採れる採れる。


 今、俺は王都よりも少し離れた森の中。

 Gランクのお仕事……薬草採取の仕事をする為に、ここに居る。

 とは言え、一度どういう物を探せばいいか……というのが分かれば、アルカの力で周囲をスキャン……同一物質をサーチ……という手段で、何処にあるか丸分かりなんだけどね。

 レーダーすげぇなレーダー。


 他のGランクハンターが、ノーマルモードでプレイしている中、俺だけベリーイージーモードでプレイしているみたいで気が引けるけどな。

 まぁ、俺はハンターになりたいわけでもないし、この世界で名前を残したい訳でもないし……という事で、自重はしない事にした。

 さっさと魔石を集めて帰る。

 それだけだ。

 俺は手に入れた薬草を、ポイポイとアイテムボックスの中へと収納していく。


「これで規定量は採ったけど……帰っていいのかな?」


 この森に来て、1時間も経ってない上に、王都から出て2時間も経っていない。

 さすがに早すぎではないだろうか。

 いや、でも1日に受けられる仕事って1つだけだからなぁ。

 まだ薬草採取を続けでもいいが、採りすぎると、後々にこの依頼を受ける人が困るだろうしな。


「……この際、走って帰ろうか」

『お、やる気ですか』


 筋力トレーニングも兼ねて、だな。

 スーツの力を十全に引き出す為には、筋力アップと身体の柔軟性が必要不可欠である。

 なので、早朝ランニング、腕立て伏せ、腹筋、ヒンズースクワット、柔軟体操だけは、とりあえず毎日欠かさずやっています。

 ……まぁ、毎日といってもまだ5日程度だけどね。初日は酷い筋肉痛に襲われたが、船にある治療薬を使えば、あら不思議。痛みはすっかり消えました。

 この世界にも治療薬ポーションはあるみたいだが、明らかに効果のレベルが違う。

 これで商売したら、どえらい事になるんだろうが、下手にオーバーテクノロジー技術を広める訳にもいかないだろう。


「ここから走れば、昼過ぎあたりには王都に着けるかな?」

『でも、こういった外出先でのトレーニングは、不測の事態があった場合に困るのですよね』


 そうなんだよなぁ。

 だから、今までは安全が確認された場所でしかトレーニングは行ってこなかった。

 帰り道にまた魔獣に襲われる可能性だってある訳だし……さて、どうするか。


『あ……ケイ! 敵性反応有りです!』


 と、思っていたらさっそく来た。


「いきなりだな! で、何処!?」

『それが……』


 がしっ

 突然、足首を掴まれた。


 ……地面から出て来た腕に。


「ギャーッ!!」

『地面からなんです』


 遅い! 言うの遅いよアルカ!

 急いで、その場から飛び退く。飛び退いたら、掴んだ腕がポロっと崩れて、そのまま付いてきた。

 

「ギャーッ!!」


 ホラー嫌い! グロ嫌い! 臭いの嫌い!

 俺の足を掴んだのは、そうグール……動く死体である。ついでに腐っている。早い話が、ゾンビですねゾンビ。

 俺はいつの間にか、バイオの世界へと迷い込んだらしかった。

 とりあえず、シャキーンとフェイスガードが飛び出て、臭いをカット。

 グロい見た目は、ゴーグルの視界のピントをずらす事で、ぼんやりとした輪郭にする。あれだ、フィルターがかかって、なんとなく昔のゲームのグラフィックみたいに見える。

 そんな俺の視界では、ズズズ……とどんどんホラー映画張りにゾンビが地面から這い出ていく姿が確認できた。出てくる奴出てくる奴、身体が半壊していて、見事にザ・ゾンビだなこりゃ。

 バイオはゲームとしては好きなんだけど、あれって実際に体験したくないゲームでも上位に食い込むだろう。……まあ、ゾンビものなんてみんなそうか。


『ここは、グールとスケルトンの領域だったみたいですね』


 つまりはアンデッドの巣窟そうくつかい。

 アルカの言う通り、グールだけじゃなくてほとんど骨みたいなのも見える。

 あれが、スケルトン。何故かグールの上位種という位置づけだ。

 ただ、魔獣のくくりで言うと、グールとスケルトンに特に違いは無いらしい。ただ、見た目で肉が残っているか否か……という事だ。

 ……うげぇ想像したら気持ち悪い表現だったな。

 お食事中の方がいたら申し訳ありません。


「バイオの世界なんだったら、銃で一掃しちまうのが一番だよな」

『汚物は消毒だー!……ですね』


 それ、俺元ネタよく知らねぇんだけどな。

 そして、ファイヤーブラストをセットしたトリプルブラストを取り出そうとして……


 止めた。


『どうしました?』

「いや……せっかくの人型タイプの魔獣だから、この際対人戦の訓練も兼ねて、素手で戦ってみようかと」

『えー? アレとですか?』


 心底嫌そうな声だな。

 まあ、地球のゾンビと違って、噛まれたところでゾンビ化する訳じゃないんだ。

 いっちょやってみよう。

 ……嫌になったら、銃に切り替えるとします。


「さぁて……」


 俺はミラージュコートをアイテムボックスに収納し、身軽になる。

 そして、中国拳法の構えをとる。


 地球の格闘技の力……見せてやる。異世界産のゾンビども!


「ほぁた!」


 目前に迫って来たゾンビの胸目掛けて、拳を打ち込む。

 パワーが10倍に増幅された拳は、ゾンビのもろい身体を容易に貫き、その衝撃で身体を粉砕させる。

 うわ……やな感触だ。でも、人を殴る感覚とはまたちょっと違う。なんとか、耐えられそう……。


「ほあちゃあ!」


 今度は三方向から来るゾンビ三体を、回し蹴りで薙ぎ払う。

 ビキビキ……と間接に軽い痛みが走るが、なんとか我慢できる。柔軟の甲斐が少しはあったか。


「ほーわぁ……」

『それって、言わなくちゃならないんですか?』

「はっ!?」


 ………む、無意識に口に出ていた。

 こ、これもアクションスターから動きを盗んだ弊害だというのか!?

 俺としては、どちらかと言うと胸に七つの傷のある方からの印象の方が強いんだけど。


「うおりゃあっ!!」


 思い出すとちょっと恥ずかしいので、あの掛け声は廃止。

 異世界で広まってしまっても困るしね。……俺が元祖みたいな扱いになったら、リー先生に申し訳ない。

 

 ゾンビどものど真ん中へと突き進み、とにかく手当たり次第に拳と蹴りを浴びせまくった。

 基本的にゾンビの動きはノロいので、反撃は特に気にする必要はない。

 フィルターを掛けているせいか、妙に現実感が薄い。まるで、ゲームの無双物をやっているかのような爽快感まである。

 所詮ゾンビだから……生物じゃないから……という事もあるが、その時の俺は戦いを楽しんでいたと言えるだろう。

 ちなみに、地球産のゾンビと違って生命活動は完全に停止しているので、倒したからと言って血がドパーッって事は無い。血液やなんかは、ほとんど固まっていらっしゃる。

 じゃあ、なんで動いているかって事だが、それはもう魔力で……としか言いようがあるまい。まぁ、返り血の心配が無いのは嬉しい。


 やがて、最後のゾンビ……じゃなかったグールは粉砕され、残るはグールの上位種として認識されているスケルトンだ。

 骨だけだから脆い……と思いがちだが、魔力によって骨そのものが強化されているのか、かなり硬い。

 それでも、鉄程の硬さでは無い。強い力で切り付ければ、普通の剣でも両断できるし、今の俺の拳でも……。


「はぁっ!」


 ……砕ける。

 俺の放った拳は、スケルトンの頭蓋骨を簡単に粉砕した。


 続いて、肘打ち……膝蹴り等の技を駆使して、スケルトン達の身体を砕いていく。

 こちらは、タイのムエタイ映画からのデータだ。あの映画も、アクションは凄まじかったからな。

 硬めの敵相手には、こちらで勝負だ。


 俺の物真似カンフーと物真似ムエタイによって、この場に居たグールとスケルトンはなんとか全滅したのだった。


「ふぃー」


 全部倒した事を確認した俺は、その場へとドカッと座り込もう……として、その場にグールやスケルトンの残骸が転がったままになっている事に気づいた。

 そうか……こいつ等死んだ人間の身体を使って生まれた魔獣だから、他の魔獣と違って魔素になって消えないんだな。


 ……これだけの魔獣を俺一人で倒したのか。

 数にすれば、全部で30ちょい。

 いくらゾンビとはいえ、それだけの魔獣を一人で……か。ちょっと前の俺なら考えられないな。

 これも、郷に入っては郷に従え……って事なのか。俺も、この世界に馴染んできてしまったか。


 さてこの残骸なんかを、このままにしておく訳にもいくまい。……何より、酷い匂いだし。

 俺は、ウインドブラストの風を使用してグール達の残骸を一か所に集める。

 最後に、ファイヤーブラストでもって全て焼却処分した。

 一応、森の木に火が燃え移らないように注意してだ。


 そして、焼却した後には、ボロボロと魔石が転がっていた。

 ―――が、こいつ等の魔石って普通サイズの魔石の欠片か?と思うぐらい小さいなんだよな。

 所詮、死体を利用した簡易的な魔獣だから、使う魔力も小さくていいというのか。


 魔獣を生み出しているのは、肉体を失った魔族の残留思念のようなもの……ファティマさんはそう言ってたな。

 そんだけ時間が経っても、恨みは消えないもんかねぇ。


『そのせいで、私たちはこの世界に居るんですよ』

「それもそうか……」


 俺たちがこの世界……エヴォレリアに居るのも、元はと言えば魔神とやらの恨みのせいか。

 ……恨みと言えば、俺ってば他のハンターからも逆恨みされている状況だったな。王都に帰ったら、何かありそうで怖いなぁ。


 とりあえず両手を合わせ、ゾンビの元にされた死体達の冥福を祈る。


 ……そんな俺の頭上から、いきなり水がどばーっと落ちてきた。

 なにこれ……天罰?


『スーツに染みついた匂いが酷いですので、洗浄してリフレッシュしますね』


 ああ、そんな事も出来るんすか。

 アルカさんいよいよ便利になりましたね。




◆◆◆




 結局、そのまま王都へと帰還した。

 薬草採取の依頼をした薬局へと足を運び、既定量の薬草を納品する。お金も受け取って、後はギルドに帰って以来達成のハンコさえ貰えば、初依頼達成である。


「依頼完了……確認しました。はい、どうぞ」


 ぽすん……と、依頼達成のハンコが押される。

 おおおお。

 簡単な依頼とは言え、ハンターの初仕事終了だい!

 くっ……なんかジーンとするな。古本屋に本やゲームを売ったんじゃない。自分の力で稼いだお金だ。そういや、アルバイトは随分前にやった事はあったけど、こんな感動はしなかった記憶があるな。ともあれ、労働の対価ってのはこんなに嬉しいもんなんだね。


『ほぼ私の力ですが』

「うるせい。探したのはアルカで、引っこ抜いたのは俺だ」

『では、二人で稼いだお金ですね』

「そうだけど……そんなのいつもの事だろうが」


 アルカが頭で、俺が身体だ。

 今は、そういう認識で良いだろう。


「俺たちは、二人で一人のハンターだ」


 日曜朝にやっていた、左右二色のヒーローの言葉を使わせてもらった。


『ええと、ゾクゾクする……と言えばいいですか?』


 さすが。俺の趣味のデータを一度読み取っているだけある。見事な返答ですアルカさん。

 ……ただ、知らない人にはさっぱり分からんだろうな。


 さて、明日はもうちょっと歯応えのある仕事でもあればいいな……と、ぼんやり他のランクの仕事蘭を見ていると……。


[討伐依頼 急募!

 王都より南西の森に、アンデッド大量発生!

 規定ランク:Cランク以上]


『ケイ、これって……』

「あ、ああ……」


 どうやら、Cランク以上の依頼を勝手に達成してしまったらしい。

 当然Gランクじゃ受けられない仕事である。

 もし実はもう殲滅した……とか言ったら、どうなるかな?


 ……うん、この件は黙っておこう。



 薬草詰みしていて、魔獣とバトル……まではプロット通りなんですが、何の魔獣にしようか……と、自分で作った登場予定魔獣リストを眺めていたら、目に留まったのがスケルトン。

 スケルトン出すなら、グールも出そうか……と、そこから話が膨らんで、何故かゾンビがメインになっちまいました。分かんないもんだ……。

 最初はもっとグログロしく書こうかとか思ってましたが、直前になって我に返りました。個人的にはかなりマイルドにしたつもりですが、どうでしょう……。


 次話、王都でのちょっとしたトラブル。


 追記:アルバイト未経験→随分前にやった事あり に変更しました。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] いや、元ネタ知らないって言っておきながら、何故その直後に元ネタの胸に七つの傷を持つ男の話を・・・瞬間記憶喪失?
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