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273話 帰艦者と助っ人

やらかしちまった。

操作ミスで、ほぼ書き終わっていた今回の話を削除してしまった……。


という事で、予定よりは短くなりましたが、急いで書き直したものがこちらになります。




 弓聖フォレストは激怒していた。

 手筈通りだった筈だ。

 まずは、先制して最大火力兵器をあの穴の向こうに向けて発射する。

 穴の向こうがどうなっていようと、相当な被害が出るはずだ。

 そして、怒り狂ったドラゴンども相手に、数で勝る我々が蹂躙する予定だった。


「なんだあれは! あんな障壁のようなものがあるという話は聞いてないぞ!」


 だが、我々最大火力兵器であるブローダーの主砲は、穴の向こうに存在している光の障壁によって遮られてしまった。


 いきり立って背後を振り返るが、そこにアウラムの姿は無い。そういえば、用が出来るまで下がっていると言っていたと思い出す。


 チッと舌打ちし、正面に向き直った。


「主砲はもう一発撃てるか?」


「ダメです。どうしても、砲身の冷却が必要になります……」


 技術士官の力ない声が飛ぶ。


 やはり事前に聞いていた通りか。虎の子である主砲は、砲身の冷却で連発が不可能との事だ。

 つまり、もう一発放つにはどうしても時間がかかる。


「とにかく、飛行大隊……そのまま進軍! ……いや待て。アレはなんだ?」


 穴の向こう側から飛び出してきた小さな影が二つ……いや、三つ。

 最初はドラゴンたちが飛び出してきたかと思ったが、シルエットが違いすぎる。


「あれは……まさか……!!」




◆◆◆




「ヒィィィッ!!」


 俺の背中にしがみついているプラムが必死に悲鳴を上げまいと堪えている。

 飛び出す前に俺が、口を閉じてないと舌を噛むぞと脅したんだけど、ちょっと罪悪感を感じている。


 ちなみに《レオ》はあくまでホバーバイク。

 地面すれすれを浮いて進む乗り物であるから、空を飛ぶことは想定されていない。よって、今は空を滑空しながら自由落下している最中である。


 そんな俺たちに向けて、眼下に広がる戦艦や空艦から発進したと思われる帝国が聖獣と呼んでいる飛行魔獣の群れが襲い掛かる。

 俺たちが想定した通り、大型飛行魔獣の背には帝国の兵士たちが騎乗している。


 が、それは俺たちに到達する前に、まるで機関銃のよう斉射された風の矢によって射抜かれ、海上へと落ちていくのであった。


 その矢を放った主は、当然ながら俺たちの頭上に位置しているゲイルだ。

 久しぶりに弓矢を操るゲイルが見れた。

 やはり、様になっている。


 ちなみに、俺も攻撃は可能なのだが、プラムを抱えている手前回避行動に専念している。

 とは言え、飛行機能が無い以上いつかは海にボチャンである。

 いい加減、来て欲しいものなんだけど……。



 ……と思っていたら、来た。


『りぃーだぁーっ!!!』


 ゴォゴォという轟音を響かせて、鋼鉄の紅き竜が姿を現したのだ。

 迫る飛行魔獣を体当たりで蹴散らし、俺たちの真下に機体を固定する。

 俺はアルドラゴの背の部分を滑走し、やがて開いた上部ハッチの内部に飛び込んだ。


 《レオ》を飛び降り、プラムを含めて後の事はスミス達に任せ、ブリッジへと直行する。


『わーい、リーダーだぁー』


 飛びついてきたルークの頭にポンと手を置き、俺は艦長席へと向かう。


「皆、留守含めて諸々ありがとう。話したい事は積もりに積もっているが、まずは目の前の事だ」


 俺の言葉に、ブリッジに待機していた留守番組……ルーク、月影、テツの三人が頷く。


「ノエル」


「ふにゃ!」


 待ってましたとばかりにノエルが俺のユニフォームの中から飛び出し、副長席の傍に設置してある円柱状の魔力供給用装置へと着地する。

 その装置の中に自らの尾を差し込み……


「ふにゃにゃにゃにゃーッ!!」


 尾を通してアルドラゴに魔力を充填。

 アルドラゴのエネルギーは一気に半分以上に回復した。

 尤も、ノエルの魔力は神たちが施した封印アイテム…セブンシールによって抑えられているので、かつてフェニックスと戦った時ほどではない。

 だが、今回は大型魔獣と戦う訳でもない。

 これで十分だ。


『遅くなりました。アルドラゴの操舵に復帰します!』


 ブリッジに入室してきたフェイが、室内中央に配置されている操舵席に飛び乗る。

 モニターを見ると、周囲を飛び回っている小型魔獣の群れは、ゲイルとアルカによって次々に撃ち落とされていた。

 こればかりはアルドラゴの武装を使うと、明らかにオーバーキルで搭乗者まで死なせてしまう。

 バカ強すぎる武器を持っているというのも考え物だ。


 で、そのバカ強すぎるアルドラゴの力をもってすれば、ここにいる帝国の艦隊をあっという間に沈めてしまうのも容易い。

 だが、流石にそうはいかない。

 俺たちの目的は、起きてしまった戦争の早期終結。

 まぁ、ここで艦隊全部沈めるのも早期終結の一つの手ではあるのだが、正直やりたくない。

 だとするならば、俺たちに出来る事は……


「頭を潰すことだな」


 流石にこの場に皇帝クラスの大物は居ないだろうが、指揮官を行動不能にしちまえば指揮系統はガタガタ。

 帝国の戦力を大幅に低下させることが出来る。


 となると、その指揮官とやらが居る場所……。

 こればかりは所謂戦争系シュミレーションゲームが苦手な俺でも分かるぞ。


 帝国の最大戦力……あの黒い戦艦だ。


「あれに乗り込み、頭……恐らくは十聖者の一人を倒す」


 勿論それで戦争は終わらない。

 だが、早く終わらせるきっかけにはなるだろう。


 となれば、次に考える事はどうやって乗り込むか……だ。

 まあ普通に最接近して飛び降りるのが一番手っ取り早いんだけど、そうすると戦艦内部での戦闘は免れないだろうし、下手したら指揮官が逃げかねない。


 と言っても、黒い戦艦は前後左右びっちり帝国の護衛戦艦に囲まれているし、乗り込むところを見られないようにっていうのは無理だろう。


 ならば、残された場所は()()からしかない。


 そう決めたはいいのだが、良くも悪くもアルドラゴは目立つ。

 この戦場において、ほとんどの帝国艦が注目しているのは、竜王国に繋がるゲートよりも空を自在に飛び回る赤い鋼のドラゴンだろう。

 そんなアルドラゴが黒い戦艦の真横にしろ上空にしろ、陣取っただけで猛攻撃を受けるだろうし、警戒も当然するだろう。

 

 では……


「奴らが視認できない遥か上空……そこからミラージュコートのステルス機能を発動させて飛び降りる」


『『『………』』』


 勿論、力尽くで良いのなら取れる手段は山ほどある。

 取りたくないの結果が、こういったハリウッド映画級の大作戦というのも変な話だ。


『……なるほど。それが一番確実性の高い作戦案ではあるかもしれませんね』


『でもでも、誰が乗り込むの?』


 ルークが不安そうに尋ねるが、そんなの決まっている。


「乗り込むのは俺だ。その間、アルドラゴの事はルークとフェイに一任する」


『うぅ……アイアイさー』

『了解しました。……ですが、流石に艦長マスター一人に潜入させるわけにはいきませんよ』


 フェイはそう言って、この場に居る戦闘要員のうちの一人に視線を向ける。


『ええ。アルカ様もゲイル殿もいない現状では、私たちが同行するのがベストですね』


『チッ、仕方ないか』


 月影とテツが頷いた。

 俺としては一人でも構わないと思っていたが、二人が同行してくれるのならば心強い。


 しかし、この作戦をするうえで気がかりな事がある。


 一時的とはいえアルドラゴが戦線から離れるわけだが、その間帝国の標的はアルカとゲイルになる。つまり、全ての攻撃の標的が二人になるのだ。


 時間的には数分という所だが、二人だけに全負担を強いるのは心苦しい。

 もう一人か二人くらい、陽動組が必要かもしれない。

 とは思うのだが……こちらの戦闘員がそもそも足りてない。


『リーダー、それについては大丈夫だよ!』


 頭を悩ませる俺に、ルークが明るい声を上げた。


「大丈夫?」


『ほら!」


 と言ってルークが指したのは、モニターに映る眼下の海原の光景だった。


 んん??


 帝国の戦艦がひしめき合っている中、その戦艦たちの間を豪快に水しぶきを上げて走る小さな影が一つ。


「あれは―――」


 そう。

 知っている。

 あの影の正体を俺は知っている。


 あれは、《カプリコーン》。

 その名の通り、アルドラゴが保有する12体のゴゥレムの一つ。

 見た目は大型の水上バイクだが、《レオ》と同タイプのビークルなので、地上も地面スレスレを飛んで走ることが出来る。

 何より特徴的なのは、側面部よりまるで牙のように飛び出した二本の大きな槍。

 それを駆るのは……


「イヤッフォウゥゥゥぅぅうぅぅっ!!」


 海の国での戦いの後、単独行動を取っていたチーム・アルドラゴのメンバーにして戦艦アルドラゴのクルーの一人……ヴィオである。


「よお! 話は既にルークっちから聞いてるぜ。とにかく、この海上部隊を引き付ければいいんだな!」


 スピーカーからは、今は懐かしき声が飛ぶ。

 いやいや。本当に久しぶりに感じるぜ。


「ああ! 頼めるか?」


「あたぼうよ! それと、こういう場合は言う事が違うんじゃねぇか?」


「え?」


 何の事だろうと俺は戸惑ってしまった。

 すると……


()()()かじゃねぇ。()()だろ! 艦長(キャプテン)!!」


 この距離ではヴィオの顔までは確認できない。

 だが、その顔はきっと笑っている事だろう。


 だから、俺も笑みを浮かべてこう言った。


「ああ、ヴィオ頼んだ!」


「アイアイサー!!」


 その報告とともに、ヴィオは《カプリコーン》のスロットルを全開にして、帝国の戦艦へと最接近するのだった。


 だが、ヴィオが参戦したとしても三人だ。

 欲を言うならば、もう一人ぐらいいると安心出来るんだけど……


 すると、まるで俺の心でも読んだかのようにルークが言う。


『それとね、今回はヴィオねーだけじゃなくて、助っ人も来ているんだよー』


「は? 助っ人? なんだそりゃ」


『あれ』


 と言って、モニターに別の映像を流す。

 

 それは、眼下の帝国の戦艦の一つを拡大表示したものだった。


 よく見ると、その甲板の上……大勢の帝国兵に囲まれる一つの黒い影……。


 まさか……まさか……あのシルエットは大変見覚えがあるぞ……。


「シグマ!?」




◆◆◆




「何者だ貴様? どうやってこの場にやってきた!?」


「………」


 帝国兵……恐らくは隊長クラスの問いに、灰色のコートを羽織った男……シグマは無言で答えた。

 ちらりと周囲を見渡すと、20人ほどの帝国兵に囲まれている。

 帝国兵の全員が、ライフルと剣が合わさったような武器をこちらに向けている。中には、初陣の者も居るのか構えた銃剣の先がガタガタと震えている。


 どうやって来たかは、会場で暴れているヴィオの水上バイクに同乗していたからだ。

 途中、適当な戦艦を選んで乗り込んだという訳だ。

 尤も、わざわざ説明するつもりはない。


 もう一つの質問、何者か……


 それは難しい。

 正直言って自分でもよく分かっていない。


 別の世界からやってきた兵士ソルジャー

 言ってみれば、此処で自分を囲んでいる者たちと大差ない。


 果たすべき目的もなく、仕えるべき主もなく、此処で動けなくなるまで戦い続けるのだと思っていた。

 あの男と出会うまでは。

 

 あの男……レイジと出会い、そこでようやく自分は目的を得る。

 元の世界では果たせなかった全力の一対一(タイマン)

 今では少なくなってしまった、生身の肉体が求める血沸き肉躍る戦い。


 それを求めていた筈だった。

 ……筈だった。


 結果は敗北。

 それは良い。

 自分の中でも納得した敗北だ。


 が、それが終わってからというもの、シグマの中にはぽっかりと穴が開いたような感覚があった。


 また、あの時と同じような戦いをしたいとも思う。

 思うのだが、また違う強者と戦ったからと言って、この穴が塞がるとも思えない。


 一体、これは何なのだろう。

 自分はいったい何を求めているのだろう。


 そうやって虚無感を抱えながら、世界を放浪していた。

 その間も世界は動き続け、チーム・アルドラゴの評判も広がっていく。

 恐らくは、レイジ本人ももっと強くなっている事だろう。


 久しぶりに会いに行ってみるのもいいかもしれない……。

 そうすれば、何かが変わるかもしれない……。


 そうしてチーム・アルドラゴの情報を集めている中、彼は聞いたのだ。


 神聖ゴルディクス帝国。

 新しい十聖者に任命された男の名前を。


 その名前を聞いたことで、今まで繋がっていなかった過去の記憶メモリーが復元された。


 失ったと思っていた、()()()()()()()


「……聖騎士エギル。そう呼ばれているそうじゃないか」


 むき出しになった鋼の皮膚。

 その瞼の奥の瞳を輝かせ、シグマは呟いた。




 最近は仕事場でも休憩時間に執筆したりしているのですが、その際USBにテキストデータを入れて移動しているのです。

 ですが、恐らくはその移動の際に失敗しちまったようです……。

 間違えて、三分の一ぐらいしか執筆していないデータをほぼ書き終わっていたやつに上書きしちまったのでござる。

 気が付いた時には時すでに遅し。

 職場のPCにあるデータは削除しており、自分の手元に残されたのは三分の一ぐらいしか出来上がっていないデータ……。


 今週の投稿は無理かと思っていましたが、まぁなんとか書きあがりましたので投稿した次第です。

 ただ、内容は結構変えていたり。

 一度書いたやつをもう一度書くのって、結構しんどいんす。

 ただ、話の展開的にも書かないわけにもいかないので、次話は流石に書かなければと思っとります。

 時間が空けば、モチベーションもきっと取り戻せるはず!

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