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271話 「ゼロ」




「なるほど、こうなったか……」


「なるほど、こうなったのね……」


 同じ言葉がロゼと左腕から現れた者……同時に発せられた。



「ふぅむ。これはこれで面白いことになったなぁ」


 ルミナの肉体を借りたままだったアウラムが、愉快そうに言った。

 やがて、混乱している様子の俺に気づき、説明を始める。


「あ、ケイには分かんないよね。あれはね、ロゼが体内に入り込んだ異物を一つにまとめて排除した結果だよ。

 つまり、僕が含ませてた魔獣化ウィルスの成れの果てだね」


「な―――」


 魔獣化ウィルス。

 あの、クリエイターとかいう奴が作り出し、この世界を混乱に導いた元凶。

 実際、俺たちも天空島の戦いで神獣フェニックスがこのウィルスに侵され、魔獣へと変化する様子を見せつけられた。


 それが今度は異世界のとは言え、神をも侵食したというのか。


「尤も、取り込んだ際に力をずいぶん持っていかれたみたいだから、ロゼの力の半分くらいはあっちの黒い方に行っちゃったかな」


「ち、力の半分を……」


 ファティマさんの説明によれば、普段のロゼでさえこの世界の神の倍以上の力を持っているんだったか。という事は、半分といえどもあの黒い方は神と同等かそれ以上の力を持っていると言う事になる。



「こうして自分に向き合うのは初めての経験ね。どうも、アタシ」


 妖艶な笑みを浮かべてロゼに語り掛ける黒いロゼに対し、


「ああ。奇妙な気分だな、ボクよ」


 ロゼ自身も不敵な笑みを浮かべている。


「あ、いつまでも裸だと恰好つかないわね。じゃあ……」


 スルスルと黒い方の身体に茎のようなものが幾重にも巻き付き、やがて服のようなものを形成した。


 どこかの民族衣装のような、胸元が大きく開き、手足の裾がダボッとした変な服だった。日本の浪人が着るような服に近いかもしれない。


「ふぅむ……。肉体変化は出来るのに、身体変化は出来ないみたいね。

 どうも、アタシたちの持っていた要素のうち、肉体の男性的な要素はアタシに、女性的な要素は貴女に移動したみたいね」


「精神的な男性要素はボクに、女性要素は君に……って事か」


「ややこしいわねぇ。まあ、別にいいけど」



「???」


 さっぱり分からん。

 なんだ? 今の言葉はどういう意味だ?


 と、混乱していると隣のアウラムが補足説明してくれた。


「つまりだね。ロゼの方は外見は女性、中身は男性。黒い方は外見は男性で、中身は女性って事さ。

 まぁ、うまい具合に入れ替わったもんだ」


 んが?

 予想外の言葉に俺は目を丸くして、あんぐりと口を開いた。


「え? ロゼってば、女の人じゃなかったの?」


 だってだって、胸とかあったじゃん。

 下は確かめてないけど、見た感じ女性そのものだったぞ!?


「知らなかったの? あぁ、普段のロゼって外見要素は女性要素強めで、一人称はボクか。だったら、勘違いしても仕方ないかー。

 ロゼは神様だからね。どっちでもあり、どっちでもないよ。

 要は、好きに出したり、無くしたり出来るってわけ。

 ただ、分かれた結果として、今みたいに体の一部を変化させたりは出来るけど、性別の転換とかは出来なくなったみたい」


「んな―――」


 しかし、言われてみると納得できる部分もある。

 すんごい美人ではあったが、なんか美術品とかを見てるみたいで不思議とドキドキとかしなかったし。

 そういや、温泉でアルカ達がロゼに会ったと報告を受けた際、妙な感じがしていた。

 なんか、言いたいことがあるけど、言っていいのか分からない……みたいな。

 という事は……見たのかもしれないな。

 アレを。


 俺の混乱なぞ無視して、二人のロゼの話は続いている。


「それで、このまま素直にボクの身体に戻る……もしくは、このままそれぞれの道に進む……とか考えないかな?」


 ロゼが尋ねると、黒いロゼは肩をすくめて言った。


「それは無理ねぇ。アタシの身体に流れる例のウィルスとやらの影響なのかしら……なんかもう、とにかく壊したくてたまらないのよ」


「やはり、破壊衝動やなんかの負の感情もそっちに行ったか……」


 更に、黒いロゼは口の端を吊り上げ、ロゼに対して人差し指を突き付けた。


「そ・れ・に……アタシと同じ姿と力を持ってるアンタは、好きじゃないわ」


「それは奇遇だな。ボクも君には嫌悪感しか感じない」


 二人とも、顔は笑っているが、その瞳に宿る眼光は凄まじい。


 話を聞く限り、陰陽の陽の部分がロゼに、陰の部分が黒い方に移ってしまったとか。

 だったら、外見も性格も全て正反対というのも頷ける。


 ……互いに嫌いあうのも良く分かるというものだ。



「でも、流石に今は止めないか。ボクも本調子じゃないし、なんか外ではバタバタしているみたいだ。今ここで雌雄を決する必要はないと思うが」


 と、ロゼが提案すると、黒いロゼは「ふん」と鼻を鳴らす。


「言ってることは分かるわよ。アタシも生まれたばっかで十全に身体が動くわけでもないもの。

 ……でもね……」



 黒いロゼの両の目が、まるで獣のようにギラリと光る。



「だからこそ、チャンスもあると思わない!?」


 瞬時に両の腕をナイフのような刃状に変化させた黒いロゼは、これまた一瞬でロゼとの距離を詰め、その身体目掛けて斬りかかった。


 対するロゼは、先ほど自ら切り落とした左腕を瞬時に再生させ、まるでガントレットのようにゴツゴツした形状に変化させる。

 その腕でもって、振り下ろされるナイフの連撃を受け止めていた。


「アンタのその腕、今とっさに創り出したものでしょう? この一瞬で生み出したものじゃまともに動かせない。せいぜいが盾に使うぐらいじゃない? だったら、両手両足が使えるアタシが有利ってもんよ!」


「ぐっ! 嫌なところを突く……」


 力が半減している同志だというのに、その戦いのレベルは凄まじいものだった。

 そんなに広くもない室内を縦横無尽に駆け回り、互いに腕を変形させて創り出した剣を斬り交わしていく。


 そして確かに、よく見ればロゼ側の左腕の動きは鈍いように感じる。

 尤も俺が見る限り、本当に僅かにというレベルのようだが、実力が変わらない同時であるならばその僅かが大きな差になってしまうのだろう。


 明らかにロゼが劣勢だ。


 ここは加勢するべきかもしれないが、今の俺が割り込んだところでまともなフォローが出来るとは思えない。


 それに……


 俺は、わくわくした顔つきで二人の攻防を見ている奴に問いかけた。


「お前はいつまでルミナさんの身体を借りているんだ」


「ん? あぁ、正直すぐに戻るつもりだったけど、予想外の事が起きたんで決着を見届ける事にした」


 こいつに関しては今の問題とは分けて考えておこう。

 今のところ何もする様子はないみたいだが、ルミナの身体が人質みたいな扱いになっている以上、下手に手を出せない。

 一応、ルミナ自身に悪い感情は持ってないし。


 となると、この場にいる他の者……。と言っても、ゴートはロゼに心を折られてそのまま力を失って倒れている。

 では、最後の一人……


「プラム」


「あ、かんちょー……」


 ロゼの戦いに見入っていた様子だが、近寄ると顔を上げてくれた。

 なるほど、俺の呼称はかんちょーか。


「喋れるようになったのか」


「う、うん。ロゼがくれた果物食べたら……」


 あ。

 あの、髪の中から出して、食べたら全回復したあの桃の事か。


 アルドラゴにある治療薬よりも効果が半端ない。

 四肢欠損レベルの怪我がどうなるかは不明だが、ナイアが匙を投げたプラムの精神疾患による失語症を回復させたのだ。

 なんというチート回復薬。有名格闘冒険漫画に出てくる豆みたいだ。……いや、あれは確か病気は対象外だった気がする。


 まだ持っているのか不明だが、あれを食べるチャンスさえあれば回復は可能だろう。


 が、俺が時間稼ぎをして桃をひとかじりする時間を得る事は可能かもしれないが、持っていなかったとしたらせっかくの時間稼ぎも無駄になってしまう。

 ……下手したら死ぬかもしれないし。


「かんちょー」


「ん、なんだ?」


「ロゼが負けそう」


「プラムから見てもそう思うか」


 子供ではあるが、これでもドワーフ。

 目が良いらしく、ロゼたちの戦いもしっかり捉えられているみたいだ。


「ロゼが死ぬの嫌だ」


「ふぅん……」


 プラムがつぶらな瞳で真摯に訴えてきている。

 なんでプラムがこの場にいるかとか、疑問点は山ほどあるんだけど、どうも俺が知らない間にドラマがあって、いつの間にかロゼと仲良くなったらしいな。


 とは言え、今の俺に手助けする方法は……。

 せめてハイ・アーマードスーツがあればなんとかなったかもだが、今は手元にないし。


 他に何か良いアイテム持ってきていたかな?


 アイテムボックスとか魔力遮断が難しいから、リーブラに置いてきてしまったものな。


 ………ん?


 俺はアイテムボックスを持っていない。


 だが、プラムの腰元にはしっかりとアイテムボックスがあった。


 プラムのアイテムボックス……中に入っているのは、非常用の治療薬一式とプラム自身が最近作った武器……。


 そして、ゲイルの生家付近で戦った際、ロゼが使っていた得物は……。


「プラム! アイテムボックス貸してくれ!」


「うん!」


 はいと手渡されたアイテムボックスを開き、目当てのものを取り出す。


 ……あった。


「これ、ロゼに貸してもいいよな」


「むん!」


 自信満々に親指を立てるプラム。

 ドワーフは鍛冶のプロフェッショナルだってのは聞いていたが、よもやオーバーテクノロジーアイテムすらその範囲内だっとは驚きだ。

 おやっさんが言っていたが、この子はマジもんの天才だとか。


 おおざっぱなアイディアを出したのは俺なのだが、驚くほどのスピードでこれを作り出したのだ。


「ロゼ!」


 俺は、二人の距離が大きく開く瞬間を待ち、アイテムボックスより取り出した一本の棒をロゼに向けて投げつけた。


 戦闘の最中、咄嗟に棒を受け取ったロゼは僅かに首を傾げた。


 投げつけられた棒はせいぜい30センチほど。

 パッと見、剣の柄のようにも見えるが、これで何が出来るとは思えない。



「棒に魔力を流すんだ。そうすりゃ分かる」


「なんだいそりゃ」


 黒いロゼが首を傾げる。


「よく分からないが……」


 俺に言われた通り、ロゼは棒に魔力流し始めたようだ。


 その途端、変化は起こった。


 棒が、伸びたのである。


 変化前は30センチほどの短さだったものが、一気にロゼと同程度の身長サイズの2メートルへと伸びた。


「ニョイ・ロッドだ! 魔力を流せば伸縮も自由自在で、更には太さも変えられる。プラムからのプレゼントだ。そいつを使え!」


「こいつは……助かる!」


「わっ! ズルっ!!」


 巧みな棒捌きによって一気に形勢逆転の状態に持っていくロゼ。

 先の戦いで、ロゼは棒術が得意らしいと判断した。そのロゼと親しくなったプラムのアイテムボックスに、これが入っていたというのは何かしら運命のようなものを感じる。


 ニョイ・ロッド。命名は当然ながら俺であり、モチーフにした物もかの有名な西遊記にて孫悟空が振り回しているアレである。

 アレほど万能なものを想定していたわけでもなく、ただ伸縮自在な棒であればプラムの護身用に丁度いいかなと思ったのだ。

 ……そうしたら、原典並みのとんでもアイテムが完成してしまった。

 一応、伸縮は最大で3㎞。尤も、その分強度が落ちるデメリットがある。

 重さ自体も大きくすればするほどに重くなるので、よほどの怪力でしか扱うのは難しいだろう。

 力は半減したとしてもロゼはその点をクリアしているから問題はない。


 対する黒いロゼも両腕から木の枝のようなものを発生させ、同じく棒を作り出そうとしているらしいが、作り出した端からロゼによって打ち砕かれて行っている。

 見る限り、作り出したばかりの状態は強度が脆いのかもしれない。



「ちょっとズルいわよ! ねぇ、こっちにも何かないわけ!?」


 やがて、焦った様子のロゼがこちらに向いて怒鳴る。

 尤も、対象は俺ではなく……


「ん、僕かい?」


 少し離れた場所で観戦しているルミナinアウラムである。


「アンタしか居ないでしょうよ!」


「ごめんねー。この身体はあくまでも借りもんで。そういったアイテムは手元に無いんだよね」


「使えないわね!」


「まぁまあ、そう言わないで。でも、こういった手助けは出来るから」


 そう言うと、サッと手をかざす。

 その途端、ロゼは追撃を止め、バックステップで下がっていった。

 どうも、ロゼと黒いロゼの間に結界による壁を作り出し、追撃を止める事に成功したようだ。

 残念だが、バイザーの無い俺は視認出来ない。


「やはり、分かれた今では、この結界を壊すことは無理みたいだね」


 肉体を間借りしている状態であっても、ルミナの能力は使用出来るらしいアウラムの言葉に、ロゼは悔し気に声を絞り出す。


「ああ。どうも無理っぽい」


「なるほど。今まで出来た事が出来なくなったってのは不便ねぇ」


 自身も同じなのか、黒いロゼも溜息交じりに呟く。


「お前には、ボクの記憶もあるのか?」


「いいえ、断片的な記録があるだけで記憶はないわね。アンタとアタシは、同一人物ではあるけども分かれた時点で別人よ」


 別人という言葉に、ロゼは顔に獰猛な笑みを浮かべる。


「でも、元の力を取り戻すには、お前を取り込むしかないって訳か」


「そうね。お互いにね」


 俺には良く分からないが、やはり互いに相手が憎くてたまらないらしい。

 傍から聞いているだけでも、言葉の端々に強い憎悪を感じる。


「でも、今は無理そうね。このまま逃げさせてもらうわ」


「逃がすと思うかい?」


 戦力としてはニョイ・ロッドを持つロゼが上。

 それを理解して、潰せるときに潰してしまいたいと思っているのだろう。


「逃げられるわよ。アンタはその子に付くんでしょ? だったら、アタシはこっちに付くわ。という事で、アタシを逃がしてもらえる?」


 その子……は俺で、こっち……はアウラムの事だろう。


「まあ、力が半減したのは残念だけど、味方になってもらえるなら有難いねぇ。でも、約束は守ってよね」


 アウラムの言葉に、黒いロゼは「はぁ」と溜息を吐いた。


「分かったわよ……」


「悪いが、ゲートのスイッチは押させない。そもそも、スイッチはこちら側にある。どうやって押すつもりだ?」


 今、ロゼと黒いロゼの間はルミナinアウラムの結界によって遮られている。

 そして、ゲート開閉装置は、ロゼの側にあった。

 正確には、俺より数歩ほど離れた場所にある。


「んー。我ながらだけど、アンタも抜けてるわねぇ。この右手……どうして戻さなかったんだと思う?」


 そう言って黒いロゼが右腕を掲げる。

 すると、その腕の先に手首は存在しなかった。

 先ほどの戦いの最中、ロゼのニョイ・ロッドによって弾き飛ばされたのだ。

 それ自体はいい。

 問題なのは、四肢の欠損はロゼがしたようにすぐに回復可能である。

 それをなぜしていなかったのか……。


「「!!」」


 俺とロゼ、二人の視線がゲート開閉の機器に向く。

 すると、そのスイッチの上には、一本の手があった。


 さきほど、黒いロゼが棒を作り出そうとした際、ロゼが弾き飛ばした右手だ。


「という訳で、ゲートかいへーい!」



「しまった―――!!」


 思わず駆け出すも、残念ながら俺は時間を停止する異能力は持っていない。


 俺が駆けつける前にレバーは下げられ、目の前のモニターに映し出された研究所の外……つまり、竜王国の空にジリジリと光の円が広がっていき、やがてポッカリとした穴を形成する。


 いや、まだ開いたばかり。

 俺たちがこの世界に来た時と同じように、すぐに閉じてしまえばそれで問題な―――


バキンッ


 と、黒いロゼの右手はレバーを下げた状態のまま、レバーをもぎ取ったのだった。


「あ、壊れちゃったねー」


 開閉装置は、レバーを上げると閉じて、下げると開くという仕組みだ。

 つまり、レバーを下げたままレバーそのものを壊したとなると、ゲートは開きっぱなしという事になる。


 ど、どうしたら良いんだコレ?

 いっその事、機械そのものをぶっ壊しちまえばゲートは閉じるんじゃないか?


 という、俺の空気を感じ取ったのか、アウラムが忠告してきた。


「ちなみに、装置を壊すって選択はしない方がいいよ。下手に壊したら、二度とゲートが開かなくなって、帰れなくなっちゃうかもよ」


「ぐ………」


 確かに、帰れなくなるのは拙い。

 今は自力で世界を移動する力は無いんだ。

 アルドラゴは向こうの世界にあるし、仲間だって分断されてる。

 今この状況で、帰れなくなるのは非常に拙い。



「という事で、逃げさせてもらおうかな」


「では、ボクもご一緒しよう。これで、ルミナさんの役目も終わりだからね」


 この場合、人間というものは無駄と知りつつ、無意味なことを口走ってしまうらしい。


「待てアウラム!」


 当然アウラムは待つはずもなく……のはずが、一旦足を止めて俺に向き直った。


「あ、ケイ。これ返すね」


 ポイと放物線を描いて投げつけられたのは、ルミナに貸したままだったバイザーだった。


「ルミナさんには悪いけど、ボクも……というか彼女の身体もこのまま逃げさせてもらうよ。まさか、このまま続けるとは言わないだろ?」


 続けるというのは、戦いを……という事だろう。

 確かに、このまま続けたところで勝ち目があるとは思えない。

 ロゼは黒い方に勝てるかもしれないが、それにルミナの能力が加わればこちらが不利すぎる。


 それに、ゲートが開いてしまった以上、この場で時間を使い続ける訳にはいかない。


 だが、その前に聞いておくべきことがある。


「彼女をこの国に転移させたのはお前だな」


「うん。そうだよー」


 あっさりと返答があった。


「何故、そんな事をした!? 今回の役目、別に彼女じゃなければいけないって訳じゃないだろ!」


「……うっわー。それを君が聞くか……」


 げんなりとした顔でそう返されてしまった。

 え? 何? その反応は想定外なんだけど。


「……まぁ、ルミナさんの為に、ここは内緒にしておこうかな。今度、機会があったら、本人とちゃんと話をしてあげると良い」


「……何を言っているんだ?」


 マジで意味わからん。


「もう何も言わないよ。じゃーねー」


「いや、最後に言うことがあるかな」


 今度は黒いロゼが前に出た。

 その視線の先に居るのは、当然俺ではなく、ロゼだ。


「……元アタシ、今はロゼと名乗っているんだったね」


「そうだが。それを君が名乗ることは許さないよ」


「うん。だから、アタシは“ゼロ”と名乗らさせてもらうよ」


「反転したボク……だからかな」


「まあ、アンタから生まれて今は何もない“無”でもあるからね。アンタを取り込んだら、改めて名前を頂くとしようか」


「そう言わず、このまま戦ってもいいんだよ。……ボクは」


「いや、今は勝てそうにないから、退くよ。じゃーねー」



 それだけ言うと背後の壁を破壊し、二人は外へと身を投げた。


 恐らく、外に広がるエヴォレリアの世界へと。


 何はともあれ、こうして道が繋がってしまった以上、戦争の勃発は免れない。


 ディアナスティ竜王国と、神聖ゴルディクス帝国……二つの最強国の激突の始まりだ。





 次回より、総力戦の開始です。

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