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鋼鉄のアルドラゴ~SFアイテムでファンタジー世界を冒険します~  作者: 氷山鷹乃
第1章 ある日異世界で宇宙船と出会った
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閑話その1 異世界転移した地球人の1日

閑話なるものを差し込んでみました。懐かしき、異世界に来たばかりの頃の二人の話です。




 ……目が覚める。

 背中がゴツゴツと少し痛い。

 目を開けると、敷布団替わりにしていた毛布が目に入る。やはり、毛布の薄さでは布団の代わりにはならんかったか。変な見栄張らずに布団一式買っときゃよかったよ。


「ふわぁ~」


 大きなあくびをして、そのままドスンとベッドより落ちる。

 痛てぇ。

 これも確か異世界生活初日と同様だったな。

 やっぱり、まだ床の上で寝とけば良かったと反省する。


『おはようございます、ケイ。異世界生活、4日目の朝ですね』


 声のする方を見ると、ハンカチ程度の布の上にポツンと置かれていたビー玉が目に入る。

 否、ビー玉にあらず。

 魔晶ましょうへとその精神を移した人工知能のアルカである。


「あぁ、おはよう」


 そんなこんなで、俺の一日がまた始まった。


 ……何度も思うが、やっぱり夢じゃなかったんだなぁ。




◆◆◆




 こっちの世界の正確な時間は分からんが、大体朝の8時程度だと思っておく。

 人間、朝起きたら何をする?

 そう、まずは排泄である。

 ぼんやりした頭を抑えながら、俺は艦の外へ出た。そして用を足す。ちなみにアルカは居ない。アレでも一応女の子みたいだから、連れションなんて出来ませんの事よ。

 え? 何故に外かって?

 一応言っとくと、艦の中にもトイレはありますよ。……正確に言うと、トイレらしき設備。

 はっきり言うと、使い方分からんのじゃ!

 アルカに教えられてトイレらしき部屋に入ったものの、そこはただの何も無い小部屋。

 ここでどうしろと?


 迷いに迷った挙句、俺はひとまず外で用を足す決意をした。


 排泄の次は、顔を洗って……となるので、近くの小川で洗顔する。

 こちらも艦の水道は止まっている状態なので、仕方ないのだ。いずれ、この小川の水を汲みこんで、正式にろ過するなりして飲料水にするのだとか。

 ……やんのは俺になりそうだけど。


 続いて飯……って事で、いざ朝食会場へと参りましょう。


 ………

 ……

 …


 食堂。

 便宜上そう呼んでいる。

 キッチンらしきものもあるから、多分そうだと思う。なんか冷蔵庫っぽいものもあるし。

 何故ぽいかと聞かれれば、これまた使い方が分からんのだ。

 かろうじて冷蔵庫は理解出来た。正確には冷蔵庫というか、中の物体の分子運動そのものを固定させてしまう代物でした。つまり、温かいものは温かいまま、冷たいものは冷たいまま保存出来てしまえるらしい。

 だが、お湯を作ったり火を出したりってのはまだ分からん。だってボタンとか何も無いんだもの。鍋もフライパンすらないし……。

 インスタントラーメンくらいしか作った事のない人間に、こんなハイテクキッチンを理解しろというのが無理な話なのだ。

 だから、キッチンを使う事は諦めて、昨日ミナカ村より分けてもらったパンで飢えをしのぐ。パンは、有難い事に地球のものと変わっていなかった。

 ただ、味気の無いパンには変わりない。ここにコロッケとかソーセージとかあったらなぁ……。

 いや、それでもあの栄養満点のドロドロを食べるより全然マシっすよ。

 そう強く思いこむ事にして、俺はパンをひたすらかじった。




◆◆◆




 とりあえず味気ない食事で腹を満たした俺が向かったのは、武器庫である。

 相変わらず、ずらーっと男心をくすぐる武器だったり乗り物だったりが陳列されているな。

 このバイクらしき乗り物とか、乗ってみてぇよ。……免許無いけど。


 だが乗り物よりはまず武器のトレーニングだ。

 これから正式にハンター活動をするにあたって、もっと戦えるようにならにゃいかん。という事で、アルカの指示に従って使えそうな装備は手当たり次第に取り出して抱えていく。

 見た目よりも重くないのが幸いであるが、それでも数が多い。前が見えづらく、ふらっふらになりながらも俺はエレベーター降りて最下層のトレーニングルームへとやって来たのだった。

 部屋に着くなり、ドサッと持っていた武器の数々を置き、また来た道を戻る。決して遠い道のりではないが、何度も同じ事をするのって、やはり苦手だ。

 結果、2往復半の行き来が必要であり、終わったと思ったら俺はそのまま室内に大の字になってしまった。


 しかし、改めて見ても広い。

 ちょっとした総合体育館並の広さだ。白一色で、壁の境がよく分からないからこそ余計に広く感じるのかもしれない。

 だが、ふと思う事がある。

 艦の外観は昨日確認したが、それに比べてこの部屋は広すぎやしないか?

 確か全長が70メートルほどで、この部屋が直径100メートル……。計算が合わん。どういうこっちゃ。


『それはですねー。艦の内部は圧縮空間機能が使われているせいですねー』


 疑問に思っていたら、アルカよりそんな説明があった。

 圧縮空間……それは読んで字の如く、艦内の空間が圧縮されているとかそういう事なのだろうか?


『その通りです。使われている部屋は、このトレーニングルームとまだ紹介していませんが、メカニックルームですね。だから、この二つの部屋は特定の手順を取らないと扉が開かない仕組みになっているのですよ』


 ああ、確かに二重扉になっていたりと、やけに仰々(ぎょうぎょう)しい感じだなとは思っていた。

 そこでふと疑問を抱く。


「これって、もし空間圧縮機能が壊れた場合ってどうなんの? ボンッと艦の内側から倍くらいのでかい部屋が出現して艦そのものが壊れる感じ?」

『現状はまずありえないと考えますが、もし万が一の場合はユニットごと射出されます。それが間に合わないレベルですと、確かにボンッと壊れますかね……』


 そうなったら一巻の終わりか……。

 凄い機能だとは思うが、割とでかい爆弾抱えているようなもんだな。

 ともあれ、今からそんな心配してもしょうがない。便利なものは便利なものとして、有効活用しましょう。


「それにしても、空間圧縮とか便利な機能があるなら、何でも入るポケットとか作ればいいのに……。変なところで融通が利かないな」


『いえ、ちゃんとありますよ。空間圧縮を利用したアイテム』


「は?」


『先程の武器庫ルームに、その機能を持つアイテムはありました。えっと、必要でしたか?』


 俺はプルプルと震える身体を抑え、すうぅっと深く息を吸い込んだ。

 そして―――


「必要でしたか? じゃねぇぇ!! 手にいっぱいの荷物持って、俺はこの部屋と武器庫を何往復したと思っているんだ!!」


『ひゃい! す、すいません! そう言えばなんで使わないのかなーとか思っていましたが、そう言えばケイはまだ知りませんでしたよね』

「知らん! そんな便利なものがあるなら、早く教えなさい!」

『すみませんでしたっ! どうも、このボディになってからはコンピューターとは接続していませんでしたから、どうも思考回路に抜けが―――』

「抜けが―――じゃねぇよ! 今までのスーパー頼れるっぷりは何処へ行った! なんだ? 他にも忘れていることとかあったりするんじゃねぇだろうな!?」

『……ええと、ひょっとしたら、ケイがトイレに行くのにわざわざ外に出るのって、使い方を知らないからだったりします?』

「……トイレもキッチンも、使い方は知りません!!」


 えーえー。初日だし、なんでもかんでも使い方を聞いたら頭パンクすると思って、ゆっくり使い方を学んでいこうとか思っていた俺にも非がありますよ。

 ただ、アルカさんの口ぶりからすると、もっと楽な覚え方とかあったりするのかな?


『あ、あはは……。武器の使い方のように、端末を通して脳内にマニュアルをインストール出来たのですが……。そう言えば、新しい移動用端末を用意するのを忘れていましたね……。このボディになって、世界の見え方や感じ方が随分と違っていたので、ちょっと浮かれていたというのですかね……えへへ』


 移動用端末……あのゴーグルはラザムと戦った際にぶっ壊れたもんね。そーか、聞くの忘れていたけど、替えがあったのか。


「アルカさん……」

『ひゃ、ひゃい……』

「自由に移動できるようになって浮かれているのは理解出来るけど、さっさとコンピューターに繋がってくんない?」

『そ、そうですね! ちょっとお待ちを―――!!』


 ピャーッと凄い勢いでビー玉が飛んでいく。

 その後、無事に新しいゴーグル……こと正式名称バイザーに意識を移したアルカによって、俺はやっとこさ艦の設備のちゃんとした使い方や、武器の使い方を学ぶことが出来たのだった。


 また頭に流し込まれたマニュアルによると、例のトイレ……排せつ物は自動的に床に吸い込まれて、無害物質に分解される仕組みらしい。

 つまりは、便器も何もなしにそのまましてオッケーとの事らしいが、何もないところにするといのは勇気が居る。しかも室内で。

 これは、やるにしてももうちょっと段階が必要だろう。むしろ、形だけとはいえ便器を作らねばと感じた。




以前感想で指摘された、アルドラゴ内部の広さの問題と、説明する機会も失っていた設備に関する事を書きました。

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