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219話 セブンソード




 大剣、長剣、短剣……合わせて七本の剣。


 それが、俺の周りを回転しながら浮遊していた。


 これぞ、ブレイズブレードに代わる新たな俺のメインウェポン。

 “セブンソード”である。


 まぁ七本あるからといって、七刀流を披露するとかそういう事じゃない。

 七本それぞれに特性を持たせてある。


『ケイ、それの武器は……』

「ああ、これなら戦える」


 アルカの言葉に頷いた。

 とはいっても、心臓はバクバクうるさいぐらいに高鳴っている。

 安全地帯からではない、死ぬかもしれない戦いはこれが初めてではないが、何度経験しても慣れないものだ。

 状況は相変わらずこちらが不利。でも、セブンソードがこの手に渡り、《アリエス》も含めた助っ人も来た。

 これならば勝機も―――


『おっしゃー!! もう一度来たぞこのヤロウ!!』

『先生! 遅れてしまってすまない!!』


 すると、《アリエス》の中より見知った顔が飛び出してきた。


 その顔を見て、ポカンとしたのは俺たちではない。

 敵である神たちだった。


 そう、何を隠そう現れたのは、自分たちがボコボコにした存在……吹雪と烈火であったのだ。

 しかも、そのボコボコにされた本人たちは、今もこうして地面に横たわっているのである。


「あらあら、どういう事なのかしら? 同じ顔がまた現れたわね」

「相変わらず、奇妙な奴らが仲間に居るな。なんだそれは? 分裂、増殖する特性を持った生物か?」


「……とりあえず、企業秘密です」


 どこに企業があるのかは置いておいて、秘密は明かさないでおきましょう。

 ここに現れた二人目の吹雪と烈火であるが、これは今ここで倒れているボディより、意識データのみをアルドラゴのコンピューターへ戻し、新たなボディに移し替えた存在である。

 魔法で疑似肉体を構成しているアルカやルークには出来ない、複数のボディを持つアンドロイドであるからこそできる芸当だ。


艦長マスター、ゲイルさんやヴィオさんは《アリエス》内部へと収容完了です』


 そうしている間に、ナイアが《アリエス》のマジックアームを使って二人を救出したようだ。

 これで懸念材料も一つ減ったな。


『おらぁ、そこのでかライオン! さっきまでの俺たちと思うなよ! リベンジマッチだこのヤロウ!!』

『うむ、さっきのような失態は起さん!』


 と、意気込んでいる様子の二人であるが、ぶっちゃけさっきまでの彼等と別に変化は無い筈である。別に新武装も持っている様子ないし。

 それに……可哀そうではあるが、艦長である以上、現実を教えてあげなくてはならない。


「……悪いが、お前らは後方待機でサポートに徹してくれ」

『なぬ!?』

『す、すまない先生! ここは先程の失態を汚名挽回するというか―――』


 と、オロオロし始めたが、そういう問題ではなく切実な事情と言うものがある。……ついでに言うと、汚名は返上だ。覚えたての日本語を無理に使わんでいい。


「敵の肉体は、オリハルコン製の武器でないと、まともなダメージは与えられない。お前ら、オリハルコン製の武器、何も持ってないだろ?」


 その言葉に、ガーンという表現そのままの顔となる二人。

 今のアルドラゴにおいて、オリハルコンはあまりにも貴重。何せ、フェイの身体を構成しているそのものしか在庫が無いのだ。

 だから、ほんの一部を削り取って、スーツの全身にコーティングするなどせせこましいやりくりをしている。

 そんな状況である以上、悲しいかな、最近仲間になったばかりの二人に分け与える余裕はない。


 更に言うと、防御の面でもハイ・アーマードスーツを着込んでいなければ、一撃がそのまま死に直結しかねない。

 まあアンドロイドである二人はボディが壊れても死ぬことはないが、見ていて気持ちの良いものでもない。


「だから、アイツらとは……俺がやる」


 セブンソードを浮遊させながら、俺は仮面越しに力強くメギルを睨みつけた。


「ふん。見ているだけかと思いや、ようやくやる気になったか」


 当のメギルもフェイとの戦いを中断し、こちらを面白そうに見ている。


「これでも艦長だからな。クルーたちが見ている前で、恥ずかしい真似は出来ないさ。

 という事でフェイ、交代だ!」


『遅いですよ! こういう戦法は向いてないのですから!』


 ぶーぶー文句を言いながら、フェイは後ろへと飛んだ。

 メギルも、標的をこちらへと移したのか、フェイを追撃するなんて愚行は起さないようだ。


「見ていろ……これがアルドラゴ艦長……レイジの戦いだ!!」


 ゲームリスタート!

 意識を入れ替え、いざ駆け出そうとしたら、ふと背後より声が飛ぶ。


『ケイ―――』


 アルカの声に俺は僅かに顔を向ける。

 ハイ・アーマードスーツの仮面越しではあるが、どんな顔をしているのかは理解出来た。

 もう、長い付き合いだもんな。


『―――こうなった以上、負けたら承知しませんので』


 本当はもっと色々言いたい事もあるんだろうが、不思議と今の言葉に凝縮されていたような気がするな。

 俺自身、返事をすることはせず、ただ親指を立てるだけに留めた。


 さて……やるか。


「レディ……ゴーッ!!」


 いつもの言葉を皮切りに、俺はメギルに向かって突進した。

 セブンソードは周囲に浮遊させたままだ。

 そして激突する寸前、目の前に浮く一本の剣を掴む。


 まずは壱剣!


「地剣……グランブレイカー!」


 手に取ったのは、七剣の中で唯一大剣と呼んでいい、身の丈ほどのサイズもある剣だ。


「面白い! 今度は貴様と力比べか!?」


 メギルは自身に向かって振り下ろされる大剣を受け止めるべく、自らの爪を正面へと突き出す。

 が、刀身に触れる寸前、その腕は強い反発を受けたかのように弾かれてしまう。


 そのまま刀身はメギルの肩口へと食い込む。が、そこで動きを止めてしまった。


 それも当然、普通の武器では神気を貫くことは不可能……。


 と、思わせておいて、一瞬の油断を誘う。その状態のまま、俺は剣の鍔元にあるトリガーを引いた。

 途端、ブゥンと音を立てて、大剣にかかる圧……というか、剣の重さそのものが変化した。


「ぐぬっ!」

「だあぁぁぁぁっ!!」


 そのまま刃を振り下ろし、大地へと叩きつける。

 メギルは危機を察知してか、直前になって自ら後方へと飛んだが、俺の放った剣の一閃は、確実に奴の肉を切り裂いていた。


 そう、つまり神気を貫いたのだ。

 という事は、どういう事なのか……目の前の神たちも察しただろう。


「まさか、その剣……いや、その浮いている剣……全て……」


 メギルの顔が驚愕に彩られる。

 残念ながら、答え合わせは無しだ。

 だが、この地の文では説明しておこう。


 メギルの推測通り、今俺が手にしているグランブレイカーを含め、この七剣全ては……完全にオリハルコンを使って作られた武器である!


 だがこれで驚いてもらっては困る!

 俺はジャンプブーツで跳びあがり、更に空中を蹴ってメギルの背後へと着地した。

 メギルもそれに対応して背後を振り向き、俺に向かって自らの爪を振り払う。

 だが、俺は既に新たな剣を手にしていた。


 弐剣……そして参剣!


「炎剣ブレイズブレード! 氷剣フリーズブレード!!」


 まず左の青い刀身の剣で振り払われた爪を受け止め、更に右の赤い刀身の剣でメギルの腹部を斬り払う。

 そのまま身体を滑るように移動させ、敵の背後へと回りこむ。

 更に一閃……二閃と刃を振るってメギルの肉体に傷を作っていく。


 だが、やはり傷は浅い。

 まともに傷をつけるのならば、最初のグランブレイカーの破壊力が必要になるだろう。

 それでも、残りの剣が無意味という訳でもない。


 ブレイズブレードは、機能上は以前のまま……超高温の刃で斬りつける剣。もう一つのフリーズブレードは、その逆……超低温で斬りつけた対象を凍らせる剣。

 異なる二種の斬撃を受けては、メギルの肉体もすぐには治癒できずに残り続ける筈だ。

 そして、オリハルコン製の武器でれば、特殊機能も同時に付与される事が分かった。


「さっきから、いちいち痛いわ!」

「うお!」


 メギルは、振り向きもせずに背後目がけて蹴りを放った。咄嗟に両腕でガードしたためにダメージは無いが、俺の身体は吹き飛び、距離を開けられてしまった。

 剣の間合いが無くなった俺目がけて、メギルはこちらの行動を封じようと口腔にエネルギーを溜め、再び火の玉を連発しようとする。


 それならば、これだ。

 四剣!


しゅう剣ストームスラッシュ!」


 刀身がやや短い小太刀サイズの剣を手に取り、そのまま投擲する。

 放たれた剣は、空中でくの字に変形し、形そのままブーメランのように高速回転しながらメギルへ飛んでいく。

 これは、以前ブレイズブレードに組み込んでいたブレイズスラッガーの性能を別武器として抽出した武器である。

 ブレイズスラッガーの場合は、炎を巻き散らしながら飛んでいく武器であったが、このストームスラッシュはその名の通り、風属性である。

 ゲイルの風手裏剣と仕組みは同じであり、風……というか空気を圧縮させたエネルギーを付与させて切れ味と刃の範囲を広げている。

 だから、それを躱そうと身をよじって避けたメギルの肉体を見事切り裂いた。


「チィッ! ならば―――!!」


 ブーメランなので空中で旋回して再びメギルに向かって飛ぶストームスラッシュ。

 それを叩き落そうと、メギルは両腕を組んで高く掲げ、再び自身に接近してきた刃目がけて拳を振り下ろそうとする。


 そのタイミング待っていた!


「トルネードブラスト!」


 俺の音声に反応して、ストームスラッシュに内蔵されている竜巻発生装置が起動する。

 ゴォォと音を立てて、メギルの全身を覆いつくすほどの竜巻が、垂直に立ち昇る。

 これは、かつてエメルディアでの魔獣戦で使用したもののコンパクト版であり、小規模な竜巻を発生させるものだ。


「ぐ、ぐぅ! この程度で我が吹き飛ぶか!」


 小さな竜巻に捕らわれながらも、メギルは大地にしっかりと踏みとどまっている。

 だが例え小規模であれ、メギルの動きを僅かなりとも阻害させる事には成功した。ついでに同時に発生する風の刃によってメギルの肉体は切傷だらけの筈だ。


 このチャンスに賭ける!

 伍剣!


「雷剣サンダースティング!」


 手に取ったのは、奇妙な形の長剣だ。

 稲妻の如きギザギザ形状の刀身に、柄が普通の長剣の倍以上の長さがある。

 その名の通り、雷属性を帯びた剣で、特に貫く事に特化した武装となっている。貫くならレイピアとか思い浮かんだのだが、どうも俺のイメージには合わないので、結果このような形になった。

 他の剣との差別化の為に、試行錯誤したものであるが、おかげで短槍のような見た目になってしまった。まぁ、とりあえず分類上は剣としている。


 竜巻が消えた瞬間を狙い、全速力で突進……サンダースティングをメギルの腹部へと突き刺した。


 が、剣の切っ先は僅かに食い込んだだけで、そこから先に進むことは無かった。

 ハイ・アーマードスーツの全身全霊全力で押し込んでいるのに、剣はこれ以上進むことは無い。


「ぐ……この程度で……我を倒せるか……」


 その姿は全身傷だらけ。更にサンダースティングによって体内に雷撃が響き、メギル自身もギリギリの状態の筈だが、その最後の壁を崩す事が出来ないでいる。

 だが、ここまで格好付けた以上、これで倒さねば本当に勝機は無い。

 何せ、このセブンソードはハイ・アーマードスーツを装着前提の武装だ。通常状態でこの剣を振るえぬ以上、ここで仕留めるしかない。


「!」


 俺はサンダースティングの柄より手を放し、後方へと飛び退いた。

 無論、逃げるためではない。


「うおりぁぁぁぁぁぁっ!!」


 助走と共に飛び上がり、メギルに突き刺さったままのサンダースティングの柄尻目掛けて、渾身の蹴りを打ち込んだのだ。

 通常の武器ならば、そのまま武器が破壊されかねない行為であるが、対象はオリハルコンで出来た武器……その心配は無い。


「ぐおぉぉぉぉぉぉっ!!?」


 追加された更なる衝撃に、サンダースティングの切っ先は遂にメギルの肉体に深く突き刺さり、そのままキックの衝撃で大きく後ろへと後退する。

 同時に、ダメ押しとばかりに深く食い込んだサンダースティングの切っ先より、雷撃がメギル自身の体内へ走り、更なる衝撃を受ける形となった。


「ぐあぁぁぁぁぁぁっ!!!」


 まるで落雷でも落ちたかのような雷光が走る。光が収まると、プスプスと煙を立ててメギルは天を仰ぎ見る。

 まだ、倒れないのか?

 一瞬不安がよぎるが、メギルはそのまま意識を失い、そのままバタリと地面を響かせて倒れたのだった。


 ……ざまぁみろってんだ。

 神に勝ったぞ、このヤロウ!!




 もうちょっとこのエピソード続きます。なんでオリハルコン製の武器持っているのかは、次回以降明らかになります。

 そして、セブンソードののこり2つの剣……こちらも、のちのエピソードで登場する予定です。今回は出し惜しみ。

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