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215話 襲ってきた者たち……




 およそ2ヶ月前……。

 俺たちチーム・アルドラゴを襲った最大の事件の顛末を紹介しよう。


 あの天空の島において、アルドラゴの墜落だとか、俺が一人だけはぐれたとか、アウラムの登場だとか、フェニックスの撃破とか、羅列するだけでとんでもない事件が起こった日々だったが、一番の事件を上げろと言われると、最後の最後に起こったあの日の事だろう。


 重力コントロール装置とやらのメンテナンスもある程度終わり、そろそろ次の目的地へ向かう算段をつけようとしていた頃だった。


 突如として現れた“嵐”によって、俺たちは大地に倒れ伏した。


 俺、アルカ、ルーク、ゲイル、フェイ、ヴィオ……。

 チーム・アルドラゴの主力となる6人が、成す術もなく敗れたのだ。


 そう、この事がきっかけで、俺たちのチームはバラバラになることになってしまったのだ。




◇◇◇




『これからの予定……ですか?』

「あぁ、もうそろそろ、そういうのを話し合うべきだな」


 アルドラゴのブリッジにて、俺、アルカ、ルーク、フェイの四人が顔を突き合わせている。

 この島に来て、もう半月近く経った。

 島に備え付けられている重力コントロール装置のメンテナンスももうすぐ完了する。ちなみに、その後のメンテナンスについてだが、月に一度ほど様子を見に来ることで話が付いた。場所さえ記録すれば、アルカたちの転移魔法によって簡単に来ることが出来る。

 ……尤も、あくまで俺たちがこの世界に居るうちだが。

 流石に、それ以降の事までは責任が持てない。

一応、メンテナンス用のアルドロイドを数体預けようかとか、そういう事は考えてはいるが、それでもそのアルドロイドが壊れてしまえば意味は無くなる。

 だが、この半月で翼族との交流も増えた。彼らの事を思うと、このままにしておくというのも心が痛む。

 この辺は、帰るまでにもうちょっと方法が無いか考えよう。

 ……まぁ、まだ正式に帰れるかどうか分からないけども。


「このサフォー王国……っていうか浮島を離れたとして、その次に向かうのは何処かっていう事なんだけど……」


 ちなみに、この浮島の正式名称……サフォー王国っていうのは、今は意味のない言葉なんだとか。

 昔は翼族も王政であり、この島に移り住んだ当初もその名残で王族が統治していたのだが、時が経つにつれて、王政は廃止。今では、島のあちこちに自治区が存在し、それぞれが独自に生活を営んでいる。

 まぁ、ある意味では翼族の神であるオフェリル様が統治しているとも言えるか。

 オフェリル様は数年に一度この島を訪れ、その威光を示した後は特に何を指示するでもなく、何を求めるでもなく、また去っていくんだとか。

 だから、今のこの島の名前は、天空島サフォー。

 生き残った翼族が隠れ住む最後の楽園だ。

 確かに、魔獣も何も存在しないこの島であれば、翼族は何に怯えるでもなく生きてゆくことが出来るだろう。


『この島を抜けた後というと……人族の生活圏を抜ける事になりますね』


 グランドスタッフと呼ばれる巨大な山を越えると、そこから先は完全に人族以外の者たちが住まう世界となる。

 大陸の最南端には、獣族が支配するシルバリア王国。

 そして、その隣には地続きではないが、大小さまざまな島が点在し、海族が支配するアクアメリル王国。

 その更に先に、俺たちが当初の目的地としていた樹の国が存在している。


 この島に来る前の計画では、この島で補給しつつ、次の目的地へと向かう予定だったのだが……。


『正直、エネルギーの件で言えば、ノエルさんの力のおかげで過度な心配はいらなくなったのですよね。……はっきり言って、その気になれば他の国を飛ばして樹の国に直接向かう事だって可能です』


 アルカの言葉に、俺は頷いた。

 そうなのだ。アルドラゴはエネルギーの問題もあって長時間飛ぶことが出来ない。

 だから、俺たちは少し飛んでは魔石を手に入れてエネルギーを補給し、また飛ぶ……という事を繰り返してきた。

 だが、あのフェニックスとの戦いの際、ノエルが魔力をこのアルドラゴに流した事によって、エネルギーは半分以上蓄積された。

 これだけのエネルギーがあれば、全速力で長距離を飛ぶことも可能となったのだ。


 元々宇宙を飛ぶ戦艦だもの。その宇宙を飛ぶスピードで地上を飛んだら、あっという間に目的地に着くんじゃね?


 ……と思っていた時期が私にもありましたが、この星の重力の問題なんかもあって、光速とかそのレベルのスピードで飛ぶのは無理なんだとか。

正確には、出来るけど艦の負担と地上の被害がでかいらしい。


 どういうこっちゃと思って聞いた所、この艦の推進装置である重力コントロール装置は、星の重力場を計算して浮かんだり飛んだりしているわけだが、この魔力というものが当たり前の世界では、完全な形では働いてはくれないらしい。


 具体的に言うと、魔力濃度の濃い地域というものが存在しており、その場所では磁場が乱れ、もし光速飛行中にその地域に激突した場合、強固な壁に激突したかのような衝撃があるんだとか。

 そして、その地域を無理やり進むと、魔力が乱れて……最終的には大爆発するらしい。なので、今出来る事は普通に飛んで、そういう地域を見つけたら迂回するなりしてやり過ごすしかないようだ。

 ……飛べるようになったらなったで、ままならない……。


 ともあれ、ひとまず俺の考えを述べよう。


「俺は、このまま樹の国へ行くべきだと思う」


 俺の言葉に、3人の視線が集まる。


「アウラムのヤツの事は気になるし、このままアイツが放っておくとも思えない。それでも、本当に樹の国に伝わっている魔法なら、俺たちを帰せるのかどうか……その確認だけはしておきたい」


 樹の国に伝わっていると言われる時空間転移魔法。

 それで本当に元の世界に帰れるのか……。

 正直、この世界に来た当初ほど、元の世界に帰りたいと切望しているわけでも無い。

まぁこれは、この世界での生活がそれなりに充実していて、ある程度時間が経ったせいもあるんだろうな。

 でも、帰りたいもんは帰りたい。まだ、あっちの世界でやり残したことはたくさんあるんじゃ。

 だから、まっとうな手段での帰還方法を、早いところ試してみたい。


 ……もし、それがダメだったとしたら、あまりやりたくは無いが、俺たちをこの世界に送り込んだ元凶であるアウラムのヤツを締め上げるしかないだろう。

 ……できれば、もう接触したくもないけども。


『ケイがそう思うのでしたら、誰も反対する者は居ませんよ』

『そもそも、反対する理由もありません』

『だとすると、アルドラゴの初めての長距離移動になるね!』


 AIであるこいつらの答えの予想は出来ていた。

 問題は、生身組である二人なのだが……


「あれ? そういやゲイルとヴィオはとうしたんだ? ……ついでに烈火と吹雪も」


 ナイアは自分の医務室に、マークス、スミス、それとテツの三人は工房に居るのを確認している。となると、残りの四人は何処に行った?


『あの四人でしたら、艦の外に居ます』

「珍しい組み合わせだな。何しているんだ?」

『なんでも、新装備のテストもかねて摸擬戦らしいです』


 摸擬戦か。

 新装備……というか、元々あった武器の一部を烈火と吹雪用に改造したものだから、それほど大層なもんでも無いのだがな。

 大掛かりな新アイテムは、まだ開発途中である。というのも、この半月の間、ほとんどアルドロイドの作成に費やしていたせいだ。

 ぶっちゃけ、ハイ・アーマードスーツ用のエネルギー補充でさえ、後回しにしている状況。

 もう、この島では大掛かりなバトルは無いだろうと楽観的に思っていたんだけど……


 ……今にして思えば、盛大なフラグだったのだろう。


 ちょうとそういう話をしていた時、ブリッジ……いや艦内に盛大な警告音が鳴り響いた。

 正直、この音が鳴ったのは俺が知る限り、初めてのことだ。


「何が起こった!?」


 俺の言葉に、アルカが答える。


『こちらに対して害意を持った未知の存在が、アルドラゴの周囲3キロ以内に出現した模様です!』


 まさか、また敵が現れたというのか!?

 いや、この島には魔獣は存在しない。という事は、まさかまたアウラムが手を出してきたのか。


『そんな……この反応、中級や上級魔獣レベルではありません。

 ……最低でも王級……いえ、神級ゴッドクラスレベルの敵性反応です!!』

「そんな馬鹿な!」


 あのゴッド・サンドウォームやフェニックス並の敵が現れたとでもいうのか?

 そんな存在、滅多に現れるものではない筈だ。


 とにかく、神級が出たとしたら相手が出来るのはアルドラゴしかない。


「とにかく、アルドラゴ起動準備! 迎え撃つぞ!!」


 こうなったらやるしかない。

 これまでと違って、エネルギーは十分にあるのだ。そうそう後れを取る事も無い筈。


「ゲイルたちに緊急連絡! すぐに帰艦するよう通達してくれ!」


 急いで艦長席に座って指示を飛ばしたのだが、フェイは操縦席に座らずに困惑したような表情を作っている。


「ど、どうした?」

『ゲイルさんたちから通信が……』


 そうか、ゲイルたちは艦の外だから、直に敵意の正体を確認できたのかもしれないな。


『……救難要請です』

「なに!?」


 そこへ、副艦長席に座っているアルカより声が飛んだ。


『……信じられません』

「今度は何なんだ!? いや、それよりもゲイルたちの救助を―――」

『反応が……三つあります』


「は?」


『敵性存在の反応が三つです。つまり、神級ゴッドクラスの存在が、三体……という事です』

「な―――」


 その答えに、俺は言葉を失った。

 神級の反応が三つ? つまり、ゴッド・サンドウォームとフェニックス、それと更にプラスしてもう一体。いや、この際フェニックスが三体出現でもなんでもいい。

 それと同等の存在が現れたという事か!?


『あ、主よ……』


 その時、ブリッジの通信機に声が届いた。

 この声は、ゲイルだ。息も絶え絶え……こんなゲイルの声、聞いたことないぞ。


「ゲイルか! 待ってろ、今すぐ助けに行く!!」


 そう怒鳴ったのだが、ゲイルからの反応は……


『に……逃げてくだされ……』


「え?」


 逃げろ?

 今、ゲイルはそう言ったのか?


「おい、何があった? ゲイル、ちゃんと答えてくれ。ヴィオや吹雪、烈火は傍にいるのか? おい!」


『に……げ……て……』


「!!!」


 絞り出すようなその言葉を聞き、俺は艦長席を蹴るように飛び出した。

 自分でも覚えていない程のスピードで艦の外に出たはいいのだが、ゲイルたちが何処に居るのかそもそも知らなかった。


 馬鹿野郎、落ち着け!

 慌てたところで時間が戻る訳が無い。


 荒い息を整え、周囲を見渡す。

 何処だ? 確か、摸擬戦を行うと言っていた筈。という事は、そう遠くへは行っていない筈だ。


『ケイ!』


 アルカの言葉に背後を振り向くと、バイザーがこちらに向かって投げつけられ、反射的にそれを受け取った。


『バイザーに座標が表示されています。さぁ、急ぎますよ!!』


 アルカとルークの二人を乗せた狼モードのフェイが超スピードで駆けてきた。

 問うまでもなく、気持ちは皆一緒という事だ。


 俺はバイザーを取り付け、ゲイルたちの所在地を確認する。

 遠くは無い。

 それに、恐らくは例の敵性反応とやらも近くに居る筈だ。


 俺はジャンプブーツを水平作動させ、その場から文字通り飛び出した。





「え―――」


 現場に辿り着いた俺は、思わず言葉を失った。


 その者たちは、ゲイルたちが摸擬戦を行っていたと思われる平原の中心に居た。

 ゲイルたちは大地に倒れ伏している。生体反応はあるから生きている筈だ。


 それを知って少し安心したが、問題はゲイルたちを今の状態にした元凶たちだ。


 なんで?

 なんでこの人がここに居る?


「……ファティマ……さん?」


 平原の中心に立つ三つの影。

 そのうちの一つに俺は見覚えがあった。


 この世界に来た当初に出会い、俺とアルカにこの世界の説明をしてくれた存在……。


 側頭部より二本の角を生やした銀髪の女性……


竜の神ファティマその人だった。


 そして、その両隣に立つのは、3メートルほどの巨体、炎のたてがみを持つ獅子のような顔をした獣人の男。

 もう一人は、まるで蛇のような下半身を持ち、泳ぐように宙に浮かぶ青い肌の女性。


「獣の神……メギル」


「海の神……ムーアよ」


 炎の獣人と青い女性はそう名乗った。


 という事は、ゲイルたちを叩きのめした相手っていうのは、こいつ等……。


 神級ゴッドクラスなんてもんじゃねぇ。


 正真正銘の神……。

 それが、俺たちの前に現れた敵って事かよ。




 またまた随分と前回の投稿より期間が開いてしまって申し訳ありません。


 既に活動報告には書きましたが、コロナの濃厚接触者になってしまった+新作を書いていたせいであります。

 新作の方は短い話にしようと思っていたので、既に完結済み。興味がありましたら、作者ページからどうぞ見てやってください。


 この125話、本来なら前回の続きで帝国方面の話をする予定でしたが、やたらと説明が多い話でどうにも筆が進まず、どうせなら書きたい話から書こうって事で、主人公サイドの話となりました。

 しばらくはバトル話が続く予定です。

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