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鋼鉄のアルドラゴ~SFアイテムでファンタジー世界を冒険します~  作者: 氷山鷹乃
第1章 ある日異世界で宇宙船と出会った
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20話 アルカ変身! ある出会い




 ああ、なにゆえこんな時間に……とリファリナは思う。

 せめてもうちょっと早く来ていれば、あの冒険者……ケイが起きている可能性も高かっただろうに。


 昼間の事……。

 リファリナは未だにお礼すら言っていない事に気づいたのだった。


(だって仕方がないじゃない! 怖かったんだし……それに恥ずかしかったんだし……)


 ゴブリンと遭遇し、生まれて初めて死を覚悟した。

 その時リファリナは、あまりの恐怖に……まぁその……失禁したのだ。

 尤も、その時点ではその事実に気づかなかったし、そのまま殺されていればそれこそ誰も気づきはしなかっだろう。


 でも、生き残った。

 助けてくれたのだ。


 最初は、助けてくれたのが男性の冒険者……ハンターであるという事に恐怖を覚えた。

 何に何度か世話をした事のある男性ハンターというのは、大抵……粗暴、下品、暑苦しいと、ろくな男が居ないというイメージだ。実際、何度宿屋で接客している際にセクハラを受けた事か。


 でも、あのハンターは、リファリナがうずくまったままだったのを見ると、すぐに察してくれたのか、不思議な魔法でもってリファリナの服をすぐに乾かしてくれたのだ。

 しかも、これで大丈夫と笑顔で言ってくれた。

 その時のリファリナは恥ずかしくて仕方が無かったが、それ以降そのハンターはその事に対して追及する事も無かった。

 そんな紳士的な行動なんて、リファリナはされた事が無かった。

 胸がカーッと熱くなり、思わず目を合わすどころか、顔を見る事すら出来なくなっていた。


 そして、結果的にお礼を言いそびれ、今に至る。

 恐らく明日になれば、いよいよ言い出すチャンスも無いだろう。聞いた話によると、明日の朝には村を出てしまうらしいし。


 よし! と奮起し、勇気を出して冒険者ケイの部屋をノックしたのである。……時間からして、多分寝ているのではないかと思う。これで寝ていたら、むしろそれで構わない。これで寝ていたとしたら、神様が今は言うなという事なのだろう。


『はい。今開けます……』

「!!!」


 お、起きてたーッ!!!

 まずいどうしよう。

 八割がた寝ているとばかり思っていた。

 いやいやいや。起きているのなら、ちゃんと言わなくては! むしろ迷惑なのかもしれないが、勇気を出してきた以上はしっかり言わないと。

 あ、でも……もし部屋へと連れ込まれたら……? キャーッどうしよう!


 ……でもリファリナは不思議に思う。

 今の声、まるで女の人の声のように聞こえたが……。


『リファリナさんですね。何かご用でしょうか?』

「!!!」


 出てきたのは、ハンターケイでは無かった。

 所詮15歳の田舎娘である自分なんかでは比べ物にならない、超美女が部屋の向こうに立っていたのだ。

 突然の事態に、リファリナはしばしの間呆けていた。


 待て待て待て。

 頭の整理が追い付かない。

 確か、この部屋を貸しているのはハンターケイだけの筈だ。

 部屋を間違えた?

 いやいやいや、今この宿屋に泊っている人は、一人だけの筈。


 つまるところ、この疑問に行き至る。

 ……この人誰?


「あ、あのあのあのあの……」

『ケイに何かご用でしょうか? でも、今ケイは深く深く眠っている所ですから、伝言でしたら私が請け負いますが』


(ひぃぃ。なに、ケイって親しげに! な、何なのこの女!?)


「あ、貴方は……どちら様で……」

『ああ。……そういえば、こうして会うのは初めてでしたね。私は、アルカ。ケイの仲間……いえ、相棒でしょうか』


 ガシャガシャガシャ……。

 何かがリファリナの中で崩れていくのを感じていた。


 こ、こんな女性ひとが居たの?

 同じ部屋に居るんだから、きっとそういう関係なんだよね……。

 しかも、よく見たら、身体に纏っているのはシーツ! いかにも、慌てて着込んだみたいな格好だ。

 という事は……きっとそうなのだ。

 なんというか、自分で勝手に舞い上がっていたのが、物凄く恥ずかしい。


 ぐ……ぐす……


 リファリナは、泣き出してしまった。




◆◆◆




 な、なんでこんな事になったんでしょう。

 リファリナさんは目の前で突然わーっと泣き出してしまい、そのまま去って行ってしまいました。


 か、考えたくはないですが、これって私のせいなんでしょうか。

 あうう……ショックです。

 何やった? 私何やった?

 見た目、人間と差異とかあったでしょうか? それとも顔? この顔って、この世界の人からしたら、そんな恐ろしい顔!?


 失意の中、私はガックリと肩を落としてとぼとぼと部屋の中へと戻っていきました。


 この姿、しばらく封印決定ですね。

 リファリナさんを泣かせてしまった理由が判明するまで、人前でこの姿をさらすのは止めておきましょう。


 さて、とりあえず人型化の実験は済んだので、また元の魔晶姿に戻りましょうか――――――


 と思ったところで、ふわぁっと何かが私の身体を通り過ぎた。

 慌てて、それが来た方向を向く。

 窓が開いている! 誰かが入ってきた!?


 と、警戒していると……


『あなただぁれ?』

『精霊かな?』

『それとも人間?』

『いや、魔獣じゃないかな?』

『でも、はちょーは精霊に近いよ?』

『でもでも、身体があるしー』

『なんかぐにょぐにょしてて、スライムみたい』


 ふわふわした綿毛のようなものが、私の身体にまとわりついていた。

 え? え? え?

 何ですか、これ。


 いえ、ひょっとして……と思う情報があります。


『貴方たちは、精霊さんですか?』


『そだよー』

『わたしたち、風の精霊シルフ』

『よろしくー』

『よろしくー』

『よろしくースライムさん』


『いえ、私はスライムではないのですが』


 でも、元が液体で、ぐにょぐにょと形を変える……というと、確かにスライムに近いかも。

 と言っても、ケイの知識にあるスライムというのは、愛らしい外見をしているけども雑魚敵……というイメージが強いので、私としては遺憾です。ええ、遺憾ですとも。


『私はアルカと申します。よろしくお願いします、シルフさん達』


 ペコリと頭を下げて自己紹介すると、何やら纏わりつき度が増した気がする。

 でも、不思議と嫌な気持ちはしません。これはあれですかね……感覚的に、懐いている……と言っていいのですかね。


『アルカちゃーん』

『アルカちゃんあそぼーよ』

『あそぼー』


『え? い、いや……遊ぼうと言われましても、そもそも私は遊びというものがどういうものか……!!』


 いつの間にか、私の身体は宙に浮いていた。当然、あの綿毛のような身体で私の身体を持ち上げるなんて芸当が出来る筈もないです。

 それが、シルフ達から発せられる魔力によるものだという事は私にも理解できました。


『これが、風の魔法?』


 そして、私の身体は自動的に窓の外へと運ばれていく。

 抵抗しようと思えば出来たと思うのだが、何故だか私にはその気が起きなかった。それは、邪気というものを一切感じられなかったからだろうか。彼ら……と表現していいか不明だが、彼らは純粋にただ遊びたいだけなのだ。


 後でファティマさんに聞いたところ、こうして精霊が姿を現すこと自体がめったにない事らしい。少なくとも、樹族と竜族以外の前に姿を現したという前例が無いとの事。精霊は、人間が持つ悪意や邪気といったものが大嫌いで、そういうものが強い人族は、精霊を確認できた者はほとんど居ないという。

 私は、それだけ彼らにとって珍しい存在だったのですね。

 確かに、私には人間のような邪気や悪意といったものはありません。……そもそも、命というものがない私には必要がありませんからね。


 私の身体は、どんどん空高く……高くのぼり続ける。

 ミナカ村はもはや普通の目であれば、何処にあるのかも判明しないほどに昇る。


 人間であれば恐怖に震える高さかもしれないが、私には関係ない。所詮この身体は水で出来ているものだし、意識だっていざとなれば本体である艦の方へ移せばいい。

 尤も、彼ら精霊が私に対して危害を加えるつもりが無い事は、なんとなくだが理解できる。これがいわゆる、直感というやつなのですかね。


 やがて、雲の上へと昇った私は、生まれて初めて目を見開くという行為を行いました。


 遠くに見える巨大な城を有する都市。

 様々な生物が存在する事を連想させる巨大な森林。

 見渡す限りに続く巨大な平原。

 まるで大地そのものが切り裂かれたかのように見える、巨大な渓谷。

 その先には、空に浮かぶ島そのものまで確認できる。


 これが、世界。

 これが、エヴォレリア。


 思えば、物を見て感動したというのは、これが初めてだったのかもしれません。

 また、何故だか分かりませんが、この光景をケイと一緒に見てみたい……という欲求が生まれました、

 ……本当に、私はどうしてしまったんでしょうね。


 いえ、きっと見せる事が出来る筈です。

 そのためには、やはり艦のエネルギーを復活させなくては!

 それが、私が私である理由です!





 次話で、一応の区切りとなります。

 いい加減、タイトルの意味とかはっきりさせとかないと……。


 それが終わったら、いよいよ本格的に冒険開始です。


 魔物→魔獣表記に統一しました。

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