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201話 鋼鉄竜VS不死鳥




「ふぅん。それが噂に聞く、君たちが従える鋼の竜か。面白い、僕の配下の初陣として楽しませてもらおうじゃないか!」


 クリエイターは嬉々とした顔つきで宣言すると、黒いフェニックスを従わせてその場から浮き上がる。

 正直、今問答無用で攻撃してこられたら、こっちが不利だったが、あっちが正直に正面から戦ってくれるのなら勝機は十分にある。

 ……と、その時の俺はそう思っていた。詳しくは後程……。


「とにかく、全員アルドラゴに搭乗!」


 光がパッと射してアルドラゴの内部に転送!

 とか出来たら色々便利なんだけど、今のところその機能はないので、ジャンプブーツで地道に跳んでハッチより乗り込みます。……地味だ。


 そんな感じで通路を走り、ブリッジまで辿り着くと、操縦席に腰かけたフェイが、冷ややかな視線でこちらを見ていた。

 うむ、言いたいことは分かるが、物事には勢いってものがある。俺は片手ですまんとジェスチャーをすると、艦長席へと腰かけた。


『レイジ、俺たちはどうすればいい?』

『うむ。ちなみに艦の操作は一通りなんでも出来るぞ』


 問いかけてきたのは吹雪と烈火の二人だ。

 なんでも出来るか……。そう言えばルークは今スミスと一緒に重力コントロール装置を修復中だったなという事を思い出す。


「二人は、ルークの役割を分担してくれ」


 戦闘時におけるルークの仕事は、武器の使用もあるが艦の全体的な管理がメインだ。

 要は、「~~に被弾しました!」とか「~~部異常発生!」とか報告する係である。

 前回の戦闘では特に目立たなかったし、同じことはアルカでもできる。二人ならば問題なく出来るだろう。


『よっしゃ! 初めての実戦だぜ! 腕が鳴るな!!』

『実戦は既に経験しただろう。愚弟め』

『か、艦での戦いが初めてだっつうんだよ』

『頼むから、姉として恥だけはかかせてくれるなよ』

『うっせ! そっちこそ、下手なことしてレイジ怒らせんなよ!』

『し、失礼なことを言うな! 先生、私は大丈夫です。しっかりとやり遂げてみせます!』


 と、姉弟漫才を繰り広げる。

 その様子に、若干緊張がほぐれたような気もするな。


「はっはっは! この艦もだいぶ賑やかになったでござるな!」

「だなあ。うちらも先輩として下手な事は出来ねぇぜ!」


 ゲイルとヴィオの二人も意気揚々と席に着く。


『ええと、私はいつものように医務室で待機していますね』


 残るナイアはいつもの見慣れたボール姿でコロコロ転がってブリッジより退室していった。

 実際、戦闘時にナイアが出来る仕事は今のところないからな。


 最後にアルカが隣の座席に腰かけたのだったが、


『さて、勢いよくなんとかすると約束していましたが、アルドラゴのエネルギーはほとんど無いのですよ。その辺、どうするおつもりですか?』

「うおっ! そ、そうだった!!」


 腰かけた途端に、そんな言葉をぶち込んできた。


「アルドラゴはどれぐらい戦えるんだ?」

『全体的なエネルギーは8%。これに武装を使用するとなると、10分も持ちませんね。それに、下手すると戦っている最中にエネルギー切れで墜落しますよ』

「うおおお!」


 俺は頭を抱えた。

 なんというか、ついさっきオフェリル様の前で自信満々に格好つけていた自分が恥ずかしい。

 これで負けたらどうすんだよ。

 ……というか、まともに戦えやしねぇ。


艦長マスター! 敵が仕掛けてきます!!』

「!!」


 くそ! 考えている暇すらねぇ!


 見れば、敵……黒いフェニックス―――めんどくさいからフェネクスと呼称する。確か、フェニックスの悪魔としての名前だった筈―――が、口より炎の塊をこちらに向けて撃ち出したところだった。


「回避と共に上空へ移動!」

『了解!』


 アルドラゴの運動性能によって放たれた二発の炎を華麗に回避。位置的な優位を取るべく、上空へと移動する。

 と言っても、相手も鳥の姿をしている魔獣だ。上を取ったからと言ってすぐさま優位になるものではないだろう。


「アルカ、この付近で集落の無い広い場所を探してくれ」

『了解しました。最低でも10キロ四方集落の無い場所を探します』


 さすがはアルカだ。

 このアルドラゴで空中戦をやるのなら、最低でもそれぐらいの広さがないと戦えない。

 それに、その戦っている下に集落でもあったら、ボカスカと攻撃を撃つ事すら出来ない。だから、広い場所は必須なのである。

 一番好条件なのは海の上なんだけど、ここから海はかなり距離が離れている。それに、万が一墜落って事になったら大変だ。

 ここから真下の島までの距離はせいぜい500メートルくらいだが、島を飛び出してしまうと1万5千メートルにもなってしまう。

 ……尤も、もし墜落になるようならこの戦いは負けという事であり、それすなわち島の墜落って事になるのだから、そんなに意味は無い。


『フェイ、指定の座標まで移動してください』

『了解姉さん』


 メインモニターの端にマップが表示され、ポチポチと地図の上で光が点滅している。

 俺にはアレがここからどのぐらいの距離なのか分からんが、フェイには分かるのだろう。それは二人を信頼しましょう。


『さて、バトルフィールドは決まりましたが、問題はエネルギーです』

「ですよね……」


 今の移動だけでもエネルギーはどんどん消費していく。

 これでボカスカ武装を使えば、あっと言う間にエネルギーが底をつく。


「ひょっとしたら、一撃で終わるって可能性も……」

『あると思いますか?』

「無いな」

『だったら言わないでください』


 あっさりと遮断される。

 そんな目をするな。俺も本気で言ったわけじゃない。


 しかし、ならばどうするか……。

 アルドラゴの武装は使えないが、俺たちの個人兵装はまだまだ使える。

 フェネクスへの攻撃は考えず、その背に乗るクリエイターを狙えば、まだ勝機はあるんじゃないか?

 いや、それにはフェネクスを少しでも弱らせて動きを鈍くする必要がある。

 となると、やはりアルドラゴの力が必要だ。


『……仕方ありません。またあの方法を使いましょう』


 アルカが空中に浮かんだパネルのコンソールを操作すると、ガゴンと音を立てて円柱状の物体が座席のすぐそばに出現する。

 ただ、以前はルーク、ゲイル、ヴィオの座席の傍に出現したのに、今回はアルカの席だけだ。


 これを出したという事は、まさか―――


『私の中の魔晶エネルギーを使って、アルドラゴのエネルギーを補充します』


 だ、だよなー!

 そうじゃないかとは思っていたけど、本気でそれしかないのかよ。


「しかしアルカ殿、それならば我々の魔晶エネルギーも使用すれば……」


 ゲイルが自身の席から俺たちを振り返るが、アルカは首を振る。


『ゲイルさんやヴィオさんは、戦闘中に必要な役割です。ですから、エネルギー補充の役割は専門的な仕事の無い私がやります』

「………」


 正論だ。

 確かに、ルークも居ない現状では頼れるのはアルカの魔力しかあるまい。

 なんだけど……

 ……なんだけど、どうもこの島に来てからのアルカの行動は危なっかしい。俺が記憶しているだけで、3回ぐらい命の危機ってやつがあっただろう。

 だから、今この場で魔力タンクの役割を頼むのはどうも尻込みする。


『行きます!』


 そう言って筒に手を突っ込もうとするアルカ。

 だが、その途中で驚いた顔でこちらを見てきた。


『ちょ、ちょっとなんで止めるんですか!?』

「え? あ、あれ!?」


 筒に突っ込もうとするその腕を、力ずくで止める手があった。


 ……俺の手だ。

 

『は、離してください! じゃないと本気でヤバイんですってば!』

「い、いや……それは分かっているんだけど……」


 アルカの言葉の意味は理解出来る。理解出来るんだけども、俺の手は不思議と離れなかった。

 なんとなく、この手を離したら……アルカが消えてしまうんじゃないか……そんな気がしたのだ。

 実際、アルカのエネルギーを限界近くまで使用して戦ったとしよう、それでもし倒せなかったとしたら……アルカはどうする?

 すんごい嫌な予感がするのだ。


 くそ、どうしたらいいんだ俺は!?


「ふなー」


「え?」

『あれ?』


 突然、耳に飛び込んできたのんびりした声に俺たちは視線を下に向ける。


 すると、最早この地に来てから見慣れた姿となっている黒い猫が、ポツンと筒の上に座っているではないか。


『えっと……クロさん?』

「いや、クロは俺が昔飼ってた猫。コイツはただのクロによく似た猫で……」


 というか、本当に猫かどうかも分からない。

 そもそも、コイツはどうやってここに入り込んだんだ? いや、猫なんだからスルリスルリと入り込む事ぐらい簡単か。

 でも、なんでまたこの状況でこの場に? この猫が現れた時は、大概俺がピンチの時なんだが、流石に今この状況で何が出来るとも思えないぞ。


「ふにゃ!」


 猫はまるで「自分に任せろ!」とでも言うように鳴き、そのまま自らのしっぽを筒の中へと差し込んだのだ。


「あ、こら!」


 猫が空気を読まずにいたずらをするのはよくある事なのだが、この場では流石にまずい。

 大事な機械を壊されてはたまらん。

 急いで猫をどかそうと手を伸ばした時だった。


「ふにゃにゃにゃにゃーっ!!!」


 その雄叫びの如き鳴き声と共に、猫の身体が激しく発光したのである。

 俺は思わず伸ばした手を引っ込め、座席から立ち上がってしまった。


 その直後―――


『か、艦のエネルギー……50%まで回復しました。飛行、武装、全てオールグリーンです』

「なぬっ!?」


 フェイの報告に、耳を疑った。


 ガス欠寸前だったアルドラゴのエネルギーが、一気に半分まで回復した。

 当然、その原因はこの光っている猫にあるはず。


 出会ってから常々思っていたことであるが、この猫……一体何者だ?

 今まで、状況的にこの問題を解決する事を後回しにしていた。それに、ピンチが終わるとこの猫はどこへ消えるのか姿か見えなくなってしまう。そうすると、不思議とこの猫の事は記憶から消える……。いや、覚えてはいるんだが、この猫の事を考えなくなるのだ。

 そして、またふらっと現れると「ああそう言えば……」と思い出す。

 だが、こうなってしまっては放置したままというわけにもいくまい。


 いかないけども、今は追及するその時ではない!


 今度は戦闘終了後もこの猫から目を離さず、この猫の存在を忘れないぞ! 

 と、とりあえず心に決め、俺は視線を正面モニターへと向ける。


「疑問はいっぱいあるだろうが、今は目の前の事に集中! 戦闘再開だ!!」


 エネルギー十分!

 ようやくまともに戦えるようになったアルドラゴの真の姿を見せつけてやるんだ!!




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