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188話 臨時作戦会議




「なぁるほど、全員集合ってわけかい。それにしても、予定外とはいえ揃ったものだね」


 確かに、なんだかんだあったがこうしてフルメンバーが揃うのは久しぶりだ。

 6人……いや、俺とアルカの背後に怪我はしているが新たな仲間である烈火と吹雪の二人が居るから、8人が勢ぞろいした訳か。


「んでレージよ。コイツはなんだい」


 ヴィオが警戒しつつも俺に尋ねてきたが、それよりも早く反応した者が居た。


『……アウラム!』

「おっとフェイっち知り合いかい?」

「アウラム……噂に聞く、フェイ殿を操っていた敵の主犯でござるか」

『え!? こ、コイツが!?』


 アウラムの姿を初めて視認したヴィオ、ゲイル、ルークの3人がそれぞれ反応する。

 まあついでだから補足情報も追加しておこう。


「そんでもって、俺をこの世界に送り込んだ張本人でもあるらしいわ」

『『「「!!!」」』』


 驚くよね。俺も驚いたし。

 そうしていたら、この男は新たな爆弾を俺たちに投下したのだった。


「ああ、訂正訂正。正確には君だけじゃない。……君たち全員だよん」


『『『「「「!!!」」」』』』


 おいおい、コイツ……今なんつった?


 驚いている俺たちの顔が面白いのか、アウラムはうんうんと顔を頷かせて新たな言葉を繋げる。


「もっと言うと、君たちだけじゃなくて世界中に色んな異世界から色んな種族を送り込んでいるのさ」

「なんで……そんな事を……」

「んー。半分は、何か面白い事が起きないかなという単純な気持ち。もう半分は……君の仲間を集めるためだよ」

「……仲間……だと?」

「そう。RPGでいうところのパーティだねぇ。ちなみに、緑のエルフと紫のヴァンパイアは僕が選んだパーティメンバーだよ」

「「!!?」」


 その言葉に、ゲイルとヴィオの二人が目を見開く。


「んでもって、予定外なのがそこの青いのと黄色いの」

『『!!』』


 次に指摘されたのは、アルカとルークだ。

 アウラムはやれやれとでも言うように頭を振り、お手上げのポーズを作る。


「全く……AIが実体化して仲間になるなんて、想定外もいいとこだよ。せっかく面白い仲間も用意していたっていうのに。

 ええと……サイボーグに、人狼、巨人、ドラゴニュート……後、人魚とか。

 どう、これって面白いパーティでしょ?」


 コイツの言葉が真実だとしたら、ヴィオを仲間としたルーベリーの戦いの後、他にも仲間入りイベントなるものがあったという事か。

 というか、サイボーグはシグマの事だとして、他にもそれだけの異世界の種族が存在しているという事なのか。


「まぁおかげで、フェイちゃんを人型に出来るってアイディアを思いついたんだけどね。パーティキャラの身内が敵サイドに居るってのも、これまた面白い展開でもあるからさ。

 ついでに、用意していた人狼ポジションをフェイちゃんに割り振ってみた。金属の狼に変身する美少女ってのも、なかなかいいアイディアだよねぇ」


『………』


 フェイが、最早視線だけで相手を殺せるかと思うほどの眼光で、アウラムを強く……それは強く睨みつけていた。

 まさか、フェイが狼の姿に変身できる理由って、それかよ。


「ああ、大丈夫大丈夫。ぶっちゃけフェイちゃんはもういらないし、こっちが付けていた鎖はもう千切れているからね。彼女はもう君たちの味方だよ」


『………』


 更に強い眼光で睨みつけるフェイ。……さっきの睨みよりもさらに上のステージがあったとは驚きだ。なんかビームが出そうだ。


 しかし、フェイが味方である事は疑ってはいないが、もういらないとか……本気で腹立たしい発言をする野郎だ。


「それにしても、せっかく仲間になるべくお膳立てしたサイボーグをなぁんで手放しちゃうかなぁ。サイボーグだよ? 加速装置の付いた全身武器のサイボーグなんて浪漫じゃないのさ」


 アウラムの言葉はまだ続く続く。


 ……正直、コイツに聞きたいことは山のようにあるんだが、今それを問いただす事は時間の無駄のように思えてきた。

 冷静になって考えてみれば、コイツの言っていることが100%真実だという証拠は何処にもない。コイツが何か適当な事を言って、俺たちを動揺させているだけという可能性だってある。

 そしてそれを、今の俺たちに見極める事は出来ない。

 だったら、やる事は一つだ。


「総員。今はとにかく、全力でコイツを叩くぞ」


 俺の言葉に、アウラムを含めた全員が驚きを顔に表す。

 特にゲイルは何かを言いたそうに口を開きかけたが、何故かそれをつぐんでしまった。

 だが、一番新参であるヴィオは、言葉を飲み込めずに反論した。


「おいおい、今のあたしらが全力でやったら、どうなるのか分かってんのか?」


 その反論は当然だ。

 俺は全員で戦わねばならない理由を説明しようとしたが、それは突如として耳に響いた声によって遮られた。


『ストップ。これ以上の会話は危険です』


 ―――ん?

 なんか普通の耳に響く声とも、通信機越しの音声とも違う。まるで、耳の中に直接響いたかのような感覚だった。

 咄嗟に俺はその声の主……フェイを振り返ろうとしたが、その行動もフェイの声によって遮られる。


『振り向かないでください。今、この場に居る全員の耳にのみ、声を届けています。この声が外に漏れる事はありません』


 なにぃ!?

 フェイさんそんな事も出来たんすか。というか、どうやってだ? 今の俺はバイザーは身に着けてないし、そもそもそんな機能は無い筈だ。


『全員が着ているスーツの金属を振動させ、頭蓋骨の振動を通して内耳を直接震わせて脳へ音を届けています。低範囲ですが、全員の声も拾えます。聞こえない程の小さな声で喋ってください』


 なるほど、スーツの金属を利用したのか。骨伝導とか、そういう仕組みのイヤホンがあるってのは聞いたことがある。フェイは、属性でくくられるのか不明だが、主に金属を操る事が出来るからな。こういう離れ業も出来るって事か。


 言われた通り、聞こえないレベルの小さな声でボソボソと喋ってみる。


『全員、聞こえるか?』

『聞こえます』

『ばっちりだよー』

『良好にござる』

『おう、聞こえるぜ』

『……問題ないようですね』


 それぞれの声が耳の中に直接響く。

 まだ違和感があるが、今は仕方ない。慣れるしかないだろう。


『さっきの全で戦う案件だが……正直言ってアイツはめちゃくちゃ強い。さっきもアルカと一緒に戦ったが、傷らしい傷は全くつけられなかった』

『え? それってスーツも武器も使ってって事?』

『持っている装備はフル稼働でやった。でも、無理だった。そもそも、信じたくない事だが、アイツ自身もアルドラゴと同等の装備をもってやがる。……下手したら、それ以上』

『んが!? ……マジかい』

『フェイ殿は、それを知っているのでござるか?』

『……はっきりと見たわけではありませんでしたが、推測はしていました。まさか、この男がこの地に居る事は想定外でしたが』

『なるほど、シグマの旦那とは別系統の強敵って訳だな』


 ヴィオの言葉に納得する。

 シグマも確かに強敵であり、自分達よりも強力な武装を持っていた。それでもなんとか勝つ事が出来たのは、対策を練る事が出来たせいだろう。

 それで、今回の対策と言えば……。


『私たちの装備にも弱点はあります。ですが、それを補うように別のアイテムがあるのです。あの男がどんなアイテムをどれだけ持っているのか不明の今は、対策のしようもありません』


 俺の意見をアルカがほぼ代弁する。


『そうなんだよな。しかも、あのヤロウはシグマが使っていた……防御力関係なく対象を消失させるあの力を使いやがる』

『『『!!!』』』


 俺の言葉に四人が息をのんだ様子が感じられる。


 そう。ネックはあの力だ。

 あれをまともに受けたら、生身である俺たちは勿論のこと、疑似肉体を持っているアルカたちも死にかねない。事実、フェイは死にかけたし、当たり所が悪かったら吹雪たちですら意識データごと消滅していただろう。

 あれだけは、受けるわけにはいかない。


『だから、手数の多さで攻めて、奴の攻撃そのものを封じる必要がある』


 そう、対策があるとしたら、まず使わせないことだ。

 見た限り、アレ……ロストブラストをノーモーションで使う事は無理だと想定した。ならば、ロストブラストを使う余裕がないほどに相手を追い込めばいい。

 それには、俺たち全員が絶え間なく攻撃を浴びせ続けるしかないだろう。


『なぁるほど。だが、アタシはともかくして、アンタたちはいいのかい?』


 ああ、その懸念は理解出来る。

 これが魔獣相手だったら、ヴィオも反論はしなかっただろう。

 だが、相手は人間なのだ。

 そんな相手に6人がかり全力で戦えば、その結果はどうなるか……


 ……当然だが、殺してしまう可能性もある。


 その懸念は俺も理解出来る。だが、今はそんな事で迷っている暇はない。

 それに、この底が知れないこの男相手に手加減はかえって危険だ。

 はっきり言えば、マジで戦って勝てるという保証もない。


 それでも、アルドラゴのメンバーが全員でやれば可能性はあると俺は信じている。

 だが、他のチームメンバーが受け入れるかどうかは、各々の判断に任せるつもりだ。

 ここで艦長命令で強引に従わせる事は、今の俺には出来そうもない。


『拙者は承った。元より敵にござる。問題はござらん』

『私も……それしかないようですね』

『難しく考えなくても、無力化すりゃいいんだよね。だったらおっけー』

『はあ、ルークは単純ですね。とにかく、クルー全員の意見は纏まったようです』


 アルカの言葉に、俺はふぅと息を吐く。

 全員の意思が統一されたのなら、後は俺が号令を出すだけだ。


 決意も新たに声を出そうとしたら、背後より声がする。


『なあレイジ、俺たちはどうすればいい?』

『あぁ、私たちも暫定的なサブメンバーではあるが、チーム・アルドラゴの一員だ』


 吹雪と烈火の二人だ。

 声は少し弱々しいが、これは今までの会話でハブられていた事による気後れだろう。

 二人の声に覇気は消えていない。


『やれるか?』


 俺の問いに、二人は大きく頷く。

 ならば、問題は無い。


 俺はもう一度気合を入れなおすためにパァンと頬を叩く。


『なら……やるか』


 気を引きしめた俺の顔を見てか、今まで面白そうに俺たちを眺めていたアウラムが、組んでいた腕を外す。


「おや、作戦会議は終わったのかい?」


「あぁ、チーム・アルドラゴ……レディ……」


 久々の俺の号令を聞き、チーム全員の目つきが変わる。


「GO!」


 その掛け声と共に、俺はブレイズブレードを構え、目の前のアウラム目がけて突進した。


「あぁ、マジでるんだね! いいさ、相手してやろうじゃないの!!」


 ボスバトル……第2ラウンドだ。




 すいません。

 新型コロナとは関係なく、ひたすらに仕事が忙しかった……+プレイしたかったゲームが今月に集中していたという理由で遅れました。

 ようやくまとまった休みとなりましたが、何処に行くことも出来ないので、なんとか連休中に数話は書きたいなと思っとります。

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