表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鋼鉄のアルドラゴ~SFアイテムでファンタジー世界を冒険します~  作者: 氷山鷹乃
第1章 ある日異世界で宇宙船と出会った
19/286

17話 ここに来たワケ

 まだ説明続きます。






 先ほど、アルカがこの世界は7柱の神によってバランスが保たれていると言ったな。

 あれは、正確ではない。


 今、この世界に存在している神は、6柱のみだ。


 よって、今この世界はバランスが保たれているとは言い難い状態にある。


 原因は、今より200年ほど前。

 一人の神が、バランスを崩した事がきっかけだ。


 その神の名は魔神。

 奴は一族を率いて、世界を完全に支配しようと目論んだのだ。


 無論、そう簡単に支配できるほど、この世界は甘くない。そんな事をすれば、他の神が黙っていないからだ。


 だが、奴は人の神と獣の神を殺し、その力を我が物とした。

 そんな事が可能なのか?

 それは分からない。誰も試した事が無いからだ。

 だが、奴は確かに、他の神の力を持っていた。


 そして遂に翼の神までもがその手にかかり、奴は七神の過半数の力を一人で得た事になった。


 最早、猶予は無かった。

 他の三神は協力して、魔神へと立ち向かう事になった。


 いくら最も強い竜神が居るといっても、相手は四神の力を持つ魔神。

 決着はすぐには付かず、数年の時が経過した。


 その間にも、魔族は他の種族の領域を犯し、着実に支配の領域を増やしていった。



 やがて、英雄が誕生する。

 生まれたのは、人の英雄であった。


 英雄は、獣の戦士、翼の僧侶と共に魔族へと立ち向かい、一つの国を奪還する。


 神達はこの者達こそ、死んだ三柱の神達の生まれ変わりなのではと思った。


 やがて、最初に海の神が人の英雄を勇者と認めた。

 そして、海の種族で最も強い戦士を勇者の仲間に加えた。


 続いて、樹の神が同じく勇者を認め、樹の種族で最も強い魔術師を仲間に加えた。


 最後に、竜の神が自身の娘を勇者の一行への同行を願い出た。

 勇者に力を貸すべきかは、己で判断しろという事らしい。


 竜が他種族と共闘するなどあり得ない。

 そう育っていた娘は、当然反発した。

 が、激しい戦いの中、遂に娘は勇者を共に戦う仲間と認め、その背へ乗せて戦う事を承知したのだった。


 勇者と魔族たちとの長い戦い。

 三神も含めた勇者達と魔神との戦い。


 多くの犠牲があり、遂に魔神を倒すことに成功した。


 しかし、問題があった。

 ここで魔神を殺せば、また新たな魔神が生まれてしまう。


 よって、魔神は封印処分となった。

 誰も、手を出せない……空間と空間の狭間……時の牢獄の中へと。




◆◆◆




 昔話は終わった。

 登場人物に関してはほとんど名前を明かさなかったが、その竜神の娘とやらが誰だかはなんとなく理解できた。


「それで、ファティマさんが新たな竜神に?」

「む? まぁ、そうじゃの。父上もその時の戦いで亡くなってしもうたからの。わしが選ばれたのも必然と言えるじゃろう」


 何処となく恥ずかしそうに言った。自己顕示欲の強い彼女からすれば、珍しい光景だ。


『では、その時の勇者の仲間達というのが、今の神なのですか?』

「ふふ。そうじゃ……と言いたい所じゃが、海の神と樹の神は未だ健在での。まだまだ老体に鞭を打って、神の仕事をしておるよ」


 という事は、今の人の神は、過去は勇者という事か。

 すごいな。勇者が王になるって物語はよく見るけども、神にまでなるって話はそうないんじゃないか。


『そして、その魔神を封印した時の牢獄というのが、私とケイが出会ったあの空間という事で良いのでしょうか?』

「え?」


 アルカの言葉に、気づかされた。

 俺が氷漬けになって漂っていたという亜空間。それは正に、空間と空間の狭間と呼ぶに相応しい場所ではないか。

 俺自身はその空間の記憶は無いのだが、まさかあそこに魔神が閉じ込められていたというのか?


「話を聞く限りではそうじゃな。実を言うとじゃな、おぬし等とこうして会っているのは、牢獄の封印が解けたと樹の神から報告を受けたからなのじゃ。

 そして、その牢獄から出て来たおぬし等が、魔神なのではないかと疑っておった」

「!!」


 俺は、背筋を冷たいものが走るのを感じた。

 俺が……魔神?

 いやいやいや。俺はそんなんじゃないですよ。しっかりと以前の生活の記憶あるし。

 それにめっちゃ弱いし。


『ケイ、安心してください。疑っていた……つまりは過去形です。今は違うと言う事ですよ』

「そうじゃ。大体、魔神だと判断しとったら、出会い頭に殲滅しとるわ」


 それもそうか……。

 殲滅って言葉は怖いけど、ちょっとホッとした。


「まぁおぬし等が魔神では無いと判断した理由なんじゃが……一切魔力を感じられなかった……という事が一番の理由じゃな」

『私たちは、魔力という概念が無い世界から来ましたからね』


 なるほど。

 魔力が無いと言う事は魔法が使えないという事でもある。少々残念にも感じたが、魔力が無いおかげで命が助かったとも言えるか。……まぁ、これは完全にとばっちりだけども。


「じゃあその魔神っていうのは、まだ時の牢獄とやらに居るのか?」


 俺のその言葉に、ファティマさんは顔を曇らせた。

 なんか嫌な予感。


「そう思いたいが……可能性は低いとしか言えんな。そもそも、何故お前たちが時の牢獄へと迷い込んだと思う?」


 そう言えば、最初はその話だった。

 俺の記憶で最後に残っているのは、学校からの帰宅途中に謎の黒い球体へ飲み込まれたところまでだ。

 あの黒いのが、何かはっきりするというのか?


『話から推測するに、その空間魔術というものが原因ですか?』

「誰かが、俺たちにその魔術を使ったっていうのか?」


「正解……と言いたいが、確証は無い。

 おそらく、使用したのは魔神本人じゃ」


 魔神が空間魔術を?

 それなら、理屈は通る。が、疑問は残る。


「何故、200年経った今……という話だと思うが、あそこは時間の概念が薄い。恐らく、こちらの世界では200年だが、奴にとっては何万年も経過していたのではないかと思うぞ」

「そこで……空間魔術を編み出したってのか?」

「そう思っておったんじゃが……そもそもあの牢獄内では魔術はおろか魔力を練る事すら出来ないはずなのじゃ……。一体、どうやって空間魔術を使ったというのか。

 それに、アルカはともかくして、特に力があるように見えないお前さんを呼び込む事の意味を全く感じない」


 グサグサグサ


 くそう、分かっちゃいたけど、はっきり言われると耳に痛い。

 そりゃそうだよぅ。

 元々強くもないし、頭もよくない。特に異世界に来たからって、何か特殊な能力に目覚めてもいないし、中身も変わらずヘタレでチキンですよぉ。

 正直、アルカが居なかったら、最初の時点で詰んでる。


「アルカの力が狙いかと思っていたのだが、未だに手を出してくる様子もないしのぉ。奴の狙いがさっぱり分からん」


 確かに、その元々強い魔神とやらに、アルカの持つハイテク兵器が加われば、とんでもない事になるだろう。

 でも、未だにそれっぽい奴から接触してくる気配は無い。


 ともあれ、ファティマさんに分かんない事が、魔術素人の俺に分かるはずもない。

 スーパーコンピューターアルカさんなら分かんないけどな。

 ……おや? さっきからアルカずっと黙っているな。


「どうしたアルカ?」

『い、いいえ……。ちょっとした仮説を考えていたのですが、これに関しては一度艦へと帰還してから改めて検証したいと思います』

「ふぅん」


 アルカにしては珍しい。だが、まぁいいか。今のアルカはコンピューターじゃないしな。


「アルカの話によると、お前達が出会った途端に空間の扉が開き、この世界へやってきたのだったな」

「俺はその時意識が無かったから見てないんだけど……そうらしいですね」

「と、なると……やはり奴はこの世界に舞い戻ってきていると考えていいかもしれんな。この世界へと戻った際、得体の知れない者を見かけんかったか?」


 とはいえ、やはり俺はその時の記憶が無い。

 アルカはどうかな?


『いえ。その時は私も艦の機能の全てを使っていた訳ではないので……。とにかく、早くあの空間から脱出させねばならないという思いしかありませんでした』

「そうか……残念。とにかく、他の神々とも話し合わねばなるまい」


 これで、一番聞きたかった質問は終わりという事だろうか。

 ……結果的に言えば、この世界に来た理由ワケなんてものは、分からなかったが。

 その原因が分かるのは、その魔神とやらに直接聞いた時なんだろうか。……うわぁ、会いたくねぇな。おっかねぇ。


 心の中で頭を抱えていたが、ふとした疑問が頭によぎる。


「そうや、魔神魔神って言っているけども、その魔神の一族である魔族ってのはどうなったの?」

「む? 魔族のれの果てならば、お前達は既に会っているぞ」

「え? い、いつ!?」


 慌ててこの場を見渡すと、ふとラザムの姿が目に入った。

 ま、まさか……


「ふざけんな! 誰が魔族だ誰が!」


 ようやく喋られるまでに回復したのか、ラザムが怒鳴り散らした。


『ケイ。恐らく、ゴブリンの事ではないかと思われます』

「ゴブリン!? あれが魔族!?」

「だから、成れの果てだ。あれが魔族という訳ではない」

「正確には、魔族の持っていた魔力が魔石に溜まっている魔力。そして、僅かな意識のみがその魔石の中に留まり、魔獣となっているのだ」


 なんか当然のようにラザムが説明に参加してきた。この人、いったい何者なんですか。

 しかし、魔石の中に意識が……って、それじゃまるでアルカと同じじゃないか。


「え……じゃあ、あの魔石の中には、魔族の意識が入っているって事ですか?」


 思わず魔石を取り出して見てみる。

 この中に意志が存在する……と思うと、ゾクッとする。魔獣の卵みたいなもんじゃないのかと思っていたが、あながち間違いじゃないんじゃないか。


「いや、そこにある意識は既に消えておる。魔獣どもは、肉体を維持できないと判断すると、魔石の外へ逃げちまうからの。そこにあるのは、ただの魔力の塊じゃ」

「なんでも、魔神を時の牢獄へと封印した途端に魔族どもはこうなったようだ。神が存在しなくなると、世界に存在すら出来なくなる。そういう事らしいな」


 それこそ、本当の神の罰とかいうものなのだろうか? それとも、この世界の法則?

 ところで、さっきからラザムが普通に会話に入ってきているんだけど、これは追及するべきか?


『なんでも、ファティマさんの旦那さんらしいですよ』

「へ? 誰が?」

『ラザムさんが』

「ファティマさんの? 旦那さんって、ファティマさんと夫婦って事でいいのか?」

『そう聞いています』

「本当?」

「うむ。まぁ間違いではない。一応、こやつはわしの夫……という事にはなっとるな」

「おう、ファティマは俺の妻だぞ」

「もう一度聞きますけど、ファティマさんはドラゴンですよね。んで、アンタは人間……で合ってる?」

「ああ、わしはドラゴンじゃ。そして、神じゃぞ」

「俺は人間だ。神でも勇者でもない、ただの魔術師だがな」


 ………

 ……

 …


「はあああああああ!?」


 また最後にえらい爆弾がぶっこまれた。





 説明会が長いよぉ。

 本当はもっと長かったのを、一部カットしたんですよぉ。

 その辺の説明は、必要に応じて今後のシナリオに差し込むとします。


 しかし、早い所本筋のファンタジー世界をハイテク兵器で大冒険がやりたいなぁ。

 エネルギー補給の目途も立ったので、もっと宇宙船に積んであるハイテクアイテムも紹介していきますぜ。


 魔物→魔獣表記に統一しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ