表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
164/286

160話 ハイ・アーマードスーツ03&05




 時刻はアルカ、ゲイル、ヴィオの三人が艦長捜索に向かう少しばかり前へと遡る。


 準備万端といった感じで出発しようとした三人とそれを見送ろうとした二人であるが、そこへスミスから声がかかった。


『おう、お前等艦の外に出るなら、これ持って行け』


 そう言って五人へと近づくと、その円柱状の身体をパカリと開いたのだった。

 いきなり何をするのかと驚いた生身の二人であるが、よく見るとその開いた身体の中に何かがある事に気付く。


 それは、小さなアクセサリーのようなものだった。

 髪飾り、腕輪が二つ、ベルトに取り付けるバックル、耳飾り。それぞれ、統一感のある意匠が施されており、色の異なる宝石が埋め込まれていた。


『やったー完成したんだー!』


 それを見て、まずルークがピョンピョン跳ねながら近づいていく。


「それは、なんなのでござるか?」

『全員分のハイ・アーマードスーツだよー。しかも携帯式の!』

「「!!」」


 ゲイルとヴィオがまず驚く。

 いや、そういうものを作っているというのは聞いていたが、こんなに早く完成するとは思っていなかった。しかも、携帯式というのも驚きだ。


「ところで、何故にアクセサリーなのでござるか?」


 変身ヒーローもののセオリーでは、変身者はそれぞれブレスレットだったり携帯電話だったり、大体統一されているものではないだろうか。


『ええと、ケイの言葉をそのまま言いますと、あからさまに玩具的な変身アイテムだと萎える……との事です』

「……なるほど」


 ここまできて今更のような気もするが、気持ちも分からないでもない。ゲイルはとりあえず納得する事にした。

 手を伸ばし、恐らくは自分のであろう緑の宝石が埋め込まれた腕輪を手にする。


「スーツのカラーが彩られた宝石のものが自分のという事でござるな」


 左の手首に嵌めてみるとカチャリとロックがかかり、そう簡単には外れないようになる。外すには、手首裏の部分に3秒間親指を当てれば外れる仕組みになっているようだ。これで、そう簡単には無くしたりしないだろう。


『変身アイテムって言ったらブレスレットが主流ではあるけども、僕はバックルにする事にしたんだー』


 ニコニコしながらルークはバックル……というかベルト状のアイテムを手に取り、腰に装着する。腰回り的に、成人した大人は装着できないだろう。

 何処となく、変身ベルトを買ってもらった子供のように見えるから微笑ましい。


 フェイはイヤリングをヴィオはゲイルのものは逆の右腕用の腕輪を手にする。が、いざ腕に嵌めようとしてヴィオは首を傾げた。

 そして、何を思ったのかその腕輪を自らの右足首へと嵌めたのである。


「おおー、アタシはこれでいいや」


 体型に合わせてフィットする機能であるから、元々腕輪として作られていたヴィオの変身アイテムは足首にもピッタリとはまり、足輪アンクレットとなったのである。


「大丈夫なのでござるか? 足首では、いざという時に作動できないという事は……」

「いや、むしろ腕にある方が危なっかしくてな。殴りつける際に壊れちまわないかって不安がある」

『……一応、そう簡単に壊れる代物でもないんですがね』


 フェイが注釈を入れるが、本人が気に入っているのなら問題ないだろう。


「しかし、何故この状況でハイ・アーマードスーツを? この土地は魔力を吸収する仕組みだった筈。それではいくら強力なスーツとは言え、意味が無いのではござらぬか?」


 とゲイルが最もな意見を言うと、フェイはバツの悪そうな表情を浮かべて口ごもった。


『そ、それは……実を言いますと私の至らぬ所と言いますか……』

『おう、オリハルコンって金属にはなぁ、お前さん達の魔力エネルギーを内包する……つうか、外に逃がさない作用があるんだわ。つまり、ハイ・アーマードスーツを纏えば、エネルギーを過剰に放出する事もない。まぁ、使えば使う程に消費はするが、それでも他の土地と変わらないレベルに運用できるはずだぜ』


 スミスのその言葉に、全員の視線がフェイへと向く。

 それも当然。フェイは、そのオリハルコンで身体が構成されているにも関わらず、フェニックス遭遇事件の際は皆と同じように魔力切れで倒れていなかっただろうか。


『えーとその……その外へ逃がさない作用というのは、今回改めて発見された機能でして……。

 その機能は常に彫像のようにしていないと駄目らしく、今の私のように動いたり喋ったりしていると作用しないといいますか……。

 そもそも、私は姉さん達みたいに魔力というものについて詳しくないのです。魔法だって使えませんし……』


 しどろもどろになりながら弁明するフェイ。

 つまるところ、知らなかったという事らしい。


 たらればの話ではあるが、もしこの作用をフェイがこの地に来る前に知っていれば、今はだいぶ違った状況になっていただろうに。

 ともあれ、あくまで緊急時用のアイテムではあるが、いざという時の為の切り札があるというのは心強い。


 5人はそれぞれのアイテムを手に取り、各々役目を果たす為に行動を開始したのだった。




◇◇◇




 時間軸は戻り、戦闘の視点をもう一つ……アルドラゴの墜落地点で行われているルーク&フェイVSアーク率いる人形軍団へと向けてみよう。



『『変身アームド・オン』』


 音声ワードを入力したルークは大地に手を置き、フェイはふわりとその場で回転する。

 すると、ルークの足元に、フェイの身体を中心として空中に魔法陣が出現した。


 ルークの魔法陣はルークを包み込むように天に向かって移動し、フェイの魔法陣は二つに分かれて上下に展開する。


 さて、ルークとフェイ……二人のハイ・アーマードスーツの初披露となる訳であるが、果たしてこの二人にハイ・アーマードスーツが必要なのか? と疑問に思う方も居るだろう。


 ルークはゴゥレムを纏う事でハイ・アーマードスーツ顔負けのパワーを発揮できるし、フェイに至っては全身がハイ・アーマードスーツと同様のオリハルコンで構成されている身体である。

 戦力的にはあまり意味が無いのかもしれないが、それなりの事情というものが存在するのである。


 まずはルークの事情。

 本人としてはあまり表立って不満を漏らす事は無かったが、彼にも実はコンプレックスというものが存在する。

 それは、他のメンバーに比べて圧倒的に低い“身長”。

 元々、彼らの肉体は人格データの元になった人物を模倣したものであり、魔法によって肉体を構成しようとすると、自動的にその姿に固定してしまうのである。

 勿論、魔法で作られている身体であるから、その魔法によって肉体を変化させる事は可能である。ただ、それだと無駄に魔力を消費してしまう事になるし、ちょっとした事で魔法が解けてしまいすぐに元に戻ってしまう。それではあまり意味が無い。

 ゴゥレムを纏えば他のメンバーよりは倍近い体格を得る事が出来るが、彼の望みはチームメンバーと横一列に並ぶ事なのだ。

 よく戦隊ヒーローとかでヒーローが横一列に並ぶシーンがあるではないか。元々子供の体格の者が出る事はそうそう無いものであるが、普段のままだと背丈的に最前列に立つ事になるし、ゴゥレム状態だと一番後ろになってしまう。

 彼の望みはあくまで並列に並ぶ事。よって、このハイ・アーマードスーツの体格も、その望みに応じたものになっていた。


 HAS-03<タイタン>


 その名前こそ巨人タイタンであるものの、その大きさはレイジやゲイルのものとそう変わらない。だが、普段のルークに比べると、その体格は大人と呼んでも相違ないレベルになっていた。

 レイジのハイ・アーマードスーツがノーマルタイプだと言うのなら、ゲイルのハイ・アーマードスーツはレイジのスーツよりも細くスピードタイプと言えるだろう。

 ならば、ルークのハイ・アーマードスーツはレイジのスーツよりもより太くマッチョ体系……所謂パワータイプと言えた。

 ボディカラーはルークのメインカラーであるイエローとオレンジだ。




 続いてその隣に立つフェイのハイ・アーマードスーツについて説明しよう。


 ボディカラーはシルバーとブラック。

 かつて自らの身体を鎧とし、ゲイルと同化した際の姿と似てはいるが、頭部が狼そのままではなく、それを模した形になっている。目に相当する部位には黒いバイザーがあり、鋭い二つの目が赤く光って見える。


 さて、銀色で狼というモチーフから、その名前もファンタジーや幻獣について知識のある方ならば想像がつくだろう。


 HAS-05<フェンリル>


 さて、先に言った通り、元々オリハルコンで肉体が構成しているフェイがオリハルコンのスーツを纏う必然性が果たしてあるのかという疑問についてもいい加減説明しよう。

 

 強度という面においては恐らくは現時点で最高位の硬度を誇るオリハルコン。……であるが、それすらも無敵ではないというのは先の戦いでフェイがシグマと戦った際の結果見れば明らかである。

 敵がもし、防御力を無視するかのような攻撃を仕掛けてきた場合、装着者は無力となる。

 特にフェイは、自身の意志で自らをアルドラゴのコンピューターに接続していない。万が一の場合、アルドラゴのコンピューターに逃げ込むという手段が使えないのだ。


 よって、彼女にもハイ・アーマードスーツが用意され、二重装甲となった。万一の場合はスーツを切り離して離脱する事が可能。それに、スーツ自体にも特殊能力が与えられているので、当然ただの鎧という訳でもない。


『……その姿は何なのですか? そんなもの、情報には……』


 見れば、対峙しているアークが怪訝な表情を浮かべて二人を見据えている。

 流石に、ちょっと前に完成したばかりのハイ・アーマードスーツの情報は敵も知る由が無いだろう。


『へっへーん! 僕らは日々進化して強くなるんだもんね!』


 狼狽した様子のアークをせせら笑い、ルークはアルドラゴを取り囲む人形たちを睨み付けた。


『僕が前方と側面部の敵を掃討するから、フェイ姉ちゃんは背面部と僕が取りこぼしたヤツをお願い』

『了解です』

『スミス、Aアームズ射出!!』

『おう、まだテストもほとんど終わってねぇんだ。気ぃつけて使えよ!!』


 アルドラゴ内部のスミスより通信が届く。

 その通信が終わったと同時に、アルドラゴの上面部が開き、そこからユニットが発射される。

 空中に飛び出したそのユニット目掛けて、ルークは大ジャンプ。ハイ・アーマードスーツを纏ったルークの身体が近づくと、そのユニットはバラバラに分かれ、それぞれルークの身体の至る場所へと結合されていく。


『うおお、装着!』


 黙っていれば格好いい展開ではあるのだが、大声で叫ぶので色々と台無しである。

 ともあれ、ルークの言う所のAアームズを装着したハイ・アーマードスーツ《タイタン》が、大地へと降り立った。


 両腕には巨大な多連装ガトリングガン。胸部、肩部、脚部にはそれぞれミサイルポッド。更に背面部には二本のキャノン砲が覗いている。

 正に全身武器庫といった風体であった。

 火力重視のゴゥレムならば《キャンサー》が既にいるが、実は《キャンサー》とはコンセプトが違っている。

 まず、《キャンサー》の主力武器は土魔法を利用した弾丸だったりするのだが、こちらの《タイタン・Aアームズ》の場合は全てが実弾兵器なのだ。

 つまり、魔力による消費は一切無く、この状況下においても問題なく使用できる。

 すると湧き上がってくる疑問は、そんな実弾兵器の数々、何処で手に入れた!? というものであるが、この兵器の数々はシグマより受け継いだ武器の数々を、こちらでも使用できるようにと調整した物である。

 シグマの武器は、ロマン性抜きの実用性全開の代物であったが、それはそれでたぎるものがある。だから、こうして実用化されたわけだ。


『いっくぞぉ!!』


 ルークはそれぞれの武装の安全装置を解除し、バイザーの奥で周囲の敵をロックオンする。

 やがて、危機を感じたアークがその場から飛び退くのと、《タイタン・Aアームズ》の全ての武装が火を噴いたのは同時であった。

 弾丸が……ミサイルが……この空間内を飛び回り、次々に人形を撃破していく。ついでに地形も変わっていくが、ルークの事だから後で直すだろう。


 この時点では知る由もないが、アークの造り上げた人形達は大量生産を優先している為、その構造は酷く脆い。それは、レイジやゲイルの前に現れた人形達と同様である。

 よって、100体以上存在していた人形達は瞬く間に散っていった。

 が、あくまでそれは初撃においてロックオン出来た敵に限る。視認出来なかったアルドラゴ後方に陣取っていた敵の群れはそのままである。


 その敵の群れはというと……銀色の光によって切り刻まれていた。

 銀色の正体は、当然ながらフェイである。

 フェイは、手甲より出現した鋭い爪で脆い人形の身体を切り刻み、時に狼の姿に変身してその牙で噛み砕いていく。

 その人間を超えた動きたるや、正に銀色の閃光である。


 それでも人形達は果敢にフェイへと手を伸ばそうとするが、閃光はそんな動きで捉えられるものでは無い。


『遅いです』


 空間内を駆け回りながらの爪の一閃―――

 人形達はバラバラと崩れ去り、やがてその数は淘汰されつつあった。






2020年9月追記……ルークの武装は元々Dアームズと表記していましたが、Aアームズと修正しました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ