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157話 ハイ・アーマードスーツver2.0




 さて、アルドラゴ艦長レイジが、ハイ・アーマードスーツを着用に要する時間は、僅か5秒。……練習を積めば、も3秒程に短縮出来るかもしれない。

 そこ、長いとかいうな。こっちも色々あるんだよ。某宇宙の刑事さんみたいに0.05秒とかで変身出来るかい。


 では、その色々についての変身シークエンスを説明しておこう。

 これに関しては色々なヒーローさんを参考にさせてもらった。

 

 以前、ルーベリーにおいてシグマ達と戦った際に披露した時は、アルドラゴを上空に待機させておいての転送式であった。

 が、これでは野外でしか使えない上に、いちいちアルドラゴを飛ばしておかなくてはならないという無駄が多いシステムである。

 なので、携帯式に切り替えるのは当然と言えた。

 だがまぁ、携帯式にしたらしたで色々と問題が出てくる出てくる……。


 まず、このハイ・アーマードスーツに使用されているオリハルコンという金属は、特殊な電圧をかけると形状が変化するという仕組みであり、それを維持しなくては自由に動ける鎧ではなく、ただの金属の塊になってしまうのだ。

 なので、電圧変化を維持したままアイテムボックスに収納し、必要になったら取り出すという手法を取ろうと思っていたのだ。

 だが、このオリハルコンという金属は何故かアイテムボックスと相性が悪い。いや、収納出来る事は出来るのだが、中に入れた途端に魔法や他アイテムによる状態変化を弾いてしまうのだ。

 理由は不明。魔法金属だから……としか言いようがないと言うのが実に腹立つ。


 なので、更に試行錯誤を重ね、オリハルコンをコーティングしていない素の状態のスーツをアイテムボックスに収納し、オリハルコンは後付けでコーティングする事になった。

 アイテムボックスに収納さえしなければ、オリハルコンは形状を変化させる事が出来る。

 よって、普段は赤い魔石の形に偽装して、更にアクセサリーに装飾する事によって持ち運ぶ事になった。


 こうして、変身アイテムが誕生したのである。名前はそのうち付けよう。

 そうなると、色々と欲が出て、変身に関するシークエンスも凝ったものにしたいと思うのだ。

 だが、あまり手順が面倒だと咄嗟の事態に使えないなんて事がある。やはり、パッと変身出来て、なるべく動きに隙の無いシークエンスが大事になってくる。

 ただ、あまりに簡単すぎると誤作動で勝手に変身してしまうという危険性もあるので、それなりの手順というのはやはり必要なのだ。


 変身の流れとしては、音声入力と魔石を強く押す事で電圧変化が生じてオリハルコンの形状を変化させ、魔法陣のような光の円の形となる。

 なんで魔法陣なのかというと、ここはただの演出。魔法がある世界だから、それっぽい演出にしたら誤魔化せるだろうという安い考えである。

 更に指輪のように見えているが、これは実は簡易的なアイテムボックスであり、この中にスーツが収納されている。音声入力によって蓋が開き、中から分解されたスーツが飛び出すという仕掛けだ。

 だが、ここにちょっと演出を加えた。

 スーツが飛び出す事は事実だが、飛び出した時点ではスーツは透明化されており、実際に指輪から出たと言う事は認識できないようにした。

 実際には俺が駆けだすと同時にガチャガチャと装着されて行き、魔法陣に到着する直前には全身を覆っている仕組みである。このタイミング、かなりすり合わせしたもんね。

 そして、魔法陣を潜り抜けると同時にオリハルコンがスーツをコーティングし、潜り抜けたと同時に変身が完了するというシークエンスだ。


また、変身時において妨害工作対応として、音声入力の際に同時に周囲にバリアが数秒間展開するようになっている。特撮だと、変身の瞬間から時が止まったかのように律儀に敵さんが待ってくれる事もあるが、現実問題としてその隙だらけの瞬間を防御するシステムが必要なのだ。ちなみに、これも不可視なので、傍目からは認識できないだろう。


 ともあれ、変身に関する説明はこれで終わりだ。

 さぁて、今まで散々低レベル……いや、下手したらマイナスか……低攻撃力武器という縛りプレイをさせられていたのだ。本領発揮の無双タイム解禁といこうじゃないの!!


「レディ……ゴー!」


 まず俺は駆け出し、一番近くまで迫っていたゲッコーへと肉薄する。

 その距離10メートルはあったが、ハイ・アーマードスーツを纏った俺にとっては一瞬である。

 そして、拳を振り下ろし、あれほど切り裂く事に苦労したゲッコーの肉体を容易く撃ち抜いた。

 ゲッコーはギギ……と呻き声を上げ、そのまま魔素となって消えていく。


 ……一匹倒すのにあんなに苦労したのに……


 ええい、今はそういう感傷は後回しだい!

 更に左へと跳び、左肘の一撃によって様子を窺っていたらしいゲッコーの頭部を破壊。魔素となって消える前にその前脚部分を掴み、木の上から襲い掛かろうとしていたゲッコー目掛けて投げつける。

 慌ててその場から跳んで逃げようとしたゲッコーであるが、空を飛べないのならば空中に逃げ場は無い。

 俺は昇●拳モドキのジャンプ拳突き上げによってその胴体部を粉砕。

 更に空中でホバリングして次の獲物をサーチ、目に付いたゲッコー目掛けてライ●ーキックモドキの急降下空中蹴りをお見舞いして、地面ごとその身体を粉砕。

 フハハハ!! 脆い、脆いぞこの敵は!!

さぁて、お次は……


「ギギギギキ!」


 奇妙な声を聞いて顔を上げれば、俺を囲んでいたゲッコーの群れが壊れたらラジオのようなノイズに似た威嚇音を響かせている。

 何事かと思えば、その声に反応してか林の中からゲッコーの影が一つ……また一つと姿を現したではないか。

 10数体どころの話では無い。

 100体近くいるぞこりゃ。


 ううむ、こうなってくると話は変わって来るぞ。

 俺はともかくとして、今も離れた場所からこちらを見守っている翼族の子がこのままだと危険だこりゃ。


俺はジャンプブーツを発動させると、即座に元いた場所へと戻り、100体近くのゲッコーの出現に狼狽えている様子の女の子の傍へと着地する。


「キャッ!」


 突然降って来た俺に驚いたのか、女の子はその場に尻もちをつく。……浮いていても尻もちはつくんすね。

 が、のんびりと観察している余裕なんて今は無い。

 俺はキャーキャーと暴れる女の子をササっとお姫様抱っこすると、再びジャンプブーツで跳び上がり、ゲッコーの群れから離れた場所へと着地する。


「今からアイツ等殲滅してくるから、ちょっと待っていてくれ」


 地面へと静かに下した女の子にサッと伝えると、もう一度ジャンプして元の場所へと戻ろうとした。

 うーむ、やはりスイッチが入るのか、ああいう台詞もサッと出るもんなんだなぁ。


 改めて説明すると、ハイ・アーマードスーツを纏った事でそのエネルギーが元々装備していたアイテムのエネルギーにも補充され、ジャンプブーツやバリアガントレット等の装備も使えるようになった。

 ただ、使えば使う程にハイ・アーマードスーツの使用時間も短くなっていくから、使用のタイミングはきちんと見極めないとな。


 しかし、こうしてジャンプして上空から眺めてみると、今までどこに隠れていたんだと思う程のゲッコーの群れ群れ群れ……。

 こりゃあ、いくらハイ・アーマードスーツが凄くても、素手だと時間がかかるぞ。

 と思っていたらば、着地しようと思っていた地面の近くに、二本の剣が突き刺さっているのが確認できる。

 

 俺は着地地点を変更して、その剣の元へと降り立つ。

 その剣とは、当然大剣と長剣……二本のブレイズブレードである。俺はその二本の剣を大地より抜き放つと、格好良く二刀流のポーズを決める。

 うし、こういう大群相手だと二刀流の本領発揮だ。ただ、それでもただ斬るだけだと時間が掛かる。

 ここは一丁、ブレイズブレードの新機能ってやつを披露するとしましょうか。


 俺は右手に構えたブレイズロングブレードの鍔部分のスイッチを入れる。すると、刃の部分がガチャリと音を立てて“く”の字の形へと変形する。

 そして、そのまま俺はその刀をこちらへ向かって迫るゲッコーの群れ目掛けて投げつける。


「ブレイズスラッガー!」


 まるでブーメランのような形へと姿を変えたブレイズロングブレードは、刃の部分から炎をまき散らし、高速回転しながらゲッコーの群れを切り裂きながら飛んでいく。

 前々から考えていた、剣に遠距離攻撃機能を盛り込んだ新武装である。本当は炎を刃状にして飛ばすっていうアイディアを考えていたが、炎を飛ばす事は可能でも、同時に切り裂く程の質量を持たせるという事が機能的に再現が難しく、また可能だったとしても命中率の問題がある。

 よって、それほど改造が難しくないこちらの方法を取る事になった。

 名前に関しては、そのままブレイズブーメランでも良かったのだが、ちょっとひねってスラッガーとした。有名な赤い巨人の頭に付いている武器をパク……もといリスペクトして名付けました。


 スラッガーが飛んでいる間に俺は大剣でもって近くのゲッコーを斬り裂いていく。一振りで2~3体纏めて切り伏せられるから、大剣ってのは便利だ。難点は重くて普段は振り回せないって事だが、スーツ着たら問題は無い。

 そして、20数体を纏めて破壊し終えたブレイズスラッガーは俺の手へと戻り、元のブレイズロングブレードへと戻る。

 こいつもエネルギー消費が大きいから、一回の戦闘につき一回が限度だな。

 今度は二刀に切り替え、バッタバッタとゲッコーを薙ぎ払っていく。


 さて、少ないエネルギー消費でなるべく戦うとならば、やはり肉弾戦に頼るほか無いのであるが、流石にちょっと体力的にしんどくなってきた。

 考えてみたら、ちょっと前に全力でゲッコー退治してんたんだよな。一匹だけど、死ぬ思いで撃破したんだ。そりゃあ疲れる筈だ。


 とは言え、手持ちの武装でこれだけの数を一気に葬れるものとなると……

 ……あるにはあるが、敵さんがこれだけばらけていると厳しい。

 せめて、もうちょっと密集してくれていたならば……


 とか思っていたら、残り40体程だったゲッコーの群れが、カタカタと動いて俺の願望通りに集まりだしたでは無いか。


 え、何?

 そんな都合の良い事あんの?


 そんな感じで、呆然とゲッコーの動きを見守っていたら、密集したゲッコーはその身を寄せ合い、身体の構造を組み替え、一つの大きな姿へと変化していく。

 言い表すならば、巨大なゲッコー……どちらかと言えばシルエットはヤモリというよりはトカゲ……いや、恐竜に近い。とにかく、40体近くが合体して巨大ゲッコーへと姿を変えたのだ。

 思い返せば、数体の魔獣が合体するってのは過去にもあった。エメルディアでの戦いの際は、3体のデュラハンが合体して蘇っていたという事実を俺は思い出す。


 それにしても、30メートル近い姿へと変貌した巨大ゲッコーの威圧感はなかなかのものだ。

 カタカタと口を鳴らしてこちらを威嚇している。

 これが通常のハンターならば、かなりの脅威であっただろう。


 だが、今ここに立つのは通常のハンターではない。

 それに、このチャンスというのを俺は待っていたのだ。


 俺は仮面の奥でニヤリと笑みを浮かべ、左手のブレイズグレートブレードを水平に構える。

 そして鍔元にあるスイッチを入れる。すると、グレートブレードがガチャリと音を立てて縦に割れたのだ。

 続いて右手に持つブレイズロングブレードをその縦に割れたグレートブレードの中央部分へと差し込んでいく。それは、さながら刀を鞘に納める動作に似ていた。

 更にそれを腰深く構え、まるで居合抜きの如きポージングをとる。


 仮面の内側にて、空のゲージにエネルギーが充填されていく様子が映し出される。それと同時に、ハイ・アーマードスーツを展開する為のエネルギーも減っていく。

 正に、一発勝負の必殺技である。

 だが、体力の方も既に限界だ。ここで決めないと、俺の方が持たない。


 ゲージが溜まった!


 俺はこちらに向かって迫り来る巨大ゲッコーを睨み付け、ブレイズグレードブレードに収めたブレイズロングブレードを一気に抜き放った。


「ブレイズブレイザー!!」


 鞘……いや、グレードブレードより抜き放たれた刃は眩い光を纏い、やがて激しい光の奔流となって迫り来る巨大ゲッコーへと激突した。

 それは、さながら100メートル以上の巨大な光の剣が、巨大ゲッコーに向かって振り下ろされたかのような光景であった。

 巨大な津波の如き熱エネルギーの嵐が、30メートルもの巨体さを持つ巨大ゲッコーを覆い尽くす。

 対人よりも対軍用武装の為、ハードバスター等のレーザーよりは熱エネルギーは低いが、それでも普通の炎よりは数段高熱のエネルギーだ。


 ……頼む! これで終わってくれ!!

 そんな懇願を込めて、俺は刀を振り下ろした体勢のままジッと閃光が収まるのを待っていた。


 やがて閃光が収まり、煙が晴れると俺が起こした惨状が明らかとなる。


 ……ゲッコーの姿は影も形も無くなっていたけれども、林も一区画丸ごと消えていた。

 すいません。

 環境破壊の事とかすっかり忘れていました。

 ひょっとしたら巻き込まれた野生動物とかいたかもしれないが、ここは戦いの気配やら衝撃やらで逃げてくれたと思いたい。

 破壊力のある武器は、周りへの余波なんかを考えて使わないといけないなぁ。


「ふぃー」


 ともあれ、勝ちは勝ち。

 今度こそ周囲に敵性反応が無くなった事を確認し、俺はハイ・アーマードスーツを解除した。ガチャガチャと鎧が外れ、アイテムボックスの中へと収納されていく。

 最後にポトリと光を失った赤い石が俺の足元へと落ちる。魔力を完全に失ったオリハルコンだ。これでもうエネルギーを補充するまで使う事は無理だろう。

 やがて俺は静かに片腕を掲げ、やっと得た勝利に酔いしれる。

が、緊張が解けて足の力を失ったのか、そのままストンと膝から崩れ落ちた。


 あ、もう限界みたいっすね。

 すいません、ちょっと休みます。




◆◆◆




「あーもう! なんだよぉ、なんで勝っちゃうんだよぉ!!」


 レイジの戦いの様子を離れた場所から観察していた金髪の少年……アウラムは、激しく悔しがるように地団太を踏む。

 そして、その横でまるで人形のように静かに佇むのは、まるで執事を連想させるような服を着込んだ青年だ。その青年は、特に表情も動かさず、隣で喚き散らすアウラムへ語り掛ける。


『今なら、襲い掛かる事も可能ですが』

「ダメダメーッ! だって気絶してるもん! こう、ピンチの時に颯爽と駆けつけるのがいいんじゃん。ハァ……せっかく一人っきりにして、しっかりとお膳立てもしたっていうのに、なんで勝つかなぁ」

『一時的にですが、アイテムのエネルギーが完全回復していました。何か、不確定要素があったのでは?』

「んー、もういいや。今はケイの事はほっとこう。でも、まだまだお仲間さん達と合流されちゃつまんないから、そっちにちょっかいかけに行こうか」


 気を取り直したらしいアウラムは、にっこりと笑みを浮かべながら隣の青年を見据える。


「かつてのお仲間さんに敵対するってのは嫌かい?」

『好む、好まないという問題でしたら好みません。ですが、命令ならば仕方ありません。手を抜くつもりも無いのでご安心を』

「んー正直でよろしい。そんじゃ、行こうか……“アーク”君」




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