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156話 二度目の……




 ……勝っちゃった。

 あの妙に頼りなさそうな地上人、あの変なのに勝っちゃった。


 逃げろとか言われたけど、不思議と羽は動かず、ただ二体の戦い(?)を見続けてしまった。


 最初は、こらあの地上人負けるわーとか思っていたのに、なんか知らんけど勝っちゃった。

 勝ったはいいけど、これって喜ばしい事なのかな?

 見るからにあの魔獣っぽいのが悪者(実際襲われたし)なんだけど、あの地上人が信用できる存在かも分かんないし。

 ……じいちゃんばあちゃんからは、私達の先祖はだーいぶ地上人に迫害されていたって話を聞いたから、ここで助けられたからって信用するのはそーけいなのだ。


 とりあえず、あの地上人は疲れたのかごろんと地面に横たわっている。アタシはこっそりとそれを観察するとしよう。

 それにしても、アイツ地面なんかに寝て、痛くないんだろうか?

 ……あっ! そうか、アイツには羽が無いんだった。地面の上に寝るなんてアタシ達からは考えられない。下手したら羽がつぶれるじゃんよ。

 あ、イタタ。想像したら背中が痛くなってきた。


 よくよく観察して見たら、やはりアタシ達とは違う存在なんだなってのがよく分かる。

 目は小せぇし、手足もやたらと太い。それと、なんかごてごてした服着過ぎ。あんなものを着ていたら、飛ぶのに重くて仕方ないでしょうに。

 あんだけ重そうだったら、さぞかし動きも鈍かろう。


 ……もうちょっと近づいて観察しても大丈夫かな?

 いざとなれば、飛んで逃げればいいし……。




◆◆◆




 初めて自分一人の力で魔物を撃破したぞー!


 と、しばしの間浮かれていたが、2分ほど経ってようやく最初に襲われていた者が居た事を思い出す。

 俺は慌てて身体を起こし、急いで辺りを見回した。


 さすがに逃げてくれたと思うのだが、あの妖精みたいな子は何処に―――


 ―――って居た。


 ちょっとばかし離れた岩壁から、顔を半分だけ出してこちらを睨みつけている。

 そして、しばらくしたらヒュンと飛んで別の岩壁や木に隠れる等して、こちらを遠巻きに観察しているようだ。


 うーむ。

 改めて翼族というやつを見てみる。やはり、翼の生えた目の大きい子供という感じだ。

 その翼というヤツも、虫や鳥のように羽ばたいて飛んでいる訳では無く、浮遊しているように見える。あんな小さい翼でも飛べるんだから、魔法のある世界は何でもありなんだな。


 ……とりあえず、話が通じるかやってみっか。

 ちなみに説明すると、この世界の言葉は当初はアルカの力で翻訳されていたが、アルカ達が実体化出来るようになってからはバイザーに翻訳機を備え付ける事になった。

 それからしばらくして、この世界の共通言語をデータ化し、戦闘技術同様に俺の頭の中にインストールしたのである。

 これで、万が一機械が使用不可能になっても言葉が通じない事はないぞ! と思っていたが、本当に役に立つ日が来るとはな……。

まあ、独自言語を使っていると言う可能性もあるが、そんなところまで深く考えても仕方ねぇ。逃げろっていう言葉に反応していたみたいだから、通じるんじゃないかなーとは思う。


 とは言え、この世界に来るまでは友達も数えるぐらいしか居ないコミュ障の俺……。こちらに対してやたら警戒している少女に対する第一声はどれが正解なのか……。


 そんな感じで悩んでいたらば―――


 カタカタカタ……


 何やら聞き覚えのある金属を打ち鳴らすような音が響く。

 慌てて振り返ると、予想通りにゲッコーが林の中に潜み、口を鳴らしてこちらを威嚇していた!


 そうだった。

 あのゲッコーの生態がどうであれ、一匹しか存在しないなんて事はあり得ない。

 死にもの狂いで一匹倒しただけで、俺は何を浮かれていたんだ。


 とは言え、一匹倒すのにあれだけ必死だったんだ。それをもう一匹とか、どう考えても無理だ。

 が、逃げようにも……


 カタカタカタ……

 カタカタカタ……

 カタカタカタ……


 俺を取り囲むようにして現れたゲッコーは一匹じゃない。

 一匹……二匹……三匹……その数、約十数体。それらが林の中に蠢いていた。


「おいおいおい」

 

 思わずでた言葉はそれだった。


 うっわー。

 絶対こりゃ死ぬわとか思っているのに、何処か冷静な自分が居るな。人間、どうしようもない事態に陥ると、冷静に自分の状況を分析できてしまうものかもしれない。

 だがそれとは別に、こんな所で死ねないと思う自分も居る。

 こんな世界に飛ばされて、チートアイテムを使いつつもなんとか生き延びて来たというのに、仲間も誰も居ないこんな場所で死ぬわけにはいかないだろうよ。


 これが物語だったら、タイミングよく仲間が俺を発見して助けてくれるってのが定番なんだけど……


 …

 ……

 ………


 今まで俺を照らしていた眩い太陽が陰り、ゴォゴォという轟音と共に巨大な機械のドラゴンが姿を現す。

 そして、突如として氷の槍……光の矢……大地が隆起して俺を囲んでいるゲッコーの群れを蹴散らしていく。


『こんな所に居たのですか! 相変わらず、私が居ないとケイは駄目駄目ですね!』

「主の危機に、ゲイルはせ参じたでござる!」

『リーダー、助けに来たぞー!!』


 ははは、なんというベストタイミング!

 これでこそ王道の冒険物語というものだ!


 さぁて、これから華麗なる逆転劇の始まりだぜ!!


 ………

 ……

 …



 なーんて事は無く、空にアルドラゴの影も見えなければ、氷の槍や光の矢が降ってくる事も無い。


「ふなー」


 ……いやいや。

 早々都合が良い事なんて起きませんってば。

 こんな絶体絶命のピンチの時に限ってラッキーな事が起きるなんて事……


「なー」


 ……ある訳ないんだけど、何かプラスアルファが無いと間違いなく死ぬぞ。

 何かないかよ。現状を打破出来る起死回生の策ってやつが……


「ふにゃー!」

「は、はい!?」


 突然怒鳴られたように萎縮した。

 慌てて辺りを見回すと、そこにはこの半日で見慣れた小さな黒い影が……。


「ふなー」


 クロっぽい猫である。


「おいおい、なんでお前ここに居るんだよ」


 コイツとは、この場に駆けつける直前に別れた筈だった。

 流石に死ぬかもしれない場所にこんな小動物を連れて行くわけにもいくまい。そう思って森に入る前に懐から出して放したのだ。

 それがなんでここに!?


「馬鹿野郎、こんなところに来たらお前まで―――!!」


 そして、そのクロっぽい猫が口に咥えているある物に気が付いた。


「な、なんでそれを……」


 それは、指輪。

 かつて、エメルディア王国を散策していた時期にチーム全員のシンボルとなれば……と思い購入したアクセサリーの一つだ。他に、髪飾りと腕輪、イヤリングとネックレスを購入した。

 それから思う所があってそのアクセサリーの装飾を改良したりしていたのだが、猫が咥えているのは明らかにそれだ。

 ふと、その指輪が収まっている筈の懐の内ポケットに手を置くと、そこに指輪らしき感触は無い。今までスーツの懐に猫を入れていたから、その際に引っかかって落ちたのを拾ったのか?


「!!」


 そして、その指輪に仕込んでいたある秘密を思い出す。

 どうせエネルギー切れで使い物にならないと、端から思い込んでいたが、その猫が咥えた指輪に嵌められた魔石は、赤く光り輝いている。それは、エネルギーが十分に溜まっている事を意味していた。

 他のアイテムは全部エネルギー切れだというのに、その指輪だけ何故!?

 いやいやいや! 疑問はあるが、今は後回しだ。

 この危機的状況を打破するためには、この指輪に賭けるしかない。


「ありがとう」

「ふにゃー」


 俺が猫の口元近くに手を置くと「いいって事よ」とばかりに猫はその手の上に指輪を置く。

 周りのゲッコー達を警戒しながらも、俺は立ち上がりながらスーツの上から左手の中指に指輪を装着する。

 本来なら勿体ぶりたいところだが、現実では都合よく敵さんはこちらの準備を待ってはくれないでしょうよ。




 さて、いざ変身バンクだ!




 俺は左手を拳の形に固め、右の掌で指輪の魔石部分を軽く押す。

 そして押しながら、ある音声ワードを入力した。


変身アームド・オン


 その言葉が入力された事によって、魔石がより強く発光する。

 更に俺は、指輪を嵌めた拳を強く前方へと突き出した。


 すると、指輪の装飾がまるでXの形に展開。

 そこから光が前方約1メートル先に飛び出し、人間一人分程の大きな光の円……言うなれば魔法陣のようなものが空中に浮かび上がるように出現する。


 俺は一息吸って吐いた後、その魔法陣に向かって全力で駆け出す。

 駆け出した俺はその赤く光る魔法陣を潜り向けた。


 するとどうだろう、魔法陣を潜り抜けた俺の姿はこれまでと変わっていたのだ。


 全身に赤い鎧を纏い、頭部は龍をイメージさせるフルフェイスのヘルメット。

 そして目にあたる部位にはヴォンと赤い単眼が光る。


 そう、この世界にお披露目するのはこれが二度目。


 伝説金属オリハルコンを使用した、最強のアーマード・スーツ……


 ハイ・アーマードスーツver2.0


 それっぽく型番を付けるならば、HAS-01<ドレイク>

 これが、このスーツの名である。




 次回、変身シークエンス解説!

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