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122話 チーム・アルドラゴ出撃!




 俺がアルドラゴの戦闘準備を宣言すると、チームメンバーはそれぞれ神妙な顔つきとなった。


『……遂に……ですか』

「動かさずに済むならそれに越した事はないが、そうも言っていられないだろう。もう、出し惜しみは無しだ」

『……了解しました。ですが、地上で迎撃と言ってもケ……じゃなかったレイのスーツはエネルギー切れでしょう。私と共にアルドラゴへ帰還して代わりのスーツを着用する事を推奨します』

「いや、俺は《レオ》で迎撃する。アルドラゴがまともに動くまで、時間稼ぎが必要だろう」

『ですが……いえ、了解しました』

「あとそれと……ええと、出来れば手伝って欲しいんですけど」


 そう言って俺が声を掛けたのは、足元に転がっている二人に対してだ。


「何?」

「あんだって?」


 対する二人は寝転がったまま反応して見せた。

 今まで負けた立場という事で倒れたまま気配を消していた様子であったが、さすがに俺の要請には反応せざる得なかったようだ。


 すると、戸惑った声を上げたのはミカとジェイドの二人だった。


「せ、先生! 話の内容はよく分からなかったが、今からサンドウォームの群れを迎え撃つと言うのだろう? だったら相手を間違えているのではないか!?」

「そ、そうだぜ! そいつはさっきまで敵だった奴等なんだろう? だったらそいつ等よりも俺達の方が……」


「無理」「無理だな」


 奇しくも俺の声と重なったのは、今まで黙ってみているだけのドルグだった。


「サンドウォームは、C級以上のハンターが十数人がかりで戦ってようやく一体倒せるかと言う上級魔獣じゃ。今回はそれが百体以上……残念ながら、儂等が行った所で何の役にも立たん」


 その通り。

 ミカとジェイドの力はよーく理解しているつもりだ。申し訳ないが、この二人を戦場に連れて行っても足手まといにしかならないだろう。


「し、しかし……それは先生達も一緒だろう。さっきの戦いは見ていたが、だからといってそれほどの数の魔獣達と戦って生き残れるはずが……」


「あぁ、それは大丈夫だ」

「は?」

「さっきまではあくまでも対人戦においての本気。ここから先は、大型魔獣戦用の本気でやるから」


 俺の言葉にうちのチーム以外の面子がきょとんとした顔つきとなる。


「え? 対人用……魔獣用? お前、何言ってんだ?」


 疑問があるのは理解できるが、ここでいちいち説明していたら時間がいくらあっても足らない。

 とりあえず質問は放っておいて、シグマたちに再び声を掛ける。


「お前等にも、そういう戦法ってあるんだろ? だったら手を貸してくれよ」

「あるにはあるが、お前達にやられたこの身体では無理だぞ」

「オレも、体力も魔力も尽きているから無理。つーか、血吸わせてくんない? そしたら回復すると思うんだけど……」


「は? 血?」


 ヴァイオレットの言葉を聞いて再びミカが首を傾げる。

 うん。意味不明な単語に食いつきたくなる気持ちは分かるが、今はこっちの会話に集中したいので無視です。ごめんなさい。

 そして、ヴァイオレットの提案も予想済みである。であるならば、開発していたアレが役に立つだろう。


「血はあげられないけどさ、これで良ければ飲んでくれ」


 と言って俺が取り出したのは、一本の缶ジュース……もとい、缶に入ったドリンクである。


「あん? なんだこれ」

「まぁまあ、騙されたと思ってぐいと飲んでおくれ」

「喉渇いてたから別にいいけどよ、毒じゃねぇんだろうな」


 そう言いつつもヴァイオレットはプルタブを押し、缶のフタを開ける。そして、ぐいと口に含んだ。


「なんだいこれ、トマトジュースかよ――――――って、なんか身体が熱く……っていうか、魔力が回復してやがる」

「おし、成功だな」


 これは、普段からアルカ達が使用している魔力回復促進薬を人間用に調整したものだ。アルカ達AIは魔晶を本体として、その魔力を利用して実体化している。この魔晶のエネルギーというのは、普通の魔石の数百倍の魔力量を誇るものだ。それでいて、水や土など自然のエネルギーを秘めており、更にはその自然からエネルギーを吸収する事によって消費した魔力を回復できる。アルカ達が魔力切れを起こさないのは、この力のおかげでもあるのだ。

 そしてこの魔力回復促進薬は、その自然エネルギーの回復速度を上げる役割を持っている。アルカ達がゲートの魔法やなんかを使って魔力を多大に消費してしまった場合、こちらを使用して魔力の回復を早めていたりする。

 ヴァイオレットの場合も、今は体内に魔晶があるおかげで少しは回復の役割を果たしたようだな。ちなみに味がトマトジュース風味なのは、吸血鬼と言えばトマトジュースという洒落みたいなもんだ。


「つっても、3割程度だな。あんまし大がかりな魔法は使えないぞ。さっきの雷神モードも無理だ」


 あぁ、あれは雷神モードというのですか。何か、今命名した感があるけどもしっくりはしている。


「ならば、3番のケースを使え。今のお前ならば使えるだろう」

「うーむ。好きなのは殴り合いなんけど……まあ、アレ相手に殴り合いもなんだから、仕方ないか」


 そう言ってヴァイオレットはよっこらせとばかりに立ち上がり、少し離れた場所の地面に手を突っ込む。そして、地面の中から巨大なトランクケースを取り出した。

 ……どうも、換えの装備のいくつかはこうして戦場となる地面の中に隠してあったみたいだな。


 トランクケースを開け、中から取り出したのはこれまた巨大な……所謂ロケットランチャーである。いや、見た目がそれっぽいというだけで本当は何なのかは分かんないけどね。


「だが、俺の場合はパーツを交換して済む問題では無いな。街に戻れば、修復機器はあるにはあるが……」

「いや、アンタは俺の本拠地に行ってもらう」

『ケイ! それはさすがに危険では無いですか?』


 本拠地……つまりは、アルドラゴへ連れて行くという事だ。さっきまで敵の立場だった男を自分の懐へ入れるという危険は俺も理解できる。

 だが、この男の力は必要だし、この男が武人ならば変な気を起こす事は無いだろう。……と思う。これまでの行動と戦っての印象であるが、別に悪人では無いようだしな。

 それに、スミスのおやっさんならこの男の身体も修理できるんじゃないか? 武装とかも見れば、うちのアイテムに改良の余地とかあるかもしれないし……という打算もある。


「打てる手は全部打つ。悪いが、俺が勝った以上アンタ達にも協力はしてもらうぞ」

「構わんぞ。それが勝者の特権という奴だ」

「オレも強い奴には従うぜ。それに、色々面白そうだしな」


 シグマは淡々と、ヴァイオレットはケラケラと笑いながらそう言ってくれた。

 よし暫定的ではあるが、シグマとヴァイオレットも仲間入りだ。正式に仲間になるかどうかは、もうちょっと人となりを見てからだ。流石にそこまで性格とか事情とか知らないしな。

 とにかく、戦力は確保できた。後は、行動あるのみ。


「よーし、改めて指示を伝える」


 俺が改めてそう言うと、アルカ、ルーク、ゲイルの正式チームメンバー三人がビシッと気を付けの姿勢を取る。……だいぶこの流れにも慣れてきたな。


「アルカ、フェイはシグマを連れてアルドラゴに帰還、シグマはスミスのおやっさんに預けてアルドラゴの戦闘準備に入れ」

『了解しました』


 まずはアルカが頷いた。


「そして、俺、ルーク、ゲイルは地上で奴等を迎え撃つ。アルドラゴの準備が整うまで、少しでも数を減らすぞ。まず、ゲイルは高台より弓で移動速度の速いヤツを重点的に狙い撃て」

「了解でござる」

「続いてルークは、《スコーピオ》ででかいのを狙え。場合によっては《リーブラ》の使用を許可する」

『アイアイさー』

「んで、アタシ……じゃなかったオレはどうすりゃいいんだい?」


 一人呼ばれなかったヴァイオレットが不満げな顔で言う。

 うーん。まだこの人の戦い方を完全に把握している訳じゃないからな。それにしても、そういや今アタシって言おうとしなかったか?


「ヴァイオレットさん……速く動けませんよね」

「まぁ今の力なら無理だろうな」

「その武器、そんなに飛距離ありませんよね」

「狙い撃つってのは無理だろうな。まぁある程度近づけば当てるのは難しくないだろう。的はでかけりゃ問題ねェし」


 って事は、敵の目の前で歩兵さながらな動きをしなくちゃならん。それには、足が必要だろうが今は移動用のビークルは全部使用中みたいなもんだからな。まぁ仮にあったとしても、すぐに動かせる代物じゃないんだけど。


「じゃあ、俺の《レオ》の後ろに乗るか。それなら問題ないだろ」


 俺がそう言うと、何故かアルカが唖然とした顔つきになる。


『は? 《レオ》の後ろって事は……二人乗りをするという事ですか?』

「俺が足になれば、攻撃は任せられるからな。俺も移動に専念できるし」


 すると、ちょうど都合よく砂中から《リーブラ》が出現する。初めて見たミカやジェイド達がギャーギャーと喚くが、今は無視です。すまんね、いちいち説明する時間が無いんす。


 そしてその《リーブラ》の中から《レオ》が飛び出すと、俺の前に停車する。さぁ、乗れと言っているのだ。別にAIは組み込んでいないが、なかなか可愛いもんだ。


 さて……と、久々に大型魔獣退治と行きますか。

 相手がでかいミミズってのが嫌なんだが、この際仕方がないし。


 俺が《レオ》に跨ると、ルークも《タウラス》と《キャンサー》を召喚し、合体して《スコーピオ》へと姿を変えて見せる。うーん、やっぱり格好いい。


「んで、アタシは後ろに乗ればいいのかい?」


 あれ、やっぱりアタシって言った? そんな疑問を持ったが、すぐにそんな雑念は吹き飛ぶことになる。俺の背後に回ったヴァイオレットが、その巨大な胸を俺の背に押し付けてきたからだ。


「いや、あまりくっつかないでください」

「あん? 掴まるぐらいいいじゃねぇか」


 特に他意は無いんだろうけど、背中にスーツごしとは言え柔らかい感触が伝わってくるのは……なんというか、妙な気分になる。嫌じゃないけど、それどころじゃないというか……。

 というか、俺達さっきまで戦っていた同士だった筈なんだけどな。


 すると、さっきから冷たい目でこっちを見ているアルカが更に冷たさを感じさせて口を開く。


『やはり、私は地上担当に……』

『姉さん、馬鹿な事言ってないで早く行きましょう』

『うぐ……そうなんですけど……』


 うむ。よく分かんないけど、やっぱりフェイが居るとやりやすいな。アルカも頭は良いが、時々どっか抜けているし、たまに変な事するし、サポートだったりブレーキ役は必要だな。


「と、ところで……」


 話がまとまってきたところで、遠慮がちに声が掛けられた。

 声の主はセージだ。


「僕等は一体何をすればいいのかな?」


 おっと忘れていた。

 まぁ、と言っても彼等に俺から指示出来る事なんて無いんだけどね。


「宮殿に戻ってするべき事をしろよ。俺達は、サンドウォームの侵攻は絶対に阻止してみせる」

「……信じていいんだね」

「おう。それに、お前が抱えている問題は俺には解決できない事だ。お前がしっかり解決しろ」


 俺がそう言うと、セージは深く頷いた。


「ああ分かった。魔獣の事は頼む」


 ミカやジェイドはまだ言いたげな顔をしていたが、やがて自分達が口を出せる問題では無いと気づいたのか、顔を俯けて口を閉ざした。

 ……申し訳ないが、こればかりはどうしようもないからな。


「じゃあ、魔獣退治と行くか! チーム・アルドラゴ……レディ……」


「『『「GO!!!」』』」



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