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117話 レイジ&アルカVSシグマ&ヴァイオレット




 闇ギルドより差し向けられたクーデター用の刺客達はあらかた撃破する事が出来た。

 やはり、正規の騎士や兵士達がこちら側に加担したというのが大きかったのだろう。クーデター首謀者ラルドの計画では、大義名分は自分達にあるのだから、多くの者達は加担してくれると睨んでいたようだ。

 ラルドと王妃は逃げたようだが、捕まるのも時間の問題だと思われる。


 だが、深い後悔がセルジオの胸に圧し掛かっていた。


「民に被害はでなかったのは幸いだったが……結果的に巻き込んでしまったのは悔やむべきところだな」


 こうなると言う事は、事前にレイジより知らされていた。

 だから、警備にも抜け道を作り、あえてそこを狙わせるべく画策していた。それと同時に広場に集まった民衆の避難誘導も、既に打ち合わせ済みであった。

 が、誘導する兵士達に全てを明かす訳にもいかないので、事情は秘密にそれでも指示は事細かく伝えていた。

 それによって、そちらサイドの犠牲は無いに等しい。だが、元はと言えば自分達王族の問題に民を巻き込んでしまったようなものなのだ。

 もっとより良い方法があったのではないか……。いくら悩みに悩んで選んだ選択肢だとしても、常にその疑念が思い浮かぶ。


「ところで、先生は……先生は何処なのだ?」

「あぁ、そういや戦っている所を見なかったな」


 戦闘が落ち着いた事で、今までセルジオの警護に当たっていたミカとジェイドが辺りをキョロキョロと見まわしている。


「あぁ、彼ならば街の外で敵サイドの最も強い者の相手をしている最中だと思うよ」

「……最も強い者か。まあ、アイツなら大丈夫だろう」

「そうだな。先生は無敵だからな」


 朗らかに言う二人であるが、セルジオは彼らの知らない情報を知っている。


「いや、彼とて無敵という訳では無いよ。報告によると、彼等のチームは一度そいつ等に負けているらしいからね」

「な!」

「なにぃ!? せ、先生が負けただと!?」


 セルジオの言葉に、まるで青天の霹靂のような衝撃を受ける二人。

 同じような衝撃はセルジオも受けた。


 彼らの負ける姿など想像する事すら難しいが、世の中上には上が居ると言う事なのだろう。

 セルジオは改めてそれを実感した。


「そんな強敵と一人で戦っているというのか!? す、すぐに助けに行かねば!!」


 慌てて駆けだそうとしたミカの肩をドルグが掴む。


「待たんか。奴ですら敗北した相手に、儂等が加勢したところで何の役に立つ」

「そ、それはそうだが……」


 ミカも理解はしているが、いてもたってもいられないのだろう。

 見れば、同じ広場で戦っていた筈のアルカの姿も消えている。聞いていた通り、レイジと共に強敵に立ち向かっているのだろう。

 レイジと同じく、彼女の敗北する姿を想像するのも難しいものだが、その可能性はゼロではない。そもそも、以前の戦いで戦闘不能になったのは彼女の妹という話では無かったか。


「分かった。依頼人として、僕には戦いの決着を見守る責任がある。彼らの戦いを見届けに行こう」

「い、いいのか?」

「良くは無い。だから、僕の身は君たちが守れ」

「お、おお!!」

(アルカさん……無事でいてくれ)


 これが終われば、正式に妃候補として求婚しよう……。セルジオは、改めてそう思った。




◆◆◆




 第一都市の郊外にてシグマと戦っているレイジ……こと俺であるが、正直言ってめちゃめちゃしんどい。

 何せ、相手側の攻撃は一撃必殺。

 あの超振動波を発生させる右腕を受ければ、現状何の対策もしていない俺のスーツでは、即挽肉状態だ。


 加えて言うと、こちらの攻撃はあちらの超加速能力によって全く命中しない。

 今も超振動を受け無い為に一定の距離を保ちつつ、離れた場所から中~遠距離攻撃を繰り返すのだが、当たる気配は一切無い。


 ……分かってはいたが、無理ゲーにも程があるな。今まで自分達と戦っていた側の気持ちがちょっと理解出来た気がする。


「何を待っているかは知らんが、俺は続けるぞ」


 あ、ばれていた。

 まあ、まぁこれだけあからさまに時間稼ぎをしていたらば気づくよな。


 シグマの攻撃は続く。

 まず、大地に向かって右手を置き、超振動を発生させる。

 すると、ボコボコと地面が砕け、見る間に陥没していくではないか。科学兵器であってもルークの土魔法みたいな事を発現させられると言う事か。俺は急ぎジャンプブーツを発動させてその場から跳びあがる。

 すると、シグマの右脚のふくらはぎの部分がガチャリと左右に展開する。

 そこから覗くのは……小型のミサイル!?

 合計10ものミサイルが、空中の俺へ向けて発射される。ミサイルは俺に対してロックオンされているのか、ジャンプブーツで空中を不規則に飛ぶ俺を追い詰めていく。


「チッ! シールド!!」


 逃れられないと判断し、目前にバリアを発生。バリアに命中したミサイルがボンボンボンと爆発していくのが分かる。

 すると、ピピピとバイザーにアラームが点灯。数発のミサイルが、回り込んで後ろから迫っていた。


「バリアビット!!」


 バリアガントレットから、付属のひし形プレートが外れ、俺の背後へと瞬時に移動。バリアを発生させて俺の身体を全方位の攻撃から防ぐ。

 初登場では不発に終わったバリアビットがようやく活躍出来た!


 そのまま大地に着地すると、猛攻が再開される。

 シグマは右腕にヒートナイフを展開し、超スピードで斬りつけてきた。だが、超加速というスピードでは無い。これならなんとか対処可能と判断し、俺自身もヒートブレードを取り出して応戦する。

 赤熱化した剣同士がキィンキィンと打ち合い、火花を散らしていく。


「……ふむ、つまらんな。何かを待っているのは理解できるが、いつまで続く? むしろ、こちらも待った方が良いか?」

「こっちも待ちたくて待っているんじゃないけどね!!」


 それにしても、一体何やってんだ。もう戦い初めてから15分は経過してんぞ。コイツ相手に15分ってとんでもなく長く感じるから、いい加減に来てくれないと俺の身体が持たないんだけど……。


「ならば、片腕の一つくらいもいで、危機感を与えてやるか……」


 ブゥン……と、目の前のシグマの姿が消える。

 しまった! 超加速!? 奴自身はほんの1秒程の短い時間しか超加速を使えない。だから、一定の距離を保ちながら戦っていたのだが、剣戟に集中するあまりに接近し過ぎた!

 気が付けば、俺の左側面にシグマの姿が見える。右の掌は開き、既に超振動の体勢に入っているようだ。


 片腕を“もいで”……まさか、そのまま超振動を俺の左腕に浴びせるつもりか!?


 マズイ!! いくらなんでもこれはマズイ!!

 いくらアルドラゴの超科学でも、無い腕を生やす事は不可能だぞ!!


 ―――が、その超振動は俺に命中する事は無かった。

 シグマの掌が命中する直前、俺の前に氷の塊が出現し、超振動はその氷に命中する形になった。目前で氷が粉々に粉砕されるのを確認した俺は、すぐさま後ろへ跳んでシグマと距離を取る。


「遅いぞ、アルカ!」


 チラリと背後を見ると、宙へ飛んで魔法を放った体勢のままのアルカが映った。

 その背後には、自身に背を向けたアルカに対して拳を振り下ろそうとしている紫髪の女―――ヴァイオレットの姿が確認できる。


 アイツもピンチじゃないか!


 俺は咄嗟に右腕のガントレットを変形させると、アルカを狙おうとしているヴァイオレット目がけてハードバスターを放った。


「チッ!」


 が、ヴァイオレットは直前でハードバスターの攻撃に気づくと、空中に魔法陣のようなものを出現させ、それを蹴り飛ばす。それによって空中で方向を転換し、ハードバスターの熱線を回避したのだった。


『助かりました!』

「気にするな。お互いに気を抜けない相手って事だ!!」


 俺の傍に着地したアルカと短い会話を交わす。


 なんとかアルカもヴァイオレットを誘導しつつ、この場に辿り着く事が出来たようだ。

 ふぅ……良かった。ギリギリ間に合ったみたいだ。


「何処へ逃げるのかと思ったら、男の所かい。なんだい、タッグマッチでもやろうってのかい? オレは構わないぜ」

「待っていたのはその女か……。これでいよいよ本気でやれるという事だな」


 俺達を挟むようにして立ちはだかるシグマとヴァイオレット。

 単騎でも実力で言えば俺達よりも各上の相手だ。身体能力ではシグマは俺を上回り、ヴァイオレットは力もさることながら魔法の力に優れているらしい。

 この二人を同時に相手取ろうなど、愚の骨頂と言えるだろう。


 ……でも、俺たちの作戦では一度に倒してしまうしかないという結論に達したのである。


「んじゃ、行くぜアルカ……」

『はい。いよいよ本番ですね』


 さっきまでの戦闘とは違うドキドキに、胸が激しく高まる。

 よもや、異世界に来て……この台詞を言う事になるとは―――


 俺とアルカは共に片腕を天に掲げる。

 その手の先にあるのは、随分前から遥か上空に待機しているアルドラゴだ!!


 そして、この一週間の間に作り上げた新兵器を呼ぶ為の台詞キーワードを叫ぶ。


「『変身アームド・オン』」


 その言葉をきっかけに、遥か上空のアルドラゴから光が発射された。

 そして、俺たちの身体へとその光を通して新武装が転送される。


 ズンッ!!


 衝撃と重みで大地が陥没する。

 時間にして僅かコンマ5秒。その間に俺達二人は新武装を身に纏っていた。


「……竜だと?」


 俺の姿を見たシグマの言葉が聞こえる。


「……こっちは何だ? 魚か?」


 アルカの姿を見たらしいヴァイオレットの声が聞こえる。


 俺達はそれぞれ、赤と青……二人のパーソナルカラーに彩られた鎧を身に纏っていた。

 鎧と言っても、この世界で見るような全身鎧フルプレートメイルとは違う。全身をメタリックな装甲に包んだ機械鎧……はっきり言ってしまえば、全身をメタルな装甲で包んだヒーローな見た目になったのだ。最近で言ったら、海外の鉄男みたいな外見とも言える。

 また、かつて見た特撮作品のようにそれぞれの鎧にモチーフとなる動物の意匠を組み込んでいる。特に意味は無いんだけど、どうせやるならという感じで提案した。


 俺の場合はそのまんまアルドラゴをイメージした赤いドラゴン。赤で強い生物と言ったら、やっぱりドラゴンなのである。ライオンにするべきか迷ったけど、《レオ》が既にあるからな。

 そしてアルカのスーツのモチーフであるが、最初は水系という事で鮫にする予定だった。が、鮫というとどうも巨大ザメが海で暴れまわる映画が頭をよぎり、格好良いよりも恐ろしいというイメージが先行して嫌だと言われた。なので、本人の強い希望によってイルカをモチーフにしてある。特撮だと鮫は定番で、イルカだと可愛すぎると思うんだが、本人が希望するのだから仕方ない。


 さて、この装備に名を付けるならば、


 ハイ・アーマードスーツ。


 これを着ていられる時間は短いのだ。

 見せたからには、早々に決着をつけるぞ。


「さぁ、ゲームリスタートだ!!」




 気が付けば一ヶ月以上が経過していました。自分でも、以前投稿した際の日付を確認して驚いたり。


 原因は、今までチラチラ書いていた新作の方がある程度溜まったものですから、そちらの投稿をメインにやっていたせいなんですけど。でも、しばらく離れていたらこちらも書きたくなってくるものです。


 モチベーションもある程度戻ってきましたので、4章完結まであとちょっと頑張ります!

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