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鋼鉄のアルドラゴ~SFアイテムでファンタジー世界を冒険します~  作者: 氷山鷹乃
第1章 ある日異世界で宇宙船と出会った
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10話 異文化コミュニケーション




「でゃ……大丈夫かい?」


 あ、緊張のあまり噛みそうになった。

 どう見ても人間の子供に見えるが、俺からすれば初めての異星人との接近遭遇だ。

 ゴブリン? あんなのノーカウント。


 できるだけ優しく語りかけたと思ったんだが、子供達は二人ともポカンとしている。

 ……なんかマズったか?


『ケイ。恐らくではありますが、言葉が通じて無いのだと思います』


 おっとそうだったか。


「えーと……じゃあ、翻訳とか頼める?」

『まだ完全ではないのですが、一応試してみますね。何か喋ってみてください』

「う、うん。じゃあ……すまない。これで言葉は通じるかな?」


 お!

 目を見開いた。

 続いて慌ててコクコクと頷く。


 やったぁー!!

 人類初めての接近遭遇成功!!

 見た目完全に人間なので、ちゃんと接近遭遇として成立すんのか疑問だけども、とりあえずは意志の疎通に成功したぜ!


『えーと……この場合は互いの指と指を合わせるのがしきたりでしたっけ』

「やんねーよ! つーかなんで知ってるんだそのネタ!」

『む。それは貴方を回収する際に拾ったデータで―――ってケイ。いきなり声を荒げるから、ビビってますよ』


 おおっとそうだった。この場には俺だけじゃなかったんだっけか。


『今のは翻訳してませんから、早くなだめて下さい! ほら、さっさとする!』


 ナイス判断。

 さて、異文化コミュニケーション開始だ。


「えーと……あ、君たち怪我とかは無いかな?」


 ふるふると首を横に振る少年。

 まぁ良かったかな。怪我とかしてたら、一応医療キットとか用意しているけども。


 それにしても、見れば見るほど普通の人間と変わらないように見える。

 これって、子供として接していいものなのだろうか?


『体内をスキャンした結果、肉体構造はケイと95%差異がありません。二人とも、15歳未満の少年少女だと思われます』


 俺よりちょっと年下程度か。

 後輩とかの相手とかあんましした事ないんだけど……まぁ、なんとかなるか。異星人だと思うと緊張すっから、あくまで人間の子供だと思う事にしよう。


 俺の事は……こういう展開だとテンプレだけども、旅人だと名乗っておくとしよう。


「俺の名前はケイ。色々あって道に迷っている最中の旅人なんだけど……君たちはこの近くの村の子かい?」

「そ、そうです。この先の……ミナカ村の者です」


 コミュニケーション成功!

 良かった……旅人とかそういう文化のある星で良かった。


「じゃあさ、村まで案内してもらってもいいかな? 腹ペコでさ……」


 思わず腹を抑えて本音が出た。

 もう何時間もまともな飯食ってないんす。下手したら、何日も……か。

 この星の食文化がどういったもんか知らないけども、宇宙船のあの液体よりはマシな筈だ。


『せめてドリンクと言ってほしいのですが……』


 なんかごにょっとアルカが言ったような気がしたけども、今は無視。


「は、はい……わかりました」

「ありがとう。よろしく頼むよ」


 俺は出来る限り頑張って、口元に笑みを作って見せる。

 昔、特撮番組とかで見たヒーロースマイルだ。


 が、何故か対する少年は顔を引きつった顔で後ずさりしている。

 え……何? 俺ってそんなに顔怖い?

 なんかすげぇショックなんですけども。


『ケイ。恐らく、目元をバイザーで隠しているせいかと』


 おっとそうだった。

 普通の視界以上にくっきり見えるせいで、その事をすっかり忘れていたぜ。


 あ……でも、これ外すとアルカと会話出来ねぇんだよな。


『今は仕方ないと思うしかありませんね。……それとも、仮面キャラという設定で通しますか?』


 いやだから、なんでその手のネタ知っているんだよと。

 それにしても、仮面キャラか。


 ……ないなー。


 嫌だなぁ。

 その手のネタを恥ずかしいと思う歳になっちまったのか。


 ともかく、素顔明かして困るわけでもなし、短時間なら大丈夫だろう。


「とりあえずアルカ、万が一の場合は頼む。あと、翻訳も継続してお願い」

『分かりました。早く帰ってきてくださいね』


 なんか、何処の新妻にいづまの発言ですか……という感じだな。


『に……新妻って何ですか!? っていうか、私は―――』


 ……ん?

 何か言っていた気もするが、バイザーを額に移動した為に聞こえなかった。

 まあ、後で聞けばいいだろう。


「すまないな。顔が見えなくて怖かったかな」

「い、いえ。そんな事はありません」


 口ではそう言うものの、表情は目に見えて安堵あんどしている。

 助けてくれた相手の顔が分からないというのは、不安だろうな。今後は気を付けるとしよう。


「ええと、そっちの女の子は大丈夫かな? さっきからずっと黙って―――」


 少年が庇う形になっている少女の方へと俺は目を向けようとした。

 すると―――


 ピピピピ


 と、警告音が耳に響く。

 敵か!?

 と、周囲を見渡そうとすると……


「ぬおっ!」


 突然首が90度に曲がる。

 別に曲がらない角度じゃないから死ぬ事は無いけども、無理やりなのでめっちゃ痛い。

 なになに?

 身体を動かそうとしてみるが、まったく自由が利かない!

 何が起こったの?

 いや、犯人は分かっている。俺の身体を勝手に動かせるのは、アルカだけだ。

 つまり、これはアルカが勝手にやっているという事。

 しかも、右手がなんかごちゃごちゃと動いている感覚がある。手に持っているのは、トリプルブラストか?

 あ……構えた?


「お、おいおい! やめろアルカ! 馬鹿な真似してんじゃねぇよ!!」


 今目の前に居るのは、あの少年少女のみだ。

 その二人に対して、銃を構えたという事は……。

 あ、引き金引いた。


 ぼふっ!


 やっちまったと思っていたら、そんな音がした。

 明らかに火の玉を撃ったという音じゃないな。

 それから2秒程が経過し、やっと身体の自由が利くようになった。

 慌てて自分の腕が撃った……と思われる二人を見る。だが、二人ともきょとんとしていて何が起こったのか分からない様子だ。

 俺も分からないから、急いでバイザーを下した。


『おかりなさい』

「いや、それよりも何したんだ!? 断りもなく俺の身体を動かして撃つなんてどうかしているぞ!」

『う~む。こればかりはケイが気付く前に何とかしたかったもので、緊急避難的に強制行動をとらせてもらいました』

「あん? 俺が気付く前?」

『えーと、今のはファイヤーブラストとウインドブラストを組み合わせたもので、手っ取り早く言うと即席の温風ドライヤーですね。どんなびしょれ状態だったとしても、瞬間的に乾かせる事が出来ます!』

「???」


 さっぱり意味が分からん。

 びしょ濡れ?

 この二人が?

 いや、濡れているようには全然見えなかったけども。


『分からないなら分からないで良いです。むしろ、分からないままでいてください。あと、女の子の方に立ち上がっても大丈夫だと言ってください。本当は同性の方がいれば良かったと思うのですが……仕方が無いですね』


 やっぱり意味が分からん。

 まぁ、とりあえず言われた通りにしとくか。


「これで立ち上がっても大丈夫だよ。……意味分かるかな?」


 そう言ってみると、しばらくして女の子の顔が真っ赤に染まった。耳まで!

 俺としては初めて見る光景だったのでびっくらした。そして、自分がすげぇ恥ずかしい事を言ったのではと不安になる。


 女の子はぴょこんと立ち上がると、ささっと少年の背へと隠れてしまう。

 ……ううむ。理解は出来ないが、嫌われたのかこれは。

 男の子の方は、俺と同じく訳が分からないといった表情のままだ。少年よ、俺も同じ気持ちだ。


「ごめん。話を戻すけども、それじゃ村まで案内してもらっていいかな?」

「は、はい! よろしくお願いします!」

「じゃ、よろしく頼むよ。ああ、俺の名前はケイ」

「お、おれはカリムです!」

「……リ、リファリナ……です」


 少年は元気よく返事してくれたが、少女は今にも消えてしまいそうなか細い声だった。……まぁ、返事してくれただけいっか。


 その後、徒歩ではあるが村へ向けて二人を護衛しつつの旅が始まった。

 尤も、距離的にはほんの数キロ程度みたいだが。……実際、目視で村が確認できるしね。


 ホバーボードは落とした所に取りに戻り、アイテムボックスの中へと収納した。サイズ的にギリギリであった為に助かった。……というか、その為にアルカがホバーボードを選んだのだろうな。

 アルカとの相談により、ホバーボード等のハイテクメカはなるべく現地人には見せないようにと決めている。理由は、少年たちの服装や視覚ズームで確認できる村の様子が、どう見ても地球で言う中世時代レベルにしか見えないからだ。

 無論、ゴブリンのような生物が確認できる以上、独自の文化が栄えているには違いないが、説明しても理解出来なさそうな機械等は目の前で見せないようにしようという結論に至った。

 見せて大丈夫なのは、普通の剣に見えなくもない高周波カッターぐらいだろうか。いや、トリプルブラストも既に目の前で見せているから、こちらも使っても構わないだろう。

 それに、まだまだ接近戦で戦うには覚悟と技術が足りない。守る者が居るこの場においては、使えるものは使うべきだろう。


 しばらくの間、歩きながらも雑談と称して情報収集にあたっていた。

 ただ、最初に言ったかもしれないが、俺はコミュ力に自信は無い。だから、質問内容はほぼアルカ任せだ。

 バイザーを下して尋ねたい事をアルカと相談し、その内容に応じた質問をアルカが俺の声を利用して聞くという形を取っている。俺が適当に喋れば、それをアルカが翻訳機能を利用して別の言葉に差し替えている。実にコミュ障にはありがたい機能だ。


 とは言え、対象が子供な事もあってか、わかった事はそれほど多くはない。

 星の名前……そもそもこの星が惑星だという概念もない無いみたいなので、不明。

 この大陸の名前はオールンド。

 国の名前はエメルディア王国。名前を聞く限りでは、王政みたいだ。

 王都は、ここから徒歩で七日間かかるぐらいの距離にあるらしい。方角は不明。そもそも、地球じゃないからどっちが北かとかも分からん。この辺は村で地図でも見せてもらって考えるとしよう。

 この村は国内でもかなり辺境の位置にあるらしく、交通の便はかなり悪い。小さな村だから、大した情報も期待できないと思われるが、とりあえず最低限の情報と腹さえ満たされれば御の字と言ったところだろう。聞く限りでは、食文化も地球と大きく差がある訳ではないっぽい。


『ケイの体力を考えるに、今日の所は村で一休みと言ったところでしょうか?』

「そうだな。悲しいけど、これ以上はしんどい。村でなんかいい情報でも手に入ればいいんだが……。それで駄目なら、王都とやらへ行くか」

『そうせざる得ませんね。子供の足で七日間というのなら、ホバーボードなら……飛ばせば丸一日で済むかもしれません』

「下手したら、お前の電源切れるもんなぁ。うかうかしてらんねぇ」

 

 今の状況で、一人この星に放り出されたら……と考えるとゾッとする。

 通訳無し。話し相手無し。そして、多分帰る手段まで無くなると思うと……。あ、身震いした。俺、アルカ無しで生きていける自信ねぇよ。


『なNaナ名奈菜那奈……何を言っているんですか貴方は!』


 何か、今一時的にバグってなかったか?

 つーか言ってねぇよ。


「お前……俺の心読めんの?」


『ひぇっ? なNaナ名奈菜那奈……何の事を言ってるのかワカリマセンデス』


 またバグった。

 やーいこのポンコツAI! 悔しかったら何処でもテレポート出来るドア出してみろってんだ。


『なっ! そ……それは酷いですよぉ!! あんな構造も理屈も分かんないアイテムなんて出しっこないですってば!』


 やっぱり読んでいるんじゃねぇか!!

 あと、コイツ確実に俺の世界のサブカルチャー知ってやがる。


『うぐっ! ひ、ひっかかってしまった。不覚……不覚です。……ばれてしまったものは仕方ないです。ハイ、この端末を頭部に装着している限り、思考をある程度読む事が出来ます』


 何それ。一方通行の思考だだ漏れな訳? 随分ズルくね?


『まあ、こうして言葉に出さないでも会話が出来ますからね。秘密の相談をするならうってつけなのではないかと』

「う~ん。慣れ次第かもしんないけど、どうも心の中で会話するとか上手く出来そうもないから、しばらくは口に出した言葉で返答してくれるとありがたい」

『そうですね。では、思考への返答はなるべくスルーする方向で行きます』


 とりあえずはまとまったか。

 さて、そうこうしている間に、村の方も大きく確認できるようになってきた。

 あぁ……長かったやら短かったやら。

 とにかく、俺の人生においては濃い数時間だったと言わざる得ない。


 ……とりあえず、肉食いて。

 


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