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115話 ルークVSミド

サブタイトル修正しました。




『こんなろー逃げるなー!!』


 ゲイルと剣聖ジークが戦っていた頃、一方の戦いに視点を移してみよう。

 偶然にも巨体対決となっている《タウラス》を操縦するルークと、帝国からやって来た聖女ルミナの従者ミド。

 ミドと呼ばれた少年は聖獣ミドガルズオルムを召喚し、その聖獣の肉体と融合したのだ。

 3メートル以上にも及ぶ巨体同士がぶつかり合えば、いかに宮殿前の広場が広いとしても被害は尋常なものになりかねない。

 であるからして、二人の戦いは人工物の無い城壁の外側……砂漠の中で行われる事になった。


 ではあるが、この砂漠というフィールドがルークにとってかなり不利なものになってしまった。

 《タウラス》というのは、その大きさから察せられる通りにかなり重い。その重さによって歩くたびに砂に足を取られ、鈍重な動きが更に鈍ってしまっているのだ。


 その反対にミドはと言えば、下半身が蛇のものであるからスルスルと砂の上を動き、見事にルークを翻弄している。

 パンチを繰り出してもサッとばかりに避けられ、ならば捕まえてしまえば……とジャンプして飛びかかってもスルリとすり抜けられ、せめてその長い胴体と言うか尾と言うかその部分を掴んでしまえば……と頑張って狙ってみたのであるが、悲しいことに捉える事すら出来ない。


『このやろー! こうなったら!!』


 接近戦が駄目なら、遠距離攻撃である。ルークとしては、あまりゴゥレムに乗っている状態で使いたくは無かったが、彼にはもう一つの戦法……魔法がある。


『ふんが!』


 ルークは思い切り《タウラス》の拳を砂の上に叩き付ける。

 すると大地がボコボコと隆起し、砂の津波となってミドへと襲い掛かった。


 が、ここでルークは忘れていた事がある。

 いや、知識として頭に入っていなかったというべきか。これがアルカかフェイであれば気付けたかもしれないが、ミドが融合している聖獣……いや魔獣ミドガルズオルムは、ルークと同じ土属性の魔獣であるという事を。


「―――ッ!!」


 ミドがまたも声にならない叫びを上げると、この叫びに共鳴してミドの周りの砂がうねり、同じように津波へと姿を変えて自身に襲い掛かる砂の波に激突する。

 結果として砂同士の激突は相殺され、ただ衝撃によって散った砂がパラパラと舞うのみであった。


『うっそー!?』


 残念ながら嘘では無かった。

 その後もルークは様々な戦法を試してみた。


 砂を砲弾にして飛ばす→砂の壁によって防がれる。

 ミドの周りを砂の壁で囲む→すぐに破壊される。

 落とし穴を作る→すぐに上がってくる。

 砂を触手のように加工して捕縛してみようとする→捕縛した途端無力化され、ただの砂になる。


 同じ土属性同士の戦いとなると、結局のところはフィールド内にある砂の奪い合いである。

 大地に手を触れ、魔力を送り込んであーしろ、こーしろという命令をするのだが、魔法というものは当然自分から距離が離れるごとに魔力による命令は効果が薄くなる。

 そうすると、同属性の魔力の持ち主に命令を上書きされて、結果的に無効化されてしまうのだ。


 同じ理屈で、ミドによる土属性の攻撃もルークには通じないのだが、そもそも動きを捉えられないから魔法による攻撃に出たのであり、前提となる攻撃手段が違う為かミドの場合はマイナスになっていないのであった。

 

(―――ヤバい。ひょっとして負ける?)


 今まで考えないようにしていたが、そんな言葉がルークの脳裏(脳は無いけども)に掠めた。


 負ける?

 ぼくが?

 こんなすごいロボに乗っているのに?

 相手は文明レベルが格段に低い相手なのに?


 ルークにしろアルカにしろ、この世界よりも遥かに科学技術が進んだ世界で作られたという事は、誇りでもあったし自慢でもあった。

 今は縛りがあって満足に活動は出来ていないが、それでも本気でやれば負ける事はないと思っていたのである。


 それなのに、前回のシグマとの戦いの敗北。

 そして、今回のこの苦戦。


 本来ならばあってはならない事態に、ルークの精神は次第に追い詰められていった。

 とにかく一撃を……パワーならばこちらが圧倒的に優れているのだから、一撃さえ入れれば戦いのバランスもこちらに傾く筈!


 ルークの攻撃は次第に雑になり、逆に相手からの攻撃を受ける事も多くなっていた。

 《タウラス》の防御力によって今の所致命的なダメージは受けていないが、塵も積もれば山となる。小さなダメージと言え、このまま受け続けていればいずれ深刻なダメージとなるかもしれない。


 敵であるミドは動きが鈍る事も無く、淡々と……まるで機械のように少しずつ《タウラス》にダメージを与えていく。

 事情を知る者が見れば、どちらがAIなのか分からなくなるだろう。


 そんな戦いがしばらく続いたが、ある人物の乱入によって戦況は変化する。


「こらー! なにやってんだルーク!!」


 突如響いた大声に、ルークは慌ててそちらに意識を向ける。

 そして目を丸くした。


『え―――? な、なんでここに居るの!?』


 そこに居たのは、ルークのクラスメイトにして現在は魔法の弟子……ラグオであった。

 砂の上に仁王立ちとなり、手をメガホンの代わりにして怒鳴っていた。


「なんだそのへたくそな戦いはー! ぼく達のゴゥレムがそんなへなちょこな戦いでいいわけないだろう!!」

『え? いや……へなちょこ? ぼくの戦いが?』


 ラグオにそう言われ、ルークは頭上に鉄球が落ちて来たかのような精神ダメージを受けた。

 そして、自分のこれまでの戦いを振り返ってみる。


『う、うおお……』


 確かに、なんだあの戦い方は。

 まるで、格闘漫画とかに登場する脳筋バカの戦法ではないか!


 そんな戦いを見られていたかと思うと、ルークは恥ずかしさで体温(無いけども)が沸騰しそうであった。


 とはいえ、ラグオのおかげで頭は冷静になった。

 なんでラグオがここに居るのかとか、そういった疑問は浮かぶが、とりあえず後回しである。

 ミドも新たなる人物の登場に警戒しているのか、こちらから距離を置いて様子を見ている。とりあえずルークはジリジリと動き、相手の視線からラグオを隠す事にした。


『……でもなぁ……』


 冷静になったはいいのだが、結局のところ打開策は思い浮かばない。

 スピードでは劣り、魔法の力はほぼ互角。パワーでは勝っているものの、いわゆる当たらなければどうというものではないという状態だ。

 実際、素早い敵というのがこんなにも厄介なものだとルークは初めて実感した。


 とは言え、ゴゥレムから降りて戦うというのも現状は難しい。

 《タウラス》に乗っている時よりも機敏には動けるだろうが、今度はパワーで負けている。もし捕まってしまう事があったなら、今度は逆にやられてしまうだろう。

 となると、後はもう一つのゴゥレムである《キャンサー》なのだが、あれは砲撃に特化した機体であって、これまた機敏には動けない。


 あぁ……もっとスピードに特化したゴゥレムを作るべきだった。

 この一週間、ルークの主な仕事は学生達の魔法指南であった為、ケイ達のように自らを強化するといった事はしていなかったのだ。

 自分は負けた訳ではないし、ゴゥレムは無敵だから! と、余裕ぶっこいていたのが裏目に出てしまった。


 せめて……せめて《タウラス》と《キャンサー》を同時運用出来れば、勝機はあるかもしれない。

 でも、残念ながらルークの作り上げたゴゥレムには二機同時に動かすためのプログラムは仕込まれていない。そもそも、これは操縦しているというよりは、意識をゴゥレムに移して動かしているものだから、意識を二つに分けでもしなければ、複数の機体を動かすなんて芸当はそもそも無理なのだが。


 そうして困っていると……


「ルーク叫べ! マシン・ドッキングだ!!」


 ラグオの声がまた響いた。


『へ? 今なんて?』


「いいから叫ぶんだ! マシン・ドッキング!!」


 意味はさっぱり理解できないが、こうなったらやけくそである。

 ルークは力いっぱい叫んだ。


『ええいもう! マシン・ドッキングッ!!』


 そう叫んだ途端……ブゥンと《タウラス》の目に光が灯る。

 何事? と思っている内に《タウラス》の背面部が展開する。そこに仕舞われていたのは、ルークのアイテムボックスだ。そのアイテムボックスが開き、中からいくつものパーツが空を舞う。

 そのパーツは空中でガチャガチャと組み合わさると、《タウラス》とは別の巨人へと姿を変えたのだった。

 《キャンサー》……もう一つのルーク専用戦闘用ゴゥレム。肩に二つの砲、両腕にガトリングガン、脚部にはキャタピラを装備した砲撃特化の機体である。


 どういう事? とルークが混乱していると、次の変化が起こった。


 《タウラス》が突然その場にフワッと浮き上がり、同時に《キャンサー》も浮かび上がる。ビリビリと放電現象が二機から発生し、やがて《キャンサー》が再びバラバラのパーツ姿となる。そしてパーツの数々は《タウラス》の周りを浮遊し、それぞれ所定の位置に付いたところで一気に《タウラス》へと集まっていく。

 ガチャンガチャンと派手な音を立てて、腕に……足に……《キャンサー》のパーツが組み合わさっていく。

 そして《キャンサー》は《タウラス》の追加装甲へと姿を変え、《タウラス》自体も大きくそのシルエットを変える結果となった。

 

 《タウラス》の1.5倍程の大きさとなり、全長は5メートル程。足にキャタピラが付き、大地を走るよりも滑っての移動が可能となった。両肩にはガトリングガンが付き、腕には《キャンサー・ビーストモード》時に使用する巨大な鋏……シザースクロー。

 そして何より大きな変化は、背面部分からまるで尾のように伸びる砲……オーバーハングキャノン。多関節機能により、360度あらゆる場所を撃つ事が出来るのだ。


 新たなゴゥレムの姿……これは……これはまるで―――


「やったぁ! 《スコーピオ》の合体完成だい!!」

『は……はええっ!!?』


 突然の事態についていけないルークは、とりあえず叫ぶのだった。




 ルークの新武装……スコーピオの登場です。

 やはり、ロボといったら合体機能。ロマンであります。


 詳しい機能については次回……。


 追記:サブタイトル「スコーピオ」は、次話のタイトルにしました。

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