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103話 闇ギルド




 ケイ達一行がシグマ、ヴァイオレット二人の異邦人を相手にした翌日の事。

 物語の視点は、ルーベリー王国ではなくその隣……物語開始当初の舞台であったエメルディア王国へと移る。


「どうやら、お主の妹が早々に第二王子派の刺客に狙われたらしいぞ」

「!! そんな……フィリアは……フィリアは無事なのですか!?」


 王都オールンドにあるハンターギルドのギルドマスター執務室。そこで、ギルドマスターから報告を受けたセージ……ことセルジオ・アント・ルーベリーは取り乱してギルドマスターに詰め寄った。


「おいおい安心しろよ。お前が一体誰に護衛を頼んだか忘れた訳じゃねぇだろ」


 ギルドマスターに飛びかかりそうだったセルジオを抑えたのは、その傍に立っていたBランクハンターのブローガだ。


「そ、そうだった。で、でも心配です。本当にフィリアは無事なのですか?」

「当然無事じゃ。どういった訳か、襲撃されたという記憶すら無いようで、ピンピンして学生生活を満喫しておるようじゃぞ」


 その言葉にセルジオは首を傾げた。


「??? え、えーと……記憶すら無いというのはどういう事でしょうか?」

「襲撃の知らせを聞いた別の護衛が確認したところ『は? 襲撃!? そんな事あるわけないでしょうが!!』と、怒鳴られたそうじゃ。どうも、誤魔化しているわけでは無く、本気で襲撃は無かったと思っているようじゃな」


 報告書を読むギルドマスターの言葉に、セルジオは更に首を捻る。


「えっと……本当にどういう事なのでしょうか?」

「んなもんアレだろ。レイジ達の使う魔道具ってヤツだろ。何か、記憶を消しちまう魔道具でも持ってるんじゃねぇのか?」

「護衛や向こうのギルド職員たちも今のお前さんみたいな状態らしいが、恐らくはブローガの言うとおりじゃろうな」


 戸惑っているセルジオを余所に、ギルドマスターとブローガはうんうんと頷いていた。


「な、なんでお二人はそんなに簡単に納得できるのですか?」

「そりゃお前、レイジ達だぞ。短い付き合いだったかもしれねぇが、一体何を見てきたんだ?」

「い、いえ……。確かに、非常識な力を持つ方達だったと思いますが、それでも記憶をどうこうするなんて……」


 すると、ブローガがポンとセルジオの肩を叩く。あまりに強い力だったため、思わずそのまま床に倒れるかと思ったほどだ。


「あいつ等と上手く付き合っていきたいんだったらな、常識を一切捨て去る事だ。むしろ、何が出来ないのかこっちが聞きたいぐらいだ」

「そ、そうなんですか?」


 到底信じられることでは無かったが、自分よりもレイジ達と付き合いの長いブローガが言うのなら、そういう事なのだろう。

 どうも、自分はとんでもない者達に護衛の依頼をしてしまったのかもしれない。……と、一体何度目かになるのか分からない独白をする。


「じゃが、今回ばかりはレイジ君達も無傷では済まなかったみたいじゃぞ」

「あん?」

「え?」


 ギルドマスターの言葉にブローガとセルジオの二人は間抜けな声を出す。


「レイジ君達からの報告では、誘拐を企てていた者達の中に、相当な実力者が居たようでな。レイジ君達もそれなりの被害を受けたとのことだ」

「被害? アイツらが?」


 ブローガは信じられない言葉を聞いたかのように眉を寄せる。


「どうも、仲間に怪我人が出たとか……詳しい事は分からないが、そのような報告を受けたらしいの」

「け、怪我人!? まさか、アルカさん!?」

「誰かまでは知らぬよ。アグヴェリオ……向こうのギルドマスターが、そのような報告を受けたというだけだ」

「そ、そうですか……」

「それにしてもあいつ等が被害ねぇ。レイジの野郎は帝国の聖騎士にも勝ったんだろう? いまいち信じられんな」

「彼等も決して無敵では無い……という事なのじゃろうな」


 しばしの沈黙が流れた後、やがてブローガが口を開いた。


「それで? 俺をわざわざ呼んだ理由ってのは何だ?」

「おお、そうじゃったな。お前さんを呼んだ理由じゃが、そこのセルジオ殿下がようやく帰国する事になったのでな。道中の護衛を頼もうと思っておる」

「俺? レイジ達に頼んであるんじゃなかったのか?」


 その疑問にはセルジオが苦笑して答えた。


「護衛を引き受ける条件が、護衛はルーベリー王国に僕が到着してから……だったからね」

「それに、姫君の事があったばかりじゃ。念には念を入れて護衛は強い者の方がいいじゃろう」

「俺としては別に構わんが……って事は、護衛はエメルディア国内を抜けるまでか?」

「そうなるの」

「そりゃ残念だな。あのレイジが手こずったとかいう奴に俺も会ってみたかったが……」


 惜しそうにブローガが言葉を吐いたその時だった。


『では、行きますか?』


「あん?」

「なぬ?」

「え?」


 この場には三人しか居なかった筈。だというのに、別の誰かの声が響いた。


 全員の視線が、セルジオへ向く。

 確かに、今セルジオから聞き覚えのある声が聞こえてきた。正確には、セルジオの懐あたりにある場所からだ。

 咄嗟に懐からその物体を取り出す。それは、手のひらに収まるサイズの奇妙な長方形のプレートだった。もし、ここに21世紀の地球からやってきた人間が居たのなら、それが何かはすぐに理解出来ただろう。


 ……携帯電話。

 いわゆるガラケーと呼ばれるタイプの電話だった。最も、それは形のみであり、ちゃんとした電話の役割を果たすわけでは無い。通信機能はあるが、電話のように不特定多数の者と会話する機能は無い。当然ネット検索の機能も無い為、どちらかと言えば携帯電話の形をしたトランシーバーに近い。


「なんだそりゃ?」

「い、いえ……レイジ君に何かあったら使えと渡されていた物なのですが……」


 もし万が一エメルデイア国内で命の危機に相当する事が起きた場合のみ、このガラケーを使う事を許可されている。それ以外で使ったら、無条件で護衛の立場を降りると言われたので、セルジオとしてはただ持っているだけであった。

 それが、何やらランプのようなものがピカピカと点滅しているではないか。


「で、どうすりゃいいんだ?」

「さぁ、どうすればいいのでしょう?」

『戸惑っていないで、早く機械を開いて通話ボタンを押してください』

「わぁっ!!」


 突然機械から声が発せられ、セルジオは思わず携帯を落としてしまった。


『こらっ! 落して壊れたらどうするんですか! これにはそれほど耐久性を持たせていないのですよ!!』


 床に落とした携帯から、更に声が響く。

 やがて、セルジオはこの声の主が誰であるか気づく。


「ひょ、ひょっとして……アルカさんですか?」

『そうですが』

「よ、良かった! レイジ君のチームの誰かが怪我をしたと聞いて、心配していたんです。アルカさんが無事で本当に良かった……」


 セルジオとしては素直な気持ちだった。

 だが、次のアルカの言葉で凍りつく。


『怪我をしたのは、私の妹ですが』


「………それは……言葉の配慮に欠けました……」

『その件は別に良いですから、早く携帯を拾って通話ボタンを押してください。さぁ、さっさとする!』

「わ、わかりました!」


 怒りの声を浴びせられ、セルジオは慌てて携帯を拾い上げる。そして、パカッと二つ折り携帯を開いて、ピカピカ点滅しているボタンを押した。

 ……そもそもこの状態で会話が出来るのなら、わざわざ通話ボタンを付ける必要はないと思うかもしれないが、そのボタンの役割は別にあった。


『よし、現在位置の座標を確認! 傍に居るのは……良かった、ギルドマスターさんとブローガさんだけですね。お二人なら問題は無いでしょう。行きますよ、ルーク』

「え? それってどういう……」

『『ゲート!』』


 その言葉と共に目の前に光の穴のようなものが出現。

 そして、その中から二つのビー玉のような物体が飛び出してきた。そのビー玉は空中で激しく発光すると、次の瞬間にはアルカとルークの姿へと変わり、スタッと床に着地するのだった。


『ふぅ、久しぶりのエメルディアですね』

『あ! ブローガのおっちゃんと、ギルドマスターのおじいちゃんお久しぶりー!』


 突然空間を飛び越えてやって来た二人に、元々室内に居た三人は唖然としていた。

 ルークも、ブローガとギルドマスターは知らない仲では無い為、人見知りモードではなくかなり気安い態度である。


「ま、まさか……これって空間魔法? いやでも、こんなに簡単に!?」


 この中で唯一アルカ達が空間魔法を使える事実を知らないセルジオが目を白黒させている。

 ちなみに、かつてBランク試験の際に土砂崩れに巻き込まれた際、同じゲートの魔法で脱出したのだが、その時はアルカが事前にセルジオを気絶させていた。よって、彼は何らかの手段でアルカが助けてくれたのだろうという事しか知らなかったのだ。あの時は酸素不足と怪我によって意識も混濁していたし、特に気にしてはいなかったのである。


「……あぁ、レイジの奴は居ないのか。それにしても……お前等は本当に常識をぶっ壊しやがるな」


 まず真っ先に我に返ったブローガが、溜息交じりに言う。


「うむ。こういう事は、事前に知らせてくれないと困るのぅ」


 ギルドマスターも額をポリポリと掻きながら苦言を言うと、アルカは少しだけ申し訳ない顔となる。


『すみません。こちらもあまり余裕が無かったものですから』

「例の、妹が怪我をしたってヤツか?」

『はい。それで、少々困った事態になって、更にあまり時間の猶予も無いものですから、ちょっとばかり予定を早めに来ました』

「予定を早める?」


 すると、アルカとルークがポンとセルジオの肩に手を置く。


『セージさんを早急にルーベリー王国に連れて行って、王様になってもらう事にしました』


「「「は!?」」」




◆◆◆




 アルカ達は無事にエメルディアに行けたようだな。

 こちらはルーベリー王国第二都市マイア。そのギルドのギルドマスター執務室だ。


「なぁんか、急に眼の色が変わったのね。昨日の件があったせいかしら?」


 オカマギルドマスターのアグヴェリオが、突然押しかけた俺とゲイルを見て面白そうに笑みを浮かべている。


「ちょっとばかりこの国でする事の方針が変わったものですから」

「ふぅん、方針ねぇ……。で、アタシに何か聞きたいことでもあるのかしら?」

「話が早くて助かる。貴方に聞きたいのは、闇ギルドについてだ」


 俺の発した言葉に、アグヴェリオ氏は目つきを険しくする。


「今、それを聞くって事は……昨日の襲撃者の中に奴等が居たって事?」

「そうだ。名前はシグマ……そしてヴァイオレット。その二人についての情報が欲しい」


 その名前を出すと、アグヴェリオ氏は目を伏せて溜息を吐いた。


「よりによってそいつ等が出てきたって訳ね。いえ、むしろ殿下や姫様の護衛をアンタ達がするっていう情報が漏れた可能性もあるか。そうね、元々誘拐なんてチンケな仕事をあの二人が引き受ける筈も無い」

「どうやら、知っているようでござるな」

「だったら話が早い。あの二人は何者ですか?」


 アグヴェリオ氏は少しの間目を閉じて考えていた様子だが、やがて何かを決意したかのように頷き、こちらを見据えて口を開いた。


「言っておくけど、これは他言無用よ。情報の機密に関しては……まあ、アンタ達は分かっているか」


 俺達はコクンと頷く。それを見て、アグヴェリオも大きく頷いた。


「あの二人……元々はうちのギルドに所属していたのよ」

「何?」

「そう言えば、ルーク殿の話ではヴァイオレットという女はハンターの仕事についても詳しかったとか。と言う事は、元ハンターという事でごさるか?」

「というか、現役でハンターよ。別に辞めるって言われたわけじゃないし。ライセンスカードも持ったままだろうから、今でもCランクハンターの資格は持っているわね」

「しかし、別のギルドに移った訳でしょう?」

「今あの二人が所属しているのは“闇ギルド”。公には存在を認められていないわ」


 すました顔で言うアグヴェリオ氏。

 まあ、殺しとか誘拐を請け負う組織が、表でバーンと営業している訳が無いわな。

 それにしても、あの二人が元ハンターか……。ハンターの仕事で満足していたら、別の形で邂逅出来たかもしれないってのに……。


「……もしかして、実はハンターギルドと闇ギルドは何か繋がりが……いや、もしや同じ組織という事でござるか?」

「へぇ、イケメンのお兄さん鋭いわね」

「何?」


 それを聞いた途端、俺はキッとアグヴェリオ氏を睨み付けた。

 まさか、一方で護衛を依頼しておいて、一方で誘拐を企てていたっていうのか?


「ちょ、ちょっと待ってよ。早合点しないでちょうだい! あくまで昔の話よ。今は全く別の組織!! あっちの組織がどうなっているのか、アタシにはさっぱり分からないわよ!」


 両手を上げて弁解するアグヴェリオ氏に、俺は改めて問い質す。


「それがどういう事なのか、詳しく説明してもいますよ。他に、今貴方が知っている事を全て教えてほしい」

「ふう。なんかキャラクターが変わったみたいね。まぁ、いいわ。

 闇ギルドが生まれたのは、当然アタシよりももっと前の世代の頃よ。それこそ、ギルドが誕生してしばらくしてある程度の年月が経ってからの事」


 元々ハンターギルドは、魔獣を退治する事を主な仕事としていた。が、時が経つにつれ、それ以外の仕事も請け負うようになる。それこそ護衛依頼から、薬草集め等の簡単な仕事。……が、中には賞金首の討伐等の依頼も受けていた時期があったらしい。


「今はあくまでも捕縛レベルね。最も、今は国の騎士団とかがそれなりに力も付けてきたから、そういった依頼がこっちに来る事も稀にはなってきているけど」


 そうして、その手の魔獣と関係ない依頼が増えていき、やがてエスカレートしていった。

 戦争の為の人員募集から他国へのスパイ行為……要人の暗殺の依頼……果ては単なる復讐の代行。金次第で、何でも請け負うレベルになって行ったとの事だ。


「当然その手の依頼は表を通さずに、裏で交わされていったの。その手の仕事をする専門のハンターも生まれたりしてね。また、そっちを生業とするハンターには、別のハンターライセンスが与えられたりしていたらしいわね。

 普通のハンターが“A”を最高ランクにしているのに対して、そっちの裏側のハンター達の最高ランクは“Z”だったらしいわ」


 Zランクハンターか。響きは格好良いけど、どれだけ恐ろしい奴なんだよって話だな。……いや、凶悪とも限らないか。淡々と殺しを遂行する凄腕スパイみたいな奴等という可能性もある。


「でも、やがてハンターが国家間の問題に関わりすぎて色々と問題になっていってね。当時のギルドマスター達の話し合いによって、その手の依頼は金輪際受けない事になったのよ。また、裏側のハンターに仕事を斡旋していた職員、生業としていたハンター連中も解雇され、ハンターギルドは無事クリーンな組織に生まれ変わったワケね」


「……ふむ。その解雇された連中が集まって組織されたのが闇ギルドの前身という事でござるか」

「仕事をこなしていたハンターと、斡旋をしていた職員がそのまま集まればそうなるわな」


 俺達がうんうんと頷くと、アグヴェリオ氏は更に溜息を吐いた。


「理解が早いわね。まあ、闇ギルドの概要はそんなものよ。流石に今は別組織だから、今奴等がどんな仕事を請け負っているかなんて知らないわよ」

「だけど、シグマとヴァイオレットの二人は元々表側のハンターだったのでしょう? それがどうして闇ギルドに入ったのですか?」


 そう尋ねると、アグヴェリオ氏は苦い顔となる。どうやら、あまり言いたくない事のようだが、こちらとしても知っておきたい事だから聞くぞ。


「……殺したのよ」

「誰を?」

「一般のハンター。よくある話よ。新人の凄腕ハンターが突然現れて、相手の実力も分からない馬鹿のハンターが突っかかっていったってワケ。その結果、あっさりと……ね。

 そこまでならまだ許容範囲で、弁護の余地もあったのよ。悪いのは突っかかっていった馬鹿の方だしね。でも殺した言い訳が『目の前を飛んでいた羽虫を潰しただけだ。それの何が問題だ?』ですってよ」

「「………」」


 なるほど。

 生死に関する価値観があまりにも違い過ぎたか。

 フェイの話では、あのシグマという男は戦争が永遠と続く世界からやってきたらしい。あの全身が兵器と化した身体であれば、それも納得というものだ。

 そんな世界に生きた者であれば、殺しという行為に罪悪感が無くとも当然と言えるだろう。


「さすがにどんな馬鹿であってもウチのハンターだしね。家族だって一応居た訳だし、そのままって訳にも行かなかったのよ。で、二人には大きな罰は与えなかったんだけど、しばらくの間はギルドを出入り禁止にしたの。それから、彼等とは会っていないわ」

「そして、いつの間にか闇ギルドに所属していたという訳ですか」


 闇ギルドとしても、あの二人が加入した事はかなりの戦力になった筈。いや、元々狙っていたのかもしれないな。

 そして、ふとした仮説が思い浮かぶ。


「……ハンターかギルド職員に、闇ギルドと繋がっている奴が居るんじゃないですか?」


 俺の問いに、アグヴェリオ氏の眉がピクリと動く。


「闇ギルドの動向をハンターギルドも少しは把握しておく必要がある筈です。だから、ある程度情報を共有できる者が双方のギルドに居る筈。……違いますか?」


 アグヴェリオ氏はしばし沈黙を保っていたが、やがて観念したように口を開いた。


「誰と明言する事は出来ないけど、確かに双方の組織に繋がっている情報屋は居るわ。恐らく、そいつが相当な実力者がフィリア姫の護衛に付いたという情報を流したんでしょうね」


 やはりか。

 しかし、ルークの話では護衛になっているのがBランクハンターだという事は知らなかったようだし、そこまで深く内情に通じているわけでは無いようだ。


「言っておくけど、そいつを締め上げて情報吐かせるのは駄目よ。そいつは貴重な存在だし、闇ギルドの存在も一応世の中には必要な歯車なんだもの。最悪の場合、うちと全面戦争なんて目にあったら、世の中どうにかなっちゃうわ」


 話を聞くと、ハンターや王国騎士団等がどうにも出来ない案件を、闇ギルドを利用して解決させるというケースもあるようだ。いわゆる、必要悪といった存在なのか。……地球で言うところのマフィアとかヤクザとかそういうのかな?


 ともあれ、敵のアジトに入り込んでシグマ達を探すという手は難しいようだ。

 アルカやアルドラゴの探知能力でも、あのシグマという男は調べようとするとエラーメッセージが表示されるらしく、居場所を突き止めるのは困難なのだとか。


 となると、やはり正攻法しかあるまい。

 そう思っていると、ちょうどタイミングよくアルカから通信が入る。


『ケイ、セージさんを確保しました』

「よし、じゃあここに連れてきてくれ」

『了解です』


「悪いですが、これから俺達がする事に巻き込ませていただきます」


 俺は勝手に宣言する。

 というか、元々の原因はセージ、オールンドのギルドマスター、そしてこっちのギルドマスターが原因なんだ。こうなったら逆にこの人達を利用してやろうじゃないか。


「!! え、それってどういう事!?」


 突然、俺達の目の前に出現した光の穴を見て、アグヴェリオ氏が慌てふためく。

 更に驚いたのは、そこから三人の人影が飛び出した事だ。


『さぁセージさん。ルーベリー王国に到着です』

『ただいまー!』

「うわあっ! なんだなんだ! 何処だ此処は!?」


 その三人とは、アルカ、ルーク、そしてセージ。セージは、突然空間を飛び越えてやって来た事で、目を白黒させている。

 ハッハッハ。何かいい気味だなこれ。


『あ、実はまだ居るんです』


 そのアルカの言葉を不思議に思っていると、更に四人の人物が飛び出してくる。


「あっちーなくそ! 此処がルーベリーかよ!!」

「うっぷ! なんか気持ちわりぃっす。これが空間を飛び越えた副作用ってやつか……」

「情けないなジェイド! ところで、先生は何処だ!?」

「……お前等、少しは静かに行動できんのか」


 出てきたのは、ブローガさん、ジェイド、ミカ、ドルグの四人。


 何これ。

 何か俺の予定と違うんだけど。


 今度は俺が目を白黒させる立場となったのだった。




 説明と会話が多いので、結構な文字数になりました。

 元々は、前回の続きからそのまま話を進めていたのですが、なんかいまいちしっくり来ないというか、いまいち筆が進まなかったのです。なので、視点を変えた場面から開始してみたら、不思議と進む進む。

 詰まったら、思い切って場面を変えてみるのも手ですね。


 そして、ストーリーでは前章にて親しくなったキャラ達が助っ人としてやってきました。

 ただでさえキャラが増えているのに、こんなに人数多くして本当に動かせるのかと、今から不安になったりしています。

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